試乗記

待望の“S+シフト”を搭載した「シビック e:HEV RS」が登場 クローズドコースでその走りを試す

2026年4月23日 発表
S+シフトを搭載した「シビック e:HEV RS」に試乗する機会を得た

待望の「ホンダ S+シフト」搭載モデルが登場

 11代目シビックは登場以来、さまざまな派生モデルやタイプの追加によって順調に販売台数を伸ばしてきた。2024年度にはガソリン車6速MTモデル「RS」グレードを投入し、タイプRと合わせてスポーティなイメージをより一層強化した。

 2025年度には約1.6万台が販売された。ただし、内訳としてタイプRとガソリンのRSがスポーツイメージを牽引している一方で、e:HEVの販売台数が伸び悩んでいるという課題があったそうだ。

 そんな中でユーザーの傾向として、スポーティ性とCVTの実用性の両立や、ハイブリッド車を選びたいというニーズが見えてきたことを受けて、e:HEV(ハイブリッド)仕様の「RS」が投入されるはこびとなった訳だ。

ボディサイズなどに変更はなし
ボディカラーは画像の「プレミアムクリスタルレッド・メタリック」のほかに「クリスタルブラック・パール」「シーベッドブルー・パール」「ソニックグレー・パール」の全4色設定

 ポイントは、ひとあし早くプレリュードに採用された、ホンダの「S+シフト」の搭載だろう。2.0リッターエンジンとe:HEVによるリニアで力強い加速性能と、RSならではの専用デザインや定評ある走行性能をより進化させた上で、S+シフトによりそれらの価値を誰もが楽しめるようになると期待できる。

ホイールは専用のマットブラックペイントで引き締まった足まわりを演出している
ヘッドライト内のリングやヘッドライト下側のガーニッシュもブラック仕様になっている
フロントバンパー下部の中央のガーニッシュもブラックに変更
前後には「RS」のバッヂがあしらわれる
シャークフィンもブラック仕様となる

 S+シフトの制御やエンジン音はプレリュードと同じではなく、シビック専用にチューニングされており、プレリュードでもその楽しさは十分に味わっているが、プレリュードと比較しても、よりエンジンの存在感を高める演出とされている。

 パワートレーンの制御は、ドライバーとシンクロするスポーツアダプティブ制御を採用。さまざまなセンサーによりクルマの走行状況を推測し、コーナーが迫っているときには最適な仮想ギア段へダウンシフトするアーリーダウン制御とともにコーナリング中にはホールドする制御も採用している。

内装もデザインなどに変更はない
ステアリングホイールは赤ステッチになっているほか、パドルシフトがメタル仕様となっている
「S+シフト」のスイッチはセンターコンソールに配置。メーターの中央下に「S+」が表示される
ドアのピンストライプやシートのステッチも赤色となりスポーティさを表現している
前席
後席
ダッシュボードのインストルメントパネルも赤色となる

 また、エンジンと発電用モーターの制御により、アップシフトの際には瞬間的にトルクをダウンして、ダウンシフトの際には高めることで、前後Gの鋭い変化を実現し、完成度の高いDCTのようなキレのある回転数変化を実現しているのもよくできている。

 変速レスポンスもハイブリッドの特性を活かし、圧倒的に高価なスーパースポーツ勢をしのぐ応答時間の速さを実現しているのも感心するポイントだ。

シビックRS専用にチューニング

「S+シフト」を搭載したことで走りはどう変わるのか?

 試乗会では、標準のe:HEVと乗り比べることもでき、標準車のよさも再確認できたのだが、RSは謳っているとおり、加速時にはステップ変速制御を行ない、減速時にはレブマッチダウンを行なうことで、人とクルマがシンクロするあやつる喜びを味わえるのが特徴だ。

搭載する直列4気筒2.0リッターエンジンは、最高出力104kW(141PS)/6000rpm、最大トルク182Nm/4500rpmを発生。電気式CVTに内蔵されるモーターについての数値は試乗会の時点では未公表だったが、プレリュードと同じスペックであれば最高出力135kW(184PS)/5000-6000rpm、最大トルク315Nm/0-2000rpmと同等のハズ

 それをディスプレイとアクティブサウンドコントロールによる視覚と聴覚で感じられるほか、前述の変速フィールの付加により、体感でも味わえるようになっている。サウンドについても、マルチスピーカー化とともにシビック専用の音色とされている。ドライブモードに合わせて音量が変わり、S+にするともっとも大きくなり、高揚感を与えてくれるという演出もある。

人とクルマがシンクロするあやつる喜びを味わえる

 プレリュードでは、全ドライブモードに対してS+シフトが設定されていたが、シビックRSではスポーツモードのみとの組み合わせとなる。ドライブすると、期待どおりの楽しさだ。自ら積極的にパドルを操作してシフトチェンジするもよし、クルマにまかせてスポーツアダプティブ制御によるドライバーとシンクロする走りを楽しむもよし、これが非常に自然で違和感もなくよくできている。ダウンシフトも気持ちいいが、アップシフトも気持ちよく決まる。

 車内は随所の赤のアクセントが配されている。ステアリングホイールはプレリュードのものが流用されていて、パドルシフトはメタル製となり、やはり樹脂製よりも操作感がカチッとしている。

ダウンシフトも気持ちいいが、アップシフトも気持ちいい!

RSならではのフットワークも

 フットワークの印象も標準のe:HEVとは別物で、RSには専用のサスペンションとステアリングシステムが与えられており、これにより軽快でダイレクトな操舵と挙動の一体感を実現しているという。

ステアリングの切り始めから応答遅れもなく、思い通りに操れる

 具体的には、サスペンションダンパーの応答性、スプリングおよびスタビライザーの剛性の向上や、前後のコンプライアンスブッシュについても液封からソリッドラバー化し剛性の向上を図ったほか、これらにあわせてタイヤもRS専用品を新開発している。さらに、ステアリングのトーションバーレートを60%も引き上げている。

 これらにより、ステアリングの切り始めから応答遅れがなく、思い通りに操れるハンドリングとともに、高い接地感と安定感を実現している。接地感はタイヤを路面に押しつけるかのようなグリップが感じられ、イメージしたとおりのラインをオン・ザ・レール感覚で正確にトレースしていける。

軽快でダイレクトな操舵と挙動の一体感を実現していた

 最初にe:HEVをドライブしたときに、これをマニュアルシフトできたらさぞかし楽しいだろうと感じたものだ。さらに、シビックRSのガソリンMTが出たときには、この走りを2ペダルで味わえたら、より間口が広がりそうだと感じた。その両方の要素を兼ね備えたのが、今回のe:HEVのRSといえる。

 販売サイドでは、このe:HEVのRSが主力となり、全体の55%に達すると見込んでいるそうだが、それもあながち大げさな話ではなさそうな印象を受けた。

e:HEV RSはシビックの主力モデルになり得る乗り味だった
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一