試乗記

アストンマーティン「DBX S」「ヴァンテージ S」をサーキットで体感! 最新Sモデルの進化の度合いとは?

2026年4月18日 開催
「DBX S」「ヴァンテージ S」の試乗会が「THE MAGARIGAWA CLUB」で開催された

 2026年3月に日本でお披露目されたアストンマーティンのスーパーSUV「DBX S」と、スポーツモデルの高性能版「ヴァンテージ S」。4月半ばには早くも専用トラックを使用した試乗会が開催された。

 その舞台となったのは、千葉県南房総市にあるアジア初の会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」だ。F1用サーキットの設計で有名なティルケ・デザイン社が手がけた全長3.5kmのプライベートコースを持つことが評判で、最大勾配が上り20%、下り16%という起伏の激しい22のコーナーと、最長800mのストレートを組み合わせたテクニカルなレイアウト。これまでも名だたるスーパーカーたちが数多く挑戦している場所だ。ここを上記の2台のSモデルはどう攻略できるのか。とても楽しみな試乗会に参加することができた。

「DBX S」「ヴァンテージ S」の試乗会に参加した

「DBX S」「ヴァンテージ S」それぞれのスペックは?

 まずはそれぞれのスペックを簡単に紹介。ちなみにそれぞれが掲げる「S」とはスペシャルのS。ルーツは1953年の「DB3 S」まで遡る。

「DBX S」のボディサイズは5039×2175×1680mm(全長×全幅×全高)というなかなかの体躯で、フロントに搭載するV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは最高出力727PS(DBX707に20PS上乗せ)、最大トルク900Nmを発生。9速ATを介して四輪を駆動し、最高速度310km/hを公称。価格は3590万円というスーパーSUVだ。

「DBX S」のボディサイズは5039×2175×1680mm(全長×全幅×全高)
V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは最高出力727PS(DBX707に20PS上乗せ)、最大トルク900Nmを発生
トランスミッションは9速AT
DBX S
DBX Sのインテリア

 もう1台の「ヴァンテージ S」は、ボディサイズが4495×2045×1275mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2705mmというロングノーズ、ショートデッキのスポーツカーらしい体躯で、フロントミッドに搭載するV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンはベースモデル比15PSアップの680PSを発生し、最大トルクは800Nm。0-100km/h加速3.4秒、0-200km/h加速10.1秒(ベースモデル比で0.1秒短縮)、最高速度325km/hを誇るオールラウンドなスポーツモデルだ。

ボディサイズは4495×2045×1275mm(全長×全幅×全高)
V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンはベースモデル比15PSアップの680PSを発生
トランスミッションは8速AT
ヴァンテージ Sのインテリア

レーシングドライバーが先導

コースを説明する坂本祐也選手

 今回の試乗会の形式としては、まずレーシングドライバーが先導車に乗り込み、ペースを管理しながらわれわれの乗る次のヴァンテージ S、その後ろのDBX Sを引っ張る形で走行。先導車はそれぞれ坂本祐也、細川慎弥、密山祥吾の3選手だ。

先導車に乗る坂本祐也、細川慎弥、密山祥吾の3選手

 試乗前には、Sモデルはカタログモデルの高性能版であり、出力・最高速度の向上と空力・冷却性能、ステアリング系の剛性/制御特性が強化されている一方、ブレーキ/荷重移動の扱いが挙動に直結するため、初期周回はモードとペースに余裕を持って車両特性を把握し、次第にペースアップする旨の説明があった。また先導車の後方に隊列を形成し、車間は大きく開けすぎないこと(目標は数車身)、コース幅が狭くブラインドコーナーが多いため、先導車/前走車を常に視界で追従することなどのコーションも忘れず付け加えられた。走行時は当然ヘルメット、グローブ、長袖着用だ。

DBX S、ヴァンテージ Sで走る

最初に乗り込んだのはDBX S

 最初に乗り込んだのはDBX S。1周目は完熟のため「GT」モードで走行。それでも800mの下りストレートエンドでは200km/hを軽くオーバー。2周目はモードダイヤルを右に回して「スポーツ」モードに入れてペースアップ。ストレートエンドでは220km/hオーバーから赤いパイロンが置かれた地点でブレーキペダルをグィッと踏み込んで急減速。その先の「たこツボ」コーナーでは優れた旋回性能を体感しつつ、コントロールで速度を乗せる意識で通過。また上りストレートエンドのブレーキングポイントでは、左→右の切り返し手前でブレーキを“舵角ゼロ”で踏めるライン取りを工夫することが必要で、それをうまくやらないと、重心が高いSUVモデルは走行ラインが乱れる原因になってしまう。ここでうまく減速できず、ステアリングを僅かに切ったままブレーキペダルを踏み、背中に車体の重さを感じてちょっと怖い思いをしたのが今回の筆者なのだ。

「GT」モード
「スポーツ」モード
「スポーツ+」モード
モードダイヤル
ピット前のアップダウンを攻めるDBX S。前を走るヴァンテージ Sにぴたりとついて走れるのは驚異的

 なんとかクリアした先の3周目では「スポーツ+」モードでさらにペースアップ。例の下りのストレートエンドでは240km/hオーバーで侵入。前を走るヴァンテージ Sのルーフを見下ろすような、目線がこんな高い位置にありながらも驚異的な速度で走り、コーナリングしていることに脱帽してしまう。4周目はクールダウン走行で、ほぼブレーキペダルを踏まない速度で流しつつピットレーンに戻った。

 お次は背の低い「ヴァンテージ S」に乗り換える。モード選択ダイヤルをカチリと回して選ぶ走行モードは、1周目「スポーツ」、2周目「スポーツ+」、3周目「トラック」(DBX Sとは名称が異なることに注意)を選択するよう、無線機から先導車の指示が聞こえてくる。

「ヴァンテージ S」
「GT」モード
「スポーツ」モード
「スポーツ+」モード
モードダイヤル
ピット前のアップダウンを攻めるヴァンテージ S

 走り出すと、やっぱり背が低くて軽い、ショートホイールベースのスポーツカーでこうしたコースを走るのが最上、と感じてしまったのが正直な感想。先ほどと同じスピードで3周した時の、加減速感やコーナーでもコントローラブルな安心感は、ドライバーの琴線に触れてまことに心地よいのだ。電気を使わないクラシカルなV8ターボの音や振動は、アストンを所有することの喜びに直結することが、深く伝わってきた。

カール・ベイリス アストンマーティンAPEC&中国リージョナルプレジデントとのラウンドテーブル

アストンマーティンのカール・ベイリスAPEC&中国リージョナルプレジデント

 試乗後は、アストンマーティンのカール・ベイリスAPEC&中国リージョナルプレジデントとのラウンドテーブルが開催された。

 ベイリス氏からはまず担当する地域状況の説明があり、日本は現在グローバルで第4の重要市場として位置付けられており、アストンマーティンの累計生産台数13万台のうち5千台もが日本に輸入されているとのこと。また現状のDBXとスポーツモデルの販売比率は市場ごとに異なるといい、ここ日本では東京圏はスポーツモデル、地方ではSUVつまりDBXの比率が高い傾向にあるという。

 また、筆者の「DBXは707PSから727PSというなんとなくラッキーナンバーのような出力数値となっているが、何か理由はあるのですか?」との問いに対して、今回のSモデルについては単なる出力向上モデルというだけでなく、パワートレイン、シャシー、デザイン、素材選定などを含む総合的な進化を果たしていて、よりシャープで洗練されたドライバビリティと存在感を出した結果での数値である、とのお答えだった。

アストンマーティンのカール・ベイリスAPEC&中国リージョナルプレジデント

 さらに電動化についての質問には、現在意図的・計画的に開発を進めていて、その先駆けとして位置づけられるのが今回の会場にも持ち込んだ「ヴァルハラ」。パフォーマンス、バランス、エキサイティングさを両立したモデルとして開発しているが、一方でアストンマーティンのユーザーは現在もまだV12であったりV8であったりというエンジン車に対する嗜好が強い方が多いのも事実。ICE(エンジン車)継続の考え方としては、法規制が許容する限り、そしてそうした顧客の需要がある限り続けていく、 というのが答えだという考えを示した。

試乗会会場に置かれたアストンマーティン「ヴァルハラ」
原 アキラ

RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。