試乗記

ホンダ新型「CR-V」はどう進化した? 新たなパワートレーンと熟成した制御を味わう

ホンダの新型「CR-V」を試乗する機会を得た

 燃料電池モデルを除いて一度は日本から姿を消していた「CR-V」だが、初代が1995年に誕生してから30年という節目の年に、6代目の日本復活が発表された。世界中の道で鍛えられ、愛され続けている最新のCR-Vは、いったいどのような進化を遂げているのか。ようやく一般道での試乗が叶った。

「SUVだから……」という言い訳やあきらめをすべて排除し、相反する“ギャップの両立”をやってのけようじゃないか! そんなコンセプトで開発が進められたという最新のCR-V。それはデザインにもすでに表現されている。

試乗したのはe:HEV RS BLACK EDITION。ボディカラーはCR-Vでは初設定となるスレートグレー・パール
e:HEV RS BLACK EDITIONのボディサイズは4700×1865×1690mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2700mm、車重は1830kg、最小回転半径は5.5m、最低地上高は210mm

 エクステリアデザインの狙いは、スポーティなのに予想を超える広さと機能性。Aピラーを引いてノーズを長くとり、薄型のマルチファンクションライトが存在感を強めた端正なフロントマスク。先代より40mmプラスのロングホイールベースでバランスよく伸びやかなシルエットと、10mm拡大されたトレッドで路面にしっかりと立つ力強いスタンスがスポーティさを感じさせる。水平基調の中にもメリハリのある造形が豊かさを表し、筋肉質でありながらスーツが似合うような、知性あふれるアスリートといった佇まいだ。

 グレードは、ベーシックな「RS」のほかに「RS BLACK EDITION」があり、フロントとサイド、リアのロアーガーニッシュ、アウターハンドルがピアノブラックに変わる。アルミホイールもダーク切削クリアになるので、さらに上質感とスポーティ感が高められている。

e:HEV RS BLACK EDITIONの19インチアルミホイールはダーク切削クリア×ベルリナブラック仕様。装着タイヤはミシュランの「Latitude Sport 3」でサイズは235/55R19
イグニッションをOFFにするとフィンが閉じる「シャッターグリル」を完備。駐車時に見えるラジエターを隠すことでよりカッコイイ見栄えを追求している

 インテリアはエクステリアと協調してつくられており、メーターバイザーのラインとエクステリアのキャラクターラインがリンクしていることに気づく。ピアノブラックとシルバー加飾で上質感を演出しつつ、フロントフードの見え方など細かな配慮をしたことで、見たいところがしっかり見える、安心・快適な運転を叶える視界の良さを実現したという。コンソールトレイやカップホルダーの使いやすさにもこだわり、計4つとなるUSBは前席だけでも合計60wでノートPCの充電にも便利。ディスプレイオーディオにはGoogleが搭載され、スマホと同じようにナビ、アプリ、エアコン操作などが使えるのも嬉しいところだ。

運転席は8WAYパワーシート、助手席は4WAYパワーシートで、いずれもシートヒーターとベンチレーション(送風)機能を備えている
後席は8段リクライニング機構と前後スライド機構を完備
ラゲッジスペースは後席使用時でもゴルフバッグ4個が積載可能と収納性は抜群

 また後席の足下を先代より16mm拡大し、8段階のリクライニング機構と前後スライド機構を採用することで、大人でもゆったりとくつろげる広さと機能を両立。4WDモデルなら後席左右のシートヒーターも標準装備となり、「RS BLACK EDITION」は電動パノラミックサンルーフが標準装備で、頭上の開放感が心地いい空間だ。

 そして大容量ラゲッジの使いやすさも見どころの1つ。後席使用時でもゴルフバッグ4個が積載可能で、6:4分割で後席を倒すと低くてほぼフラットの広大なスペースが出現。前輪を外せる自転車なら2台積載可能となる。ハンズフリーアクセスパワーテールゲートで、両手が塞がっていても開閉できるほか、予約クローズボタンを押してからクルマを離れると、自動で閉まる機能もCR-Vとして初搭載されている。

 パワートレーンは直列4気筒2.0リッター直噴アトキンソンサイクルエンジン+2モーター内蔵電気式CVTの「e:HEV」のみだが、ホンダ初となる「ロックアップLow」が追加されたことにより、登坂路など低速でも必要に応じてエンジン走行ができるようになった。これは元々は北米や欧州でのトーイング(牽引)需要に応えるものだが、日本でも山道など低速での高負荷時に効率よくエンジンを使うことにより、数%の燃費アップが期待できるという。なお、RSには2WD(FF)と4WDが設定されるが、RS BLACK EDITIONは4WDのみとなる。

2モーター内蔵電気式CVTが大きく進化している
新たに「ロックアップLow」クラッチが追加された(写真左側)
「ロックアップHigh」クラッチ
発電用モーター
シームレスなギヤチェンジを実現する制御基板

2WD(FF)の「RS」と4WDの「RS BLACK EDITION」を試乗

 まずは2WDモデルの「RS」で市街地から山道へと向かう。実は試乗会場の駐車場出口ゲートがタイトなので、注意深くゆっくり進もうと思っていたのだが、運転席からの見切りがよく車両感覚がつかみやすいことでスイスイと通過できて驚いた。

搭載するパワートレーンは、最高出力109kW(148PS)/6100rpm、最高トルク183Nm/4500rpmの直列4気筒ガソリンエンジンと、最高出力135kW(184PS)/5000-8000rpm、最高トルク335Nm/0-2000rpmのモーター

 そしてタイヤが転がり出してすぐに、ボディの質感の高さとなめらかな挙動に感銘を受けた。新採用されたリニアシフトコントロールの恩恵もあって、アクセルの踏み込みでこちらがイメージした加速度にぴたりと合うサウンドが気分を盛り上げる。基本的にはモーター駆動を優先しているe:HEVだが、上り坂に差し掛かると時折、エネルギーモニター内に表示されるLowギアのマークが点灯。けっこう頻繁に切り替わってるようだが、その表示を見ていなければ、どこでどう切り替わっているのかが分からないほどシームレスな加減速で、重さやかったるさをまったく感じさせない余裕となめらかさが続く。

時折Lowギアも使用しているがシームレスな切り替えなので乗っていても分からない

 また、視点はSUVらしくアップライトなのだが、走っているうちにスポーティなセダンを操っているような一体感と低重心感に包まれた。これはフロントのサブフレームをアルミダイキャストにすることで約5kgの軽量化を行ない、リアサブフレームにスティフナーを入れて高剛性化しつつ、支持マウントの剛性も15%アップして、リニアな挙動を追求した成果だろう。また、ボディ開口部やフロア結合部に構造用接着剤を入れたというが、その加減がちょうどいいのか、あまりガチガチになりすぎず、スカッと爽快で自分が操っている感覚を残しているところがホンダらしい。

4WDモデルの「RS BLACK EDITION」もキャラクターは変わらない

 続いて4WDモデルの「RS BLACK EDITION」に乗り換えると、市街地を走っている限りは大きくキャラクターが変わらない印象だ。他モデルの中には、2WD(FF)と4WDでは明らかに4WDの方が重厚で上質感を強調するキャラクターに仕上げているSUVもあるが、CR-Vの4WDはしなやかさが失われず、市街地でも扱いやすい。

 このリアルタイム4WDの制御も進化しており、従来のアクセル開度、車輪速、前後Gセンサーに、ヨーレートセンサーやステアリング操舵角センサーが加わり、より緻密なフィードバック制御を行うという。山道に入ると、カーブでのトレースラインが先ほどよりもラクにとれて、まさに一筆書きのようにきれいに駆け抜けていけることに感心した。EPS制御特性をよりリニアな方向へ最適化したり、可変ステアリングギアレシオ(VGR)を採用したりといった改良も効いているはずだ。

高速道路での直進安定性も高い!

 さらに高速道路ではピタッとした直進安定性が得られ、120km/h区間でもリラックスして走行できる。サイドミラー付近のガラスモール構造を変更し、風切り音の発生を抑えたり、吸音材やスプレー式発泡ウレタンフォームなどで車室内侵入音を遮音することで、高い静粛性を実現していることも実感できた。このRS BLACK EDITIONには、レーダーとカメラの広角化でさらに進化した「Honda SENSING」にプラスして、「前方交差車両警報」「車線変更時衝突抑制機能」「車線変更支援機能」がある「Honda SENSING360」が標準装備となっており、車線変更支援機能を試してみた。

「車線変更支援機能」は初心者ほど便利に感じられそうな機能

 ここぞというタイミングでウインカーを半分だけ長押しするという簡単な操作で、周囲の状況を検知して可能であれば、両手をそっとステアリングに添えているだけでステアリング操作を支援してくれる。最初はドキドキしたが、自分で操作するよりも自然でなめらかな車線変更ができ、慣れてくるとすんなり完了。正直なところ熟練ドライバーはわざわざ使うこともないかなという気がするが、高速走行が初めての人など、車線変更が苦手な人もこれなら安心だと感じた。

RS BLACK EDITIONは最先端の「Honda SENSING360」を備える

 またこのCR-Vには、5つのドライブモードと回生ブレーキの強さが4段階に変えられる減速セレクター、アクセルペダルだけで減速もできるBレンジがあり、その気になればシーンごとに細かく切り替えて好みの乗り味に合わせられる。試乗時間内ではじっくり試すことはできなかったが、パワートレーンだけでなくステアリングやエンジンサウンド、メーターを個別にチョイスできる「INDIVIDUAL」モードもあるので、かなりマニアックに乗り味を変えて楽しむことも可能だ。こんな自由なところも、初代CR-Vからの伝統かもしれない。

新型CR-Vは5つのドライブモードと回生ブレーキの強さを4段階に変えられる減速セレクター、アクセルペダルだけで減速もできるBレンジなどを備え、走りの幅も広い

 こうしてさまざまなギャップを両立してきた最新CR-Vは、SUVの進化を見せてくれただけではなく、世界一売れているホンダ車にかける、ホンダのチャレンジスピリッツとプライドが詰まった1台だ。

ホンダのチャレンジスピリッツとプライドが詰まった1台でした

CR-Vをさらに輝かせる純正アクセサリーも登場!

 純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスは、「堂々・威厳」をデザインコンセプトとし、「Tough Premium(タフプレミアム)」と「Urban Premium(アーバンプレミアム)」の2つのスタイリングコーディネートを提案。

 試乗会場にはアーバンプレミアムが展示されていて、「フロントロアースカート」「フェンダーガーニッシュ」「サイドロアーガーニッシュ」「テールゲートスポイラー」「ブラックエンブレム」など、CR-Vに個性とアクセントを付与するアイテムを確認できた。

フロントロアースカート。5万9400円~6万2700円
フェンダーガーニッシュ。2万2000円
サイドロアーガーニッシュ。5万3900円
テールゲートスポイラー。5万8300円
左がテールゲートスポイラー装着状態で、右はノーマル
ブラックエンブレム。「CR-V」が4950円、「e:HEV」が5500円、フロントの「H」マークが7150円
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:高橋 学