試乗記

「スバルアップグレードサービス」を施工した「レヴォーグ」に試乗 乗り味と静粛性はどう変わるのか?

スバルアップグレードサービスで足まわりと静粛性を向上させた「レヴォーグ」に乗った

愛車を長く乗り続けるためのアップグレードサービス

 2026年1月の東京オートサロンで発表され、4月17日に発売された「SUBARU UPGRADE SERVICE」(スバル アップグレード サービス)。これを、一足先に体験してきた。

 このサービスは、スバルが現行モデルの開発で得た知見や技術、そしてパーツを、旧年式の車両や同型車にインストールするという、文字通りのアップグレードサービスだ。その狙いは、「愛車との生活を安全に長く愉しむ」こと。1台のクルマを大切に乗り続けることはエコであり、これをメーカー自らが後押ししてくれるという、時代の流れに乗ったサービスである。

 その内容は「スバル ウルトラスエード パッケージ」「スバル ダイナミックモーションパッケージ for レヴォーグ」「スバル コンフォートクワイエットパッケージ for レヴォーグ」の3つ。

 ここに先行発売されているレヴォーグ用「Active Damper e-tune」と、BRZ用「SPORT Drive e-Tune」のソフトウェア・アップデートサービスが加わり、現状は全部で5つのプログラムが展開されることとなった。

「スバル ウルトラスエード パッケージ」はVM系レヴォーグ(2014年6月~2020年10月)とVA系WRX S4(2014年8月~2021年3月)が対象。価格はステアリングホイール&シフトノブセットが8万5800円、ステアリングホイールのみが6万6000円、シフトノブのみが2万3100円
「スバル ダイナミックモーションパッケージ for LEVORG」はVN系レヴォーグ(2020年10月~)が対象。WRX S4と同様のピロボールブッシュを用いたフロントサスペンションロアアームや湾曲形状のタイロッドエンドへの変更に加え、車体各部のボルト締結力最適化や車両姿勢の補正を実施する。価格は13万2000円
「スバル コンフォートクワイエットパッケージ for LEVORG」はVN系レヴォーグ(2020年10月~)が対象。前後ドアやルーフ、ホイールハウスなどの車体各所に吸音材・制振材を追加し、車内へ入り込む騒音や雨音を抑え、オーディオのサウンドもクリアになる。価格は8万300円

 まず、ウルトラスエード パッケージの概要をお伝えすると、VM系レヴォーグ(2014年6月~2020年10月販売モデル)と、VA系WRX S4(2014年8月~2021年3月販売モデル)を対象としたインテリアのアップグレードサービスとなる。

 具体的には「ダークネイビー」、もしくは「バーガンディ」カラーのウルトラスエードを施したステアリングとシフトノブをラインアップ。発売から12年近くが経過しようとしている初代レヴォーグとWRX S4の操作系がリフレッシュできるだけでなく、使い心地や見た目をアップグレードすることができる。

 施工はディーラーでのAssy交換で、エアバッグやスイッチ類はユーザーのパーツが移植される。下取りや表皮の張り替えができればよりサステナブルだが、劣化状態が異なる操作系パーツの再利用を考えれば、新品になるAssy交換の方が効率的か。ちなみにウルトラスエードはリサイクル原料を使用した人工レザーだから、その点はエコだと言える。

 当日は用品装着車はなく、パーツ単体を見るだけにとどまったが、その質感はWebサイトで公開されている写真よりシックだった。ステアリングなどはグリップ部分だけ着色するのもアリだと思ったが、STIパフォーマンスパーツにはブラックの落ち着いたトーンもラインアップされているから、少し派手めな装いも悪くはないと言えるだろうか。各ディーラーに展示されるのかは不明だが、東京・恵比寿の「SUBARU STAR SQUARE」であればこれを確認できるから、気になる方はぜひ実物を見て検討してほしい。

ダークネイビー(左)とバーガンディ(右)の2色を設定

レヴォーグの乗り味を変えるダイナミックモーションパッケージ

 メインディッシュは、ダイナミックモーションパッケージ for レヴォーグと、コンフォートクワイエットパッケージ for レヴォーグの試乗だ。試乗車にはレヴォーグ STI SPORT(2.4リッター)が2台用意され、アップグレード施工車と、標準車でその違いを乗り比べた。

同じスペックのレヴォーグ2台を乗り比べ
アップグレードサービスのうち、ダイナミックモーションパッケージとコンフォートクワイエットパッケージを施工したレヴォーグ STI Sport R-Black Limited(536万8000円)。ボディサイズは4755×1795×1500mm、ホイールベースは2670mm、車両重量は1640kg。ブラック塗装+切削光輝の18インチアルミホイールには横浜ゴム「BluEarth-GT AE51」(225/45R18)を装着。パワートレーンは、最高出力202kW(275PS)/5600rpm、最大トルク375Nm(38.2kgfm)/2000-4800rpmを発生する水平対向DOHC 2.4リッター直噴ターボ“DIT”エンジンとリニアトロニックCVTを組み合わせる、常時4WDモデル
レヴォーグ STI Sport R-Black Limitedのインテリア。11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムやSTIロゴ入りの12.3インチフル液晶メーター、レッドステッチ入りの本革巻ステアリングホイールとシフトレバーなどを標準装備。オーディオにはハーマンカードンサウンドシステム(専用10スピーカー[フロント6+リア4])を採用している

 ダイナミックモーションパッケージは現行VN系レヴォーグを対象としたハンドリング向上メニューで、パーツとしてはWRX S4に使われるフロントサスペンションのロワアームと、STIコンプリートカーでも採用される湾曲形状のタイロッドエンドがインストールされる。

 さらにフロント側ではエンジンマウントとクロスメンバー、クロスメンバーとボディ、リア側ではトレーリングリンクとリアハウジング(ナックル)を結ぶボルトの締結力を最適化。これまでライン装着による中央値だった締結トルクを、設計上限値まできっちり締め直したという。そして最終的に、ホイールアライメントが補正される。

WRX S4と同様のピロボールブッシュを用いたフロントサスペンションロアアームや湾曲形状のタイロッドエンドに変更するとともに、一部のボルトの締結力を上限値まで締め直すなどの施工が行なわれる

 その違いは、常用域からはっきりと現れた。試乗車はSTI Sport仕様だったから、標準車でも十分にスポーティだ。ドライブモードセレクトで「Sport」や「Sport+」を選べば、ダンパー減衰力や電動パワステ、4WDの制御がよりシャープになる。

未施工車でも十分にスポーティな走りを味わえる

 しかし、シャシーそのものがブラッシュアップされたダイナミックモーションパッケージ車両は、ノーマルモードから明らかに操舵応答性がリニアだ。ハンドルの切り始めからクルマの動きを体で感じることができ、ライントレース性がとてもいい。

 気になる乗り心地は、全域ではないが硬さを感じる場面がある。路面によってはコツコツとした入力が、ステアリング越しに伝わってくる。また、ダンピングを高めると、不整地や段差で、ホイールがばらばらに動く感じが少し出ていた。街中では「Sport」や「Sport+」モードだと乗り味がとんがり過ぎて、代わりに「Comfort」モードが、すこぶる快適になった。

クルマの動きを体で感じられる

 おそらくこれは、サスペンションの取り付け剛性に対して、標準タイヤの剛性がわずかに不足しているからだろう。逆に言えばもう少しキャパシティの高いタイヤを履かせることができるはずで、そうすればより質感の高い操舵フィールや応答性が得られると思う。

 また、乗り心地に関しては、セダンのパーツをステーションワゴンにインストールした差が出てはいるけれど、ゴムブッシュがもう少しなじめば、突き上げも緩和されるはずだ。そう、新品のロワアームに替えることで、ゴムブッシュも新品になっているのだ。ちなみに走行距離は標準車が3107km、施工車が3880kmと、どちらもようやく慣らしが終わったくらいの車両だった。

 感心したのはリアサスの安定感で、ここには締結ボルトの締め付けトルクアップ効果がみて取れた。特に駆動をかけた際のまとまりがよく、リアハブの動きが安定するのが体感できたことには驚かされた。GRなどは締結ボルトそのものをアップデートさせているが、「まずは基本を高めることから」始めたのも、実にスバルらしい。

 総じてSTI Sportを選ぶユーザーに、このピュアなハンドリングはおすすめできると感じた。

高速道路も快適

静粛性を高めるコンフォートクワイエットパッケージ

 最後はコンフォートクワイエットパッケージだ。

 車体のルーフ、フロントドアパネル、リアドアパネル、リアフロアパン、リアゲートトリム、リアクォータートリムとクルマ全体に吸音材および制振材を最適配置することで、ロードノイズや風切り音、雨天時のルーフに当たる雨音までも防振・防音できるメニューである。

 果たしてその効果はというと、「人それぞれ」というのが偽らざる感想だ。当日撮影をしてくれたカメラマンは、その静粛性に大いに感動していた。特に後部座席の快適性が、大きく上がったとコメントしていた。

 対して筆者は、むしろタイヤのパターンノイズが際立ったように感じた。気になる周波数帯は、人それぞれ。開発陣は、あえてトノカバーを外してまでその違いを体感させようとしてくれたけれど、ダイナミックモーションパッケージとの併用で、その効果を大きく感じることはできなかった。

「どの音」を気にするかで印象が変わる

 面白かったのはルーフの比較だ。標準車の屋根を叩いてみると“コンコン”と響くのに、防振材を貼りつけ、吸音材を強化したルーフだと、その音が“コン”と一発で減衰される。

ルーフを叩いたときの音の減衰がとてもわかりやすかった

 試乗では小雨こそ降ったが、残念ながら雨音の違いまでは感じ取れなかった。ちなみに降雨時を再現した車内騒音比較テストでは、標準車の46.5dBに対して、施工車の室内騒音は43.1dBだったという。騒音レベルで3dBの差は、結構大きい。

 総じてちょっと欲張りな試乗には、もう少しだけ熟成が欲しいと感じる部分もあった。

 しかしその努力は確実に効果として現れていたし、何より愛車に長く乗るためのリフレッシュ&アップデートプログラムを、メーカー自らが提案してくれるのは素晴らしいことだ。

 そしてこれからもスバルには、もっともっと個性あふれる、そしてサステナブルなアイデアを提案してほしいと感じた。

ハンドリングの差は歴然。遮音性については、短い試乗では差が現われにくかった
今後のさらなるアップデートメニューにも期待したい!
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:中野英幸