試乗記
Kia、EVバンシリーズ「PV5」の生産&テスト現場を見学 試乗もしてみた
2026年8月12日 10:38
多彩なラインアップがある「PV5」
2026年5月15日にKiaは日本ディーラー第1号店となる「Kia PBV東京西」をオープンした。そこではKiaのお膝元となる韓国や欧州市場ですでに販売を開始しているEVバンシリーズの「PV5カーゴ」という2人乗り商用バンと、「PV5パッセンジャー」という5人乗り乗用ワゴンを販売する。
今回はその「PV5」の生産&テスト現場を韓国で拝見させていただくと同時に、Kiaの本拠地で試乗もする。日本にはまだあまり存在しないEVのバン&ワゴンという新たなジャンルはどんな世界を見せてくれるのか?
「PV5」にはカーゴとパッセンジャーがあることはご紹介したとおりだが、実はそのカーゴの中でもロングタイプ、コンパクト、ハイルーフなど多彩なラインアップがある。このほかキャブ付きシャシーに荷台を取り付けるトラックやパッセンジャー、さらにはセンターに車椅子をセット可能なWAV(Wheelchair Accessible Vehicle:車いす仕様車)なども準備。要望によってはキャンピング仕様だって可能。つまり「PV5」はユーザーニーズに合わせやすいモジュール式で変幻自在なクルマというところが魅力の1つ。要望次第ではそれ以外のモデルを頼むことだってできるかもしれない。
そんな「PV5」は、ファソン工場「AutoLand Hwaseong」内に新設した「EVOプラントEast」という最新鋭の工場で生産が行なわれている。その施設内に入るととにかく人がいない。稼働しているのはロボット(261基)ばかりといった印象で、要所にわずかに監視員がいるくらいというのが特徴的。また、車体を天井から吊り下げて移動する光景はなく、21基のAGV(Automated Guided Vehicle:自立走行ロボット)によって地下を車両が通っていくところが独特だ。
溶接工程は100%自動化。ボディ内側の内装組み付けも、ドアヒンジやフェンダーを組み込むところもロボット。人の負担はほとんどなく、年間10万台の生産能力を誇るという。今後もこうした「EVOプラント」を加速するべく建設中で、そこでは「PV7」や「PV9」といった車種を制作予定。それが完成すると、トータルで年間約25万台の生産能力となるようだ。
続いて研究開発拠点の「ナムヤン研究所」を拝見させていただくことに。敷地面積は約100万坪という巨大な規模で、そこでは高速周回路を同乗走行させていただいたが、あらゆるジャンルのクルマが一斉に走っているなど、実際の環境に近い状況でテストしているところがおもしろい。とはいえ、バンクもあり高速周回テストも可能で、それも同時に行なっているのだから凄い。
BEVにとって大切な温度変化に対応するためのテストも拝見。そこでは外気温-40℃から60℃まで耐久試験を実施しており、暖房テストなども行なっていた。今回は-20℃の世界を体験させていただいたが、バッテリ温度も15分以内に26.5℃まで回復していた。
次に見学した空力試験場では、直径8.4mの巨大ファンから強風を受けつつCd値を計測するシステムで、床面も動かすことで最高200km/hの走行状況を再現できるようになっている。ちなみに「PV5」のCd値は0.28と、なかなか良い数値を実現している。
手足のように操れるドライバビリティを備えていることが好感触
このように新たな体制で作られてきた「PV5」はどんな仕上がりなのか? まずはエクステリアを見てみると、色々と考え抜かれているプロ仕様の道具感が滲み出ている。
例えばLEDヘッドランプは外部からの損傷リスクを最小限に抑えているし、バンパーは3分割構造で破損時の交換が容易であるように考えられている。それはリアまわりも同様だ。また、ドライバーからの視界がかなり開けていることも特徴的。一段上に座らされる格好となるドライバーズシート、そして低いベルトラインによって、かなり見切りがよく扱いやすく仕上がっている印象がある。ステアリングのキレ角も大きく取り回しがしやすいところも好感触だ。
120kW/250Nmを発生するモーターは出力としては必要十分といった感覚がある。決して発進加速が目覚ましく速いというタイプじゃないが、アクセルに対してリニアに応答すること、そしてブレーキの扱いやすさなど、手足のように操れるドライバビリティを備えていることが好感触だった。これで一充電航続可能距離は「PV5カーゴ(71.2kWh搭載モデル)」で528km、「PV5パッセンジャーモデル(71.2kWh搭載モデル)」で521kmを実現。これならまずまずの実用性ではないだろうか。
今回の取材で訪れたKiaの歴史が紹介されている「VISION SQUARE」では、Kiaの創業者が日本で自転車づくりを学び、その後マツダからの技術支援を受けながら、さまざまなクルマを展開。1980年代には「ボンゴ」を大ヒットさせ、韓国におけるバンの代表格となったことも拝見した。
そんな歴史がいまこの「PV5」に継承されたとなるとなかなか感慨深い。それが日本に来るとなれば、まるで鮭の遡上である。いったいどんな卵を日本にもたらしてくれるのか? ビジネスユースだけでなく、パッセンジャーやキャンパーなど、さまざまな方向性で僕らを楽しませてくれることを期待する。






















