試乗記

アウディの新型「Q3」試乗 ベーシックな「Q3 TFSI」、その出来栄えは?

新型「Q3」に試乗

試乗車はベーシックな「Q3 TFSI」

 2033年までに内燃機関の生産を段階的に終了し、2026年以降のニューモデルを全てEV(電気自動車)にすると発表していたアウディが、そのロードマップを修正し始めたのは2年ほど前。2025年は「エンジン車生産の終了時期を明言しない」とゲルノート・デルナーCEOが方針を見直し、同時期に第3世代となるQ3/Q3スポーツバックが発表された。つまりSUVーCセグメントにおける内燃機関担当は、まだまだQ3として現役続行だ。ちなみにピュアEVとしては、「Q4 e-tron」が将来を見据えている。

 そんなアウディ Q3のパワーユニットは、欧州だと1.5 TFSI(48Vマイルドハイブリッド)、2.0TFSI(ガソリンターボ)、2.0TDI(ディーゼルターボ)、e-hybrid(1.5ガソリンターボ+ハイブリッド)の4種類。これが日本仕様になると、現状1.5 TFSIを搭載するFWDモデルと、2.0TFSIを搭載するquattoro(4WD)の2ラインアップとなる。残念ながらTDIは継続されない見通しだ。

 今回試乗したのはベーシックモデルとなる「Q3 TFSI」で、オプションとしてS Lineパッケージが装着されていた。パワーユニットは現行A3にも搭載される1.5リッター直列4気筒ターボのマイルドハイブリッドで、その出力は150PS/250Nmを発揮。7速Sトロニックを介して前輪を駆動する、至ってシンプルなエントリーモデルだ。

 ボディサイズは全長が4530mm(先代比+40mm)、全幅が1860mm(同+20mm)、全高が1610mm(同±0mm)と、先代に比べてひとまわり大きくなった。しかし全高据え置きでホイールベースは2680mmのままだから、後席の居住性が大きく変わったとは言えなさそうだ。またトランク容量も488Lと、実は先代(530L)から小さくなっている。最小回転半径が5.4mから5.2mと、先代より0.2mほど小さくなっているのもおもしろい。

今回試乗したのは約6年ぶりにフルモデルチェンジし、2026年5月に登場したコンパクトSUV「Q3」。試乗車はベーシックな「Q3 TFSI 110kW advanced」(550万円)で、ボディサイズは4530×1860×1610mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2680mm
エクステリアはワイド&ローを強調したプロポーションとし、八角形のシングルフレームグリルからテールランプに続くシャープな水平のショルダーライン、初代quattroを彷彿とさせる力強いブリスターフェンダーを特徴とする
撮影車はS lineパッケージを装着するため、標準の18インチから19インチ(タイヤサイズ:255/45R19)へインチアップされるほか、Q3シリーズすべてのモデルにスポーティさを強調するレッドブレーキキャリパーを標準装備。リアまわりではディフューザーが高めに配されたバンパーを採用
直列4気筒DOHC 1.5リッターターボエンジンは最高出力110kW(150PS)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgfm)/1500-3500rpmを発生。WLTCモード燃費は15.6km/L

 モジュール構造のMQB evoプラットフォームをしてホイールベースを延長しなかったのは、排気系やプロペラシャフト延長のコストを抑えたからか。切れ長のデイタイムランニングライトや横長になったシングルフレームグリルでロー&ワイドな印象を作り上げ、前後オーバーハングを伸ばして存在感を高める。トランク容量を小さくしたのは、バッテリを収めるスペースの確保や、空力性能の影響か。ともあれそこには、「EVへ全振り」するプランを撤回した余波を少し感じた。

前後にスライド可能なリアシートを備え、最大1386Lのラゲッジスペースを確保

クルマとしての素地を味わえる1台

新型Q3の出来栄えは?

 だが、そもそもの動的質感偏差値が高いQ3は、走らせてしまえばこうした小言を軽くうっちゃる。ステアリングを通して伝わる重厚感に、圧倒されてうれしくなってしまう。いまどきの国産車が軒並み軽めの操舵感で快適ドライブを提案しているのと比較すれば、電動パワステの制御は重ためだ。だがシートの作りが肉厚でフィット感が高いから、ハンドルを押して回せば力はいらない。別に飛ばすわけでもなく街中を走らせるだけなのに、「いいクルマに乗ってるな!」という実感がこみ上げてくる。

 インフォテイメントもすっきりしていていい。これまでそれぞれ独立していた「アウディバーチャルコクピット・プラス」と、センターディスプレイは一枚の曲面ガラスで「MMIパノラマディスプレイ」として連結。巨大画面をドヤるというよりは、スマートな仕上げとなっているのが都会的だ。

 慣れないのは、がらりと変わったコラムまわりのインターフェースだった。まずシフトレバーがコラム右側に移設された。これによってセンターコンソールからは大ぶりなシフトノブが消えて、スマホとドリンクホルダーの置き場が確保された。

 シフト操作は一番端のダイヤルをアップダウンして操作する。インジケーターが見える分、ダイヤルをひねるフォルクスワーゲン「ID.4」よりは操作しやすいけれど、初見だと正直分かりづらい。MTシフトノブの名残だとはいえ、あれだけATレバーを大きくしていたことには、理由があったのだとつくづく思う。

 ウインカーもシフトノブ同様、短い上下レバータイプに変更されて、ミニマルで効率的なはずなのに、なぜだか操作で一瞬戸惑ってしまう。雨が降ってワイパー操作も必要になったら、機能が集約されているからさらに混乱しそうだ。慣れれば使いやすくなるのかどうかは、マイナーチェンジのときに分かるだろう。

インテリアはドアからダッシュボードまでを結び、ドライバーとパッセンジャーを包み込むソフトラップデザインがコクピットを形成。11.9インチスクリーンのバーチャルコックピットプラスと、12.8インチのMMIタッチディスプレイで構成されるMMIパノラマディスプレイを採用する
ステアリングホイールには、アウディブランドで初めて2つの新しいステアリングコラムレバーを採用。右側のレバーはシフトセレクターとして機能し、左側のレバーではターンシグナルとライトコントロール、ワイパー操作が行なえる

 大柄なボディに1.5リッターターボの組み合わせはわるくない。スタートダッシュや追い越しの瞬間といった、瞬発的なアクセル操作に対するパワートレーンの反応は少し雑だが、デュアルクラッチが噛み合えば、グッと前に出ようとしてくれる肉食感はヨーロッパ的。絶対的な加速力は平凡でも、打てば響こうとしてくれる。

 可変ジオメトリータービンを駆使するターボは、常用域で粘りを利かせ、少ないアクセル開度でも堅実に走ってくれる。またアクセルオフではタイヤがよく転がって、かなりこまめに気筒休止もしてくれる。マイルドハイブリッドの活躍をハッキリ意識することはできないけれど、微妙なアクセル操作時の追従性や、滑かなトルクの出方、コースティングからの復帰の自然さにはモーターが貢献している気がする。総じてEV感はまったくないけれど、「EA211 evo2」ユニットはイケイケなアウディには似つかわしくないほど実直なパワーユニットに成長していた。

大柄なボディに1.5リッターターボの組み合わせはわるくない

 こうしたパワートレーンに対して、足まわりのレベルも高い。Q3は横置きエンジンゆえにフロントサスはストラットだが、そのダンパーにはアウディのコンパクトSUVとしては初採用となる「2バルブ式電子制御ダンパー」が標準搭載されており、これが実にいい働きをしている。

 これを先んじて使ったフォルクスワーゲン「パサート」ほどしなやかな減衰特性でないのは、Q3の重心高と、スポーティなキャラクターを考えてのことだろう。伸び側と縮み側を別々に電子制御する姿勢制御はどっしりと角がなく、S lineの19インチタイヤをみごとにバネ下で裁き切る。今回はクワトロモデルに試乗することはできなかったが、このダンパーがあればFWDモデルでも大柄なボディを安定させられる。ちなみにそのサプライヤーは、われらがカヤバだ。

足まわりのレベルも高いと感じた

 総じて第3世代となったアウディ Q3のベーシックモデルは、その強そうな見た目に反して真面目なモデルだった。税込み価格が550万円というのもかなり戦略的。2万5600個のマイクロLEDで、路上に車幅のガイドラインを示す「オリエンテーションライト」や、「凍結警告プロジェクション」を投影するデジタルマトリックスLEDヘッドライト(28万円)には興味津々だけれど、オプションを欲張らず“素”で乗り倒せたら素敵だと思う。つまりそれだけ、クルマとしての素地を味わえる1台である。

オプションを欲張らず“素”で乗るのもまた一興
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:安田 剛