試乗記
アウディ新型「A6」の進化したエアロダイナミクスとMHEV plusがもたらす乗り味とは?
2026年8月14日 09:06
9代目を迎えたA6シリーズ
1968年登場の「アウディ100」を元祖として、名称をA6と変えつつ9代目となった新型A6が日本導入を果たした。ステーションワゴンのA6アバントも同時に導入されている。どちらも、デザインからパワートレーン、インターフェースに至るまでプレミアムなアッパーミドルクラスにふさわしい進化を遂げている。
デザインは、1997年登場の5代目A6で初めて採用されたというクーペのようなエモーショナルな要素を継承。A6伝統のフォーマルな品格を持ちながら、どこか表情豊かなエレガントさが光っている。全長5000mmのボディはロングノーズと2925mmのロングホイールベースに加え、全幅が1875mmと先代より10mm縮小し、全高は先代より15mmアップに抑えた1465mmと低くスマートなボディラインが印象的。ルーフラインはリアエンドのエッジぎりぎりまで流れ落ちるような、完璧なプロポーションを成形している。
アバントも全長、全幅は変わらず、全高は先代と同じ1485mmでルーフラインはリアに向けてさらに鋭く傾斜。室内および荷室空間を確保しながらも、ボクシーなリヤエンドではなくデザイン性にこだわったという。それでも3代目の「アウディ100」で、当時の量産セダンとして世界最高レベルの空力性能、Cd値0.30を実現していたDNAは受け継ぎ、セダンでCd値0.23、アバントでも0.25という数値を達成。これはアウディの内燃機関モデル史上、最も優れた空力性能となっている。
そしてフロントマスクがまた一歩、未来的に進化したと感じる。縁取りのない大型のシングルフレームグリルは、エアインテークを最大限に活かしたワイドな形状となっており、シャープなデジタルマトリクスLEDヘッドライトや、サイドにまで回り込むように配置されたエアカーテン、緻密さを感じさせるフロントスポイラーが低くワイドなスタンスを強調。押し出しすぎない、ちょうどいい迫力とプレステージ感が目を惹く。
デザインの良さに加え、新型A6では高解像度ライティング技術も注目だ。デジタルマトリクスLEDヘッドライトには48個のLEDセグメント、デジタルOLEDリヤライトには左右それぞれ198個のセグメントが装備されており、8通りのライティングパターンから光り方が選択可能。試乗車はまるで火花がパチパチと弾けるような動きのある光り方をしていた。
またクルマに近づいたり離れたりする際に、ライトが点灯して出迎えと見送りをしてくれるカミングホームおよびリービングホームでは、前方に投影される3パターンのアニメーションが設定されている。これは周囲の人だけでなく、例えば自宅に到着時、壁や車庫のシャッターを閉めるとそこに投影されることでオーナー自身も楽しめる。走行性能とはまた別のところでもオーナーのさまざまなドライブシーンを彩り、愛車としての満足度を高めるような遊び心があるのは好印象だ。
室内は、アウディらしいコクピット感のあるスペースを継承しつつ、11.9インチのバーチャルコクピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイ、さらに助手席側にも10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイが全車に標準装備されており、新世代を感じるデジタル空間に仕上がっている。
また、見上げれば、オプションとなっているPDLC(ポリマー分散型液晶)技術を用いたスマートパノラマガラスルーフが開放的な視界をもたらす。物理的なシェードではなく、電圧操作でガラスを透明から不透明に瞬時に切り替えが可能。セダンでは6セクション、アバントでは9セクションに分割して個別に制御ができるという。取材時は猛暑だったが、触ってみるとそれほど熱さはなく、頭上スペースにもゆとりが確保されている。エアコン吹き出し口の幅が細く、やや低い位置に配置されているところは気になったが、シートの包まれるようなクッション性とサポート性がよく、走りへの期待が湧いてきた。
パワートレーンは、セダンとアバントそれぞれに2タイプずつ設定された。150kW(204PS)を発揮する2.0リッターディーゼルとなるTDI quattroと、200kW(272PS)を発揮する2.0リッターガソリンターボのTFSI quattroで、最新の48VマイルドハイブリッドシステムであるMHEV Plusシステムを搭載し、7速Sトロニックを組み合わせる。モーターのブーストパワーは最大で18kW(24PS)と230Nmの追加トルクで、低速時や駐車時など部分的にはモーターのみでの走行も可能としている。
ワインディングで試乗してみた
試乗したのはA6アバントTFSI quattro 200kW。オプションのS-Lineパッケージが装着されており、内外装にスポーティな要素が加わるほか、スポーツサスペンション、スポーツシート、ステンレスペダルカバーといった走りに関わる部分も変わっている。
足下には、オプションとなる10スポークツイストデザインのアルミホイールに、255/40R20のタイヤを装着。そのためか、最初に1名乗車で走り出すとやや接地感に硬さを感じたが、シルキーな軽やかさと、どこまでも均等にたっぷりと余裕を感じさせてくれる上質な加速フィールに心を奪われた。
4WDを意識させる重厚さよりも、ボディ全体の一体感が高いと感じる。標準タイヤは18インチなので、乗り心地を重視するなら標準の方が良さそうだが、その後3名乗車になると少し落ち着きが出てきて、走行モードを「コンフォート」にしてみるとしっとりとしたフラットライドが味わえた。
この新型A6では、トーションバー、ステアリングギア、コントロールアームブッシングなどの構成部品を先代より硬めに設計することにより、ステアリングレスポンスの向上と正確でシャープなハンドリングを目指したという。山道に入ってタイトな連続カーブをこなしていくと、その意図がよりクリアに見えた気がした。カーブに侵入する前に切った舵角がピタリと決まり、足はじわりと荷重をのせて最適なところで堪えてフラットに戻してくれる。
スポーツモードに切り替えるとさらに挙動はシャープになり、速度がどんどんのっていく感覚で一般道では制限速度内に収めるのに苦労したほどだ。サスペンションは前後とも5リンク式となるが、試乗車にはオプションのアダプティブエアサスペンションが装着されており、車高や減衰力の調整を行なってくれる。
さらに、試乗車には装着されていなかったが、オプションでAWS(オール・ホイール・ステアリング)が設定されており、選択すると最小回転半径が通常6.0mのところ、5.4mまで小さくなる。これなら市街地の狭い道もさらに走りやすくなりそうだ。
また今回は試せなかったが、運転支援システムも進化。高速道路での車線変更アシスト機能が追加され、パークアシストプロでは車両が直前に通ったルートを最大50mまで正確に戻る操作を自動で行なう「リバースアシスト」や、過去の駐車操作を最長200mまで記憶し、以降は車両が自動で駐車を行なう「メモリー機能」など、実用性を高める機能が充実している。
アバントということで荷物の積載性も気になるところだが、通常で466L、4:2:4分割の後席を倒すと最大1497Lの容量を確保。ほぼ四角に近い空間で、左右に大きめのポケットもあって収納しやすそうだと感じた。新型A6は、時代の先をゆくカッコよさと伝統的な品格、遊び心までを併せ持ち、内燃機関らしさが残りつつ電動化も取り入れた走りのよさ、快適性も申し分のない1台だ。



























