試乗記

スズキ「ジムニーノマド」にオン&オフロード試乗 シリーズに加わった5ドアの乗り味は?

スズキ「ジムニーノマド」

ようやく乗れたジムニーノマド!

 2025年1月30日に発表されたジムニーノマドは待望の5ドアモデルということもあってか、正式発売が4月3日だったにもかかわらず、発表からわずか4日後の2月3日には受注停止になるほどの大人気だった。結果として5月30日には増産を発表。目標販売台数1200台に対し、7月から3300台に増産することになった。

 けれども納車待ちは相変わらずであり、ユーザーファーストなスズキは広報車両を用意しないという体制に。結果としてメディアは乗る機会がないまま本日に至ったのである。まあ、厳密にいえば近しい仕事仲間が納車されたり(見ただけだが)、足まわりメーカーのテインが開発車両として持っていたクルマを中国の悪路で試乗させてもらったりと、なにかと触れていたこのクルマ。果たして今回の試乗ではどんな顔を見せてくれるのか?

元ジムニーオーナーの橋本洋平がジムニーノマドに試乗

 少し余裕が出たことで準備された広報車は、7月1日から発売が開始されたという一部仕様変更をしたものだった。主な変更点はまず、デュアルセンサーブレーキサポートがIIへと進化したことだ。自動二輪や自転車を検知するようになったほか、車線逸脱抑制機能が標準装備に。また、パーキングセンサーをリアに追加している(AT車)。さらに快適性も高まり、アダプティブクルーズコントロールはAT車が全車速追従機能付きに(以前は40km/h以上から)。MT車は30km/h以上から走行中に追従できる。加えて、メーカーオプションのディスプレイオーディオを選択し、別途のコネクト契約を申し込めばスズキコネクトに対応可能で、万が一の際に役立つSOSボタンや便利なリモート機能を使えるようにもなる。細かなところではマルチインフォーメーションディスプレイのカラー化で視認性がより高くなったこと、そして新色のグラナイトグレーメタリックが追加されたこともポイントだ。

 それ以外は以前見た5ドアのジムニーノマドと基本的には変わらない。ホイールベースがベースとなる3ドアのジムニーシエラより340mm延長され2590mmとなったこと。短くなったフロントドアや新たに与えられたリアドア、さらにはメッキ加飾が行なわれ上質感が備わったルックスなど、どこを見てもジムニーシリーズ最強の装備が与えられている感覚にあふれている。

 中身は3ドアのジムニーシエラのオフロード性能を継承するためにさまざまな改良が行なわれている。まず、ラダーフレームはセンターフレームを延長し、センターにクロスメンバーを追加。ATは高強度化が施され、後部プロペラシャフトは長さおよび直径を拡大。フロントブレーキディスクはソリッドからベンチレーテッドディスクになった。さらにおよそ100kgの重量増に対応するためにバネ&ダンパー、そしてスタビライザー径を拡大している。

ジムニーノマドは「FC」のみのワングレード展開で、価格は5速MT車、4速ATともに292万6000円。「本格的な悪路走破性を持つ5ドアコンパクトクロカン4×4」をコンセプトに、悪路走破性を維持しつつ、リアドアの採用やホイールベースの延長などにより、後席の居住性・快適性を向上し、4人乗りを実現した。ボディサイズは3890×1645×1725mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2590mm。車両重量は5速MT車が1200kg、4速AT車が1210kg
15インチアルミホイールにはブリヂストン「DUELER H/L」(195/80R15 96S)を装着
インテリアはジムニーシリーズの特徴となるオフロードなどでの運転のしやすさや操作性にこだわったデザインを継承
フロントコンソールボックスに後席パワーウィンドウスイッチを追加
マルチインフォメーションディスプレイ(カラー)を新採用
MT車、AT車ともに最高出力74kW(101PS)/6000rpm、最大トルク130Nm(13.3kgfm)/4000rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッター「K15B」エンジンを搭載する

 オンロードを走ってみると、やや発進加速は鈍重な感覚もあるが必要十分な動力性能を実現しているように思える。まあ飛ばすクルマでもないし、これでいいかなというのが正直なところだ。ロングホイールベース化のおかげもあり、ピッチ変化も少なく乗り味もマイルド。直進安定性も少しよくなっている感覚もある。とはいえ、ラダーフレームならではのちょっとヨタヨタした感覚は残っている。それがダメなわけじゃないが、モノコック車のようなシャキッとした乗り味ではない。あくまで癒やし系!? ほどよくユルく、けれども危うさなく走れるちょうどいいサジ加減のように感じる。とはいえ、かつて軽ジムニーオーナーだった身からすればかなりの高級車。どこにも不満を持つようなことはない。

不満を感じることのない癒やし系の走り

 肝心のリアシートに座ってみようと運転を代わってもらうことに。あくまで必要最低限と思えるリアドアを開けアプローチすれば、足を引っかけることもなく乗り込みもできたところが好感触。後席に収まってしまえば空間も割と十分だ。おまけにリアの座面はかなり厚みが増しておりクッション性は抜群。ニースペースもかなり広い。またリクライニングも1段階ついており、リラックスした体勢になれるところも嬉しい。これなら家族で十分に使えそう。ロングドライブでも不満を持つようなこともなくなるに違いない。ただ、ここまで奢ったためリアシートを倒した時には完全に倒れきらない。座面が厚すぎるのだろう。純正アクセサリーでラゲッジにボードを敷き、できるだけフラットにするオプションがあるが、3ドアシエラのようにフラットにはならないところは覚悟しておいたほうがいいだろう。

ジムニーノマドのシート
ジムニーノマドはジムニーシエラに対してホイールベースを340mm延長し、後席乗員の着座位置を50mm後方に移動することでひざ周辺スペースを拡大するとともに、後席乗員間距離を90mmに広げて後席乗員の居住性を向上させている。さらに後席ヒップポイントも20mm高くしているため、後席に座っても余裕がある
リアシートの座面に厚みを持たせたため、リアシートを倒してもラゲッジはフラットにならない。ディーラーオプションとして、ラゲッジ用のボックスが用意されている

ジムニーシリーズとして変わらない悪路走破性も体感

 基本チェックを終え、続いてはジムニーノマドがどうしても失いたくなかったというオフロードコースに来た。走ればアップダウンが激しい林間コースでも、モーグルでも、腹下を擦るようなことなくスイスイと駆け抜けていくから感心する。アプローチアングル36度、デパーチャーアングル47度は変わらず。ランプブレークオーバーアングルは27度から23度へと減少しているが、今回のような整備されたオフロードコースであれば十分なクリアランスということなのだろう。モーグルではブレーキLSDが空転したタイヤを抑えて即座に脱出可能。ヒルディセントコントロールは低速ですり鉢を下り、上りでは停止からの発進で後退しないように絶妙に支えてくれるところもさすがだ。これらをM+Sのタイヤ、そして車高アップさせずにこなしてしまうのだからすごい。さすがはジムニーを名乗るだけある。ノマドというサブネームを与えたとしても悪路を捨てなかったところがこのクルマの素晴らしさなのだろう。

アプローチアングル36度、ランプブレークオーバーアングル23度、デパーチャーアングルは47度を確保。悪路をものともせず走破できる
スズキ「ジムニーノマド」でモーグルコースを走行!

 こうして軽自動車のジムニー、普通車3ドアのジムニーシエラ、そして普通車ロングボディのジムニーノマドという3兄弟が完成した。いずれもまだまだ人気にあふれ、納車待ちはかなり短縮したとはいえ依然として続いている状況がある。それならば、そろそろジムニーというものを例えばMINIのようにブランド化して拡大してはどうかとも思えてくる。悪路をきちんと走れてこそジムニーというのも理解はできるが、それを使う人がどこまでいるのかという疑問があるからだ。かつて軽ジムニーのオーナーだった身でも、オフロード走行をしたのは2年の所有期間のうちで2回。あとはオンロードでほとんど2駆で走っていた。つまり、なんちゃってオフローダーでも十分だったというわけだ。ならば、モノコックボディの都市型ジムニーとかがあって、もうひとつ上の大きさがあってもいいような気もするし、それがEVであっても面白いのかなとさえ思えてくる。eビターラのジムニースタイルとか。アフター業界ではジムニー顔をしたエブリイなんていうのもあるわけだし……。

 少し妄想が暴走したが、いずれにせよジムニーはノマドになっても相変わらず魅力にあふれた1台。もとい、魅力をさらに高めてしまったのは間違いない。ついつい、もう一度欲しくなるクルマだった。こりゃ、売れるわけだ。

ジムニーもシエラもノマドも、それぞれに魅力たっぷり
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛