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写真で見る スズキ「ジムニー ノマド」

ジムニー ノマド。撮影車両のボディカラーはシズリングレッドメタリック/ブラックルーフ

 軽自動車枠に収まるサイズながら本格派クロスカントリー4WDとして人気のスズキ「ジムニー」。現行モデルでは1.5リッターエンジンを搭載した小型車枠の「ジムニー シエラ」もラインアップされ、幅広いユーザーから高い評価を受けている。その人気を不動のものとすべく、さらなる追加モデルが登場する。それが新型「ジムニー ノマド」。多くのユーザーから待ち望まれていた小型車枠の5ドアモデルだ。ジムニーとジムニー シエラが国内生産なのに対し、こちらはインドのグルガオン工場で生産、日本へ輸入されるモデルとなる。目標販売台数は1200台/月。

 ジムニーの歴史を振り返ってみると、ホープ自動車が開発した「ホープスターON型4WD」の製造権を買い取り、それをベースに設計・開発を行ない初代モデルが誕生したのが1970年のこと。以降、軽規格の改定など市場の変化に対応しつつも、ラダーフレームを採用したFRレイアウト、副変速機付パートタイム4WDといった特徴を継承しつつモデルチェンジを実施。サスペンションに関してはリーフスプリングからコイルスプリングへと変更されたものの、リジッドアクスル式を守り続けてきた。

 一方、余裕ある走行性能を求めて軽自動車枠をオーバーし、小型車登録となるモデルも生まれた。その原点となるのが1977年にデビューした「ジムニー8(エイト)」。同社初となる四輪車用4サイクルエンジン、0.8リッター直列4気筒の「F8A」型を搭載。当時の軽自動車枠モデルが搭載していた2サイクル、0.55リッター直列3気筒の「LJ50」型が28PSだったのに対し、こちらは41PSにパワーアップを実現。加えて16インチの大径タイヤ、240mmを確保した最低地上高などにより、優れた走行性能と走破性を確保していた。

 その後も1.0リッターエンジンを搭載した「ジムニー1000」(1982年)、1.3リッターエンジンを搭載した「ジムニー1300」(1984年)とモデルチェンジを行ない、1993年には「ジムニー1300シエラ」が登場。このモデルは輸出モデルを国内向けにアレンジしたもので、当時人気だったグリルガード&大型フォグランプのほか、サイドステップやワイドフェンダーを装着するなど、エクステリアにもこだわった仕様だった。搭載する「G13B」型エンジンは70PSを発生した。後日、AT車が追加されたほか、コイルリジッドへの変更などの進化も遂げている。1998年には「ジムニーワイド」へと名称が変更されたが、その後のマイナーチェンジで再びジムニー シエラへと回帰。そして2018年には現行モデルがデビュー。エンジンはさらなる余裕を実現する1.5リッター直列4気筒の「K15B」を搭載した。

340mm延長されたボディが広い居住空間を実現

 多くのファンが待ち望んでいた5ドアモデルの名称にはサブネームとして“ノマド”が加えられた。この名前で思い出すのが1988年に誕生した初代「エスクード」。1990年に追加となった5ドアモデルの名が「エスクード ノマド」で、こちらもベースの3ドアを延長しステーションワゴンとしての性格を持たせたモデルだった。ちなみにノマドはフランス語で遊牧民を意味する言葉。エスクード ノマドが当初搭載していたエンジンは1.6リッターで最高出力100PS、ボディーサイズは3975×1635×1700mm(全長×全幅×全高)。ジムニー ノマドの詳細は後述するが、かなり近いキャラクターとなったこともあっての命名ではないだろうか。

 ジムニー ノマドは現行のジムニー シエラがベースになる。5ドア化にあたってはラダーフレームのセンターフレームを延長するとともにセンタークロスメンバーを追加することで対応し、ボディサイズは3890×1645×1725mm(全長×全幅×全高)に。ホイールベースは340mm延長され2590mmとなった。これに伴いリアプロペラシャフトの延長および直径の拡大、フロントブレーキのベンチレーテッド化、フロントサスペンションの最適化およびスタビライザー径の拡大、ATの高強度化といったチューニングが行なわれている。

 パワートレーンをはじめとしたハード面はほぼ踏襲。エンジンは1.5リッター直列4気筒DOHCの「K15B」型。吸気側にVVTを採用することにより最高出力75kW(102PS)/6000rpm、最大トルク130Nm(13.3kgfm)/4000rpmを発生する。副変速機付パートタイム4WDを採用し、トランスミッションは5速MTと4速ATを用意。サスペンションは3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング、フロントのみトーションバー式のスタビライザーを装着する。燃費に関しては車両重量が100kg増加していることもあり、WLTCモード燃費はジムニー シエラの15.4km/Lに対し14.9km/L(ともに5速MT車)とわずかに悪化することになった。

 ジムニーならではのオフロード性能については最小回転半径がジムニー シエラの4.9mからジムニー ノマドでは5.7mへと拡大している一方で、最低地上高はジムニー シエラと変わらない210mmを確保。対地障害角に関してはホイールベースが伸びたためランプブレークオーバーアングルがジムニー シエラの28度から25度と減少しているものの、アプローチアングル36度、デパーチャーアングル47度とこちらはジムニー シエラと変わらない数値を確保している。タイヤサイズはジムニー シエラと同じ195/80R15を装着する。

 5ドア化とともに大きく向上したのが後席の居住性と快適性だ。前席との距離がこれまでより50mm離されたことにより膝まわりの空間に余裕が加わったほか、左右乗員間距離も90mm拡大することで居住性を向上。さらにヒップポイントを20mm高くするとともにシートクッションの厚みをアップ、加えて荷室部分のサイドウィンドウにトリムを装着することで上質感も獲得した。乗降性についてもBピラーとシートレッグの隙間を300mm確保するとともに、リアドアおよびBピラーのトリムを面取りすることにより足抜けを向上するといった工夫がなされているなど、ステーションワゴン的な使い方にも十分対応可能な仕様となった。

 また、荷室に関しても荷室床面長はジムニー シエラより350mm延長した590mmに。ジムニー シエラと同じくアクセサリーソケットやユーティリティナット(4か所)が用意されるほか、新たに専用のラゲッジルームランプが用意されている。

 ステーションワゴン的な使い方をするユーザーにうれしいのが先進安全装備の充実。ジムニー シエラでは単眼カメラとレーザーレーダーを使用した「デュアルセンサー」式を採用していたが、ステレオカメラを使用した「デュアルカメラ」式に変更。4速AT車ではアダプティブクルーズコントロールのほか、後退時ブレーキサポートや後方誤発進抑制機能などが追加となっており安全かつ快適なドライブをサポートしてくれる。

 グレードはジムニー シエラが「JC」「JL」と2タイプ用意されていたのに対し、ジムニー ノマドは「FC」1タイプのみ。トランスミッションは5速MTと4速ATが用意されており、価格は順に265万1000円、275万円。ボディカラーは2トーンが「シズリングレッドメタリック/ブラックルーフ」「シフォンアイボリーメタリック2/ブラックルーフ」の2タイプ、モノトーンが「セレスティアルブルーパールメタリック」「アークティックホワイトパール」「ジャングルグリーン2」「ブルーイッシュブラックパール4」の4タイプが設定される。

ボディサイズは3890×1645×1725mm(全長×全幅×全高)。外見はジムニー シエラから大きく変わっていないように見えるが追加となったリアドアはもちろんフロントドア、サイドクォーターパネル、そしてルーフパネルも専用パーツとなる
5ドアモデルだけにリアシートへはスムーズに乗降可能
フロントグリルは5スロットグリルを継承しつつ専用のガンメタリックカラーを採用。メッキ加飾も付く。ヘッドライトはLEDでマニュアルレベリング機構付
バックドアには専用のバッジを装着
先進安全装備はステレオカメラを使用した「デュアルカメラ」式に。衝突被害軽減ブレーキはもちろん4速AT車にはアダプティブクルーズコントロールも標準装備
リアウィンドウは下端までキッチリ開く
右側のコンビランプ内側にリアフォグランプを標準装備
直列4気筒1.5リッターDOHCの「K15B」型エンジンを搭載。最高出力75kW(102PS)/6000rpm、最大トルク130Nm(13.3kgfm)/4000rpmを発生する
タイヤサイズはジムニー シエラと同じ195/80R15。撮影車両はブリヂストン「デューラーH/L 852」を装着。ガンメタリックカラーのアルミホイールが標準となる
インテリアはブラックを基調とした質実剛健なイメージ。オーディオレス仕様が標準だが前後ドアにスピーカーを標準装備する
ステアリングは本革巻。スポーク右側にはアダプティブクルーズコントロールのスイッチが備わる
右側レバーにはフォグランプとリアフォグランプのスイッチが付く
2眼タイプのメーターパネル。中央には燃費や平均車速などを切り替え表示可能なマルチインフォメーションディスプレイを装備
ペダルまわり。4速AT車にはフットレストがつく
4速AT車のシフトまわり
副変速機レバー
5速MT車のシフトまわり。シフト前方の小物入れなど若干4AT車と異なる造形
ステアリングコラム右側のスイッチパネル。ヘッドライトウォッシャーは標準装備
サイドブレーキとセンターコンソール
ドリンクホルダー前方のポケットがあった位置にリアドアのパワーウィンドウスイッチを配置
フルオートエアコンやセンタースイッチはジムニー シエラと共通
フロントシート
フロントドアトリム。グリップ部から後方がだいぶ短くなっているのが分かる
リアシートは厚みが増して座り心地が大幅によくなった。1段階のリクライニングも可能。手前が倒した状態
リアドアトリム。こちらはドアにパワーウィンドウスイッチが付く
ルーフトリム。後席用のルームランプが付くほかアシストグリップも装備
フル乗車時でもラゲッジスペースが確保されるのは5ドアモデルならでは
片側を倒した状態。長尺物の積載に便利
両側を倒した状態。ジムニー シエラでは収納用ボックスを標準装備しフラットな荷室としていたがこちらは容量を重視して段差が残る。販売店装着オプションとしてフラット化が可能なアクセサリーを用意するという
ラゲッジフロア下にはジャッキやツール類を収納
リアクォーターウィンドウまでトリムでカバー
左側にはラゲッジランプとアクセサリーソケットを用意。ユーティリティナットも片側2か所用意されている