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ジムニー5ドアがついに日本上陸! 橋本洋平がスズキ「ジムニー ノマド」を見て、触って、話を聞いてきた

新型「ジムニー ノマド」

 2024年末、富士山を目の前にする撮影場所にジムニー5ドアが登場した。いよいよ日本に上陸したのだと実に感慨深い瞬間だった。というのも、日本車なのに、海外にしかないという状況が続いていたからだ。そもそも軽自動車のジムニーも、普通車のジムニーシエラも日本の湖西工場で生産されるが、そこは受注に生産が追いつかず、5ドアを作れるような環境もない。スズキ関係者に「5ドアもやっぱり欲しいですよね」と話を振ると、毎回のように決まって「いまお客さまにお待たせしている状況が続いているので、5ドアを増やすことはできないですねぇ」という返答が繰り返されていた。当時は納期1年以上が当たり前。他メーカーなら納期は気にせず売れているんだから追加モデルも出してしまえと登場することが多いが、ユーザーファーストなスズキは違っていた。結果として5ドアのジムニーはインドのグルガオン工場で生産され輸入されてくることが決定。かつてエスクードが持っていたノマドというサブネームが与えられ、正式名称は「ジムニー ノマド」となることがその場で発表された。

 実車を見るとたしかにジムニーなのだが、ホイールベースが340mmも延長され2590mmとなったことでかなり大柄になり、高級感が出たかに思えてくる。グリルが塗装された上にメッキも与えられたことがそう感じさせるのだろう。かつて軽ジムニーオーナーだった身からすればまるで別のキャラクターだ。それもそのはず、ジムニー ノマドはインドにおける最上級モデルのみを輸入。4速ATもしくは5速MTを選択することは可能だが、事実上のワングレードというわけだ。だが、現地仕様がそのまま日本に展開されるわけではない。日本に合わせたさらなる改良が行なわれている。

5ドア化したジムニーの正式名称は「ジムニー ノマド」に決定。発売は4月3日と、まだ少し先となる。価格は5速MT車が265万1000円、4速AT車が275万円

 チーフエンジニアの佐々木貴光氏によれば「インド仕様とまず違っているところは、衝突被害軽減ブレーキの有無ですね。インド仕様にはありませんから。そしてジムニーシリーズとしてはじめてデュアルカメラを搭載し、夜間の歩行者対応も可能にしたこと。さらには40km/h以上では一定の車間をキープ可能なACCを搭載することができました(AT車のみ)」とのこと。家族を乗せてより遠くへ行くことが多くなりそうなジムニー ノマドなら、この装備はかなり重宝することになるだろう。

スズキ株式会社 商品企画本部 四輪 B・C商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光氏

 5ドア化にあたってフロントのドアも当然ながら改良が行なわれた。前後方向に切り詰めたドアは、狭いところでも開きやすそうだ。後席のドアは必要最低限という長さではあるが、実用上は十分な感覚であり、乗降時に足をひっかけるようなことはない。中に入れば足下も頭上もしっかりとした空間が保たれ窮屈な感覚はない。身長175cmの筆者にとっては十分な広さ。パワーウィンドウは前後方向に切り詰めることでフェンダーをかわし、しっかりと下がるところが好感触だ。そして何よりシートの厚みがかなり増したところがうれしい。3ドアはシートを倒したときにフラットにすることを主眼に置いていたが、5ドアはあくまでも乗員を大切にしている感覚がある。1段階のリクライニングも可能だからリラックスできそうだ。また、シート背面はブラスチックからカーペットに改められたほか、クォータートリムを与えたことで鉄板がむき出しにならないラゲッジを作るなど、細かなところが進化している。

ホイールベースが延長されリアドアが追加されたことで、フロントドアが短くなった。リアドアの開口部は乗降性を考慮したものとなっており、ただドアが増えただけではなく後席乗員への気遣いもされている
リアシートはジムニー シエラよりもしっかりとした厚みがあり、座り心地はかなりよい。膝まわりも頭上も広さはしっかりとある

 ただ、シートを倒したときにはラゲッジと段差が出てしまうところがネガといえばネガかもしれない。そこでこれまた日本専用の品が用意されているというから面白い。「日本のジムニーユーザーは車中泊で使いたいというお客さまがいらっしゃると思いますので、日本専用にラゲッジボードを準備しています」とはアシスタントCEの柳本樹良氏。足りないものは用品で対応しようという小まわりの効いた開発が行なわれている。

スズキ株式会社 商品企画本部 四輪 B・C商品統括部 アシスタントCE 柳本樹良氏

 走りの面ではシエラよりも100kgほど重くなっている。対してエンジン出力やギヤ比などは共通のようで、そこがノマドの気になる部分だ。ただ、ホイールベースが延長されたことで直進安定性が高まることは約束されたようなもの。果たしてどんな走りの違いがあるのかを柳本氏に伺った。「ショートホイールベースの3ドアは路面のギャップを前後のタイヤがほぼ同時に拾ってしまうなどのネガがあります。そしてピッチングも大きいんです。ロングホイールベースのノマドはそこが改善され、さらには重量が増しているのでゆったりとした走りを展開することができます。フレームのセンター部を延長していますが、センタークロスメンバーや内部的にさらに補強を施し、ねじり剛性を落とさないように開発を行ないました。また、重量増に対応するため、ブレーキはベンチレーテッドディスクに変更しています」とのこと。バネ、ダンパー、スタビライザー、そしてパワーステアリングの設定はすべてノマド専用となっている。「さらにAT車ではパーキングのロック機構を強化しています。これもまた重量増への対応ですね」と佐々木氏は付け足した。

 このように5ドア、そして日本仕様を展開するにあたって変更されたところは実に細かい。ここまで丁寧な造り込みがあるのなら、かなり期待できそうだ。正式発売はまだ少し先だが、少しでも気になるならもう予約を入れておいたほうがいいかもしれない。爆発的人気になることは約束されたようなものなのだから。

新型ジムニー ノマド