インプレッション
ランドローバー「イヴォーク」「レンジローバー スポーツ」(雪上試乗会)
Text by 橋本洋平(2015/4/11 00:00)
悪路走破性をきちんと宿しているランドローバー車
日本でのランドローバーのイメージは、プレミアムSUVの元祖であり、高級路線を突き進むクルマといったところではないだろうか。レンジローバーが牽引してきたその高級路線は、他を圧倒するものであることは誰もが認めるところ。近年の「レンジローバー イヴォーグ」もまた、コンパクトSUVながらも高級感漂う雰囲気を醸し出していることはご存じの通りだ。
だが、ランドローバーの真髄はそこだけじゃない。SUVとして本来あるべき悪路走破性をきちんと宿していることもまた注目すべきポイントである。1948年、戦後の荒れ果てた道路を走るために開発した4WDへの思いは、現在でもランドローバーの各車に受け継がれ、どのような路面でも最高の走行性能を与えようと技術を盛り込んでいるという。単なるプレミアムSUVではなく、きちんとした走りが約束されていることこそが、ランドローバーの誇りらしい。
その片鱗がボンネットの形状に表れている。ランドローバー各車に採用されているクラムシェル・ボンネットと呼ばれる貝殻の蓋のようなそれは、オフロード走行時に水を被った際、エンジンルームにできるだけ水が入らないように考えられたもの。まさに機能美といったボンネットが、ランドローバーのどのクルマにも採用されているところはさすがだ。
また、ドライバーをアイポイントが高くなるような位置に座らせると同時に、見切りのよいボディースタイルとすることで、大柄なボディーであったとしても小さく感じさせるような扱いやすさを持たせること。さらには長いサスペンションストロークを持たせ、悪路走破性を高めるという一貫した思想をどのクルマにも展開していることも特徴的。クラスやサイズが違っていたとしても同様のテイストを持たせているところが興味深い。
目を見張る安心感
今回はイヴォークと「レンジローバー スポーツ」に乗り、その悪路走破性を実際に試した。いずれにも感じたことは悪路での走破性がかなり高いことだった。スキー場の駐車場に作られた特設コースは、スラロームあり、こぶ斜面ありというかなりイジワルなレイアウトだったが、そこをいとも簡単に駆け抜けてしまう。
イヴォークはエアサスペンションではないこともあり、オンロード志向なこともあって、スラロームではスイスイとクルマの向きを変え、スポーツ4WDかのようにそこを走ってしまう。こぶが連続する場面ではそれほどの走破性を期待していなかったのだが、ズリズリとクルマがこぶから滑り落ちながらも前へと突き進んでくれるから面白い。シャシーだけでなく、電子制御の介入が絶妙だからこそ走破性も高いのだ。
レンジローバー スポーツもまた、同様の感覚がある。一見すると“シティ派SUV”といった感覚を強く感じるところだが、いざ悪路となれば轍にはまることもなく、危うい思いをすることがないのだ。長いサスペンションストロークでシッカリと路面を捉えながら、きちんと悪路を脱出してくれるあたりはホンモノ感満載。これならどこへ行ったって安心だ。
さらに感心したのは、一般道を走った際に感じられる一体感がすこぶる高いことだった。巨体を感じることもなく、すべてが手の内に収められるその感覚は、もはや本格SUVに乗っている感覚はない。軽量アルミボディーを持つことで軽快さも備えたからこそ、そんな感覚が得られるのだろう。見晴らしがよいドライビングポジションと相まって、かなり操りやすかったことが印象的だ。
そして何より、そこに安心感が備わっていたことが特筆すべき点だ。ランドローバーが初めて採用したというヒルディセントコントロールは、他社のヒルディセントコントロールは極低速でしか作動しないものがほとんとだか、このクルマは35km/hまで介入してくれる。この手のSUVは登り勾配では安心感が高いが、下り勾配となると恐怖感が高まるもの。だが、レンジローバー スポーツはヒルディセントコントロールが上手く介入し、常に安心感に包まれている。エンジンブレーキをさらに強力にしたかのようなそれにより、恐る恐る坂を下るような感覚がなくなっている。これが一番の関心事だった。
このように、単なるプレミアムSUVではなく、あらゆるシーンで本格的な走破性を見せつけてくれたランドローバーの2台は、まだまだ見習う点が多かった。決して見かけ倒しのSUVではなく、中身も本格的のSUVだったからこそ、これらのクルマには魅力が溢れているのだろう。