インタビュー

マツダの「100周年記念モデルカー」誕生秘話インタビュー

企画や監修に携わったスタッフ4人に、こだわりや苦労話などを聞いた

100周年記念モデルカーラインアップ

 マツダは創立100周年を記念し、同社のデザイナーが監修したモデルカー40種類を発売する。そのラインアップは、最初の「三輪トラック」「グリーンパネル」「R360クーペ」「コスモスポーツ」などの歴代モデルから、コンセプトカー「RX ビジョン」まで、マツダの100年の歴史に彩りを添えたクルマ達が選ばれた。そこでその企画や監修に携わったデザイナーの皆さんにこだわりや苦労話などを聞いた。

インタビューを行なった皆さん

 今回のお話は、次の4人の方達にオンラインでの座談会形式で伺った。

広報本部 新部哲郎(にいべ てつお)さん

1985年入社。本来業務は社史チームにてマツダ百年史「図鑑編」を担当。一昨年までは塗装関係の生産技術部門に所属。今回のMODELCAR COLLECTIONでは年代考証、ボディーカラー監修サポート、ディテール調査、サンプル品チェックサポートを担当。他に社史チームとしては40台の選考過程、解説文作成でも参画。子供の頃からマツダファンでコスモスポーツのカタログなども所有し、資料も揃っている。

デザイン本部 デザイナー 藤川心平(ふじかわ しんぺい)さん

2008年入社。MX-5インテリア造形デザインやMX-30のインテリア、エクステリア造形デザインを担当。今回のモデルカーではそういった知見を活かし、造形クオリティをデザイナー目線でアドバイス。2019年8月よりブランドスタイル統括部マーチャンダイズチームに転籍。

デザイン本部 カラーリスト 寺島佑紀(てらしま ゆうき)さん

2015年入社。デザイン本部プロダクションスタジオに所属。CX-3特別仕様やCX-30のインテリアカラーデザインを担当。2019年8月よりブランドスタイル統括部マーチャンダイズチームに転籍。100thマーチャンダイズコレクションの企画・デザインを担当。今回のモデルカーでも内外装の指示と監修。

グローバル販売&マーケティング本部ブランド戦略部 中野雄介(なかの ゆうすけ)さん

2019年1月中途入社。MODELCAR COLLECTIONでは企画や進行管理、監修、当時の車名ロゴの銘板への再現を担当。本業務はブランド戦略部にてデジタルマーケティングを担当。MAZDA COLLECTIONオンラインショップ開設のため、カスタマーサービス本部リージョン商品推進部のマーチャンダイズチームに参画。加えてMODELCAR経験(自身がMODELCARコレクター、サプライヤーとのコネクション等)を活かし、上記業務にも参画。

(写真提供:マツダ)

100台くらいからの絞り込み

――最初に伺いたいのは、今回の40種類のラインアップをどのように選定したかです。

中野氏:はじめは広報の100年史チームとデザインチーム、ブランド戦略部とで車種選考を行ないました。そのポイントは
①ファンの皆さまに人気が高いクルマがもっともプライオリティが高いもの
②マツダ100周年の歴史に意味のあるクルマ
③技術やデザイン的に意味のあるクルマ
④多くの方にたくさん買っていただいたり、賞を受賞したクルマ
などを加味しました。

その時は100台ほどあったのですが……そこから泣く泣く、例えばファミリアはもっとたくさんあったのですが、それを2台に絞ったりして40台にしたのです。

――この決定に至るまでの流れをもう少し詳しく教えてください。

中野氏:2018年夏ごろにモデルカーの話がスタートしました。そのときはグッズなどの個別ではなく、100周年というタイミングが数年後に迫っていましたので、お客さまにマツダの歴史を伝えたり感じてもらったりしようと考えました。

では、お客さまとマツダの1番の接点はどこか。それはディーラーです。本来そのディーラーで歴史を感じてもらいたいのですが、実車の展示や、ディーラーの数自体もたくさんあるのでなかなか難しい。そこで手ごろなモデルカーという選択肢もあるのではないかとプロジェクトがスタートしたわけです。その結果、一般的で手軽な1/43スケールが選ばれました。

グレードや色、年式に関しての選考は「最上級グレード」「当時のメインカラー」「最初の年式のクルマ」という3つのルールを定めています。

――今回はデザイナーさんが監修して作っています。その理由は何でしょう。

寺島氏:これはデザイナーが作ったというよりも、当時のクルマをなるべく忠実に再現したい! という思いが第一にあったからです。その思いをもとに、造形は造形のプロが見て、色は色のプロが見てと自然な流れで進めました。

コスモスポーツ

忠実な再現性とデフォルメと

――できるだけ忠実に再現すると、モデルカーでは違和感を覚えることもあり、ある程度のデフォルメなども必要になってきますが、そのあたりはどのような工夫をして仕上げていったのですか。

藤川氏:基本的には3Dスキャンで1度クルマを撮り、それをベースにしていますので、大きく外れてないのはもちろんですが、やはり多少印象は変わってきました。その理由は小さくなる分、どうしても表現が弱くなるところもありましたので、そういうところはちょっと強めた方がいいのではと、実物を見ながら逐一修正していきました。

ただし、プロポーション自体をすごく変えてしまうミニカーはよくありますが、これをやってしまうとイメージが変わってしまいますので、あまり大きく変えないようにしながら、印象を実車に近づける努力をしています。

例えば1回塗装するだけで大きさの見え方がかなり変わってしまいました。そこで、塗装前はもちろんのこと、塗装後にもさまざまな指示を出して、当初の見た目に戻すようにしています。その作業がすごく大変でした。

他にもキャラクターラインなども縮尺するとだれてしまい、1番印象が変わってしまいました。これをいかにシャープに見せるかにも苦労しました。マツダのモデラーはデザイン感覚がある人ばかりなので、このくらいといったら普通にできてしまうのですが、それを忠実に、しかも他社の方に伝えなければいけないのはすごく苦労しました。

――そうすると40種類を、それぞれ1台ずつ微妙に調整をしながら作り上げていったということですね。

藤川氏:そうです。昔のクルマですから、デザイナーだけではなく色々な人たちに意見を聞きながら皆で作っていきました。

R360クーペ

カラーの再現も忠実に

――今回は実車を3Dスキャンしたとのことですが、そのクルマがオリジナルの場合とモディファイが加えられている場合があると思います。それはどのように判断したのでしょう。

新部氏:R360クーペ以降のほとんどのクルマは当時の資料、カタログが残っていましたので、それと比較しながら確認しました。また、オーナーから借りたクルマに関しては、自己申告で、例えばホイールは変えているとか、フォグランプを追加しているなどを教えていただいています。それと照らし合わせながら、当時の市販された状態を忠実に再現するように1台1台監修を加えていきました。

――パーツ類に関しては判断が可能ですが、ボディカラーに関しての再現はどのようにしていったのですか。

寺島氏:基本的には資料ではなく実車を見ています。“パントン”というカラーチップがあるのですが、これは色を指示するための世界の共通言語で、パントン何番など私が色を選んで実車と相違がないか現場現物で確認し、それを反映させました。本当にアナログで作業したのです。

(写真提供:マツダ)

――ボディカラーの場合、後で再塗装されている場合もありますので、そのカラーがオリジナルかどうかという判断はすごく難しいと思いますが。

新部氏:特に古いクルマ、コスモスポーツなどの年代のクルマは塗装も劣化し、塗り直しをしている場合もあります。その場合は、当時の写真や現車をリアルタイムで見ている私の記憶と経験や、同じ年代の他のクルマのカラーを改めて塗装しているのではないかとか、知見や資料、想像を働かせながら特定していきました。

寺島氏:本当に新部さんにはすごくて助けられてどうにか作れました。私はデザイン本部なので前田(デザイン本部長の前田育夫氏)とも、色はすごくリアルにできている、印象がその当時の感じですごくいいといってもらえて嬉しく思っています。

また、カラーデザインの倉庫には当時の塗料を紙に吹いたアート紙というものがあるのです。それはメタリックとかも入っていて、本当にそのものの色、本物の資料でした。そこで、新部さんの記憶と本物の資料と、私の現場現物、目で確認するなどいろいろな手法を使っています。

(写真提供:マツダ)

新部氏:量産車のボディカラーの見本になる標準板というものがあり、これはデザインや開発が承認をして配布される板です。この板が残っているものに関しては、実際にそれを用意してサンプルのモデルカーとも色の確認をしました。実際の量産車の生産や開発に使われている色の見本板も使っているのです。

ただし、メタリックなどの場合には実車の色板をベースにしても、アルミ光輝材のフレークのサイズが実際にモデルカーになった時には全然違ってしまいます。従ってギラギラしすぎるのではないか、逆にそこをあまり押さえてしまうとメタリック感がなくなってしまうので、もう少し強調した方がメタリック色らしい特徴が表現できるかなと考慮していきました。

一方で、当時のカタログが残っておらず、カラー写真が存在しないものもありましたので、色も特定がなかなか難しい。そこでミュージアムにあるようなものを参考にしながら、例えばタイヤが黒であればそのホイールは少し明るそうだから、明るい薄い色だろうという選び方で決めていっています。あまりにも資料がないものは想像していくしかない部分はありますが、可能な限り残っているもので決めていくようにしています。

――ソリッドカラーであっても、1/1スケールと1/43スケールとではイメージや再現性が変わってくると思います。その場合には都度塗りながら調整をしていったのでしょうか。

寺島氏:開発期間が短い関係もあり、基本的には1回で100点を狙いにいきました。そのためにパントンを駆使してできる限り近づけています。しかし、どうしても特徴のある色の場合は再現性が難しかったりもするので、そういう場合に限っては2回くらいまでは見ました。

新部氏:例えば赤のソリッドのボディカラーの場合であっても少し暗めの赤や、ちょっとオレンジがかった赤など色々あります。その特徴を正確に出していくことが、そのクルマらしさを表現することになりますで、自分が以前塗装部門にいた経験や、デザインと一緒に専門的な塗装手法を出していきました。また、モデルカーメーカーもかなり熱意のある方でしたので、こんな無理なことをいっても多分伝わらないし聞いてもらえないだろうというようなことも、次の時にこれでどうかと直ったものが出てきて感服しました。こちらの思ったことや無理なこと、もう少し鮮やかさがほしいとか、黄味色を足してほしいとかなど、本当にさじ加減みたいなところまでちゃんと修正してくれました。

寺島氏:当然パントンで合う色がない場合もありましたので、この番号とこの番号の間くらいという、私自身がカラーコピーで再現した“寺島メイキング”で一部作った色もあります。

新部氏:インテリアもシートの柄など、例えばコスモスポーツのチェックの千鳥格子のシートなども、白と黒とグレーとブラウンもちゃんと忠実に再現しています。

――エクステリアもそうですが、インテリアの再現性が高いのは非常にポイントが高いですね。ステアリング部分の色合わせなどにまでこだわっているそうですので、モデルカーファンとしてもマツダファンとしてもものすごく嬉しいと思います。

中野氏:インテリアはどこまで再現するかはモデルカーメーカーの考え方なども色々あり、他では結構省略されている場合もあります。しかし、今回は忠実に当時の車両を再現していますので、皆さんに頑張ってもらい、どこまでできるかは分からないところまで色も含めて指示をきちんと出させてもらいました。その結果、モデルカーメーカーはかなりのところまで再現してくれましたので、本当に非常にクオリティの高いものに仕上がりました。ぜひ手に取って細かいところまで見てほしいですね。

(写真提供:マツダ)

2種類のメーカーと素材を使い分けて

――今回の素材は何でできているのですか。

中野氏:実は2種類あり、歴史車両に関しての35車種はレジンで、ミニマックスのスパークというブランドです。現行車とコンセプトカーはダイキャスト製で、インターライドで作ってもらいました。

これはさまざまな理由があるのですが、現行車に関しては現在NDロードスター、MAZDA3、CX30の3車種をラインアップしています。これらは新車のローンチの際に販売促進のためにモデルをたくさん作りました。その経験があることや、型がありますのでそれを使うためです。今回の100周年コレクションとは別ですが、すでにデザイン部門で監修しているものなのでそちらで決めました。

RX ビジョンとビジョンクーペコンセプトに関しては、同じくインターライドが以前SHINARIなどのコンセプトカーの経験があり、また、ピジョンの2台は人気が高い車種なので、あらかじめ多くの生産数を見込めますので、そのメリットのあるダイキャストにしました。

ビジョンクーペコンセプト

RX ビジョン

――レジンの方が細かい再現性があるように感じますがいかがですか。

中野氏:はい、古い35車種に関してはまさにその通りで、ディテールまでより再現できることからレジンを選んでいます。また、生産数にばらつきが出てくる可能性が高いので、小ロットで作ることができるフレキシブルさも考慮しました。

――今回初めてスパークとお仕事をされたとのことですが、そこで苦労などはありませんでしたか。

中野氏:ビジネスとして初めてでしたので意思疎通、マツダが求めているクオリティに関して、コミュニケーションを重ねる必要がありました。初めはどうしても齟齬があり、最初のサンプルはまだちょっと……というものでした。本当に意思の疎通だけの問題だったので、実際にお会いしながらコミュニケーションを重ねていくことで、その後はクオリティがパンと上がってこれは素晴らしい、その場でほしいと私が思うくらいのものができ上がりました。このクオリティをよく1/43スケールでできたと思います。この最初のコミュニケーションがあったからこそ残りが続いていくと思います。

藤川氏:そうですね。クルマ会社だから、マツダだから気になるところは絶対にあるのです。最近マーチャンダイズで色々な方と話すのですが、こういうのはマツダだけが気にしているというのがすごくはありました。例えばラインのクオリティで、これは縮尺をぎゅっと縮めたときに波打ったらNGです。しかし、デザイナーは感覚で縮尺を小さくしなくても、何か違和感を覚えて分かるのです。そういうことを最初から伝えたり、分かりやすいように縮尺をあえて変えてみたりなど、相手に伝わるような努力をしていきました。

新部氏:細かいディテールの作り込みのところで、例えば単純に、ラインをシャープにしてほしいというと「できない」という答えがくるのですが、これをやることで陰影がくっきり出るような見え方にしたいというところまで説明すると、ではこういう表現の方法だったら可能だがどうか? という提案が逆に出てくるようになったのです。単純に線を細くとかそういうことをいうだけではなく、それによってどのように見せたいか、どんな風に手に取った人に感じてもらいたいかまでを伝えると、こうだったらできるかもしれないとなったのです。表面的なコミュニケーションではなく、何をしたいのか、どう見せたいのかというところまで説明することで、お互いの齟齬がなくなりました。

また、モデルカー業界のやり方というところもありますよね。話を聞いていくと向こうもやはりクルマやメカ好きな方たちですので、そのポイントが分かると向こうも逆に燃えて、じゃあこれならどうだ! みたいな感じのレスポンスが返ってくるようになりました。

本当にものづくりをやっているプロフェッショナルな方だなということをすごく感じました(一同うなずく)。

藤川氏:このモデルカーは普通に飾るほかに、SNSにアップする人も相当多いと思います。ということは、写真で撮ってもキレイに見えることはとても大事なのです。その両立を目指していますので、実はオーバークオリティで指示しているところもあります。ただ、それくらい写真で見ても分かるとおり普通のモデルカーではできないような美しさが出ています。これはモデルカーメーカーさんなどに頑張ってもらった賜物です。

――例えばマツダのモデラーが1/43を作ったら、これと同じかもっとハイクオリティのものができそうにも思いますが。

藤川氏:……(笑)。これくらい小さいものへの知見はモデルカーメーカーが持っているものの方がもちろんあると思いますし、相当細かい仕上げで、こんなところまで再現できるのかというところまで再現してもらいましたので、そういうところはモデルカーメーカーの強みかなと思います。ただ、もうちょっと大きければ分からないかもしれません(笑)。面白いアイデアですので、ちょっと相談してみよう、面白い企画になるかもしれませんね。

パッケージにまでこだわる

――そのほかパッケージなどにもこだわりがあると伺っています。

中野氏:細かいところではパッケージのサイズや裏にどういう紙を入れるのか、台座のネームプレートをどうするのかなど、私が(このチームに)入った時にはまだ議論がそこまでされていなかった状態でした。しかし、モデルカーでは(コレクションする上でも)パッケージも重要だと思いますので、細かくこだわりました。それぞれのモデルカーには銘板、ネームプレートがシルバーで備えられており、これは当時のロゴをきちんと使うことを徹底的にこだわっています。具体的にはカタログや実車からスキャンしたり、これとこれではどちらが正しいのか、同じロゴでもカタログによって微妙に違ったり、国によって違ったりなど色々あり、そのあたりはかなり新部さんに協力してもらいながら作っていっています。

また、コスモスポーツは海外ではマツダ110Sという名称なので、銘板にもコスモスポーツの下にマツダ110Sと入れています。グローバルで楽しんでもらうために日本の名前と海外での名前を併記しましたので、そういったところも楽しんでもらえたらと思っています。

(写真提供:マツダ)

――カタログによってもロゴが変わったりしますが……

新部氏:海外向けカタログなども含めて調べてロゴを確認し、情報提供しました。本当にクルマのナンバープレートに写っている字体と、カタログの字体でも違っており、そのカタログの表紙に写っている字体と中のページに出てくる字体が違っていたりする場合もあるので、そうなった時にどれが1番ふさわしいかというのを相談しながら進めました。

中野氏:特に海外のカタログを探してくるのが非常に困難でしたね。

新部氏:海外のカタログはそれぞれの地域で準備しているものなので、広島本社に残っていないものがほとんどだったのです。たまたま海外の事務所から持ち帰ったとか、出張や出向で行った人が趣味で持って帰ったものを会社に残してくれたものなどが割と多かったのですが、海外でどういうロゴスタイルを使っていたのかがなかなか辿り着けなくて、そこは苦労しました。

藤川氏:もう1つ、今回のモデルカーには100周年として特別に作った写真のスリーブを入れています。最初は著作権などが絡んですぐに考えられないといわれたのですが、楽しんでもらうためには何かいると急遽使える写真を選び、スリーブにしました。本当に、1つひとつの写真を使えるか使えないかの瀬戸際を繰り返して出しましたので、そういう細かいところも楽しんでもらいたいですね。

中野氏:実は後ろの紙(スリーブ)を1車種1車種変えて、カタログ写真などを使えないかと思っていたのですが、(著作権などの)ハードルが高く……。しかしながら、今回はマツダの100周年の歴史を感じてもらいたいと、3輪トラックからロータリー、787Bまでパッケージ共通にしてデザインを作ってもらいました。

マツダとしてはじめの1歩

――今回のマーチャンダイズ系に関してもデザイン部が関係しているそうですね。まったくクルマとは違う世界でのデザインですので、いろいろ苦労があったかと思いますが、いかがでしょう。

寺島氏:結構違うところはありました。本当にマツダとしては“はじめの1歩”なので、まずメーカーを探すところから始めたのですが、普段はある程度マツダとしてコントロールがきくところが大きいのですが、今回は初めてのメーカーや、初めてのグッズや業界と接するので、コミュニケーション、まずマツダの思いを分かってもらうことから始めました。

藤川氏:まさにそれで、マツダがやりたいこと、われわれはマツダにいるので当たり前にやっていることが、実は当たり前じゃなかったんだということが最初に感じたことです。特にクルマではない業界ですので、マツダの当たり前を通すのが相当難しいことをすごく感じました。

例えば1つのラインのクオリティを出すにしても、Tシャツにそのクオリティを求めるのはすごく努力がいることで、最終的には手作業でやってもらうような工程のあるTシャツになっています。

Tシャツのデザインも新規で作られたもの

寺島氏:100周年記念グッズの監修としてTシャツなども基本全部私が行ないました。専門がカラー、色、素材を担当していますので、色や素材のところを見ています。今回は素材にもこだわって作りましたし、色も現場となる工場に行って現地で監修して、ミニカーと同様に色を指示させてもらいました。これはあまり色がブレたりしないように、例えばAのTシャツは青みのグレーだが、BのTシャツは黄色っぽいグレーだねとなってしまうと、まとめてみた時にバラバラな印象が出てしまうのはマツダとしてはあまり好ましくない。そこでそういうところは気を使いました。

――今回あえて1つひとつTシャツなどのデザインを作ったのはなぜでしょう。例えば何かのスケッチなどをスキャンする手もあったと思いますが。

寺島氏:当初はもう少し簡易的にできるものも検討はしていました。ただし、やはりマツダとしてはじめの1歩、初めてのマーチャンダイズですから、なるべく丁寧に作りたいという思いがありましたので、柄とかも内製しました。単にプリントしただけのグッズですと、マツダ本体で作る意味があまりないというところもあり、なるべくオリジナリティは出したいということなのです。

そして今後の展開についてはなかなか答え難いのですが、私個人の考えでは、お客さまとの接点を増やしていく、お客さまに喜んでもらうのがマーチャンダイズの使命ですから、そのポイントを増やせるように、拡充できたらいいなと思っています。

藤川氏:今回色々な気付きもありましたので、いままさに次はこのようにしていきたいと期待を膨らませているところ。ぜひ次回も期待してほしいですね。

驚きの反響

オンラインショップ

――オンラインショップでスタートした販売ですが、市場からの反響はいかがですか。

寺島氏:モデルカーに関してはダイレクトにお客さまから反響をいただいています。例えば、R360クーペを購入できなかったのですが、どうしても父のために買いたい、こういう企画をしてくれてありがとうというコメントなどは、すごく嬉しいですね。

他のグッズに関連では、こういうのを買いたい、こういうグッズがほしいという声もたくさんありますので、今後に活かしていきたいと思っています。

藤川氏:とにかく売り切れたものがたくさんありますので、個人的にはこんなに皆さんに期待してもらっていたのかと思いました。価格的にまあまあな値段にも関わらず、われわれの思いが言わなくても伝わっている、もし分かってもらえなかったら買っていただけていないでしょうから、そこもすごく嬉しいです。

中野氏:さらにほとんどの方が実際に手に取って、実物を見て購入しているのではなく、Webサイトの写真で見て決めてくれています。その写真でよさが伝わっていることがとてもありがたい話です。

本当は、このコロナ禍がなければイベントなどの販売も積極的にやっていきたいのですが、なかなかそういうことが難しいご時世なので、そういったところでも魅力的に感じてもらえる商品をこれからもラインアップに加えていきたいとチームで話し合っています。

ポストカード
スポーツタオル
マグカップ
100周年を記念した写真集もある

忠実に再現することへのこだわりは、昔の思い出へとリンクする

――今回の100周年記念のマーチャンダイズやミニカーに関して、どういう思いで作り上げたのか。皆さんの思いを教えてください。

藤川氏:実は知らないクルマもいっぱいあって、例えば最初のマツダGA型グリーンパネルという3輪トラックなどは知りませんでした。しかし、100周年としてマーチャンダイズだけではなく、自分たちを見直す活動も行ない、今までの歴史を知ることで、こんなクルマたちが皆さんに受け入れられていたんだということをすごく感じました。その目線でモデルカーを作るとなると、1つひとつ本当に手が抜けません。ですので、正直今回はオーバークオリティといわれていますが、お客さまがそのクルマに乗っていたとしたら、そのモデルカーこそが想い出のクルマになりますので、できる限りやらせてもらおうと無理難題は相当投げて作りました。その結果、大きな反響をいただいているのでとても嬉しく思っています。

寺島氏:ミュージアムのバックヤードや普段業務では絶対にいかないような場所で、絶対に見られない車両を見るという貴重な体験ができました。作業期間中はすごく慌ただしくしていましたが、いま落ち着いて振り返ると、これはマツダに入社しないとできなかったなと思って、じんわりと思い出に浸っています。実際に色を見て作ることによって当時のデザイナーの思いやこだわりも実車を通して感じるところがありましたし、時代ごとの色やボディカラーの特徴も感じることができました。

例えばコスモスポーツの時代では、白が真っ白ではなくて薄いグレーのソリッドになっていて、それはコスモだけではなくてその周辺の時代のクルマもそうで、時代感があると思ったのです。サバンナの時代には一気にメタリックが入ってきて、ちょっとギラギラとするような、太陽の光に当たるとパッとキラキラと光るような感じになり、それはサバンナだけではなく周辺の車種もそうでした。そして今のソウルレッドになって、メタリックが細くなっている。このように1人のデザイナーとして色の時代変化を見ることができて、すごく面白く体感させてもらいました。

コスモスポーツ

新部氏:元々子供のころからマツダが好きで、ミニカーなども買っていましたので、今回は趣味なのか仕事なのかの線引きが難しいところもありました。いま社史という仕事に携わっていますので、マツダがちゃんと関わって出していく以上、史実を踏まえ、ちゃんとした時代考証をした上での整合性を取らないといけません。いい加減な、確認ができない状態で出していくのは慎まないと、戒めないといけないという意識は持つようにしました。もちろんどこまで1/43のモデルとして再現できるかはありますが、モデルカーのメーカーには嫌がられるくらい本当に細かいところまで史実に忠実に再現することを意識しながら、ここはこうしてほしい、ここは違っている、ここのバランスはちょっとおかしいとお願いしました。本当に、よく怒らずに付き合ってもらえたというくらいやったのです。実は実際にコスモスポーツは購入して、実物を手にして、眺めながらやってよかったなという満足感に浸っています。

中野氏:モデルカーは本来の自分の仕事の範疇外で、もしかしたら趣味で取り組んでいたのかなぐらいのイメージでした。モデルカーはマニアックなオタクの趣味みたいに一般の人たちからは思われています。しかし、今回のモデルカーコレクションは、コレクターではない人にもぜひ手に取ってもらいたいのです。自分がコレクターとして集めている思いとして、モデルカーは当時乗っていたクルマや、憧れだったクルマの思い出を形にしたものでもあるのです。そのようなクルマの大切な思い出をたくさん持っている方がいらっしゃるでしょう。実車を現実に所有することはなかなか難しいと思いますが、モデルカーであれば手軽に手に取ることや、デスクに置いて当時の思い出に浸ることができます。だからこそ忠実に再現することに徹底的にこだわったのです。そこにサプライヤーの多大なる協力がありましたので、本当にある意味レストア車のように1台1台丁寧に作ることができました。私のデスクにもR360クーペを置いています。

R360クーペ

11月には待望の「787B」のモデルカーが登場

 この取材後、新たに11月にモデルカーが1台、そして「ESSENTIAL COLLECTION」が追加されると発表された。モデルカーは「787B」で100周年限定モデルだ。

 そして、ESSENTIAL COLLECTIONは、「マツダのものづくりの想いがダイレクトに感じられる商品」をコンセプトに、オーナーに自分の愛車をもっと身近に感じてほしいという想いのもと、マツダ車の内装からイメージした、ステーショナリーやカードケースなどの小物商品を作成。クルマの中に置いても見分けがつかないほど、色の再現にはこだわっているという。また、パーフォレーションもシートと同じサイズ・柄を再現。他にも、さりげなく刻印されたマツダロゴのエンボス加工もこだわりのポイントだ。

 キーリング・ペンは内装で使用している、金属加飾の質感をイメージしてデザイン。表面をブラスト加工し、サテンシルバーの質感を表現している。カードケース・ビジネスカードケース・ノートカバーは、外側のパーフォレーションに加え、内側にはマツダロゴのエンボスを入れている。ノートカバーには、ペンフォルダーや名刺入れを付け加えるなど、実用性にも長けた商品となっている。

 これまでのマツダ100周年記念グッズと同様、全国のマツダ販売店、マツダコレクションオンラインショップで購入が可能だ。

100周年記念をあしらった色で作られている