ホンダの基本である「人中心」という考え方をより深く掘り下げた
本田技研工業は6月24日、新型「シビック(CIVIC)」をオンラインにて世界初公開した。発売は2021年秋で、2022年にはハイブリッドモデルの「e:HEV」と高性能スポーツタイプの「TYPE R」の発売を予定していることも明かされた。
公開された新型シビックは1972年に登場した初代から数えて11代目となるモデル。歴代シビックはキビキビした走り、取り回しのよさ、経済性と環境の調和という項目を世界の人々に届けるベーシックカーであったが、11代目の新型もその大きなテーマに沿うことをベースに親しみやすさと存在感を併せ持ち、乗る人すべてが「爽快」になることのできるクルマを目指したという。
開発時は「人中心」というホンダが基本とする考え方をより深く掘り下げることに注力。そこでユーザーがクルマを選ぶ際に、どういった生活スタイルからその基準を考えているのかなどの調査を時間をかけて行なっていったという。
その結果、気持ちが明るくなるような開放的なデザインが生まれ、走りの面では質の高い走行体験を提供できるよう、さらに現代のクルマには欠かせないHMI(ヒューマン マシン インターフェース)も操作を覚えるのではなく直感的に使うことができるように仕上げているということだ。
新型シビックは、上位グレードの「EX」と「LX」の2種類が設定されている。ここでは2台を写真で細かく紹介していく。
新型シビック EX。ボディカラーはプラチナホワイト・パール。エンジンは4気筒1.5リッターターボ。トランスミッションはCVTと6速MTがあり、撮影車はCVT Aピラーの位置を現行シビックより50mm後退。ピラー傾斜の延長にフロントタイヤが繋がるラインとした リアウィンドウのショルダーラインは現行シビックより35mm下にしている。これによりリアボディの視覚的な厚みを低減し、タイヤの存在感を向上させている。ルーフからリアエンドにかけてのラインは角をなくして滑らかに繋がるようにしている マフラー出口の処理やディフューザー形状パーツ装着でスポーティなイメージ 新型シビック LX。ボディカラーはプレミアムクリスタルレッド・メタリック。エンジンは4気筒1.5リッターターボ。撮影車は6速MT ボンネット高はもともと低いが、それを際立たせるためボンネット左右の後端を現行型より25mm低くしている 新型シビックのデザイン方向性を検討するうえで参考にしたのが、薄く軽快に見えるボディながら閉塞感を抱かせない開放的なグラッシーキャビンを持つ3代目のワンダーシビック。これを新型シビックでは開放的な空間、気持ちのいい視界、そして低重心骨格というパッケージに落とし込んでいる。
具体的にはフェンダー高の低減、インパネ越しに連続する視界のよさ、広いガラスエリア、リア席の居住性向上など。視界がよく開放的な空間を作っている。低重心骨格についてはAピラーの位置を現行型より後退させ、さらにルーフからテールゲートへ続くラインを低くスリークなデザインとしている。加えてホイールベースの延長、リアトレッドのワイド化などを行なっている。
カラーラインアップは撮影車のプラチナホワイト・パール、プレミアムクリスタルレッド・メタリックのほかにソニックグレー・パール、プレミアムクリスタルブルー・メタリック、クリスタルブラック・パールが設定されている。
ドライバーからの視界を遮らないような位置に付けられたドアミラー。ウインカーも内蔵される オーソドックスなドアハンドル。通常操作はもちろん、手に荷物を持った状態で指のみを引っかけてドアを開けるようなシーンではやはりこの形状が使いやすい リアドアのノブもオーソドックスな形状。ネイルに気を使う女性にとっても使いやすい EXに装着されている18インチアルミホイール。LXとデザインは共通だがカラーが異なる。EX用はベルリナブラック+スポーク天面の切削仕上げ+ダーククリア タイヤサイズは235/40R18。グッドイヤーのイーグルF1を装着 LX用の18インチアルミホイール。カラーはベルリナブラック+スポーク天面は切削シルバー リアのボディパネルはいわゆる「フェンダーのツメ」部分を折り込んだ形状。トレッドのワイド化に貢献している ヘッドライトはLED。EXはLED+アダプティブドライビングビームを装備。ライト配置は片側3灯でロービームが外と内、ハイビームが真ん中とした。これによりロービーム点灯時はライト部に「瞳」の表現ができるので表情を感じられるようにしている ロービーム点灯。デイタイムランニングポジション時は内、外のLEDが消灯しライト上部からサイドへ繋がる点灯ラインとなる ウインカー(ハザードランプ)点灯。流れるように光るシーケンシャルタイプではない ストップランプはハイマウントではなく、コンビネーションランプ間にある横長の別体ブレーキランプが点灯 今回発表されたガソリン車には1.5リッターターボエンジンが設定されている。技術面に関する詳細は未公開だが、、トルクオンデマンド制御最適化、高効率ターボチャージャー&低圧損過給配管、4-2エキゾーストポートシリンダーヘッドを採用していることが公開された。
スペックは最高出力が134kW(182PS)/6000rpm、最大トルクは240Nm(24.5kgfm)/1700-4500rpmとなっている。さらにNV(Noise、Vibration)性を高めるため、高剛性クランクシャフトに高剛性オイルパンが用いられている。環境性能を高めるための装備では排気側にVTECを採用。また、摺動部の低フリクション化、新型のキャタライザーも採用し、平成30年度排出ガス基準75%低減レベル達成の見通しとなっている。
1.5リッター ガソリンターボエンジン。最高出力は134kW(182PS)/6000rpm、最大トルクは240Nm(24.5kgfm)/1700-4500rpm 高効率ターボチャージャー&低圧損過給配管、4-2エキゾーストポートシリンダーヘッドを採用 フロントグリルの奥に大型のインタークーラーが見える ボンネット裏には遮音や断熱性を高めるインシュレーターも付いている。上側に見える黒いパーツはインテークダクトの一部。ボンネットの開き角度は2段階で設定できる インテリアはすっきりノイズレスな骨格とした。操作系についてはテンポよくリズミカルにタスクがこなせる使い勝手のいい導線を考えた配置と、心地よさを感じることのできる触感、およびフィードバック性を重視した作りになっている。
運転席に座ってみると視界がすっきりしていることに気がつくが、これは窓の映り込みや影の落ち方まで考慮したものということなので、実際に街に出たときでも「見やすい」と感じるのだろう。また、メーターやモニターも視線を上下に動かすことなく情報を認知できるように配置してあるとのこと。
シフトレバーはCVT、6速MTともにドライバー側へ若干倒れ込んだ位置に設定することで操作しやすさを向上させている。また、シフトレバーが倒れ込んでいるおかげで、シフトまわりのコンソールスペースに設けたドリンクホルダーの使い勝手もよくなっている。
インパネ形状で特徴的なのは、空調の吹き出し口を含めて横一線に装着されたアウトレットメッシュ。インパネの空調吹き出し口はほとんどパターン化されているが、新型シビックのインテリアデザイナーはそこに疑問を持った。そして住居を含む他のインテリアアイテムのデザインからヒントを得てアウトレットメッシュを追加させたという。
これは視覚的な効果だけでなく、ルーバーから吹き出た風がメッシュに当たることで拡散され、一部のみに強めに風が当たるのを低減する効果もあるという。また、ルーバー本体とメッシュ部に間に距離が作れることから、従来より広角な配風が可能となり、風の拡散化とあわせて空調使用時の爽快感や快適性が大幅に向上している。
インテリアでもう1つ。左右ドアのパワーウィンドウスイッチ部は前側を少々高くしたアームレスト前部に配置されているが、これはアームレストに手を置いたときに指が自然とスイッチに触れること狙ったもの。助手席に乗る操作に慣れていない人でもスイッチの場所を探すことがなくスマートに扱えるようにという狙いがある。
EX(CVT)の運転席まわり。シートはスエードコンビで、シートとステアリングに赤いステッチが入る。運転席側は8ウェイパワーシート。助手席側は4ウェイパワーシート LX(6速MT)の運転席まわり。1枚の表皮であることへのこだわりを織り模様で表現。カラーはブラック。ステアリング形状はEXと同一でステッチが黒になる。シート調整は手動式 左のスポーク部にはオーディオや電話の操作系ボタンが並ぶ 右のスポーク部にはHondaSENSINGの操作系ボタンが並ぶ。ボタン類の位置は他の車種と違いはあるが機能の割り当てに変わりはない。ACC(アダプティブクルーズコントロール)はトラフィックジャムアシスト機能も付いている EXのメーターまわり。フルグラフィックメーター、10.2インチ高精細フルカラー液晶パネル。LXは7.0インチ高精細フルカラー液晶パネルになる センター部に表示されているクルマのグラフィックは、ライトやブレーキ、ハザードランプなど実車と連動して点灯や消灯を画面内で行なう ライトを消灯するとメーター内のグラフィックのクルマも消灯。無灯火での走行を予防する効果もある ディスプレイオーディオ。直感操作ができるように操作頻度が高いアプリはメイン画面に置く。ショートカットでの操作も可能。EXはBOSE製のサラウンドシステムを装備する スワイプで画面を切り替えできる。スイッチも操作しやすいことを重視したサイズにしている インパネ形状にも工夫があり、モニターの下に指を置けるスペースを作っているので誤操作が起こりにくい。ボタン操作のレスポンスも高めている アウトレットメッシュを取り入れたインパネまわり。エアコンは左右独立温度調整式オートエアコン アウトレットメッシュの奥に従来の吹き出し口がある。吹き出した風はメッシュを通ることで拡散されてより心地よくやさしい風になる グローブボックスが開いた状態。ポケット手前に平らな形状があるので、停車時などはちょっとした物を置くのにも使える EX(CVT)のセンターコンソール。シフトレバーは操作しやすさを考えてドライバー側へ若干傾けている。レバーの後ろは電動サイドブレーキスイッチとドライブモード選択スイッチ。モードはECON、Normal、Sportの3つ EXにはスモールランプ連動のフットライトが装備される。夜間でも足下が見られることはペダル操作の踏み間違い予防にもなるのでこれは歓迎の装備 LX(6速MT)のセンターコンソール。MT車もシフトレバーを右寄りに若干倒している。操作感はストロークが短めで、レバーのリターンスプリングの強さもあって抜くときの感覚もスポーティだった ペダル表面には滑り止めのゴムを使用するなどスポーティなデザイン 標準グレードに6速MTが設定されていることも大きなトピック。この設定もシビックらしいと言えるところだろう EXのドアトリム。EXはスモールランプ連動のイルミネーション付き ドアトリムのアームレスト部。角度がついているので手を置いたときに指が自然にスイッチにかかる。スイッチのフチは角のないラウンド形状となっていてシルバー加飾付き。暗いところでも位置が見つけやすい スイッチパネルも凝っている。しま模様は塗装やフィルムではなく、数万個の小さい凹凸を付けた型を製作したうえでインジェクション成型されたもの。質感のよさだけでなく指紋が残りにくいなど実用面でも有効。この製法はセンターコンソールのシフトパネルにも使われている。言われないと気がつかないところだが、ここもインテリアデザイナーがこだわった点。ちなみにこの造形は、数万個にもなる凸部分のデータをアプリ上で1つずつ配置していくそうで、CVTとMTではパネル形状が違うことからデータ製作担当者はとても苦労したという センターコンソールにある端子類。アクセサリーソケットにUSB、充電端子&スマートフォンの非接触充電エリア インパネ右端のスイッチ類とETC2.0。スターターボタンはステアリングコラム右横に配置されている アームレストのフタの裏は小物入れの容量を稼ぐためにくぼんだ形状にしてある EXのリアシート。足下の広さもある。また、低めに見えるルーフながら圧迫感は感じなかった シート座面は縦の長さが十分に取られているので、無造作に座っても腿裏が座面から浮くことはなかった センター部には収納式アームレストがある。これはアームレストを出した状態 トノカバーはロール式で左から右へ横に引き出すタイプ。これでトランクの前方の荷隠しができ、シェードと合わせてトランクすべてを隠すことができる 左側に付くトノカバー装置本体。旧モデルは左右どちらでも装着できるようにしていたが新型は荷室容積を稼ぐことを優先してあえて片側用にしている 装置本体は取り外すことも可能。トノカバーを必要としない大きな荷物を積むときには装置を外すことで開口部を広げることができる リア側から手を伸ばした状態で握りやすさを考えた取っ手形状。片側専用にしたことで取っ手の形状にもこだわれたという ラゲッジ床板は中折れ式。開けたときに手で支えることないような工夫が盛りこまれている ハッチバックの先代モデルはセンター出しマフラーだったが、新型はサイド出しなのでトランク下の容量が大幅に増えている リアゲートのヒンジ部をルーフの奥に寄せたことで、開閉時にゲートの開く軌跡が後ろに飛び出さないことを実現。そのためクルマの近くに立ってゲートを開ける際でも体を後ろに反ったりよけたりせずに済む ゲート開閉時のゲート後端と人の立ち位置との関係。自然な立ち位置で操作したときはゲート後端と体との距離は十分にある ゲート開閉は手動式。手をかける場所が一般的な位置のほか、室内側にも設けられている。ここに手を入れると逆手になるのでゲート引き下ろし時に力が入れやすい。また、リア側に立つスペースがなくてゲートの横から締める動作をする際にも内側にあるくぼみは便利