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写真で見る 日産「キャラバン マイルーム ローンチエディション」
2024年5月1日 09:15
昨今のキャンプブームはもちろん、テレワークの浸透による余暇時間の増大などによって、クルマの中で宿泊する「車中泊」が浸透しつつある。クルマで寝るとなるとキッチンやトイレまで備える本格的なキャンピングカーを想像するかもしれないけれど、今の人気はベッドやソファーなど最低限の装備を持ったライトな“車中泊仕様車”だ。こういった車両は車内容積の大きな1BOXをベースに多くの“ビルダー”(キャンピングカーを製作するメーカー)がベッドなどを架装、独自の工夫を凝らしたさまざまなモデルをリリースしている。
当然、自動車メーカーもこの市場が有望なことに気づいており、日産自動車の場合は「マルチベッド」仕様車を「キャラバン」「セレナ」などにリリースしている。このマルチベッド仕様車は床をフラットに仕上げるフロアパネルと、跳ね上げ式のベッドを組み合わせたシンプルな内容となっており、車中泊仕様車として考えるともっともベーシックなモデル。そこで、もう一歩踏み込んで居住性や快適性、さらには質感までこだわって製作されたのが、今回紹介する「キャラバン MYROOM(マイルーム)」だ。
キャラバン マイルームは2022年に開催された「東京オートサロン 2022」に「キャラバン MYROOM CONCEPT」として初出展。販売希望の声が多かったことから、カタログモデルとして発売に踏み切ったもの。とはいえ、実は開発当初から市販化を視野に入れた設計や部材の選択が行なわれていたとのことで、量産性などを考慮し一部変更を加えた上で2023年10月には市販モデルとなる「キャラバン MYROOM Launch edition(ローンチエディション)」としてリリースされた。
なお、ローンチエディションはすでに完売となっており残念ながら新規の購入は不可能。通常モデルは2024年夏に販売開始となる予定だという。
キャラバン MYROOM Launch edition
ベースとなったのはバンモデルの中でも最上級グレードとなる「GRAND プレミアム GX」。エンジンは直列4気筒2.0リッターガソリン「QR20DE」と直列4気筒2.4リッターディーゼル「4N16」の2タイプを用意しており、2WD車(FR)はいずれも選択できるが、4WD車はディーゼルエンジンのみとなる。トランスミッションはどちらも電子制御7速ATを搭載する。一応スペックにも触れておくと、ガソリンエンジンが最高出力96kW(130PS)/5600rpm、最大トルク178Nm(18.1kgm)/4400rpm。ディーゼルエンジンが最高出力97kW(132PS)/3250rpm、最大トルク370Nm(37.7kgfm)/2000rpm。
キャラバンにはさまざまなボディタイプが存在するが、マイルームの場合は「ロングボディ」「標準幅」「標準ルーフ」「低床」ともっともコンパクトなモデルとなっており、ボディサイズは4695×1695×1975mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2555mmと、いわゆる4ナンバーサイズになる。車両重量はカタログ値で1970kg(ガソリン2WD車)~2220kg(4WD車)となっているが、同車は持ち込み登録となるため実測値が適用となる。乗車定員は5人。
外観は基本的にベースモデルと同様だが、ブラックグリルやブラックドアハンドル、ブラックドアミラー、ブラックスチールホイールなどの専用パーツを装着。また、リアクォーターウィンドウとバックドアには専用ステッカーも用意される。
内装は明るい木目をふんだんに使っていることもあり、ベースが商用車であることを一切感じさせない仕上がり。車名になっているマイルームを意識し、家具類はもちろんサイドウィンドウなども直線と直角を組み合わせたデザインとなっていることにも注目。車中泊仕様車のキモとなるベッドは跳ね上げ式と折り畳み式を設定。今回の撮影車両は跳ね上げ式で、中央上部のフックを外すだけのワンアクションでベッドが出現。ヒンジ部にはダンパーが入っているため、押さえていなくてもスムーズかつ静かにベッドメイキングが可能だ。ベッド時にはスライド式のテーブルが利用可能になり、ロック穴を利用することで前部~後部の4か所で固定することが可能だ。壁面にはフタ付の収納が用意されており、散らばりやすい小物類をスマートに収納できるのもうれしい。
もう1つ注目したいのが、このクルマのためだけに製作された2列目の2in1シート。前後2か所にヒンジを備えたシートで、前向きはもちろん、後ろ向き、フラット(ベッド)と自由自在。ベース車両のシート同様、5:5の分割タイプになっているため、アレンジの幅が広いのもうれしい。さらに、スライドやリクライニングといった操作が非常に軽くスムーズにできるのも大きなポイント。展示車に触れる機会があったなら、ぜひ実際に動かしてみてほしい。
細かい部分にも自動車メーカーならではの部分が多々ある。例えば換気だ。車中泊の際は意外と車内の空気がよどみがち。本格的なキャンピングカーなら換気用のファンを装着することもあるけれど、運転席の窓を少し開けるといった対処が一般的だ。だが、マイルームは「ポータブルバッテリー from LEAF」のようなバッテリを車内のソケットに接続することで、エンジンを切っていてもエアコンに使われるブロアーファンを動作させ車両後部のダクトから車内の空気を排出、常時換気が可能になるなんてギミックを備えているのだ。
今回、撮影場所への移動のため短距離ではあるが実際に試乗してみたところ、乗り心地のよさに驚かされた。キャラバンは積載性(重量)を考慮してリアサスペンションにリーフリジッドを採用していることもあり、独立懸架の乗用ミニバンと比較すると正直、乗り心地はいいとはいえないモデル。
だが、マイルームは段差での突き上げが少なく、バタバタとリアが跳ねるような挙動も見られなかった。どうやらこれはリアにベッドなどの重量物が架装されていることが功を奏している様子。車両重量で見ればベース車両(GRAND プレミアム GX、ディーゼル、4WD)が2000kgなのに対し、こちらは2220kgと200kg以上重くなっている。燃費などを考えればデメリットである重量増も、乗り心地の面ではプラスに働いているワケだ。もう1つ、走行中に架装部分から軋み音など異音は聞かれず、荷室が架装パーツで覆われていることもあって静粛性の面でもベース車両にはない上質さが感じられた。
このローンチエディションには本来オプションとなる車内カーテン、ウッドブラインド、AC100V電源、スポット照明付木目調ルーフパネル、ロールスクリーン、ルーフサイド間接照明が標準装備となる。価格は折り畳みベッド仕様が595万8700円~696万4100円、跳ね上げベッド仕様が613万4700円~714万100円。ボディカラーは専用色となる「サンドベージュ/ホワイト 2トーン」など4色をラインアップする。