写真で見るスバル「レガシィツーリングワゴン」/「レガシィB4」/「アウトバック」 |
モデルチェンジしたレガシィシリーズ |
スバル(富士重工業)は「レガシィ」と「アウトバック」をモデルチェンジし、5月20日に発売した。グレードや価格などは、関連記事に掲載しているので、そちらを参照していただきたい。
今回モデルチェンジをしたのは、レガシィのワゴンタイプ「ツーリングワゴン」とセダンタイプ「B4」、そしてアウトバックの3車種。すでにニューヨーク自動車ショーでセダンタイプとアウトバックは発表されており、過去記事でも掲載しているが、北米で未発売のツーリングワゴンは今回が初登場となる。ただしB4とアウトバックにおいても、ルーフレールの形状が変更されたり、ウィンカー内蔵ミラーとなったりと北米仕様とは細部で変更が加えられている。
グレードはツーリングワゴンとB4に、2.5リッターエンジンと2.5リッターターボエンジン搭載モデルが、アウトバックには2.5リッターエンジンと3.6リッターエンジン搭載モデルが用意され、助手席電動シートなどラグジュアリー装備を充実させた「L-Package」と、ビルシュタインダンパーや18インチホイールなどスポーティな装備と、専用のエクステリアを持った「S-Package」、SIクルーズコントロールを搭載した「SI-Cruise」が用意される。
まず発売前から話題となっていたボディーサイズからだが、詳細は以下のとおり。グレードは2.5iのもので、カッコ内は先代の2.5iとの差になる。
車種 | ツーリングワゴン | B4 | アウトバック |
全長(mm) | 4775(+95) | 4730(+95) | 4775(+95) |
全幅(mm) | 1780(+50) | 1780(+50) | 1820(+50) |
全高(mm) | 1535(+65) | 1505(+80) | 1605(+60) |
ホイールベース(mm) | 2750(+80) | 2750(+80) | 2745(+75) |
トレッド前(mm) | 1545(+50) | 1545(+50) | 1540(+45) |
トレッド後(mm) | 1545(+60) | 1550(+60) | 1540(+55) |
車両重量(kg) | 1480(+40) | 1440(+20) | 1500(+50) |
最小回転半径(m) | 5.5(+0.1) | 5.5(+0.1) | 5.5(+0.1) |
室内長(mm) | 2190(+350) | 2190(+350) | 2190(+350) |
室内幅(mm) | 1545(+100) | 1545(+100) | 1545(+100) |
室内高(mm) | 1230(+40) | 1215(+50) | 1230(+40) |
前左右席着座間隔(mm) | 740(+30) | 740(+30) | 740(+30) |
前後席着座間隔(mm) | 906(+68) | 906(+68) | 906(+68) |
荷室容量 VDA(L) | 520(+61) | 480(+47) | 520(+61) |
荷室幅(mm) | 1090(+15) | ― | 1090(+15) |
荷室高(mm) | 815(+5) | ― | 815(+5) |
荷室奥行(mm) | 1070(-20) | ― | 1070(-20) |
9インチゴルフバッグ収納数 | ― | 4(+1) | ― |
ツーリングワゴンを例にしてみると、先代に比べ全長で95mm、全幅で50mm、全高で65mmアップしているが、室内長では350mm、室内幅が100mm、室内高は40mm広くなっている。これこそが今回のボディーサイズ拡大の一番の狙いとのことで、従来よりドライバーには高い評価を得ていたレガシィにおいて、すべての同乗者にとっても満足してもらえる快適性を実現するためには、広い車内空間が必要不可欠だったのだと言う。
具体的には、左右席で30mm、前後席で68mmシートの距離を拡大し、その上でシートポジションを高くし、シートクッションを大型化。また、フロントシートのシートバック背面をえぐったような形状にし、またシート下の後席搭乗者のつま先が入るスペースを広げることで、後席パッセンジャーの足元のクリアランスを拡大している。そのほか、ウインドーやピラーの形を見直し、特に後席の開放感を高めている。また、電動パーキングブレーキの採用により、センターコンソール周辺のスペースを確保し、ドリンクホルダーを左右に並べて配置したり、しっかりとしたアームレストにもなるフロアコンソールボックスを設けるなどして、車内での快適性、利便性をアップしている。
新型レガシィの広くなった車内(パノラマ) |
■さらに高級感をアップした内外装のデザイン
エクステリアのデザインは、初代より伝統だったサッシレスドアやワゴンボディーのガラスtoガラスデザインのDピラーを廃止するなど、思い切った決断が見て取れる。それでいて、ここ最近のスバルの伝統であるウィングをモチーフにしたグリルや、鷹目風のつり上ったデザインのヘッドライトは継承され、明確にレガシィのDNAを感じることができる。シャープでスポーティーだった先代に比べると、大きなヘッドライトやはっきりとしたフェンダーは、どっしりとした重厚感と高級感を醸し出し、20年という歳月の中でレガシィがより大人の雰囲気に成長したことを感じさせる。
バンパーやサイドステップの意匠は、ツーリングワゴンとB4が共通になるが、「S-Package」のみフロントバンパーとサイドステップが専用品となり、ヘッドライトがブラックアウトされ、ホイールが18インチとなる。また、アウトバックは、前後バンパー、サイドステップ、オーバーフェンダー、そしてホイールがオリジナルデザインとなる。そのほか、グレードによる外観の違いは、2.5リッターターボと3.6リッターエンジン搭載車が左右出しマフラーとなり、2.5ターボのみが、ボンネットにエアスクープが設けられる。
■ツーリングワゴン2.5GT S-Package
■B4 2.5GT SI-Cruise
■ツーリングワゴン2.5i
ツーリングワゴン2.5i。2.5iと2.5GTのみHIDヘッドランプがオプションとなる | ホイールは16インチ。2.5i L-Packageも意匠の異なる16インチが付く | ルーフに埋め込まれた形のルーフレールはふたを開けるとアタッチメント部分が見える。これはアウトバックも共通 |
■アウトバック3.6R
インテリアは、前述のとおり、すべてのパッセンジャーが満足できるゆとりの広さを確保。本物の金属のようなヘアラインパネルや、シルバー調、ウッド調、カーボン調が用意された加飾パネル、アイボリーとオフブラックを用意したインテリアカラーによって、上質で落ち着きのある雰囲気としている。また、従来より調整箇所の増えた電動パワーシートやG-BOOK ALPHA対応HDDカーナビ、マッキントッシュサウンドシステムなど、装備も充実している。
■排気量をアップしつつも実用燃費を向上したエンジンラインアップ
エンジンは伝統の水平対向エンジンを全車に搭載。従来は2.0リッターだったベースエンジンをNA、ターボともに2.5リッターに拡大。さらにアウトバックに用意されていた3.0リッターエンジンは3.6リッターに拡大された。ラインアップされるエンジンは全3種類で、ツーリングワゴン、B4、アウトバックと全車に用意される2.5リッター SOHCエンジンと、ツーリングワゴン、B4に用意される2.5リッター DOHCターボ、アウトバックに用意される3.6リッター DOHCエンジンとなる。
・2.5リッター SOHC+CVT
2.5リッター SOHCエンジンは、従来のエンジンと型式こそ同じものの、約9割の部品を新設計したもの。CVTとの組み合わせを最適化するため、インテークマニホールドを見直し、より低回転よりのエンジン特性にしていると言う。また、吸気効率向上のため、i-AVLS(可変バルブリフト機構)を採用する。最高出力は125kW(170PS)/5600rpm、最大トルク229Nm(23.4kgm)/4000rpmを発生。10・15モード燃費は14km/L、平成22年度燃費基準+20%、平成17年度基準排出ガス75%低減レベルを達成している。指定ガソリンはレギュラーガソリンだ。
2.5リッター SOHCエンジン。オルタネーターが強化され、インテークマニホールドが樹脂化されている | インテークマニホールドを分解すると中央のチャンバー部に向かってファンネルが伸びる構造になっている | このファンネルの長さを変えることでエンジン特性の変更ができるが、組み立て時に溶着するため、あとで分解することはできない |
この2.5リッター SOHCエンジンと組み合わせられるのが、今回のレガシィのトピックスのひとつとなる新型CVT「リニアトロニック」だ。基本的には無段変速となるCVTだが、今回開発したCVTは、特定の変速比で固定することでMTのように操作できる「6速マニュアルモード」を搭載する。スバルでは開発段階からツインクラッチ式2ペダルMTにするかCVTにするか悩んだとのことで、CVTでもツインクラッチと同レベルの速さでシフトチェンジができるのであれば、スポーティーな走りを楽しめると考え、CVTを選択したと言う。事実今回採用された6速マニュアルモードでは、シフト操作からわずか0.1秒で変速が可能。これはツインクラッチ式MTを上回る変速速度だと言う。
このCVTでは2つのプーリーを繋ぐのに一般的な金属ベルトではなく、ドイツLuK社のチェーンを採用。ベルトに比べてフリクションが少なく、また、より小さいプーリー径にも追従できるため、ギア比の変速幅を広くすることができたと言う。そのレシオカバレージは6.3。さらにプーリー自体をコンパクトにすることができ、車内へのセンタートンネルの張り出しを従来の5速ATと同等に抑えることができたと言う。また、スポーティな走りを演出するパドルシフトや、信号待ちなど長時間の停車時には自動でニュートラルにして抵抗を減らし、燃費を向上する「Nコントロール」も採用している。このCVTとの組み合わせにより、実用燃費では、先代の2.0リッター SOHCエンジンを11%上回っているとのこと。なお、ターボと組み合わせても大丈夫なほどのスペックを持っているとのことなので、今後は2.5リッターターボや3.6リッターに採用される可能性もあるかもしれない。
・2.5リッター DOHCターボ+5速AT/6速MT
2.5リッターターボは、エンジン本体の排気量をアップするとともに、従来より大型化されたシングルスクロールターボを、水平対向エンジンの排気側となるエンジン直下に配置。排気管長が短くなることで、高い背圧を利用できるとともに、タービン直後にある触媒もより早く温まるため、排ガス浄化能力もアップできる。さらにエンジンは圧縮比9.5という高圧縮比を実現。非過給領域でも2.5リッターの排気量を活かした力強さを得られると言う。さらにデュアルAVCS(吸気可変バルブリフト機構)、新型タンブルジェネレーテッドバルブ、オルタネーター制御のための電流センサーの採用などにより、最高出力は210kW(285PS)/6000rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/2000-5600rpmを発生。10・15モード燃費は12km/L、平成22年度燃費基準+5%、平成17年度基準排出ガス75%低減レベルを達成している。指定ガソリンはプレミアムガソリン。
2.5リッターターボエンジンには、スポーツシフト付き5速ATと、新開発の6速MTが組み合わせられる。5速ATは、285PSという高出力化に対応するとともに、ダウンシフトブリッピングコントロールの改良により、マニュアルモードのレスポンスを向上。さらにCVTと同様、パドルシフトやNコントロールも備える。6速MTは、従来の6速MTと比較し24kgもの軽量化をした新設計の6速MTで、ギア比を2.5リッターターボに最適化。さらにケーブル式リンケージやカーボンシンクロにより、レガシィにふさわしい上質なフィーリングに仕立てていると言う。先代の2.0リッターターボと比べ、実用燃費は5速ATで2%、6速MTで9%向上とのこと。
・3.6リッター DOHC+5速AT
アウトバックに用意される3.6リッターエンジンは、国内市場向けの車両に搭載されるのはこれが初(国内未発売のトライベッカ後期モデルに搭載)。従来の3.0リッターエンジンと外寸はほぼ同等に抑えながら、ボア、ストロークともに限界まで拡大し、20%の排気量アップを図っている。さらに冷却系統を見直すことで、高圧縮比ながらレギュラーガソリン仕様としている。そのほか、デュアルAVCS、左右独立長を延長した排気レイアウト、オルタネーター制御のための電流センサーやエアコン可変コンプレッサーの採用などにより、最高出力は191kW(260PS)/6000rpm、最大トルク335Nm(34.2kgm)/4400rpmを発生。10・15モード燃費は10km/L、平成17年度基準排出ガス75%低減レベルを達成している。組み合わされるのは2.5リッターターボと同じ5速ATで、実用燃費では先代の3.0リッター DOHCと比べ5%アップしているとのこと。
このほか、全エンジン共通で、オルタネーターの大容量化、新開発プラグの採用により、燃焼効率を向上。電動パワーステアリングにより燃費を向上し、また、スイッチでエンジン特性やATのシフトタイミングを切り替え、3種類のパフォーマンスを選ぶことができるSI-DRIVEも全車に搭載している。
新開発のプラグは外側電極の先端からチップがはみ出した形状になっている。さらに外側電極を面取りすることで、電極周辺に混合気が回り込みやすくなり、また火炎伝播の広がりもよくなって燃費の向上につながるとのこと |
(編集部:瀬戸 学)
2009年 5月 21日