レビュー

【タイヤレビュー】ダンロップの新ミニバン専用タイヤ「エナセーブ RV505」、“ふんばり力”で直進安定性が段違いに向上

RV504から耐ふらつき性能を19%、耐偏摩耗性を53%アップ

6月1日発売のミニバン専用タイヤ「エナセーブ RV505」を試した

コンセプトは「ふんばり力」

 ダンロップ(住友ゴム工業)からミニバン専用タイヤ「エナセーブ RV505」がリリースされる。SUVブームと言われている昨今ではあるが、まだまだ世間ではその数が多いミニバン。そこに対して、より安全に快適に走らせてあげようというタイヤがこのエナセーブ RV505ということのようだ。コンセプトはズバリ「ふんばり力」。背が高く重たいミニバンをシッカリ走らせるにはそこが重要とダンロップは考えたらしい。

 たしかにミニバンはカーブでのふらつきや、横風やわだちといった外乱によって走りが気になることが多い。また、高荷重に負けてタイヤのアウト側ショルダーに負担がかかり、偏摩耗を引き起こしやすいこともネックである。筆者もミニバンを愛用しているユーザーの1人だが、こうしたネガには頭を悩ませていて、走りとタイヤの減りには常に気を遣っている。できるだけソーっと、そして可能な限りカーブではスピードを落として走ることで、少しでもタイヤの負担を減らそうとしているが、それにも限界を感じることもしばしば。ふらつきはどうしても起きるし、ショルダーだけがすり減ってしまうのは仕方がないと割り切っている現状がある。

 RV505は、こうした課題に対して真摯に向き合った設計が行なわれている。トレッドパターンを見れば前作の「エナセーブ RV504」とは違い、かなり太いリブとなったことがうかがえる。前作は5リブで、ブロックの1つひとつが細かかったが、RV505では205サイズ以下は3リブ、215サイズ以上では4リブとしているところが特徴だ。アウト側ショルダーだけをシッカリさせようというのではなく、タイヤ全体の剛性を引き上げてシッカリ感を出そうとした造りだ。これにより局部的に接地圧が高まることなく、全体的に入力を受け止めることを可能にしている。

 また、センターリブに対して特許出願中の「プラスリブ」を与えたところも興味深い。タイヤに触れてみるとリブの側面が片側は盛り上がり、片側はそり上がる形状をしている。これはコーナリング中にリブが倒れ込んだ際に接地面が増えるような細工なのだ。さらに構造についても強化が行なわれ、ビードフィラーを包み込むターンナップ部には高剛性材料が従来から与えられていたが、その高さを増すことで横剛性をアップ。ただ、それだけでは縦方向のしなやかさがなくなり乗り心地が悪化してしまうため、かなり吟味したそうだ。そのほか新プロファイルを採用することで、サイドウォールを均一にたわませることも狙っている。

RV505では、ミニバン特有のカーブや横風によるふらつきを抑制するべく新開発の「FUNBARI TECHNOLOGY(ふんばりテクノロジー)」を採用。155/65R13~245/40R20の48サイズをラインアップし、ラベリング制度での転がり抵抗性能はAA、ウェットグリップ性能はbを獲得(一部サイズは「AA-c」)
タイヤ幅215以上の4リブパターン
タイヤ幅205以下の3リブパターン
従来のRV504からリブ数を減らしてショルダー部のパターン剛性を高め、接地面全体の剛性を最適化。また、サイドウォール全体がたわむ新プロファイルにより荷重をしっかり支え、多人数乗車時でもふらつきを抑制できるようになった。そのほか大きさが異なる5種類のブロックを配置し、音を分散させることでパターンノイズも低減させている(写真左は向かって左がIN側、右がOUT側)

 これらの対策によって、多人数乗車における耐偏摩耗性はなんと53%もよくなったという。旧製品も長持ちするタイヤであるようにと心掛けていたが、それよりも偏摩耗性がこれほど高まっているとなれば、ミニバンユーザーにとっては実質、さらに長持ちするタイヤということになる。市場調査によれば、ミニバンユーザーの47%ものクルマで偏摩耗が確認されたというから、これはありがたい性能アップだ。

RV505では4リブパターン、3リブパターンの2種類を設定
荷重をしっかり支えるふんばりテクノロジーは多人数乗車で効果を確認
新パターンの解説
センターリブに対して「プラスリブ」を採用
RV504からサイド部を強化するとともに、新プロファイルによってカーブ時にサイドウォール全体が均一にたわむ構造に仕上げた
耐ふらつき性能はRV504から19%アップ
ミニバン用タイヤにおいて、交換されたタイヤの約47%が偏摩耗していたという
耐偏摩耗性能はRV504から53%向上した
新プロファイルと新カオスピッチ配列で静粛性も高まった

直進安定性が段違いに向上

RV505はテストコースでアルファード、一般道でノア、スペーシア、ゴルフ トゥーラン、カングーで試した

 こうした進化はいかなるものかと、テストコースを走り出す。まずはアルファードで、2列目に120kg、荷室に40kgの重りを積んだ状態で旧製品のRV504をチェック。同様の条件でRV505で走ってみた。

 すると、RV505は走り出しからステアリングに対してダイレクトな感覚が伝わってくる。操舵感がやや重めだ。反力を確実に感じるそのフィーリングは、剛性感がタウンスピードからして高い。周回路で次第にスピードを高めていくとシッカリとした感覚は高く、直進安定性もRV504に比べて段違いに向上していることがうかがえる。

 RV504ではニュートラル付近で微妙な修正を身体が勝手に行なっているような状態だったのだが、RV505はステアリングがドッシリとしているから、手を添えているだけでピシッと真っ直ぐ突き進んでくれるのだ。ロングドライブなら疲れも軽減するであろう頼りがいのあるフィールは好感触。試乗当日は横風が強い状況だったのだが、それに煽られるようなこともないところは魅力的だ。

 さらに、高速道路のIC(インターチェンジ)くらいのカーブにおける剛性感も高く、操舵の座りもいい。一定の操舵角で揺さぶられることもないそのフィーリングは、落ち着いた感覚があってスポーティにすら感じてしまうほど。ちなみに、音に関しても旧製品に比べて耳障りな高音が削られたイメージで、疲れが軽減されている。

 後に重りを外した状態でも走ってみた。その際はやや硬さを感じる部分もあるのだが、アルファードに乗る限りは気になることはない。一般道で軽めのクルマに乗った際にはやや乗り心地もハードだと感じたが、家族を乗せたり荷物を多く積んだりといったミニバンならではの使用環境を考えると、許せるレベルにはあると思う。このあたりはどこにターゲットを絞るかということなのだろうが、1人乗りや空荷前提のミニバンに合わせても仕方がないこともよく理解できる。ミニバンの性能をフルに活かした状況でこそ活きてくるタイヤ、それがこのエナセーブ RV505ということだろう。

一般道で軽めのミニバンにも試乗した

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。