レビュー

【タイヤレビュー】グッドイヤー「イーグルF1スーパースポーツ」 微小操舵から意のままに応答してくれるフィーリングが魅力

グッドイヤーから新たに投入されたスポーツラジアルタイヤ「イーグルF1スーパースポーツ」を箱根のワインディングロードで試してみた

グッドイヤーのスポーツラジアルタイヤの頂点となるモデル

 グッドイヤーからサーキット走行も受け止める「イーグルF1スーパースポーツ」というタイヤが3月にリリースされた。このタイヤは18インチ~21インチまで全20サイズをラインアップ。ロータスの「エミーラ」に純正装着されるほか、ポルシェ「GT3」にも承認されている。そもそもグッドイヤーは、F1で368勝、ル・マン24時間でも14勝、NASCARにおいては60年以上のパートナーシップを続けているなど、モータースポーツとの関わり合いが深いブランド。

 日本国内での市販スポーツラジアルタイヤでは、すでにUHP(ウルトラ・ハイ・パフォーマンス)タイヤである「イーグルF1 アシメトリック5」が用意されているが、さらにその上をいく「ウルトラ・UHP」を名乗るイーグルF1スーパースポーツは、果たしてどんな仕上がりをみせてくれるのか? 箱根のワインディングロードで試してみた。

いかにも“スポーツラジアルタイヤ”という印象を受けたイーグルF1スーパースポーツ

 イーグルF1スーパースポーツの実物を見ると、いかにもスポーツラジアルタイヤという感覚が強い。アウターセクション(外側)のショルダーブロックを大型化することで、コーナリング時の接地面積を拡大。コンパウンドはショルダー部をドライ重視、センターリブ3本をウェット重視としたところが特徴的。また、内部はカーカスをトレッド面まで巻き上げるハイターンアップ構造とすることでサイドウォールを強化。オーバーレイヤーにはアラミドとナイロン素材を使用することで、トレッド面の変形を抑制し、高速走行時にも接地面をきちんと確保できるようにしているという。

コーナリング時の接地面積を拡大させるためショルダーブロックを大型化させている
イーグルF1スーパースポーツ専用に開発されたトレッドコンパウンドが搭載されている
アラミドとナイロン素材を混紡した高剛性オーバーレイヤーをイーグルF1スーパースポーツ専用に新開発したという
コーナリング時の接地面積を最大化させるために大型のショルーダブロックを配置
高剛性のカーカス素材をトレッド面まで巻き上げることによってサイドウォールを強化している

スポーツラジアルながらウェット性能で全サイズ「a」を獲得

 性能面では社内テスト値でイーグルF1 アシメトリック5よりも、ドライブレーキ性能で1%、ウェットブレーキ性能で4%向上し、サーキットでの平均タイムもドライ路面で1.7%ほど短縮させている。しかし、そんな性能向上を達成しながらも、全サイズJATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)が定めているグレーディングシステム(等級制度)で、ウェットグリップ性能でもっとも性能の高い「a」を取得しているのもポイント。なお、イーグルF1 アシメトリック5も全サイズウェットグリップ性能は「a」だ。

 さて、用意された試乗車はトヨタ「GRスープラ SZ-R」、日産「スカイライン 400R」、アルファ ロメオ「ジュリア ヴェローチェ」の3台。設定サイズが18~21インチとなるイーグルF1スーパースポーツのターゲット層が見えてくるラインアップだ。それと比較用に従来品イーグルF1 アシメトリック5を履くレクサス「IS300h」も試乗した。

日産「スカイライン 400R」の装着タイヤサイズは前後245/40ZR19
ケース剛性が高く狙ったラインにスッと素直に反応してくれる

 走ってみると剛性感がステアリングに即座に伝わってくる。いかにもケース剛性が高そうなフィーリングで、たわみやヨレが気にならすステアリングの微小操舵からスッと応答してくるところが好感触。日常域から意のままに応答するところがマルだ。とはいえ、ゴツゴツとしていることもなく、ギャップやうねりをうまく吸収しながらフラットに走ってくれるところもうれしい。

アルファ ロメオ「ジュリア」の装着タイヤサイズは、フロントが225/45ZR18、リアが255/40ZR18

 スポーツラジアルタイヤとはいえ、車内騒音も適度に抑えられていて、これならロングドライブでも満足できそうな雰囲気。ワインディングでスポーティに走らせると、ストッピングパワーもなかなかのもの。コーナリングに関してはそれほどグリップが高い印象は少ないが、コントロール性は高く。バランスのよさが光っていた。足まわりがそれなりに引き締められた、重量級のスポーツモデルにマッチングするタイヤだろう。

トヨタ「GRスープラ(SZ-R)」の装着タイヤサイズは、フロントが255/40ZR18、リアが275/40R18

 つまりこのイーグルF1スーパースポーツは、決してタイム狙いのようなタイヤではない。あくまでもたまに行くサーキット走行には対応するという種類のタイヤだ。海外にはこの上に「イーグルF1スーパースポーツR」、「イーグルF1スーパースポーツRS」というラインアップが存在する。日本未導入となるこれらのタイヤは、あくまでドライグリップの高さを狙っており、サーキットにおけるタイムも意識している。

ステアリングの微小操舵からスッと応答してくるし、ギャップやうねりをうまく吸収しながらフラットに走ってくれる

 それらとは違い今回のイーグルF1スーパースポーツは、あくまでもストリートの延長上でサーキットを見据えているタイヤなのだ。ウェット性能を重視していることはもちろん、摩耗についても強さを持っていることがうかがえる。今回は2日間行なわれた試乗会の最終枠での試乗となったのだが、その時点でのトレッド面の摩耗はかなりバランスされており、しかも減りが少なかったことが印象的。全ての性能をバランスよく仕上げていることがよく分かる。結果、トータルバランスの高さが魅力のタイヤだと感じた。

箱根のワインディングロードで2日間たっぷりと試乗されてもバランスよく摩耗しているトレッド面だった
従来品のイーグルF1 アシメトリック5を履くレクサス「IS300h」。装着サイズは前後235/45R18
サイズ一覧
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一