レビュー
【タイヤレビュー】グッドイヤー「イーグルF1スーパースポーツ」 微小操舵から意のままに応答してくれるフィーリングが魅力
2022年7月5日 06:10
グッドイヤーのスポーツラジアルタイヤの頂点となるモデル
グッドイヤーからサーキット走行も受け止める「イーグルF1スーパースポーツ」というタイヤが3月にリリースされた。このタイヤは18インチ~21インチまで全20サイズをラインアップ。ロータスの「エミーラ」に純正装着されるほか、ポルシェ「GT3」にも承認されている。そもそもグッドイヤーは、F1で368勝、ル・マン24時間でも14勝、NASCARにおいては60年以上のパートナーシップを続けているなど、モータースポーツとの関わり合いが深いブランド。
日本国内での市販スポーツラジアルタイヤでは、すでにUHP(ウルトラ・ハイ・パフォーマンス)タイヤである「イーグルF1 アシメトリック5」が用意されているが、さらにその上をいく「ウルトラ・UHP」を名乗るイーグルF1スーパースポーツは、果たしてどんな仕上がりをみせてくれるのか? 箱根のワインディングロードで試してみた。
イーグルF1スーパースポーツの実物を見ると、いかにもスポーツラジアルタイヤという感覚が強い。アウターセクション(外側)のショルダーブロックを大型化することで、コーナリング時の接地面積を拡大。コンパウンドはショルダー部をドライ重視、センターリブ3本をウェット重視としたところが特徴的。また、内部はカーカスをトレッド面まで巻き上げるハイターンアップ構造とすることでサイドウォールを強化。オーバーレイヤーにはアラミドとナイロン素材を使用することで、トレッド面の変形を抑制し、高速走行時にも接地面をきちんと確保できるようにしているという。
スポーツラジアルながらウェット性能で全サイズ「a」を獲得
性能面では社内テスト値でイーグルF1 アシメトリック5よりも、ドライブレーキ性能で1%、ウェットブレーキ性能で4%向上し、サーキットでの平均タイムもドライ路面で1.7%ほど短縮させている。しかし、そんな性能向上を達成しながらも、全サイズJATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)が定めているグレーディングシステム(等級制度)で、ウェットグリップ性能でもっとも性能の高い「a」を取得しているのもポイント。なお、イーグルF1 アシメトリック5も全サイズウェットグリップ性能は「a」だ。
さて、用意された試乗車はトヨタ「GRスープラ SZ-R」、日産「スカイライン 400R」、アルファ ロメオ「ジュリア ヴェローチェ」の3台。設定サイズが18~21インチとなるイーグルF1スーパースポーツのターゲット層が見えてくるラインアップだ。それと比較用に従来品イーグルF1 アシメトリック5を履くレクサス「IS300h」も試乗した。
走ってみると剛性感がステアリングに即座に伝わってくる。いかにもケース剛性が高そうなフィーリングで、たわみやヨレが気にならすステアリングの微小操舵からスッと応答してくるところが好感触。日常域から意のままに応答するところがマルだ。とはいえ、ゴツゴツとしていることもなく、ギャップやうねりをうまく吸収しながらフラットに走ってくれるところもうれしい。
スポーツラジアルタイヤとはいえ、車内騒音も適度に抑えられていて、これならロングドライブでも満足できそうな雰囲気。ワインディングでスポーティに走らせると、ストッピングパワーもなかなかのもの。コーナリングに関してはそれほどグリップが高い印象は少ないが、コントロール性は高く。バランスのよさが光っていた。足まわりがそれなりに引き締められた、重量級のスポーツモデルにマッチングするタイヤだろう。
つまりこのイーグルF1スーパースポーツは、決してタイム狙いのようなタイヤではない。あくまでもたまに行くサーキット走行には対応するという種類のタイヤだ。海外にはこの上に「イーグルF1スーパースポーツR」、「イーグルF1スーパースポーツRS」というラインアップが存在する。日本未導入となるこれらのタイヤは、あくまでドライグリップの高さを狙っており、サーキットにおけるタイムも意識している。
それらとは違い今回のイーグルF1スーパースポーツは、あくまでもストリートの延長上でサーキットを見据えているタイヤなのだ。ウェット性能を重視していることはもちろん、摩耗についても強さを持っていることがうかがえる。今回は2日間行なわれた試乗会の最終枠での試乗となったのだが、その時点でのトレッド面の摩耗はかなりバランスされており、しかも減りが少なかったことが印象的。全ての性能をバランスよく仕上げていることがよく分かる。結果、トータルバランスの高さが魅力のタイヤだと感じた。