レビュー

優れたウェット性能と静粛性を実現、ミシュランのSUV向け最新プレミアムコンフォートタイヤ「プライマシーSUV+」

ミシュランのSUV向け最新プレミアムコンフォートタイヤ「プライマシーSUV+」

ミシュランのSUV向け最新プレミアムコンフォートタイヤ「プライマシーSUV+」

 ミシュランのSUV向け最新プレミアムコンフォートタイヤである「プライマシーSUV+(PRIMACY SUV+)」をテストコースで試乗する。ウエット性能を特に進化をさせるためにシリカを多く配合したというこのタイヤは、事実上の旧製品である「プレミア LTX」よりもウエットブレーキング性能を8.2%もアップ。また、静粛性もトレッドのブロック数を増やすことでノイズのピークを下げ、騒音エネルギーを27.9%も低減している。トレッドパターンをプレミア LTXと比べると、たしかにショルダーあたりの溝が細かくなっていることに気づく。プレミアムコンフォートと名乗るに相応しい性能がそこにある。

 だが、高速安定性とハンドリング性能も諦めてはいない。ショルダーブロックにあるサイプの中には、ブロック同士が支え合うことで剛性を高めてくれる「スタビリ・グリップ・サイプ」なるものが搭載されている。これにより高速走行時の安定性とハンドリングを生み出してやろうということなのだろう。

静粛性などにも配慮されたプライマシーSUV+
左がイン側、右がアウト側。非常に繊細なパターンが描かれている
プライマシーのロゴも高級感のある凹彫り

数値でも確かめられたウェット性能の高さ

ウェット性能の高性能が魅力のプライマシーSUV+

 早速、高速周回路から走ってみると、まず感じたことはプレミア LTXに対して明らかに静粛性が向上しているということだった。試乗当日は編集者とともに試乗し、会話を続けていたのだが、プライマシーSUV+に乗り換えると先ほどまでの声を張っていた感覚はどこへやら。高速クルージングしていても落ち着いて会話が弾む状況が続くあたりは、目指したプレミアムコンフォートが達成されていると思えた。

 乗り心地についてはソフトすぎるわけでなく、ある程度の剛性感を持たせながら入力を一発で収束するタイプで、うねりや段差があったとしても、いつまでもバウンシングを続けるようなことのないスッキリとした乗り味だ。ダブルレーンチェンジやスラロームを繰り返しても反応のよさは十分に感じられた。

 微小舵角から大舵角まで一定したリニアな応答が楽しめるところがミシュランらしさだが、このタイヤにも間違いなくそんな乗り味が展開されている。ステアリングのセンター付近の落ち着きを持たせながら、リラックスした状態できちんとした直進安定性が得られるところもうれしい。マイルドな中にリニアさあり。そんなところが好感触だ。

 最後は今回のアピールポイントとなるウエット性能を試す。80km/hから0km/hまで減速する様子を、計測器で明らかにしてもらう。これならブレーキングポイントや進入スピードを合わせなくてもきちんと違いが出るから安心だ。まずは旧製品のプレミア LTXで試すと、減速時間2.7秒、制動距離29.4m、制動アベレージGが0.9G、制動ピークGが0.9Gという結果だった。プライマシーSUV+は減速時間2.5秒、制動距離25.7m、制動アベレージGが1.0G、制動ピークGが1.1Gという結果だった。数値がすべてを物語っているが、明らかにプライマシーSUV+は短く止まっているし、安心感が増していた。いざというときに役立ってくれるタイヤであることは間違いない。

 静粛性や乗り心地をシッカリと確保しながら、ハンドリングやウエット性能をきちんと備えていたところは、さすがはミシュランと思える仕上がりだった。スポーティなSUVに対してはパイロット スポーツ4 SUVをミシュランは推奨しているが、通常のSUV系であればプライマシーSUV+がオススメだと感じる。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。