レビュー
【ナビレビュー】9型大画面ナビの進化形「イクリプス AVN-ZX03i」
Wi-Fi接続を可能とし、エージェント機能などスマートフォン連携を強化
(2013/12/9 00:00)
いわゆる市販カーナビの世界には、各社が同時に似たような機能を採用するトレンドのようなモノが存在する。ここ数年でいえば、スマートフォン連携だったり、地図のSDカード化(SSD化)だったり、といったあたりが代表的な例か。で、現在進行形となっているのが、モニターの大型化だ。これに関しては熱心なメーカーと、そうでもないメーカーに二分されているけれど、今回紹介するイクリプスは前者といえる。
2012年夏、富士通テンは9型モニターを採用した「イクリプス AVN-ZX02i」をリリース。ミニバンユーザーを中心に人気を集めたが、この秋、その後継モデルとなる「イクリプス AVN-ZX03i」がデビューした。今回はこの新モデルのレビューをお届けしたい。
Wi-Fiを使ってスマホと連携
新しくできたグルメスポットなどの検索など、カーナビにとって今やスマホとの接続は必須といえる機能だ。当然、多くのメーカーが対応しつつあり、先代のAVN-ZX02iでも、「NaviCon」や「smartnAVViLink」アプリをインストールしたスマホとBluetooth接続することで、スポットなどの情報連携を実現していた。
だが、このニューモデルでは新たにWi-Fi接続を採用。同時に「CaraFl(カラフル)」と名付けられたエージェントアプリ、それにナビ操作に困った時に便利な取扱説明書アプリ「どこでもサポート」が用意された。
カラフルはいわゆる対話型のエージェントアプリ。「お腹が空いた」とか「天気を教えて」などとしゃべると、お店を検索してくれたり、天気を教えてくれたりする。いろいろと試してみたところ、認識率に関しては相当にハイレベルな印象。「アップルストアに行きたい」なんてワードでも、キチンと「Apple storeに行きたい」と変換、認識してくれたのにはちょっとビックリした。
どこでもサポートは電子マニュアル的なモノ。ただ、カーナビ連携を行うと、対応した機能では自動的に設定画面にセットしてくれる。動作としては一瞬で目的の画面になるのではなく、「現在地」ボタンを押して、「設定」ボタンを押して~、とバッチファイルが走っているような動き。実用的なのはもちろん、見ていてちょっと楽しい。このナビを購入するのならカラフルと一緒にスマホにインストールしておきたいアプリだ。
また、今回は実際に試すことができなかったが、コンビニやガソリンスタンドといった施設情報、自車位置マークデータ、オンデマンドVICSなどのダウンロードもWi-Fiで可能となっている。
先代モデル同様、「NaviCon」や「smartnAVViLink」も利用可能。以前から使っていたとか、目的地は自分で決めたいって人にはこちらオススメだ。また、ニンテンドーDSとの連携機能「クルマでDS」も従来から継承。ファミリー層には楽しく使えるハズだ。
よりアップした操作性と使いやすさ
新型になっても9型モニターならではの扱いやすさはそのまま。解像度は一般的な2DINの7型モニター採用ナビと同じワイドVGAながら、見た目の縮尺を7型モニター搭載モデルと同等にしている。つまり大きくなった画面は、そのまま表示範囲の拡大にあてられているワケ。スクロールや縮尺を変えることなくより広い範囲を見通せるのは、カーナビとしてはもう文句ナシに大きなメリットといえる。もちろん、画面上のボタン類も大きくデザインされるため、視認性がよく押しやすさも向上とイイこと尽くめだ。
加えてこのモニター、ただ大きいだけでなく「Vivid View Processor(ヴィヴィッドビュープロセッサ)3」や照度センサーを使った直射日光補正機能を搭載している。コントラストおよび彩度が高く、デジタル接続の採用により輪郭もクッキリ。スマホやタブレットでみる映像とは一線を画す美しさで、地図はもちろんテレビやDVDビデオなどの動画を見るには最適だ。
また、スマホの普及に伴いフリックやドラッグといった操作が一般化したけれど、カーナビでは従来からのボタンによる操作がメインとなっていた。イクリプスでは先代AVN-ZX02iから地図のフリック操作に対応していたが、本機ではさらに文字のフリック入力、そしてメニューやリストもフリックやドラッグ操作に対応。よりスマホライクな操作が可能になった。
そして「自分だけの1台」にするためのカスタマイズも強化された。トップメニューが4デザイン、地図が5デザイン、ルートカラーが4色、そして本体のイルミネーションはカラーパレットから好きな色を選ぶことが可能だ。もちろん、従来通りオープニング画面の変更も行える。
ナビ機能はシンプルで分かりやすく
ナビ機能はよく言えばシンプルで分かりやすくなった。というのは、重複していた機能や、使用頻度が低いとされる機能が省略されたためだ。
ナビデータは先代同様、16GBのSDカードに収録。情報量は住所検索が約4000万件、電話番号検索がタウンページ、個人宅あわせて約2500万件収録されるなど充実。検索項目は50音検索をはじめジャンルや周辺施設、提携駐車場などは変わらないが、郵便番号検索が非搭載となった。もっともこれだけローカルのデータがあれば、あとはスマホで補完することが可能だから、使っていて不自由さを覚えることはないだろう。
ルート探索は「推奨」を基本に「有料優先」「一般優先」「距離優先」「別ルート」と、最大5ルートの同時探索が可能。もっとも省燃費となるルートには「e」マークが表示され、ひと目でエコなルートが分かるのは便利だ。また、過去のVICSデータを元にした統計情報も従来通り搭載しており、現在だけでなく到達予想時刻や曜日による規制まで考慮した、最適なルートを探索してくれる。
地図データはSDカードを購入することで一気に更新することができるほか、ダウンロードにより更新することも可能だ。ただし、差分更新には対応せず年度毎に全更新を行うパターンになる。本機を購入したユーザーはユーザー登録を行うことで2014年度版、2015年度版、2016年度版のうちいずれかを無料でダウンロードすることが可能になる(予定)。
いろいろな意味で分かりやすくなった地図表示
実際にあれこれ試用してみて、個人的に大きく変わったと思えるのが地図まわりだ。先代モデルまではDVD~HDDナビ時代からずっと変わらない表示だったのに対し、カスタマイズにより5デザインから選択できるようになったこともあり、デフォルトの「ベーシック」においてもカラフルで目に鮮やかな表示となった。地図の内容は道路を重視したもので、色分けや道幅の反映、文字情報といったあたりが中心。グラフィカルな表現は少ないものの、視認性がよく、分かりやすい仕上がりだ。
歓迎したいのは、市街地図の25mスケールでしか表示されなかった一方通行が、通常地図の50mスケールでも表示できるようになった点。ただ、欲を言えば100mスケールでも表示できるようにしてほしいところだ。
ルート案内に関しては、イクリプスナビならではの案内となっており、ほとんど不足を感じることのないレベル。シンプルながら明確な交差点拡大図をはじめ、4つ先の交差点まで推奨レーンを教えてくれるレーンリスト表示、収録地点は限られてしまうものの交差点や側道をイラストでわかりやすく案内してくれるなど、複雑な道路を持つ都市部でも安心してナビゲーションの案内どおりに走行することが可能だ。
測位精度も従来同様、据え置き型ならではの高いレベルを見せた。AVN-ZX02iの時は富士通テン本社のある神戸を走行したけれど、今回はいつもの横浜でチェック。市街地図表示である程度の時間走行すると若干不安定さを覗かせたりもしたものの、高低差の認識およびGPS信号を受けられない地下駐車場においても、まずまず安定した精度だった。
満足すること間違いなしの充実したAV機能
メディア機能は、音楽CD/DVDビデオをはじめ、4アンテナ×4チューナー仕様のフルセグ(12セグ&ワンセグ)対応地デジ、Bluetoothを使った音楽のストリーミング再生、USBメモリー&SDカードに記録した音楽(MP3/WMA/AAC)、動画(MP4/M4V/AVI/WMV)データの再生など多彩なソースに対応する。
もちろん、iPhone/iPodの接続にも対応しており、音楽だけではなく動画再生やVTRモードでのYouTube視聴が可能。接続にはオプションの接続ケーブルが必要になるが、アップル製のLightning変換コネクタを使用することで、iPhone 5/5S/5Cの接続にも対応している。
また、地図用とは別に音楽用にSDカードスロットが用意されており、同梱のエンタメ用SDカード(16GB)、または市販のSDカードを用意することで、音楽CDを4倍速でリッピングできる。もちろんCDDB対応なので、アーチスト名や曲名も自動的に付加されるなど、HDDナビと変わらぬ便利さを備えている。
そのほか、スマホをUSB接続することで画面のミラーリングが可能になる「MirrorLink」にも対応予定。今後専用アプリがリリースされるほか、スマホで撮った動画や動画サイトの映像を、9インチの大画面で楽しめるようになる。これは楽しみだ。
「変わらないこと」のメリットと「変わること」の難しさ
2012年夏発売のAVN-ZX02iのレビューで「変わらないことがメリット」だと結論づけた。ただ、進化のスピードが速いデジタル機器において、いつまでも変わらないままでいることはできない。ガラパゴス化した携帯電話がスマホに駆逐されつつあるように、カーナビだって自ら新しい風を吹き込むことが必要だし、また予期せぬ風が外野から吹いてくることだってある。
AVN-ZX03iはまさにそうした「風」を受けたモデルだ。高速起動やスムーズな地図スクロール、スピーディーなルート探索などもっとも基本となる部分は従来同様。市販カーナビでは最大となる9型モニターならではの使いやすさや画面の迫力も備えている。そこにWi-Fi、そして専用アプリ「カラフル」を使ったスマホ連携やスマホ的なインターフェイスを追加することで、今までとは異なる使い勝手や独自性を盛り込むなど、新型機らしい魅力に溢れているといってよい。購入を考えているユーザーはもちろん、従来モデルのオーナーもぜひ一度店頭などで実際触れ、イクリプスナビの進化を感じ取ってほしい。