レビュー

クルマのメカニズムを学べる「エレキット レトロフォーミュラ」を作ってみた

V型8気筒エンジンに4速MT搭載のレトロフォーミュラを再現

3850円
完成したエレキット レトロフォーミュラ

 クルマのメカニズムを作って、見て、楽しめて、学べるとしてエレキットの「レトロフォーミュラ(MR-9137)」が話題だ。2025年10月中旬に発売された製品だが、最近は動画でもよく見かけられ、人気の高まりを感じられる。自分で組み立てて、動きを見ることでクルマを深く知れるキットらしいので、さっそく組み立ててみた。

エンジン、トランスミッション、ステアリング、サスペンションを再現

 このキットを販売している「エレキット」は、電子工作のキットを何十年も販売しているイーケイジャパンのブランドで、電子工作好きなら作ったことのある人も多いだろう。今回のレトロフォーミュラは、エレキットではあるが、機械仕掛けのロボット工作のカテゴリーに入るもので、電子工作的な部分はなく、電気が関わるのはモーターと電池とスイッチだけとなっている。

エレキット レトロフォーミュラの箱

 フォーミュラカーの形をしているが、クルマのメカニズムの理解のための構成となっており、ダブルウィッシュボーン式サスペンションをよく見せるためのフォーミュラカー形状なのかと思うほど。とにかく、仕組みがよく分かるようにできている。

見た目は名称のとおりレトロなフォーミュラカー
リアビュー

 そのなかでも、凝っている部分がトランスミッション。1速、2速、3速、4速とリバース、そしてニュートラルのポジションがあり、ギア操作をするとそのとおりに車輪の回転が変化する。ギアの仕組みも実際のマニュアルトランスミッションに近く、スリーブが移動して異なるギアをつなぐ仕組みを再現している。

変速レバーがあり、ギアを切り替えられる

 そして、エンジンはV型8気筒。フェラーリやV8エンジンのレーシングカーなどと同じフラットプレーンのクランクシャフトからピストンを動かすだけと簡略化されているが、ピストンの動きが楽しめる。動力はエンジン部分ではなく、トランスミッションのところに内蔵する模型用モーターによって動く。

 トランスミッションから後輪を駆動するが、その間にデファレンシャルギアまで再現。リングギアに動力を伝え、ピニオンギアで回転差を吸収しながら左右に伝達する実車そのもの。片方のタイヤを手で回すと反対側が逆回転する仕組みも理解できる。

 ステアリングはギアを介してラックを動かすところも再現しているため、運転席のステアリングホイールを回せばフロントタイヤの向きが変わる。ステアリングホイールは左右どちらでも付けられるよう伝達シャフトは左右についている。

クルマの下まわり

 サスペンションはダブルウィッシュボーン式の4輪独立懸架となっており、スプリングまで再現し、手で押してやればサスペンションの動きがよく分かる。

 ちょっとだけ残念なのが、全部のボディパネルを組み付けて完成させてしまうと、見えるメカニズムが減ってしまうこと。透明プラスチックを使ったパーツも多くあって中身が見えるようになっているのだが、全部のパネルを付けると見えない部分も多くなる。取り付けなくても動き自体は楽しめるため、必要に応じて外板を外した状態で飾るのもありだろう。

製作はかなり時間がかかる

 これだけのメカニズムを再現しているため、パーツは結構多い。パッケージには233点と書いてあり、ランナーから切り離したパーツはギアなど回転部分も多く、バリを完璧に取ることが求められる部品もある。

キットに入っているのは袋2つの説明書
袋をあけると7つのランナーとモーターやギアなど。金属部品はシャフト3本とスプリング4つだけ

 もちろん見栄えという面でもバリは取る必要もあり、総製作時間のうち、ランナーからの切り取りとバリ処理に費やす時間の比率は高い。製作に要した時間は筆者の場合、途中休憩もあったので実質4時間ほど。

トランスミッションのギアやシャフトはバリ残し厳禁だ

 製作時の注意だが、部品をその都度ランナーから外し、確認しながら組み立てていく必要がある。似た部品もあるため、組み付ける直前にランナーから外しながら進めていく。もし、2人で作るなどする場合は、1人が説明書を読みながら組み、もう1人が指示を受けてランナーから切り離しとバリ取りに専念するといいだろう。

 切り離しの工具もプラモデル用とされる刃先の薄いニッパーを使いたい。メカの動きに関わる部品が多いため、切り取り時には折ったり曲げたりしないように注意する必要もある。ランナーから切り離しのための工具以外は#1のプラスドライバーだけ。はんだ付けの必要もない。

説明書は約40ページの大作だ

 キットの説明書は、中綴じで製本されているほどのボリュームで約40ページ。工程を完ぺきとは言わないまでも、製作前に最後まで読んで、全体の流れを理解しておくことを強くおすすめしたい。

 説明書は単に組み立て方が載っているだけでなく、デファレンシャルギアやトランスミッションの役割解説まで網羅している。作ったあとも残しておきたくなる内容だ。

説明書の順に、トランスミッション、前後アクスル、エンジン、外装を制作

 製作は説明書のとおりに進めていく。トランスミッション、エンジンなど、部位単位で作り、終盤でそれらを合体させてメカニズム部分を完成させ、最後にメカの動作に直接関係のない外板パーツを付けて完成という手順だ。

まずはトランスミッションから組み立てていく

 説明書では最初にトランスミッションを作ることになり、「ギアのバリは少しも残らないようきれいに切り取れ」と指示されるなど、いきなり緊張を強いられて高いハードルを感じる。特にプラモデルの製作が久しぶりの人はそう感じやすいと思われる。

ここがトランスミッションの要。中央のシルバーのスリーブが上下することで各速度のギアが入る
トランスミッションが組みあがったところ

 部位ごとに作る順番を変えても大丈夫だが、最初にトランスミッションを組み上げることで、大きな山を超えた感じがしたことと、最もギアが多い部分を組み上げたため、完成までのモチベーションが高まった気がした。

リアのデファレンシャルギア
サスペンションのスプリング
V8エンジン。クランクシャフトとピストンが組みあがったところ
エアダクトやファンを付けた。エアダクトは飾りなので付けないほうがクランクシャフトの動きが見やすい
各部位ごとに完成したらこれらを結合することでシャシーになる
フロントアクスル、トランスミッション、リアアクスルを結合
黄土色のパーツはステアリングシャフト。左右ハンドルに対応するため2本ある

 最初の部品確認でも分かるが、キットは回転部分が多いわりに金属パーツは3本のシャフトしかなく、ほぼプラスチックパーツで構成されていることに気づく。接着剤も不要ではめ込み式ながら、しっかりと組みながら可動部分は滑らかで、非常に高いレベルで作りこまれたキットであることが分かる。

エンジンを載せてメカニズム部分は完成

各メカニズムができあがったら、動作確認するのもあり

 説明書ではギアの動きなどを手で動かしてスムーズに回るかどうかのチェックポイントをいくつか設けているが、最後までモーターを動かす場面がない。気になるならメカニズム部分ができた段階で電池を入れ、動作確認をしておくといい。

電源スイッチは後部にある

 電池を入れる前にスイッチがオフになっているか、また車両が飛び出さないようMT車の運転の基本であるエンジン始動前のニュートラルチェックをしておく。Hパターンの実車と同じくレバーが左右に動く状態がニュートラルだ。そして、電源をオンして回転を確認する。

トランスミッションのレバー。シフトポジションはダッシュボードに記載してある。動かす前にはニュートラルの確認だ

 この段階でエンジン内のピストンとファンの動きが確認できる。そして、駆動輪には伝わらないがトランスミッション内のギアが回っている。次に後輪を浮かせて1、2、3、4、リバースと動作を確認する。最初はレバーの動きが渋いこともあるが、何度が動かしていくとスムースに変速できるようになる。

V8エンジン。エアダクトを外しているとクランシャフトとピストンが見える
外装パーツを外して裏側から見るとクランクシャフトが回る様子が見える

 ステアリングホイールは説明書では最後のほうで付けることになるが、この時点で取り付けてしまっても工程には影響しない。メカの確認のためにも付けておいてもいい。

ステアリングホイールは左右どちらにも装着可能
ステアリングのギア
ロッドはサスペンションが上下してもよいようになっている

 デファレンシャルの動きだが、電源を切ったままギアを入れて、後輪の片方を回すと反対側が逆回転する。実車と違ってギアのバックラッシュが大きいため、回したところですぐ反対側が動き始めないが、仕組みは理解できるだろう。

リアのデファレンシャルギア

 そして、外装がないほうがステアリングまわりのギアの動きやデファレンシャルギアの動きがよく分かる。メカの動きを楽しみたいのなら、ここで完成としてもいい。

 また、エンジンの動きが早すぎると思ったなら、片方の電池ボックスをショートさせて電池一本で動かせばV8エンジンの動きも早すぎず、ピストンやクランクシャフトの動きもじっくり見られる。

電池ボックスの片方をショートさせると電池1本で駆動することができ、回転が遅くなるのでエンジンの動作が見やすくなる

外装を組んで完成へ

 メカニズムがうまく動いたら、あとは説明書どおりに外装パーツを付けていって完成だ。ステアリングホイールをつけなおす際は、正対させておかないと引っかかって外れない仕組みなので、そこだけ注意したい。

完成したレトロフォーミュラ

 外装パーツは青色メタリックのプラスチックで作られているが、成型時の色ムラがあることや、外装カラーくらいはオリジナルカラーにしたいと塗装を考える人もいるかもしれない。

 塗装する場合には青いパーツを塗装することになるが、場所によってはパーツの裏側まで見えるところがあり、裏まで塗装する必要もある。リベットの表現の凹凸も多いので、下塗りや塗料の食いつきをよくするためにプライマーの利用といった手間がけっこうかかりそうだ。

外装はメタリックブルーだが、よく見るとプラスチックの成型時の色ムラがある

 今回のキットもせっかくなので塗装をしておきたかったが、手間がかかりそうなのと、何色にするのがを決めることができず、塗装はいったん見送っている。

見ていて飽きないキット、クルマ英才教育用にもぜひ!

 クルマのメカ好きなら、エンジンやギアの動きを見ているだけで楽しくなることは間違いないエレキットのレトロフォーミュラ。

 このキットは教育用でもあり、パッケージにはSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育のマークも付いている。完成したものを見るだけでなく、自分で組み上げることで、クルマのメカニズムを知ることができ、子供のクルマ英才教育用にも最適だ。

箱にはSTEAM教育のアイコンがあり、教育用としても有効とアピール
対象年齢は10歳以上

 接着剤を使っていないので、完成したあとにバラバラにしてもう一度組み直して構造を学ぶこともできなくはないが、完全にバラバラにするのはどれがどの部品か分からなくなってしまうのでおすすめはしない。しかし、外装パーツの取り外しなど、ある程度は外してメカニズムを見ることは可能だ。

 大人から子供まで、クルマに興味があるならぜひ一度作ってみてほしい。

3850円で、作って、見て、動かして、学べて、楽しめるのだから素晴らしいキットだ
【エレキット】レトロフォーミュラ「MR-9137」(1分10秒)
正田拓也