レビュー
【スタッドレスタイヤレビュー】ブリヂストン「ブリザックWZ-1」を旭川のドライ、シャーベット、雪上、アイス路面で体験
最後の最後まで路面を捉え、粘りのあるコントロール性を実現
2025年12月16日 07:00
スタッドレスタイヤをレポートするにはもってこいの環境
4年ぶりに登場したブリヂストンの新作スタッドレスタイヤ「BLIZZAK WZ-1」を北海道のリアルな環境で試してきた。
以前レポートした際は基本的にスケートリンクにおける氷上性能の向上が確実にあり、グリップ限界付近における滑り出しが理解しやすい粘りのあるスタッドレスであることが確認できている。果たして乾燥路からシャーベット、雪上、そしてアイスとある各種路面にどう対応できているかが見どころだ。
試乗するために訪れたのは北海道の旭川。この地で平地から山岳路までのシーンをさまざまなクルマに乗りながら試していく。取材したのは11月下旬ということもあって、平地にはまだ雪がない状況。けれどもこの日の最低気温は-1.8℃、最高気温は7.1℃である。ゴムの硬化を考えれば例え雪がなくても冬用タイヤを装着すべき温度。実際にヨーロッパでは7℃を下回る場合はスタッドレスタイヤなどが推奨されているくらいだから、乾燥路とはいえスタッドレスタイヤをレポートするにはもってこいの環境だろう。
そんな中をアルファードとアウディ Q5で走った。いずれも重量級でありスタッドレスタイヤにはまさに荷が重いと思える状況ではるが、冷えた状況であれば「WZ-1」が持つしなやかさは安心感に繋がる。早朝の路面であったとしても交差点でズリズリと滑り出すこともなく動けるところはさすが。狙ったラインをなぞるようにピシッと応答するようなタイプではないが、スタッドレスタイヤとして考えれば、まあこんなものなのかと受け入れられるくらいには走ってくれる。以前の試乗会では、真夏に「WZ-1」で走らされたことがあったが、その際は高速走行でやや危ういとも思える剛性のなさを感じたが、寒ければそんな心配もない。
ワインディングに訪れいよいよ雪道に突入する。とはいえ日向はシャーベット、日陰はアイス。高地に行けばスノー路面とあらゆる環境があるような難しい路面だった。N-BOXに乗って走ればこの悪条件を見事なまでに走破していくからおもしろい。確実なトラクションとコーナーリング性能は見事。軽さと「WZ-1」の組み合わせはここまで安心感が高まるのかとおどろくばかり。
その後、真逆ともいえるZR-V、RAV4、クラウンクロスオーバーといったSUVに乗るが、重量級で背が高くなろうとも、基本的な印象があまり変わることはなかった。縦グリップと横グリップのバランスは非常によく、滑り出しが理解しやすいところは変わらず扱いやすい。旧製品に対して氷上ブレーキで11%、氷上旋回のラップタイムで4%短縮というデータはダテじゃなさそうだ。それが雪上においても変わらずグリップバランスと限界付近のコントロール性が高かったこと、これが扱いやすくうれしい。
夕方になり日陰はアイス、日向はシャーベットという変化幅が大きくなってきたところで、ヤリスとカローラに乗った。今回の試乗車では最もバランスが良さそうな2台で走れば、これまで以上に安心感高く走れるから新鮮だ。ついついペースが上がってしまいそうになる。そんな状況でこれまで通り走っていると、シャーベット路面に突入したところで思った以上に滑るように感じた。少しペースが速すぎたのがその要因。氷上やスノー路面における性能アップに気をよくしてペースを上げるのは御法度だ。シャーベットはこれまでと同等であるのだから。
けれどもアイス性能の向上は夕方の日陰で大いに役立った。日陰のコーナー部分だけ凍っている状況があったのだが、最後の最後まで路面を捉え、コントロールしやすく駆け抜けてくれた時の安心感の高さ、これが「WZ-1」の真骨頂であると感じることができた。
最後まで路面を捉え、粘りのあるコントロール性を実現
このタイヤにはWコンタクト発泡ゴムが奢られており、そこに盛り込まれる「親水性向上ポリマー」がかなり良い仕事をしているとのこと。このポリマーはゴムが水に触れると覚醒するもの。従来のゴムは撥水してしまい、タイヤの表面を水がコロコロと転がっている状態だったが、今回の「親水性向上ポリマー」ではゴムの上をゆっくりねっとり流れていくのだとか。ボディコーティングでよく見るコロコロか、ジワーっと広がりながら水捌けしていくかの違いに近いという。
また、トレッドパターンに盛り込まれるサイプは、一部を貯水可能な「L字タンクサイプ」とすることで、トレッド表面には水を残さないようにする工夫も凝らされている。さらにタイヤの張りを均一化して接地圧分布を良好にするENLITEN TECHNOLOGYの「WZ Motionライン」も役立っているのは間違いない。
これらの合わせ技があるからこそ、最後の最後まで路面を捉え、粘りのあるコントロール性を実現してくれるのだろう。最後の最後でグリップが一気に抜けないところは好感触。リアルなシーンで走るとこれらのありがたみがよく伝わってくるタイヤだった。













