レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ブリヂストンの最新スタッドレス「ブリザックVRX3」で雪上初試乗 氷上性能に続き雪上性能を確認

ブリヂストン スタッドレスの新製品「ブリザックVRX3」を新千歳モーターランドで雪上試乗

ブリヂストンの最新スタッドレス「ブリザックVRX3」

 ブリヂストンのスタッドレスタイヤである「BRIZZAK(ブリザック)VRX3」が2021年シーズンより市場に投入された。前作のVRX2から4年ぶりとなる新作は、以前「スケートリンクでの氷上インプレッション」をお伝えしたが、およそ20%の氷上制動距離短縮というデータどおりアイス性能を実現していた。さらに、縦も横も癖なくグリップするところが好感触。旋回ブレーキや旋回脱出加速などのシーンにおける路面の捉え方が進化のポイントだと感じた。

 ここまでアイス性能がアップしてくると気になってくるのがスノー性能である。氷に食いつくために接地を増やし、溝は減少する傾向だということが引っかかった。今回はそんな不安を取り除こうというのだろう。ブリヂストンはスノー路面の試乗をわざわざ新千歳モーターランドに作って試乗会を開いたのだ。実は試乗した12月中旬、千歳には雪がほとんどなく、特設コースにあった雪は前日から人工降雪機を動かして成立させたというもの。試乗当日の外気温は朝イチで-2℃。日が昇ればどんどん環境が悪化していきそうな状況である。雪が溶けてしまわぬうちに、次々に試乗を繰り返して行く。

12月中旬、新千歳モーターランドには人工降雪機を夜通し動かしてなんとか雪道を形成させていた

 まず乗ったのは、メルセデス・ベンツ「E200」が装着していた225/55 R17サイズ。雪上コースで乗るタイヤとしては今回最も幅広いものだ。接地長はどちらかといえば短いものだが、その乗り味はどうだろう?

 動き始めてまず感じたことは、微小操舵角域における手応えの豊かさだった。ほんの少し切り始めたところからクルマ全体が反応をはじめてくれる。そこからグッと切り込んで行くところまでグリップ感が変わることなく、路面を捉え続けてくれる。トラクション性能もブレーキングもシッカリしており不安感なく扱える感覚だった。

メルセデス・ベンツ「E200」

 最も特徴的なのは、氷上と同じく旋回制動や脱出加速時であっても、雪の路面を変わらず捉えていたことだった。それがプリウス(195/65 R15)でもレヴォーグ(215/50 R17)でも、コンパクトカーのフィット(185/60R15)でも軽自動車のデイズ(155/65 R14)であっても走り味が変わらないところが凄い! 試乗後半では路面が荒れてきたが、轍に取られる感覚もなく、ステアリングはあくまで落ち着いて扱える。

 以前のように雪が詰まってグリップダウンすることもなさそうだ。前製品のVRX2が苦手としていた領域を見事に払拭したことは間違いない。

ホンダ「フィット」
日産「デイズ」
トヨタ「プリウス」

 開発陣にそのことを伝えると、「開発時にはいい意味で“鈍感”であるように心掛けました。突出した性能を出すと、例えば温度が少しでも違ってくると性能が一気にダウンしてしまいます。どこかで100点を取りにいくのではなく、あらゆる条件で95点を目指す。そんな造りがVRX3のポイントですね」とのこと。また「パターン剛性や接地面積は世代ごとに拡大する傾向にありますが、VRX2の当時はサイプのジグザグ・引っかき成分(エッジ成分)を少し落とし、パターン剛性を採ったところがありました。耐摩耗性能(ライフ性能)を上げる狙いがありました。その分、溝でなんとかグリップさせようという方向性でした」と言う。

幅の異なるタイヤもそれぞれとことん作り込んでいる
225/55 R17(メルセデス・ベンツ E200)
195/65 R15(トヨタ プリウス)
155/65 R14(日産 デイズ)

 VRX3は溝が減る方向だが、サイプを増やし、エッジを増し、全体でグリップさせる方向性となった。パターン剛性、接地面積は歴代最高。引っかき成分はVRX第一世代と同等。それでいて耐摩耗性能も17%引き上げている。

 ブロックの形状や向きに応じてサイプ角度を変更し、パターン剛性をコントロール。周方向溝(リブ)の配置やブロック形状のい均一化により、接地圧分布をさらに均一化できたことも、あらゆる領域に効いているのだろう。

タイヤが路面の雪をしっかりかいているのは、窓の外を飛び交う雪でもよく分かる

 最後に愛車と同じレヴォーグに乗って、ちょっと元気に走らせてみたが、狙ったところに行けるコントロール性は魅力的。多少リアを振り出しながら乗ったとしても、グリップの抜け方にクセがなく、ジワリと滑り出すところが扱いやすい。

 また、ドライ路面での感触を確認しに一般道も試走した。試乗したのは一般的な重量のプリウスと、重量級のアルファードの2台。VRX3は夏タイヤ同等とまでは言わないまでも、相当ロードノイズが小さく、静か。音楽でもかけていれば、ほとんど気にならないレベル。昔のスタッドレスタイヤのようにゴムがよれる感覚も少なく、いたって普通に走ることができる。

北海道千歳の一般道も雪はまったくなかったが、逆にドライ路面の試乗を堪能できた

 実は愛車にVRX2を装着させているのだが、これまでは真っ直ぐでシッカリとブレーキして一気に曲げ、真っ直ぐ立ち上がることを意識して乗らなければならないようなところがあった。VRX3はそんなことをせず、どのようなところでもマイルドに扱える。スイートスポットが拡がったことは明らか。これもまた、いい意味で“鈍感さ”を持っているということだろう。これなら氷でも雪でも気兼ねなく走れそう。やはり4年ぶりの新作はあらゆる領域で感心できる仕上がりだった。こりゃ、買い替えかな……。

VRX3とスリックタイヤを履いた三輪車も用意されていたのでもちろん試乗。人間の力でクルマのタイヤ3本を回すのはなかなかの重労働だった
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。