レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ブリヂストンの最新スタッドレス、「ブリザックVRX3」の氷上性能進化をスケートリンクで確認

ブリヂストンの最新スタッドレス「ブリザックVRX3」の氷上性能をスケートリンクで確認してきました

発泡ゴムが進化したVRX3

 ブリヂストンの乗用車用スタッドレスタイヤが4年ぶりにモデルチェンジし「ブリザックVRX3」として発表された。今回はこのタイヤをスケートリンクで試乗した模様をお伝えする。新旧比較で見えてくる性能差は一体どんなものになるのか?

 ブリヂストンのブリザックシリーズは雪国での支持率が高く、北海道/北東北主要都市における一般ドライバー装着率は46.2%を記録し、北海道札幌市におけるタクシーの装着車は69.5%にもなるという。だが、その状況からさらなる高性能を目指して進化を果たしたのがVRX3というわけだ。コンセプトとするところは、氷上性能、ライフ性能、そして効き持ちの向上。ブリヂストン曰く「新次元のプレミアムブリザック」だという。

ブリザックVRX3のタイヤパターン。接地面積のしっかりとしたパターン

 そのために行なった改良はまず、ゴムの変更だ。氷の上で滑らなくするには氷上に浮いている水膜を除水すること。そこで、ブリヂストン十八番の発泡ゴムを改めた。従来のVRX2に搭載されていた「アクティブ発泡ゴム」は、円形の断面形状をした小さな穴に吸水していたが、今回のVRX3ではそこを楕円形とすることでさらに多くの水をゴムが蓄えられるようになったところがポイントとなる。これを今回は「フレキシブル発泡ゴム」と名付けたそうだ。

 さらに、柔らかさを持続し長期間の使用でも性能ダウンが小さくなるように「ロングステイブルポリマー」を配合。これはSUPER GTをはじめとするモータースポーツからのフィードバックがあったという。

 ゴム部分にオイルより分子量の高い「ロングステイブルポリマー」を配合することで、経年劣化によってオイルが抜けにくく、柔らかさを持続できるのだとか。4年経過後でも従来品であるVRX2の新品以上の性能が保てるというから驚くばかり。見えない部分がかなり違う、それがVRX3の凄さかもしれない。

トレッドパターンの改良

 一方で見える部分のトレッドパターンについても改良が与えられた。一見するとかなりシンプルな作りになったVRX3のコンセプトは、従来の「水を除く」のではなく、「水を導く」ことに気を配ったのだという。特徴的なのはサイプの作りで、一部はサイプの溝を貫通させず、端を止めているところがポイントの1つ。これはサイプ内への水の逆流を抑える効果があるそうだ。

 また、ブロックの形状や向きに応じてサイプ角度を変更し、パターン剛性をコントロール。周方向溝(リブ)の配置や、ブロック形状の均一化により、接地圧を均一化しているところもポイントだ。結果、17%の摩耗ライフ向上を実現している。

VRX3ではほかのスタッドレスタイヤ同様、タイヤ幅によって主溝の数が異なっている。こちらは幅広タイヤ用のパターン
こちらは主溝が3本となるタイヤ用のパターン。中央部の構成が異なっている
左がVRX2のトレッドパターン、右がVRX3のトレッドパターン。発泡ゴムそのものの進化も大きいのだが、大きな氷上性能向上を果たしたVRX3の思想がうかがえる

スケートリンクで氷上性能を確認

 こうした性能アップを体験するために、まずはスケートリンクで旧製品・VRX2の性能を把握。その後にVRX3に乗り換えて同じコースを走り出す。

スケートリンクで円旋回やブレーキ性能を比較・確認した

 円旋回で感じられたことは、ステアリングの確かな操舵感だった。旧製品は限界域で唐突に滑り出すようなフィーリングがあったのだが、VRX3はクククッと限界域でこらえながら少しずつ滑り始める感覚があったところが特徴的だった。旋回ブレーキや旋回脱出加速におけるライントレース性能は確実にアップしており、旧製品のような難しさがない。かつてブリヂストンのスタッドレスは縦方向が際立ちすぎというイメージがあったが、今回は縦も横もバランスされている感覚があったのだ。数値では出にくい肌で伝わるフィーリング面が大幅に違う、それがVRX3のよさではないだろうか。

 とはいえ、縦方向のトラクションやストッピングパワーについても性能向上は十分すぎるくらい。ABSが作動するようなフルブレーキング状態では、フロントタイヤだけでなく、リアタイヤもきちんと引っ張ってくれる感覚があり、結果的に半車身くらい手前で止まってくれる感覚があった。おかげで旧製品であった制動時のフラつきはなく、真っ直ぐ確実に止まれていたところが特徴的だ。ちなみにブリヂストンのテストでは20%制動距離が短くなっているデータが得られている。

ブリザックVRX2
ブリザックVRX3

 ここまで氷上性能が高くなると、気になるのはスノー性能だ。溝面積は旧製品よりも少なくなっており、接地面拡大による氷上性能アップもVRX3の進化点。それを開発陣に問うと「ブロックサイドのエッジ部を改良することで、スノー路面での引っ掻き効果を保っています。ブロックの個数は旧製品も多いですのでご安心ください」との回答があった。

 氷上性能の向上は明らかなものがあったVRX3。それ以外の部分は今年の冬にきちんとスノー路面を走ってレポートしたいと思う。

氷上性能は圧倒的に進化していました。降雪シーズンになったらスノー路面で雪上性能を確認してみたいと思います
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛