レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】横浜ゴムが4年ぶりに刷新した「アイスガード 7」、その進化を雪上&氷上で体験してみた

2021年9月1日 発売

オープンプライス

北海道のテストコースで新アイスガード 7を試乗してきた

溝エッジ量を確保して氷上性能と雪上性能が向上

 9月1日より発売となる横浜ゴムの新世代スタッドレスタイヤ「iceGUARD 7(アイスガード セブン)」に試乗してきた。今年の2月に北海道で行なわれたこの試乗会では、テストコースにおける氷上性能や雪上性能の確認だけでなく一般道試乗も行なった。限界性能だけでなく一般ユースも含めて、新たなる横浜ゴムのスタッドレスタイヤの性能をお伝えする。

 その名が示す通り第7世代に突入したアイスガード 7は、まず接地とエッジの両立技術によって、横浜ゴムのスタッドレスタイヤ史上最大の接地面積と溝エッジ量を実現した専用パターンが見どころの1つだ。IN側とOUT側で大きく違う顔つきをするこのタイヤだが、一見するとセンターより内側のIN側に配される「パワーコンタクトリブEX」と「マルチベルトブロックEX」と名付けられたセンターリブの形状については旧型を踏襲した形状となっていると伺える。基本的な考え方としては縦方向のグリップをIN側、横方向のグリップをOUT側で稼ごうというわけだ。

愛車と同じレヴォーグSTIで試乗ができたのは貴重な経験

横浜ゴム、新開発「ウルトラ吸水ゴム」採用の「アイスガード 7」 氷上性能14%、雪上性能3%向上させた乗用車用スタッドレスタイヤ新商品

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1340852.html

 サイプはブロックを貫通するものが少なくなり、そこで接地面積の拡大と剛性アップを図っているように見受けられる。また、サイプについては50%摩耗時にサイプが太くなる新形状の「クワトロピラミッド グロウンサイプ」が搭載され、摩耗した状態でも性能をキープできるような工夫が施されている。一方で大きく顔つきを変えたのがOUT側に設けられた「コレクティブビッグブロックEX」だ。ジグザグに刻まれた縦溝がこれまでには搭載されていなかったポイントの1つ。これにより雪上コーナーリング時のグリップと排雪が見込めるのだという。

クワトロピラミッド グロウンサイプ

いろいろなクルマで雪上性能をチェックしてみた

 そんなアイスガード 7の雪上性能をまずは試した。クルマはマイカーでもある新型レヴォーグSTI。装着サイズは215/50R17 91Qだ。レヴォーグはスタッドレスタイヤのメーカー指定サイズが17インチであるため、夏タイヤでは18インチが標準のSTIグレードであっても17インチとなる。

 走り始めて感じたことは、トラクション性能やブレーキング性能の高さはもちろん、際立って感じたことは横方向のコーナーリンググリップがかなり高かったことだ。ノーズの入りもすこぶるよかったのだ。フロントのしっかり感とステア初期の応答性が好感触。横浜ゴムのスタッドレスタイヤは縦と横のグリップバランスのよさが特徴だったが、それが全体的に底上げされたかに感じる。後にハリアーやプジョー508にも試乗したが、その印象は基本的に変わりなかった。

4WDのレヴォーグSTI、SUVのハリアー、FFセダンのプジョー508でも試乗
他にも新旧をその場で比較した試乗を行なうことで進化のポイントがより分かりやすかった

 タイヤサイズが235以上では太めのセンターリブがさらに追加されるパターンナンバー「IG70A」(通常モデルは「IG70」)が採用されている。低偏平タイヤになり接地面の縦方向が短くなる傾向にあるタイヤとなり、縦グリップのダウンが懸念されるところ。だが、GRスープラ(装着サイズはフロント/35R19 96Q リア275/35R19 100Q)で走ればトラクションはなかなか。トルクが大きいクルマなので難しさはあるがコントロール性は良好。そこからスラロームを繰り返したが、滑り始めのコントロール性についても扱いやすさがあった。

トルクの大きなスープラで試乗。タイヤはしっかりと圧雪路面を捉える
手前が235以上のサイズでセンターリブが追加された「IG70A」、奥が235以下のサイズで「IG70」となる
コントロール性も良好
重量のあるミニバンでも試乗。幅広い車種に対応していることを確認できた

横浜ゴム、第7世代へと進化したスタッドレスタイヤ「アイスガード 7」に投入された新技術を技術統括の野呂政樹氏が解説

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1340840.html

新開発のコンパウンドで氷上性能はどう進化しているのか?

北海道タイヤテストセンター(TTCH)にある屋内氷盤試験場
従来品アイスガード 6での走行
新製品アイスガード 7での走行

 続いてはアイス性能について。アイスガード 7が新たに搭載したのは、専用コンパウンドとなる「ウルトラ吸水ゴム」である。これは従来から搭載されていた「新マイクロ吸水バルーン」に加えて、「吸水スーパーゲル」と「マイクロエッジスティック」をさらに与えたもの。従来品に比べて吸水率が7%も向上したことで、氷の上にある水膜をさらに除去し、以前よりも氷にゴムが食いつくようになったというわけだ。さらに、従来同様に「オレンジオイルS」も搭載し、4年後でも性能低下が少なくなるように設計したという。

 室内氷板路においてプリウスを使って30Km/hからのフル制動を試みる。まずは旧製品でそれを行なったが、そもそも30Km/hまで加速することが難しい。フル制動を開始するとテールがやや踊っているところが特徴的。最も短く止まった時で制動距離は約22mだった。アイスガード 7で走り始めると、まず速度を乗せやすいことが圧倒的に違う。氷に食いついている感覚はかなり高い。そこから制動を開始すると、旧製品で感じていたテールのフラつきがなくなっているところが安心感に繋がる。制動距離は約19mという結果だった。

【横浜ゴム】新スタッドレスタイヤ「アイスガード 7」と「アイスガード 6」の氷上制動テスト(ドライバー橋本洋平氏)(33秒)

 こうして極限状態を知った後に一般道試乗を行なうと、安心感がかなり高いタイヤであることが改めて伺える。ステアリングを切り始めた瞬間に感じられる手応えやブレーキした瞬間に得られる確かな制動感は、これまで以上に安心感が高まっていることを体感できた。例え滑ってしまったとしても、コントロールしやすいところもポイントの1つ。全体的なグリップが高まったとしても、コントロール性を失っていないところが横浜ゴムらしいスタッドレスだと感じることができた。

一般道の試乗もとても安心感が感じられた
発売サイズは155/65R13 73Q~245/40R20 95Qの全89サイズ
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。