レビュー

【オールシーズンタイヤレビュー】ミシュランの新製品「クロスクライメート2」の進化を北海道の雪上で確認

2021年8月18日 発表

ミシュランの新オールシーズンタイヤ「クロスクライメート2」を北海道の雪で試乗してきた

人気のオールシーズンタイヤはどう進化した?

「雪も走れる夏タイヤ」というキャッチフレーズで登場したオールシーズンタイヤ、ミシュランの「クロスクライメートシリーズ(CROSS CLIMATE SERIES)」は、2019年に日本市場に投入された。夏タイヤでも冬タイヤでもない新たなるカテゴリーとして不安の船出だったものの、ユーザーからの評判は高く、ネット上の人気投票でこのカテゴリーナンバー1の人気を得るという結果に。投入初年度は販売目標の300%近くの販売本数を達成したというから驚きだ。だが、そこに満足することなく、早くもミシュランは乗用車用の「クロスクライメート+(プラス)」の後継となる「クロスクライメート2」を登場させた。このタイヤは環境性能、夏性能、冬性能、そして性能維持性の4つを従来よりも性能を引き上げたところが特徴だ。

 オールシーズンタイヤといえばタイヤの中心からショルダーへと広がるV字型のトレッドパターンが特徴的だが、クロスクライメート2ではそれがより際立った感覚がある。「新Vシェイプトレッドパターン」と名付けられたそれは、前作よりもV字をショルダーに向かって寝かせるようなラインを描くようになったところがポイントだ。これが排水、排雪性能に貢献し、ウエットでも雪上でも効くパターンということのようだ。

新製品のクロスクライメート2

 V字を描くブロックは、エッジ部に施された面取り加工によって、ブロックの倒れ込みを防止するV-Ramp Edgeにより、接地面積の拡大を実現。ドライ路面における制動力が向上したとのこと。そのブロックの中心部にあるLEVサイプは、ブロック同士が互いに支え合い、これまた倒れ込みを防止。耐摩耗性能と転がり抵抗の低減に寄与しているそうだ。摩耗への対策はP-Edgeと名付けられた溝内部にある第二のブロックが役立つ。これは摩耗した時に出現するもので、ブロック側側面に凹凸と溝が浮き出てくることで、排水、除雪、エッジ効果などを継続できるように考えられている。結果としてどんな路面に対しても長きに渡って対応可能となるらしい。

新Vシェイプトレッドパターン
LEVサイプやP-Edgeを採用
摩耗度が分かるトレッドウェアサイン

横方向のグリップが高められ好感触

 今回はその新製品クロスクライメート2を、今年の2月に北海道で試乗してきた模様をお伝えする。まず試乗したのは圧雪路である。FFモデルのゴルフ7(装着タイヤサイズは205/55R16)で走ったのだが、発進時のトラクションはなかなか。普通の夏タイヤじゃ空転が止まらないであろう状況をいとも簡単にスタートしてくれる。さらにスラローム走行をしてみてみると、横方向のグリップがかなり出るようになってきた印象だ。

ゴルフ7のESP(エレクトロニック・スタビリゼーション・プログラム)はOFFの状態で試乗

 従来品は縦に対して横が弱い傾向があったが、そこが改まっていたところは好感触。もちろん、スタッドレスタイヤと比べてしまえばグリップ感は薄いのだが、安全運転をすれば確実に走破することは十分に可能だ。平たく言ってしまえば10年くらい前のスタッドレスタイヤのような感覚に近い。多少は破綻するが、手の内に収められるようになってきたというのが本当のところ。

 ここで意地悪なテストとして、6%勾配路と8%勾配路の途中でクルマを一旦停めて、そこからスタンディングスタートを試みたが、クルマはジワリと動き出してくれたからひと安心。これなら非降雪地域のドカ雪程度なら十分にクリアすることができるだろう。

6%勾配路と8%勾配路でのゼロ発進テスト
下り勾配でのスラローム走行

 ただし、勘違いしてはならないのが、氷上のグリップはないに等しいと思っていたほうがいい。これはメーカーも推奨していないため、間違いはないだろう。動けなくはないが、絶対に破綻したり、スタックするのは目に見えている。凍るような路面に出向くことがあるなら、あらかじめスタッドレスタイヤを装着するか、このタイヤ+チェーンを携行すべきだ。そこがスタッドレスタイヤとの違いであることを頭に叩き込んでいたほうがいい。

定常円を使い従来製品との比較試乗も行なった

 また、トヨタの「カローラ」を使い定常円を使った試乗も実施。従来製品のクロスクライメート+では少しずつ旋回円が広がってしまい、修正舵をあてる操作が必要となったが、同じ速度ならクロスクライメート2は比較的安定して旋回ができた。また、修正舵についてもクロスクライメート+よりも素直な印象だった。

 さらに試乗では「性能の長持ちさ」を体感できるようにと、あえて溝を2mmまで減らしたクロスクライメート2も用意されていた。当然グリップの限界値は新品よりも劣ってしまうものの、残り2mmの溝でも意外とグリップするんだなと正直驚いた。

残2mmまで摩耗させたタイヤ
新品のタイヤ

 ドライ性能については後日お伝えするが、簡単に言ってしまうとオールシーズンタイヤの割にはかなり静かであり、言われなければ気が付かないレベルになってきたところがポイントだと感じた。また、ドライグリップも十分なものがあり、ヨレなどを気にせずに走れるようになっていたことは驚きだった。これならそろそろオールシーズンもアリかもしれないと正直思えたほどだ。

 このように、1年を通じて付き合うことが出来そうなクロスクライメート2なら、夏タイヤからの履き替えでも十分に満足できるはず。まだ冬を迎えるにはチト早いが、タイヤ交換時期を迎えているのであれば今チョイスするものアリ。次なる選択肢としてオールシーズンを入れてみてはいかがだろうか? 特に非降雪地域のユーザーにお勧めしたいタイヤである。いざという雪で動けるか否か。この違いは相当に大きいのだから。

ドライ路面での試乗については後日お伝えしたい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。