レビュー
【スタッドレスタイヤレビュー】グッドイヤーのニューモデル「アイスナビ 8」、乾燥路&雪道を走って感じたその性能
2021年8月19日 05:00
ライフ性能も重視
グッドイヤーの新スタッドレスタイヤ「ICE NAVI 8(アイスナビ エイト)」は、多くのユーザーが求めるスノー/アイス性能の大幅な強化を図りながらも、なおかつ相反するドライ/ウェット性能を高い次元で両立させている。
中でもドライ路面でのノイズやライフ性能にも力を入れている。このところ業界の動向を見ると、ドライ性能でのライフ性能を多少犠牲にしてもアイス性能を上げる傾向が見受けられるのに対し、グッドイヤーとしてはライフも重要な性能と位置付けており、その中でアイス性能をいかに上げていくかに取り組んだ。また、ライフというとドライ性能の話と思われがちだが、雪上ではゴムの柔らかさではなく溝がどれだけ残っているかが大事。スタッドレスタイヤにとってライフは立派な冬性能と認識しているという。
概要は別記事でも述べているとおり。前身の「ICE NAVI 7」に対しては、非対称パターンの採用をはじめ、ランド比、密着性能、エッジ成分の向上などにより、氷上ブレーキおよびコーナリング性能がとくに向上している。
グッドイヤー、新スタッドレスタイヤ「アイスナビ 8」 初の左右非対称パターンで氷上性能に加えライフ&低転がり性能も向上
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1339699.html
その実力のほどをうかがうべく、195/65R15サイズのアイスナビ 8を履かせた「プリウス」で目指したのは志賀高原。限界性能はさておいて、ちょっと長めの距離を走り、ウインタースポーツを楽しみにいくとか降雪地に帰省といったシチュエーションでどう感じたのかをお伝えしたい。
ドライ性能に驚く
都心を抜けて、関越道~上信越道を走る。片道約280kmの旅。天候は晴れ。高速道路をしばらく走ってみた印象だが、本当にサマータイヤに近い感覚で走れることに感心。ふらつきの小ささ、微舵の応答、レーンチェンジでの収束のよさなどはサマータイヤそのもの。音についても、パターンノイズは実に31%、ロードノイズも良路と悪路での違いはあるにせよ、騒音エネルギーとしては16%も低減しているというだけあってかなり静かだ。これでちゃんとアイス路面を走ることができれば御の字というところだが、果たしてどうだろうか。
志賀高原にさしかかったあたりの気温は-10℃、さらに標高の高いあたりで-13℃。クルマから降りて歩いてみると、昨晩に降った新しい雪は水っぽくなく、片栗粉のようなサラサラのパウダースノー。除雪車が通って踏み固められ、ところどころ凍っているという状況だ。
そこをトラクションコントロール(TRC)がONのまま走ると、発進時の感覚からして路面をしっかり掴んでいる感覚が伝わってきて、アクセル開度の小さい状態で走っていくと、やはり全体的に滑る量が少ないことを感じる。ミューが低くてTRCが作動してもおかしくない路面でも、思ったよりも作動せずに粘る。試しにアクセルを踏み増したりしてみても、感触としてはかなりTRCが介入しにくい。ブレーキもよく効いて、何度か試してみても予想よりも手前で止まる。エッジ成分の増加による優れたひっかき効果や、柔軟性を高める極小分散シリカの採用により路面への密着が高まったことが効いているようだ。
タイヤのトレッドを見てみると、サイプには雪が詰まっているが、縦横のグルーブの端の方はキレイになっている。こうした場所では、路面をつかみながらもいかに排雪するのが求められるが、それを上手くやってのけていることの表れだろう。
思った通りに動いてくれる
ところで、プリウスというのは降雪地ユーザーにとっては“スタックしやすいクルマ”と認識されている。その理由が、歴代モデルではTRCをOFFにできない仕様になっていたから。ひとたびハマるとパワーを絞り込んでしまうため抜け出せなくなるのだ。
そこで現行型ではOFFにできるようにされたのだが、途中ややスタック気味になったところではOFFで頑張るまでもなく、むしろ空転し続けそうな感じだったところ、ONでじわっとアクセルを踏むと無駄に空転することなくスルッと脱出できたのに驚いた。むろんこれはタイヤの力によるところが大きく、それだけグリップしているということにほかならない。
絶対的な性能は競合や新旧製品を同条件で比べてみないと分からないものの、アイスナビ 8は思ったとおりに動いてくれるところが好印象だ。路面のインフォメーションもあるので滑り出しも分かりやすく、動きが読みやすくてコントロール性にも優れる。
これには乾燥舗装路でも感じた、剛性の高さも効いているに違いない。トレッド部の剛性を高める専用構造や、ブロックの倒れ込みを抑える技術等の内容により、剛性がしっかり確保されているから不確実な要素が減って、より意図どおりに走れるようになる。さらには非対称パターンとプロファイルの最適化によりOUT側の接地面積が増えて、より広い範囲で路面に均一に接地するようになり、旋回時のグリップが向上したことも効いて、上り勾配のワインディングでも「このクルマは4WDだったっけ?」と思うぐらいトラクションがあるので、思わずペースが上がってしまったほどだ。
ところでグッドイヤーというとオールシーズンタイヤの評判も上々で、雪道でもけっこう走れてしまうので、どちらを選べばよいのかと迷ってしまう人もいることだろうが、それでもスノー性能はアイスナビ 8が上まわるし、アイス性能は圧倒的に上だ。その上で、ドライの諸性能とライフ性能も上がっているのだからいうことなしだ。
いろいろ相反する要素を兼ね備え、あらゆる状況にいい形で対応できるフレキシビリティ=柔軟性(やわらかいという意味ではなく)はピカイチの、いわば人にやさしいスタッドレスタイヤ。これならどんな冬道も、何も不安に感じることなくより安全で快適に走れるに違いない。