レビュー

【オールシーズンタイヤレビュー】ミシュランの新「クロスクライメート2」 ドライ&ウエット路面での進化のほどは?

2021年10月8日 順次発売

15インチ~20インチまで計61サイズ

オープンプライス

ミシュランの新オールシーズンタイヤ「クロスクライメート2」を舗装路で試乗してきた

オールシーズンタイヤと言われなければ気が付かないレベルの高いグリップ

 北海道では初雪を観測したというニュースが入ってきた。となれば、そろそろクルマの冬支度をと推奨したいが、非降雪地域の人々にはまだピンとこないのが正直なところだろう。そんな時にピッタリなのが「冬も走れる夏タイヤ」というキャッチコピーで登場してきたオールシーズンタイヤ、ミシュランの「クロスクライメートシリーズ(CROSS CLIMATE 2)」である。夏タイヤとしての性能を持たせつつも、雪道も許容してくれるこのタイヤは、いざという時に帰宅できるか否かという状況で威力を発揮してくれる。

 以前、冬路面でテストした模様をお伝えしたことがあるが、凍っているような状況に突入しなければトラクションを得られ、動けなくなるようなことはなかった。横方向のグリップについては弱いという特性があるものの、旧製品に比べればその辺りもずいぶんと改善されたことが印象的。冬路面でもかなり使えるようになった、それがクロスクライメート2の冬路面での実力だ。

【オールシーズンタイヤレビュー】ミシュランの新製品「クロスクライメート2」の進化を北海道の雪上で確認

https://car.watch.impress.co.jp/docs/review/1344535.html

オールシーズンタイヤの「クロスクライメート2」

 では、舗装路における特性はどうなのか? それを探るため、舗装路のテストコースを走ってみる。クロスクライメート2が持つ独特なVシェイプトレッドパターンは、果たしてどんな結果を生み出すのか? 前作よりもV字パターンをショルダーに向かって寝かせるようにしたことで、排雪性能やウエット性能を向上させたというが、乾燥路面では果たして?

 まずは旧製品の「クロスクライメート+」でテストコースを走り出すと、ゴロゴロとしたフィーリングと、操舵した時にシャーというパターンノイズが出るところが気になる。聞けばV字シェイプトレッドパターンの角度とスリップアングルが合致した時に音が出やすいのだとか。

高速外周路からのスラロームも実施した

 続いてクロスクライメート2に乗り換えるとゴロゴロとしたフィールはなくなり当たりがソフトな感覚になったことが伺える。突き上げも少なくなった印象だ。また、操舵した時のノイズもかなり軽減された感覚がある。クロスクライメート2は旧製品に比べてブロックはやや低く、コンパウンドは柔らかい方向になったこと。そしてV字パターンの角度が改まったことがこの進化に繋がっているのだろう。

 ただ、ネガがないわけじゃない。純粋な夏タイヤと比べてしまえば微小操舵角の応答遅れがあり、ダブルレーンチェンジなどでの揺り返しも感じられる。近年のスタビリティコントロール付きのクルマであれば全く問題のないレベルだが、ドライ路面では純粋な夏タイヤと同じとはならないことは頭に入れておいたほうがよさそうだ。

車格やタイヤサイズに関係なく高い性能を発揮するクロスクライメート2

 とはいえ、その後ワインディング路において元気に走らせてみたが、グリップレベルはかなりのもので、これがオールシーズンタイヤだと言われなければ分からないレベルにあることも確かで、意外と粘って路面にくいついているは明らかだった。ハンドリングとか乗り味とかうるさく言わない人にとっては、十分すぎる性能がある。走りにうるさい人だったとしても、ステアリングの切りはじめだけを丁寧に運転すれば、納得できるのではないだろうか?

ウエット路面での排水能力の向上を体感

 最後は気になるウエット性能だ。水深3mmほどのウエット路面でフル制動時の性能を旧製品と比較。80km/hからのフル制動テストで、計測機器を搭載してトライする。まず、数値的なことの前にフィーリング面ではブレーキを踏んだ瞬間の減速感がかなり向上したように感じた。計測結果は旧製品のクロスクライメート+が34.4m、クロスクライメート2が33.7mだった。

ウエット路面における制動力の進化も確認できた

 続いて、67.5Rの円旋回コース上に人工的に作った水たまりに80km/hで突入するというテストを、テストドライバーの脇で体験させて頂く。クルマがロールしGがかかり続けた状況から、水たまりに乗ることでそれが一気に消え去り、クルマがアウト方向へとはらんで行くという危険なテストで、新旧比較が行なわれた。

 まずは旧製品でそれを行なうと、グリップを瞬間的に失い、クルマは30°ほどノーズがアウト側へはらんで行った。その時に、フロントガラスの視界はゼロになるほど水が跳ねていたことが印象的だ。新製品のクロスクライメート2では、同じ状況でもちろんアウト側にはらむのだが、グリップの抜けたほうが穏やかだったことが驚き。また、フロントガラスに水がかかることなく、視界が開けていた。横方向にきちんと排水できている証拠といえるだろう。

普段は味わえないハードなテストシーンを体感
定常円走行で横Gがしっかりとかかった状態で水たまりへ
瞬時にグリップは失われアウト側へとはらむ
約車両1台分ほどアウト側でずれた状態で水たまりを通過

 このようにクロスクライメート2は、ドライもウエットもかなり性能が向上したことは明らか。これなら躊躇することなく装着することができるだろう。スタッドレスタイヤほどの性能は必要ないという非降雪地域にお住まいの方々なら、いざという時の保険と考えて、このようなオールシーズンタイヤを選択するのもアリではないだろうか?

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はスバル新型レヴォーグ(2020年11月納車)、メルセデスベンツVクラス、ユーノスロードスター。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。