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レゴとポルシェが共同開発した大人向け「レゴ ポルシェ 911」はこうして生まれた!
2021年3月3日 11:38
- 2021年3月2日 開催
レゴジャパンとポルシェジャパンは3月2日、共同で開発した新製品「レゴ ポルシェ 911」の実物展示会を開催した。レゴ ポルシェ 911は3月1日に発売され、「全国のレゴストア」で購入できる。価格はオープンプライス。
展示会では大人向け商品のブランドマネージャーを担当しているレゴジャパン ブランドマネージャーの杉本杏菜氏と、ポルシェジャパン 広報部 部長の黒岩真治氏が、商品の開発秘話や細部のこだわりなどを説明した。
大人のために作られた、大人のためのレゴとは?
日本でレゴは「子供の知育玩具」的なイメージが先行しているが、欧米では大人が普通に楽しんでいる当たり前のカルチャー。また、レゴが行なった調査で「成人男性の73%がリラックスするための新しい手法を探している」という結果に加え、コロナ禍により家で過ごす時間が増えている背景もあり、大人向け商品のニーズも高まっているという。
また、レゴグループは「遊ぶ」という理念をとても大切にしていて、遊ぶことが普段の生活に充実度や豊かさをもらたすと捉え、無心になって組み立てに没頭する「ジョイ オブ ビルディング(Joy of Building)=作ることの楽しさ」や、作り終わった後の達成感・満足感が得られる「プライド オブ クリエイション(Pride of Creation)=作ることの誇り」の2つの瞬間は、子供から大人まで共通して楽しめる要素であると定義しているという。
大人向けレゴの商品開発コンセプトは「パッションポイント」で、大人が何に対して情熱を持っているかを探り、「コアなファンがいる分野をセレクトして商品開発をしている」という。カテゴリーは大きく8つに分かれていて、エンターテインメント関連であれば映画やファンタジー、乗り物関連であればクルマやバイクやそれ以外も展開。旅行や歴史関連であれば建築物などを開発している。ちなみに、レゴではアイデア出しから商品化まで2~3年かかるという。
さらに大人向け製品は2020年から黒を基調にしたパッケージに変更し、最近話題になっているのがフラワーブーケや盆栽、さらに著名人や映画のキャラクターをモザイクアート風に作るシリーズ、アプリと連動して自動演奏ができるグランドピアノなど、さまざまなパッションポイントが商品化されている。
第2世代の「ポルシェ 911」が選ばれた理由
続いてポルシェジャパンの黒岩氏から、今回ポルシェ 911が題材となった経緯が語られた。
そもそもこのポルシェ 911は、1963年に初代がデビューし、2018年に発売された現行モデルで第8世代となるロングセラーモデル。丸いヘッドライトと低く落ち込んだボンネット、ルーフからリアへなだらかに流れるフライライン、水平対向6気筒エンジンをリアに搭載し、2×2のシートといった特徴的なパッケージングを今もなお継承している。また現行911モデルは、日本国内のポルシェ販売総数の約25%を占めるほど販売比率が高く、2020年度は全世界でドイツとナンバー1を争うほどの販売比率の高さだという。
今回商品化された911は第2世代の930型で、ポルシェR&Dのデザイナーとポルシェミュージアムの担当がきっちりと監修して開発しただけに、細部まで徹底的にこだわって作り込まれている。
「タルガ」は初代モデルからあるオープンモデルのカブリオレで、安全規制に対応するためにロールバーを装着しているのが特徴。初代のロールバーはシルバーで、第2世代のみ黒が選べたという。もちろん現行モデルにもタルガは設定されていて、その美しいスタイリングは、特にファッション関係者に人気があるという。ちなみに“タルガ”という名称は、911が大活躍したイタリアのシチリア島のロードレース「タルガ・フローリオ」から名付けられている。
一方の「ターボ」は、ポルシェがトップモデルに付けている名称で、第2世代から市販車に導入された。当時はターボエンジンを搭載させたモデルの名称であったが、今ではターボエンジン搭載という概念を超えた称号となっていて、実際にEV(電気自動車)のタイカンはエンジンを搭載していないが、トップモデルは「ターボS」となっている。
そして、このキットの最大の特徴は1つのキットでタルガとターボのどちらでも作れるという点で、第2世代でターボが市販車に導入されたことから、まさにこの2in1キットにピッタリな題材とのこと。実際に組み立てを体験した黒岩氏は「途中までは共通部分を組み立てていき、中盤でタルガがターボのどちらを作るか決める分岐点がくるのですが、本当に悩みますよ」と自らの体験談を語ってくれた。この途中から完成系を選択できるタイプはレゴでも初の試みとのこと。
また、ボディカラーはバンパーなど黒い部分がより際立つことと、タルガとターボのどちらのシルエットにも似合うという観点から、実際にはたくさんある色の中からホワイトが選ばれたという。
インテリアも細部にまで徹底的にこだわっていて、2シーターのスポーツシートとダッシュボードはポルシェ 911の代表的なダークオレンジとヌガーを採用。また、サイドブレーキ、ギヤシフト、ステアリングを動かせるうえに、フロントシートは前傾させて後席のベンチシートにアクセスできるようにするなど詳細まで見事に再現されている。
製品は1458ピースからなる組み立てキットで、タルガ専用パーツとターボ専用パーツがあるため、すべてのパーツを使用する訳ではないが、黒岩氏が制作に費やした時間は約6時間という。黒岩氏は完成度の高さだけでなく、組み立て説明書の出来栄えのよさにも言及。「文字を使わない図だけの説明なのに、とても分かりやすい」という説明書の総ページ数は268ページにもなる。
このポルシェ 911の特徴的なライトやバンパー、シートなどクラシックな雰囲気を完全に再現しているキットの驚くべきポイントが、新たに専用金型を起こしたパーツが2つしかない点。なんと「リアフェンダー」と「オーバーフェンダー」だけは既存のパーツでは再現が難しかったため新規で作ったというが、それ以外のパーツはすべて既存品。よく見れば家の屋根に使われていそうなパーツや、宇宙船のアンテナに使われていそうなパーツなど、実際に手に取ってみると発見があるのも楽しめる要素のひとつ。
また、キットには欧州仕様、アメリカ仕様、日本仕様の3種類ナンバープレートが入っていて、群馬ナンバーに関してはレゴのデザイナーが日本を訪れた際、某アニメで見た群馬県の榛名山を実際に走り感銘を受け「ポルシェが走るシーンにピッタリだ」と感じたことが理由という。また「群馬93 10-295」「P51AK3」「S-CU 6000」の数字には、制作したデザイナーしか知らない隠された意味があるというが、今のところ明かされていない。
黒岩氏は「実際に組み立て始めると、自分の中の童心が掘り起こされて、完全に没頭してしまいました。工場の組み立ての気持ちよさというかパーツとパーツがフィットしていく達成感はしびれますよ。また、今までたくさんのリアルなミニチュアカーを見ていますが、このレゴ感とほどよいリアリティが天才的です。個人的にはドアの組み立てが一番感動的でした。ドアノブとミラーがこう組み立てるんだ! と、想像つかないような組み立て方法なんです」と組み立て工程がいかに楽しいかを語ってくれた。