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ポルシェ、510PSに引き上げられた新型「911 GT3(992型)」ワールドプレミア

ニュルブルクリンクのラップタイムを先代モデルから17秒以上短縮し、6分59秒927で走破

2021年2月16日(現地時間)発表

新型ポルシェ 911 GT3

最高出力、最大トルクともに引き上げられた新型911 GT3

 独ポルシェAGは2月16日(現地時間)、新型「911 GT3」を「Porsche NewsTV」にてデジタルワールドプレミアを行なった。

 新型911 GT3は、ダブルウィッシュボーンのフロントアクスルレイアウト、スワンネックのリアウイング、印象的なディフューザーなど、レーシングカーの「911 RSR」のエアロダイナミクスを継承。搭載される自然吸気の水平対向6気筒 4.0リッターエンジンは、先代モデルよりも最高出力を10PSアップさせて375kW(510PS)となり、最大トルクも460Nmから470Nmに向上している。最高回転数は先代モデルと同様の9000rpmとした。

 吸気系にはモータースポーツでも採用されている6連スロットルバルブを採用。排気系の軽量スポーツエキゾーストシステムは、2つのガソリン・パティキュレート・フィルター(PM除去セラミックフィルター)を備えているが、先代モデルよりも10kgの軽量化を実現。さらに、電動で無段階調整が可能なエキゾーストフラップにより、欧州の排出ガス基準ユーロ6d ISC FCM(EU6 AP)にも適合。燃費は13.3L/100km(PDKは12.4L/100km)となる。

 トランスミッションは、デュアルクラッチの7速PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)に加え、先代モデルから復活した6速MT(ダイナミックオートクリップ機能付き)も設定。最高速は7速PDK車が318km/h、6速MT車が320km/hで、先代モデルの911 GT3 RSの312km/hを上まわった。また、0-100km/h加速は3.4秒、0-200km/h加速は10.8秒をマーク。

 先代モデルよりもワイドなボディで、より大きなホイールを履く新型911 GT3だが、カーボンファイバー(CFRP)製のボンネット、リアウイング、スポイラーを採用し、さらにすべてのウィンドウを軽量ガラスにし、ステンレススチール製スポーツエキゾーストシステム、ブレーキディスク、鍛造ライトアロイホイール、LiFePO4スターターバッテリーに至るまで、徹底的に軽量化が図られたという。バッテリー単体でも、前モデルより10kg軽量化されたとのこと。その結果、重量は先代モデルと同等で、6速MT車が1418kg、7速PDK車が1435kgとなり、6速MT車のパワーウェイトレシオは2.78kg/PSを誇る(先代モデルは2.86kg/PS)。

 フロントに装着されている軽量ブレーキディスクは、直径が380mmから408mmに変更され、先代モデルに装着されていたローターよりも大幅に大きくなっているが、重量では17%も軽いため、鍛造軽合金製センターロックホイールと同様に回転質量を低減。また、サーキット用の高性能スポーツタイヤに加えて、一般道も走れる高性能スポーツタイヤもオプションとして設定される。

先代モデルの380mmから408mmに変更されたブレーキローター

インテリアは先代モデルを踏襲しつつ新機能を追加

先代モデルを継承しているコクピット

 コクピットは先代モデルに沿ったデザインだが、新たに「トラックスクリーン」を採用。操作ボタンに触れると、最大10000rpmが刻まれる中央のタコメーターの左右に配置している表示部分に「タイヤ空気圧インジケーター」「油圧」「油温」「燃料タンク残量」「水温」など、サーキット走行に欠かせない情報を表示させられる。さらに、カラーバーを配した視覚的なシフトアシスタントや、モータースポーツから派生したシフトライト(シフトチェンジを促す合図)も搭載する。

 新型911 GT3は、ユーザーのカスタマイズ要望に応える「ポルシェ エクスクルーシブ マニュファクトゥール」も採用していて、エクステリアではカーボンファイバー製の軽量ルーフを無塗装にしたり、カーボン製のサイドミラーカバー、ダークニングされたLEDマトリクスヘッドライト、エクスクルーシブデザインのテールランプ、ブラックアロイホイールを引き立てるホイールのリム色など、GT3専用の選択肢が設定されている。インテリアでは、タコメーターやスポーツクロノストップウォッチのダイヤル、シートベルト、トリムストリップなどを希望するカラーにオーダーできる。

LEDマトリクスヘッドライト
ボディと同色のシートベルト
クラブスポーツパッケージのロールケージ

 また、サーキットを走行するユーザー向けに、ロールケージ、6点式ハーネス(運転席)、モータースポーツ用ハンディ消火器、バッテリー切断スイッチなどがセットになった「クラブスポーツパッケージ」が無償オプションとして設定されている。

 そのほか、フロントサスペンションには車高を瞬時に高くできる「リフトシステム」を搭載し、スマートリフトメモリー機能も内蔵する。

ニュルブルクリンクのラップタイムを更新

開発ドライバーのラース・カーン氏(右)が6分59秒927をマーク

 新型911 GT3もダブル・ウィッシュボーン・フロントアクスルを採用することで、キャンバー剛性が高まり、ショックアブソーバーにかかる横方向の力も軽減され、俊敏なターンイン挙動と高いドライバビリティを実現する。

開発ドライバーのラース・カーン氏の走行

 また、LSA(lightweight・stable・agile)コンセプトに基づき、リアアクスルは特に高い負荷のかかるロアウィッシュボーンにボールジョイントを追加。また、専用ショックアブソーバーを採用することで、快適性とサーキット走行性能を両立させている。さらに、走行速度に応じて後輪を前輪と同方向または逆方向に最大2度回転させる「リアアクスルステアリング」を標準装備。これにより、高速走行時のコーナリング時の安定性が向上するだけでなく、駐車時の旋回円をよりタイトにできるという。

開発ドライバーのラース・カーン氏の走行

 エアロダイナミクスに関しても、機能的なリアディフューザーやフロントディフューザー、ワイドなスポイラーリップの相互作用により、フルフラット化された車両のアンダーボディ全体でより一貫したダウンフォースを確保。さらに、スワンネックマウントにより、リアウイング下の空気の流れがより自由になったこともあり、全体で先代モデルの4倍のダウンフォースを発生する。

ポルシェ・ブランド・アンバサダー ヨルグ・ベルグマイスター選手の走行

 その結果、すべてのスポーツカーのベンチマークである20.8kmのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを、開発ドライバーのラース・カーン氏はオプションのミシュラン「パイロットスポーツ カップ2 R」タイヤを装着した状態で、先代モデルより17秒以上も速い6分59秒927で走破。

 また、ポルシェのブランドアンバサダーであるヨルグ・ベルグマイスター選手も、同じようなラップタイムを連続して達成しており、安定したパフォーマンスを証明しつつ「圧倒的に最高のマシン」とコメントを残している。

開発ドライバーのラース・カーン氏(左)、ポルシェ・ブランド・アンバサダー ヨルグ・ベルグマイスター選手(右)

ポルシェ 911 GT3の歴史

 1999年に発売した初代911 GT3は、996型をベースに3.6リッターで265kW(360PS)を発生。ウォルター・ロール選手がハンドルを握り、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを8分以内で周回した初のロードゴーイング・スポーツカーとなった。

 2006年には第2世代のGT3が登場。997型をベースにして305kW(415PS)をマーク。そして2013年、後継モデルが3.8リッターで350kW(475PS)で発売され、その2年後には排気量が4.0リッターになり368kW(500PS)を誇った。そして2021年、4.0リッターのままで375kW(510PS)と今もなお進化し続けている。

【ポルシェ】新型911 GT3 イメージ動画(6分18秒)