レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ダンロップの新製品「ウィンターマックスICE Pro」 さらに磨いたという氷上性能を確認

2026年7月1日 発表
全99サイズ(8月より順次発売開始)
ダンロップ新スタッドレスタイヤ「ウィンターマックスICE Pro」に試乗する機会を得た

氷上性能を追求した新たなスタッドレスタイヤが登場

 ダンロップの主力スタッドレスタイヤは「Winter MAXX(ウィンターマックス)」シリーズだ。2012年に登場した「ウィンターマックス01」から始まり、2026年シーズンまでに「ウィンターマックス03(以下、WM03)」へと3世代にわたって進化を遂げてきた。

 一昨年には「氷も走れるオールシーズンタイヤ」として「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を発表し、大きな話題となった。一方で降雪地域向けスタッドレスタイヤがどんな進化をするのかにも注目が集まっていた。そして氷上性能に特化した「WM03」の後継モデル「ウィンターマックスICE Pro(以下、WMアイスプロ)」が登場する。

ダンロップのスタッドレスタイヤの新製品「ウィンターマックスICE Pro(アイスプロ)」が登場
ウィンターマックスICE Proのトレッドパターン
サイドウォールには「WINTER MAXX ICE Pro」のロゴが入る

 WMアイスプロの投入によって、「シンクロウェザー」との役割分担もより明確になった。アイスバーンが日常的に現れる降雪地域ではWMアイスプロ、雪が降る機会が限られる準降雪地域では、幅広い路面に対応できるオールシーズンタイヤのシンクロウェザーという棲み分けが、より分かりやすくなったといえる。

スタッドレスタイヤの役割

 WMアイスプロの開発テーマは、ずばり「氷上性能への特化」だ。そのために採用されたのが、しなやかで粘り強い新コンパウンド「ふんばり吸水ゴム」である。新開発の「低温ふんばり剤」がアイスバーン表面に生じる水膜を細かなサイプで除水し、さらに柔軟なゴムが氷表面の微細な凹凸へ密着することで、高いグリップ力を発揮するという考え方だ。そのコンセプトに基づき、WMアイスプロ専用コンパウンドが新たに開発された。

 ポイントは単にやわらかいだけではなく、氷の凹凸へ粘り付くように密着することだ。また、この新コンパウンド「ふんばり吸水ゴム」は、ゴム内部のオイル成分「うるおいポリマー」が経年変化で抜けにくい特性を持ち、初期性能を維持しやすいという。

やわらかくて粘る「ふんばり吸水ゴム」を新たに開発した

 新開発のトレッドパターンは、シンプルで直線的なデザインを採用。また、ブロックにエッジを増やすとともに、氷表面の水膜を排出する細かなサイプも大幅に増やしている。

 タイヤのキャラクターを左右するプロファイルも変更されている。センター部をフラット化することで接地面積を拡大。極端にいえば、接地形状が「丸」から「四角」に近づいたイメージであり、近年のスタッドレスタイヤのトレンドを反映した設計となっている。

新開発のトレッドパターンを採用
プロファイルも新開発

北海道旭川郊外にあるダンロップのテストコースを中心に試乗

 テストコース内ではフォルクスワーゲン「ゴルフ8」に205/55R16サイズの新製品「WMアイスプロ」と従来品の「WM03」を装着した比較試乗。一般道ではボルボ「XC60」に235/60R18サイズの「WMアイスプロ」の絶対評価である。

テストコース内での試乗車はフォルクスワーゲン「ゴルフ8」で紺色ボディは新製品のWMアイスプロ。サイズは前後205/55R16
黒いボディの「ゴルフ8」は従来品「WM03」を履いている。サイズは前後205/55R16

 テストコースは屋外なので、氷盤の上に薄く雪が積もる難しいコンディションだった。

 まずは30km/hからABSを作動させるフルブレーキングを実施。進入速度や降雪状況の影響もあり厳密な比較は難しいが、WMアイスプロはWM03より制動距離が約1~1.5m短かった印象だ。

アイススケートリンク同様、人が普通に歩くのも困難な氷盤路面で制動テスト
氷の上に少し雪が乗った難しい路面で制動距離は伸びたが、予想以上に短い距離だった

 次は15km/hで進入するタイトなパイロンスラロームで、ステアリング舵角を徐々に増やしていってもWMアイスプロは、WM03よりもリアのグリップが高く、終始安定した姿勢を維持する。

 ステアリングへ伝わるグリップ感もしっかりしており、WM03では限界付近でグリップ変化がやや急激なのに対し、WMアイスプロは接地感が手のひらに残り続ける印象だ。WM03より大きな舵角までグリップを維持するため、安心感につながっている。

氷盤での初速15km/hのスラローム。ハンドル舵角が大きくなるがクリアできた

 続いて緩い上り坂へ。路面は圧雪。近年は旭川も暖冬傾向にあるものの、ダンロップのテストコースは十分な積雪量があり、良好な圧雪路面が維持されていた。

 WM03は圧雪路で扱いやすく、ダンロップらしいコントロール性の高さが光る。コーナリングではリアが穏やかに流れるものの修正しやすく、楽しく運転できた。

 一方、WMアイスプロはグリップ力がさらに高く、姿勢安定性も向上している。ブロック剛性が高まり、ブロックのねじれも少ないため、軽いアンダーステアを保ったまま自然に旋回できる違いがある。

平坦路の圧雪スラローム。ブロック剛性が高く、軽いアンダーステアを保ったまま自然に旋回できた

 少し気になったのは轍での挙動だ。轍を乗り越える際に若干引っ掛かる感覚があり、小さな修正舵が必要になる。轍の中に現れるアイスバーンでは高いグリップを発揮し、その中での安定感は高い。轍を素直に乗るWM03とはキャラクターの違いを感じた。

 続いて40~50km/h程度で下り勾配へ進入する。フロント荷重が増える状況でも、アイスバーン寄りの路面ではグリップ力があり、安心感は高い。

 タイヤプロファイルやパターン設計の違いが、それぞれの得意分野の違いとして表れた印象だ。冬道で最も神経を使うアイスバーンへの対応力こそが、WMアイスプロ最大の特徴といえる。

フロントへの荷重が増える下り勾配でも、グリップ力があり安心感が高かった
アイスバーンへの対応力こそが、WMアイスプロ最大の特徴といえる

新製品WMアイスプロを一般道の雪上路面でも試す

 テストコースを離れ、郊外路へ向かう。試乗車は雪景色によく似合うボルボ「XC60」だ。市街地には雪が少ないものの、テストコース周辺は軽い雪が締まった走りやすい圧雪路だった。

 交通量も少なく、新雪を巻き上げながら走るスノードライブは爽快そのもの。浅い轍にステアリングを取られることもなく、アクセルに軽く足を添える程度で安定したトラクションが得られ、姿勢を乱すことなく走破できた。

一般道での試乗はボルボ「XC60」
タイヤサイズは前後とも235/60R18

 制動性能も自然で、通常のブレーキングでは思うように減速できる。ただし、過信は禁物だ。北海道は直線道路が多く、交差点も分かりにくい場所が少なくない。強いブレーキングでは、さすがのWMアイスプロでもABSの作動時間は長くなる。油断禁物である。

 圧雪路では緩やかなカーブでも轍が形成され、雪の色も変化するのですぐに分かる。WMアイスプロは圧雪をしっかりとらえ、適度な保舵感を保ちながら軽快にコーナーをクリアしていく。アイスバーン特化型とはいえ、Rのきついコーナーや深い轍でなければ、一般的な雪道では十分なグリップ性能を発揮する。

WMアイスプロは、圧雪をしっかりとらえ、適度な保舵感を保ちながら軽快にコーナーをクリアしていく

 市街地ではWM03との直接比較はできなかったが、これまでやや不安を感じていた夜間の交差点などでは、安心感の向上が期待できそうだ。

 繰り返すが雪道では過信は禁物だが、WMアイスプロはドライバーに余裕を与えてくれるスタッドレスタイヤという印象を受けた。

車両重量1910kgの巨体でもしっかりと安心して走れた

次世代オールシーズンタイヤの軽自動車サイズも雪上路面で体感してみた

 2025年11月に次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」に軽自動車用サイズが追加された。試乗会場には、軽自動車サイズ(155/65R14)のシンクロウェザーを履いたホンダの「N-BOX」があり、一般道を少しだけ試乗してみた。

2025年11月に次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」に軽自動車用サイズが追加されたという
N-BOXの装着サイズは前後155/65R14

 軽い圧雪路では予想以上の安心感があり、グリップ変化も穏やかで、余計なストレスを感じることなく走れた。

 ただし、WMアイスプロとシンクロウェザーにコンパウンド技術などの直接的な共通点はない。しかし、それぞれの性能を明確に差別化したことで、ユーザーにとって選びやすいラインアップになったことを改めて実感した。

軽い圧雪路では安心感があり、グリップ変化も穏やかだ
アイスバーンが日常の降雪地域ではWMアイスプロ、雪が降る機会が限られる準降雪地域では、幅広い路面に対応できるオールシーズンタイヤのシンクロウェザーと選択肢が追加された
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。