【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記

第30回:レース参戦も5年目に突入! 4月1日にツインリンクもてぎで開幕

2016年10月に発売された“後期型車両”の「86 Racing」で今シーズンからレース参戦。ラッピングは2014年からお願いしている「アートファクトリー」が担当してくれた

2017年シーズンから“後期型車両”の「86 Racing」で参戦!

 あと数時間でツインリンクもてぎへと出発する。4月1日にツインリンクもてぎで開幕する「GAZOO Racing 86/BRZ Race」のクラブマンシリーズに出場するためだ。5シーズン目に突入する今年は、いわゆる“後期型車両”の使用も可能になる。プロフェッショナルシリーズに関しては後期型オンリーというレギュレーションになるが、クラブマンシリーズは前期型のクルマでも参戦可能。新旧の車両が混在する状況で果たしてどんな結果が待ち受けているのか? 期待と不安が入り混じった開幕直前である。

 そもそも僕はレースを続けられるとは思っていなかった。これまでの愛機は4万2000kmを走行。レースもこれまでに30戦は出ただろうか? 自走でサーキットまで行き、その上で練習走行からレースまでフルに走り切った相棒は、もはや悲鳴をあげていたことはこれまでもレポートしてきたとおり。おかげでルーフ両サイドには波打つようなシワが寄りはじめ、もはやトップグループで争えるだけの戦闘力を備えていないことは明らかだった。いくら前期型でレースが続けられるとはいっても、勝ちが狙えないレースを続ける気にはなれない。そろそろ潮時かもしれない。そう考えて、昨シーズンが終わった段階でクルマを手放そうと決めていた。

「Vitz&86&BRZ Dream Cup」のグリッドに並ぶ“前期型車両”の86。レースでは佐々木雅弘選手、松原怜史選手、大橋正澄選手と4人で走り、2位フィッシュで有終の美を飾った

 そこからは「86」との最後の思い出作りをしようと、GAZOO Racingフェスティバルで行なわれた特別戦に参加。結果はミスもあり、クラッシュに巻き込まれそうになったりと散々なものだったので伏せておくが、ひとまず無傷で帰って来られたことがなにより。その後は「Vitz&86&BRZ Dream Cup」に、プロフェッショナルシリーズチャンプの佐々木雅弘選手、そしてクラブマンシリーズチャンプの松原怜史選手、さらにスーパー耐久シリーズに参戦中の大橋正澄選手とともに参戦。優勝こそできなかったが、トップと同一ラップの2位という好成績を残して有終の美を飾ることができた。

 2017年1月。運よく近しい人から購入したいという名乗りがあり、相棒は引き取られていくことになった。2017年シーズンからこのレースに参戦したいという方だったことが幸いだ。ムチを打ち続け、こちらとしては戦力外通告をしたクルマにも関わらず、それを受け入れて現役続行をさせてくれるというのだから嬉しい。これからも元気で生き延びてくれることを願っている。

 あとはフツーのオッサンに戻るか、なんて考えていた2月初旬。周囲から「もう1度トライしてみないか?」というありがたい後押しがあった。クルマはもちろん自己所有でね、というお話だったが、正直に言ってしまえば“86ロス”で心にぽっかりと穴が開いていた状況だったわけで、家族に断りもなくふたつ返事でそれを受けた。事後報告を受け入れてくれた妻にも感謝である(笑)。

「タイヤプロショップ アリーナ」「レボリューション」「アートファクトリー」の協力で今年こそチャンピオンを!

ラッキーにも新古車で手に入れることができた“後期型車両”の「86 Racing」。今回のナンバープレートは「84-84」

 そこからはお金の工面からクルマの手配までバタバタ。ディーラーで新車の納車時期を聞けば「5月半ばが最短ですね」との返事……。早くも計画破綻か? だが、ラッキーにも関西に新古車があることを知り、新幹線に飛び乗って買い付けに。帰り道にたまたま大阪オートメッセの取材に来ていたCar Watchスタッフに手伝ってもらいながら、ETC車載器やらTRDのスマホホルダーやらをセットして帰路へ。それが2月12日のことだった。

編集部のある神保町三井ビルディングにも乗りつけてCar Watchスタッフにもおひろめ
新古車で購入時の走行距離はわずか12kmだった

 そして翌日、あらかじめ用意しておいた書類を手に名義変更。2月25日には新たにスポンサードして頂けることになった、愛知県津島市の「タイヤプロショップ アリーナ」に打ち合わせを兼ねてご挨拶に。3月初旬には新たにメンテナンスをお願いすることになった埼玉県川口市の「レボリューション」に入庫。およそ1週間でクルマは仕上がり、3月10日にツインリンクもてぎでシェイクダウン。3月19日にはカーラッピングをお願いしている「アートファクトリー」に入庫。3月23日に仕上がって引き取り。3月27日~28日はもてぎでテスト。そんなこんなでレースウイークに突入だ。ふぅ。

2017年からスポンサーになってくれた「タイヤプロショップ アリーナ」さんに訪問。右側に並んでいるのはお店のデモカーである「ARENA 86」
アートファクトリーに入庫してラッピングを開始。車両のボディカラーは「クリスタルブラックシリカ」だが、ホワイトをベースとしたラッピングシートで車両全体を覆っていく。黒い部分もラッピングシートだ(写真提供:アートファクトリー)
ボンネットやルーフ、トランクリッドなどボディ全体をくまなくラッピング。さらに車両規定で定められたスポンサーステッカーなどを上から貼り付けてる(写真提供:アートファクトリー)
2017年仕様のカーラッピングが完成!(写真提供:アートファクトリー)
ラッピング完成の連絡を受け、確認&車両受け取りでアートファクトリーに。黒いボディからすっかり生まれ変わった新しい“後期型車両”と初対面
いっしょに来ていた娘の和奏(わかな)も興味を持ってくれた。「パパのクルマ、どう?」「かっこいー」
完成したカーラッピングについて、アートファクトリーの代表である澤田弘さんからポイントや特徴などについて解説してもらった

 それにしても、話が出てから2カ月足らずでよくぞここまで間に合ったと各方面に感謝するばかり。急ピッチで手配や作業をしていただけたおかげで、なんとか開幕戦を迎えられそうであります。ありがとうございました!

 後厄もあけた42歳の春。こうしてオッサンの挑戦はまだまだ続くことになりました。まずは第1戦が行なわれるツインリンクもてぎでグリッドに並べる喜びを噛みしめ、「今年こそチャンピオンを!」を合言葉に、よいレポートができるように全力で戦ってきたいと思います。応援よろしくお願いします!

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。