事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第5回:慣れた道でのご用心

一時停止の標識が木で見えにくくなった交差点などもある

 クルマの運転をしていれば、必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性はゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこのリレーコラム。運転のときに参考にすれば、ちょっとだけ事故の確率が減らせるかも。第4回はCar Watchでもおなじみのモータージャーナリスト、日下部保雄氏。テーマは「慣れた道でのご用心」です。医療現場が切迫している今だからこそ、いつも以上に事故を起こさないよう安全運転を心がけましょう。


 新型コロナウィルス禍で外に出られない日が続くが、自動車による移動の豊さを改めて痛感する。いつかこの窮屈な日々も終わり、旅行にあるいは仕事にクルマで出かける日が来る。

 しかし残念ながら自動車が走れば交通事故のリスクとは切り離せない。そして特に気を付けなければならないのは慣れた道ほど事故を起こすケースが高いということだ。国土交通省のデータでは、安全技術の普及により過去15年で幹線道路における死傷者は年々減って72万件から31万件となっているが、生活道路での事故は21万件から10万件と幹線道路ほどには減っていない。一昨年までのデータだから実際にはもっと減っていると思われるが、減少率はそれほど変わっていないだろう。

 たとえば帰宅する場面を考えてみよう。幹線道路から生活道路に入って、我が家に近くなる急いた気持ちと、日頃から通り慣れた道にホッとする気持ちが混ざり合って気が抜ける瞬間がある。

 事故はそんな心の隙間に忍び寄る。生活道路を使う歩行者や自転車など多くの人にとってもそこは緊張感の緩む場所。しかも自動車用には整備されていないのでセーフティゾーンなどないに等しい。お互い緊張感が薄い状態で道路を共有するのだから危ないシーンがあっても不思議ではない。

 歩行者でいえばスマホを見ながら、あるいはイヤホンで音楽を聴いている人は明らかに注意力が半減以下になっている。後ろ姿からは何をしているか分からない歩行者が突然、道路の真ん中に出てくることもあるかもしれない。

 自転車では最近ママチャリの主流を占めている電動アシスト付き自転車は、坂の勾配にかかわらず結構なスピードで走っている。多くの場合、歩行の延長線上の感覚なので、クルマ側は余計に注意を払うべき存在だ。

 自粛続きで元気を持て余した子供たちが道路に飛び出してくる可能性だってある。残念ながら、自動車は歩行者や自転車ほど俊敏ではない。そしてその誰よりも強い存在だ。だからこそ慣れた道、生活道路ほどいつもより注意深くハンドルを握ってほしい。

 ちなみに歩行者、自転車の死傷者は5割がそれぞれの自宅から半径500m以内で起こっている。気の緩みもあるに違いない。

 普段はあまり気にしていないかもしれない十字路にあるカーブミラー、商店街のガラスに映る人や自転車、学校の校門近くの横断歩道、同じ道幅が交差する裏道、事故を起こさないためのチェックポイントは結構ある。人を守ることは自分も守ることにつながる。久しぶりにガレージからクルマを引っ張り出す人は、ぜひちょっと気を配ってから移動の自由を楽しみましょう。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。