事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第8回:シートベルトをする2つ目の理由

1m動かすだけでも全員絶対シートベルト。その理由は?

 クルマの運転をしていれば必ずついて回るのが事故の可能性。でもそんな可能性はゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」。運転のときに参考にすれば、ちょっとだけ事故の確率が減らせるかも。今回はモータージャーナリストの斎藤聡氏執筆でテーマは「シートベルトをする2つ目の理由」です。事故を起こしたときではなく、起こさないためにシートベルトをする理由とは?


 皆さんシートベルトしてますか? ボクは1mクルマを移動させるときでもシートベルトをしています。別に自慢しているわけではなく、習慣づけてしまえば普通にできることです。シートベルトを着けるのは、自分だけじゃなく後席に乗る人も含め乗車している人全員です。急いている時でも例外を作りません。これは子供にシートベルトを付けるのを習慣づけるのに考えた事なんです。

 大人は「いま急いでいるから」とか、「1mしか動かないからシートベルトをしなくていい」とか、自分の都合でシートベルトを着けないことを正当化します。けれども小さな子供は事情をくみ取れないので、昨日はシートベルトしなかったのに今日はするという矛盾を許してくれません。シートベルトなど小さな子供にとっては邪魔モノ以外の何者でもありません。だからこそクルマに乗るなら、どんな場合でも“例外なく”シートベルトをすることにしたんです。これ効果ありました。

 シートベルトをする理由は2つあります。1つは衝突した時の被害を軽減するのが目的です。一般的にはこれが目的ですよね。でもこれは事故を起こしてしまった後の話。それよりもボクはもうひとつの理由をより重要だと考えています。事故を起こさないためのシートベルトをする理由。それは、乗員が全員シートベルトをしていると躊躇なく急ブレーキが踏めるということです。

 同乗している人は咄嗟の急ブレーキに反応できません。急ブレーキを踏むと今のクルマは1G近い減速Gが出ます。これは、その人の体重と同じ力で前に投げだされるということです。

 さらに衝突を避けるためにハンドルを切ると、体は横方向にもすっ飛ばされます。20kgの子供が、前のシートに20kg(10kgの米袋2つ分)の力で衝突してしまうわけです。咄嗟のことなので身構えることすらできずに……。考えるだけで怖くないですか?

 ついでにいうと、たった5km/hでも急ブレーキを踏むと減速Gは1G近く出ます。自転車が、スクーターが、子供が飛び出してきて、やむを得ず急ブレーキを踏まなくてはならないとき、事故を避けるために躊躇なくブレーキを踏むためには、同乗者にシートベルトをしてもらう必要があるんです。

 ちなみに40km/hは秒速11.1m。1秒間に11.1mも走ってしまいます。ですから、ほんの一瞬の躊躇、たった0.5秒ブレーキを躊躇しただけで5.5m進んでしまうわけです。逆に躊躇なく急ブレーキが踏めて、5.5m手前で止まれればその事故は防げるかもしれません。

 ということで、シートベルトをするもう1つの理由、躊躇なく急ブレーキを踏めれば、0.1%くらいは事故の確率を減らせるかもしれません。

斎藤 聡

学生時代、クルマの面白さに目覚め、仲間と5000円で買ったサニーを数台共同所有しサーキットに通う。自動車雑誌のアルバイトから編集部員を経てフリーランスライターに。クルマを操るテクニックやメカニズムに興味があり、モータースポーツを通じて学ぶ。ニュル24時間耐久レース出場は個人的金字塔。モータージャーナリストとして自動車媒体を中心に試乗レポート、エッセイ等を執筆。守備範囲は軽自動車から1000馬力超のチューニングカーまで。タイヤにも造詣が深く、タイヤレポートも多数。また、某国産自動車メーカーの安全運転スクール社外インストラクターを約10年務めたのをきっかけにドライビング・インストラクターとしても活動。AJAJ会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。