事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第10回:出発前のルーティンワーク

出発前にクルマのまわりを1周まわってのルーティンワーク

 クルマの運転をしていれば必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性は少しでもゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」です。今回はモータージャーナリストの島下泰久氏執筆でテーマは「出発前のルーティンワーク」。外出自粛でしばらくクルマを動かしていなかった人には特に大事かも!!


 安全運転というと世間は「ゆっくり走ればいい」的な話になりがちだが、私としては、軽やかで周囲にも気を配った「スマートな運転」を心がけているつもりだ。クルマの持つメリットを個人も社会もフルに享受するためである。

 そのためには出発時間、ドライビングポジションなどなど、意識したいことはたくさんあるが、今回は視界の話をしたい。安全運転のためには自分の周囲の状況を的確に把握するのが第一歩。そうやって「認知」が正確にできてこそ、その後の「判断」、「操作」をしっかり行なうことができるのだ。

 具体的に言うならば…… って、別に大したことはしていない。必ずやるのは、出発前にクルマのウインドウをすべて拭いてきれいにすること。自分のクルマはドアポケットにそれ用の布を入れてあって、始動する前にそれを取り出して、全部のウインドウ、そしてミラーをきれいにしている。

 くもったままの眼鏡と一緒で、ウインドウが汚れていては周囲をしっかり見回せないし、見えないと気が散りイライラするし、陽光や他車のライトなどの反射もひどくなる。当たり前だが、よいことはなにもない。

 多くの人が経験したことがあると思うが、外側からきれいに拭き上げたつもりでも、いざ走り出してみるとかえって拭きムラが気になり、むしろ「拭かなければよかった!」なんてこともありがちだ。なのでフロントウインドウは内側からも拭いて、走り出す前に角度を変えつつよく見ておくといい。

 その際にワイパーブレードもチェックしておきたい。晴れの日には使わないので気にならないが、雨になってワイパーを使った途端、実は汚れていて引っかかって…… ということは、ままある。しかも雨なので、外に出て拭き取る気にはならない……。きっと拭ってみたら、汚れがこびりついていて驚くはずだ。

窓ガラスの内側やワイパーブレードの汚れも拭き取っておきたい

 毎日、乗る前にそんなことをするのは面倒くさい? いやいや5分もあれば、もしかしたら3分で十分に可能だろう。しかも、そうやってクルマの周囲をぐるり1周すれば、何らかの傷やトラブルに気づくこともあるかもしれない。クルマの下で眠っていたネコだって、気づいて去ってくれるかも? 乗り込む前に、ウインドウをひと拭き。クルマに気持ちよく走ってもらうためにも、ゼヒ習慣づけてもらえたらと思う。

 つらつらと書いてきたが、実は私自身は、これを安全のためというより気持ちよく走るためにやっているという意識の方が断然強い。要するに、快適に楽しく、スマートにクルマを走らせようとすれば、自ずと安全運転に繋がるよ、という話なのだ。

島下泰久

1972年神奈川県生まれ。
■2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。国際派モータージャーナリストとして自動車雑誌への寄稿、ファッション誌での連載、webやラジオ、テレビ番組への出演など様々な舞台で活動する。2011年版より徳大寺有恒氏との共著として、そして2016年版からは単独でベストセラー「間違いだらけのクルマ選び」を執筆。また、2019年には新たにYouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」を立ち上げた。