事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第11回:黄信号、進む? 止まる?

信号が黄色に変わったら、進む? 止まる?

 クルマの運転をしていれば必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性は少しでもゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」です。今回はモータージャーナリストの岡本幸一郎氏執筆でテーマは「黄信号、進む? 止まる?」。運転に慣れている人でも即答は難しいかも!?


 今さらですが黄信号の意味はご存じですか? そう、「止まれ」です。間違っても「注意して進め」ではありません。ただし、クルマは急に止まれませんので、すでに停止線に近づいていて安全に止まれない場合に限ってはそのまま行ってもいいよ、というのが黄信号の意味です。でもそうは分かっていても、信号の変わったタイミングによっては、止まろうか行ってしまおうか悩んだ経験、きっとありますよね。かくいう筆者も昔はそうでした。が、今はそうならないように取り組んでいることがあります。今回はそんな黄信号のお話と、もう1つ「頭を動かす」話をしたいと思います。

 まず黄信号の話からすると、やるべきことはシンプルです。信号が目に入ったら、「行けない」「行けない」「行けない」……「行ける」「行ける」……という感じで、1秒弱程度の間隔で、その信号がたったいま青から黄色に変わったらどうするかを心の中でカウントしながら信号に近づいていくというものです。

 信号が見えるたびにカウントするのは面倒な気もしますが、常に心がけていればそのうち自然と習慣になるはずです。筆者もそうでした。いまでは信号が目に入ると脊椎反射のように行けるかどうかをカウントできるようになっています。少し努力すれば、同乗者とおしゃべりしながらでも、心の中では信号のことをちゃんと考えながら走れるようになると思います。最初のうちは「行けない、行けない、行ける、行ける」と声に出してみたほうがよいかもしれません。自分がもうすぐ通過する可能性のあるすべての信号が対象です。やってみると、信号が黄色に変わって慌てて急ブレーキを踏むということがほぼなくなると思います。

 さらに付け加えると、このとき同時に気をつけるべきなのは後続車の動きです。黄色に変わったので自分はちゃんと止まるつもりでいても、後続車はつっこんでくるかもしれません。信号のカウントにあわせて、後続車の有無や、どれぐらい車間距離をとっているかなど、後ろの状況も把握しておければなおよいです。後続車がいる場合は、早めにブレーキランプを点灯させて、止まる意思表示をするようにしますし、車間距離が近いような状況であれば、無理して止まらずに通過するという判断をすることもあります。ただ、そうした判断がすぐにできるのも、まずはカウントをしていることが、心の余裕につながっていると思います。

 もう1つの「頭を動かす」という話ですが、これは脳みそを使うという意味ではなくて、文字どおり頭の位置を10~20cmほど前後や左右に動かしてみるという話です。

 なぜそんなことをするのかというと、自分の目とピラーやミラーなどとの位置関係を変えることで、死角を減らすことができるからです。

 ピラーなどがある以上、どうしても死角は生じてしまいます。特に自分の目の位置がずっと同じ状態で、死角のエリアと歩行者や自転車などとの動きが合ってしまうと、ずっと見えないことになってしまいます。

 もっとも有効なのはフロントピラーで、とくに歩行者や自転車の多くいる中を走らざるを得ない時や、交差点を右左折するときなどに特に有効だと感じています。多くの場合は途中で多少ずれるので相手の存在を認識することができますが、たとえ数秒間でもお互いの動きがピッタリ合ってしまえば、その存在に気づかずに接近してしまい、最悪の場合ぶつかってしまうことは十分に起こり得ると思います。

運転席からの普段の視点。特にだれもいないように見えますが……
頭をぐっと前に動かしてみると、なんと2人も! 意外とピラーの死角は大きいです

 ドアミラーも同様です。最近では死角をカバーする先進運転支援装備の普及も進んでいますが、目視でも確認できたほうがなおよいことに変わりはありません。頭を積極的に前後に動かしてやることでミラーに映る位置が変わり、死角を減らすことができます。筆者は高速道路や幹線道路を巡行しているときも、死角となる位置に後続車がいないかどうかを知るために、ときおり頭を前後に動かして見るようにしています。

 どちらもかれこれもう30年近く実践していますが、これはやったほうがよいとつねづね感じていたものだったので今回書いてみました。ぜひ次に運転する際に試してもらえればと思います。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。