事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム

第12回:梅雨のドライブ、どこに気をつける?

雨の日のドライブ、見えにくいのは自分だけじゃない

 クルマの運転をしていれば必ずついて回る事故の可能性。でもそんな可能性は少しでもゼロに近づけたい!! そこでいろいろな人に、普段運転で気をつけていることを紹介してもらおうというのがこの「事故の確率を0.1%減らせるかもしれないリレーコラム」です。今回はモータージャーナリストの橋本洋平氏執筆でテーマは「梅雨のドライブ、どこに気をつける?」。気をつけるポイントがいっぱいです。


 14日午後、「東北北部が梅雨入りしたとみられる」と仙台管区気象台が発表。これで梅雨がない北海道を除いて、全国的に梅雨入りしたことになる。

 そこで注意したいのが、やはり雨による事故リスクの増加。制動距離が伸びたり、スリップしやすくなったりすることは教習所でも学んできたとおりだが、結果として事故は増える。首都高速道路公団が発表したデータによれば、雨になると事故件数は晴れに比べて4倍にも跳ね上がるらしい。傾向として施設接触事故が増加。これは晴天時に比べて10倍だという。スピードをできるだけ控えることはもちろん、タイヤの使用年月、溝残量、空気圧の適正化などは基本的なことだが、梅雨入りしたことをきっかけに再チェックしていただければと思う。最近じゃセルフ給油ばかりで、ドライバー自らがやる必要が増えましたから。

 それに加えて今回は個人的に雨に対して備えていることをご紹介したい。

 まず1つ目は、視界の確保に気を配るということ。そもそも視力がわるいから、努力次第で視界が保てるのであれば積極的に行ないたいというのが出発点だった。こだわっているのは洗車時にガラスはっ水剤を怠らないということ。弾くのがイヤだから親水性のものを使うという人もいるようだが、個人的には水玉コロコロ状態になるものが好み。高速道路では風圧だけでかなりの水が飛んでくれるから気に入っている。

ワイパー部分のはっ水剤が完全に落ちてしまった状態。前が見えにくい

 加えて注意したいのがワイパー。年1回くらいのペースで交換している。ガラスはっ水剤との合わせ技により、ワイパーが新鮮であればひと拭きでかなりの視界が保てるから、交換頻度を落とすことはしていない。ただ、そのワイパーも洗車の度に洗うことを忘れないようにしている。実は使っていなくてもワイパーにはホコリや葉っぱ、そして小枝などが挟まっていることが多い。それが放置された状態で雨の日にワイパーを使うと、拭き上げた個所にスジが入り、視界を妨げることになる。これを嫌っているのだ。また、ガソリン給油時に窓を拭き上げる際にはワイパーゴムも一緒に拭き上げるのがオススメ。これだけで洗車をしなくても前述したトラブルに遭遇することは避けられるから試してみてほしい。

 一方で忘れがちなのがガラスの内側の汚れだ。汚れていれば曇りやすくなってしまうから、曇り止めを併用しながら拭き上げるようにしている。エアコンも熱線もあれば曇りはすぐに取れるだろうが、見えていない時間があるということは、その間は危険な状態で走っていることになるわけで……。いずれにせよ、車内は綺麗になるわけだから、たまにはガラス磨きを推奨する。喫煙者の場合、ウエスが茶色くなるほど汚れている場合もあるので……。

雨の日に見にくいのは自分だけじゃない

 こうして走れば雨でも視界良好。だが、周囲のクルマが同じ状況で走っているとは限らない。よって注意しているポイントの2つ目は、一緒に走るクルマを信用しないということだ。いつも以上に相手のドライバーがコチラを見ていないで運転していると想像しておく。「見えていないだろう」「気づいていないだろう」という前提で身構えておく。

 そこで実践しているのは、雨であればヘッドライトを点灯して走行することだ。最近ではヘッドライトをAUTOにしておけば、ワイパーを動かした瞬間から点灯してくれる車両もあるのだが、そこまで対応してくれないものが大半。雨雲が近づき暗くなってきたら点灯することはもちろんだが、昼間で明るい状況でも雨が降ったらライトを点灯してもらえればと思う。これだけで他車は自車を認識しやすくなるからだ。「自分の視界を確保するため」ではなく「相手に自分を見せるため」、これが雨のドライブでは必要だと思っている。

昼間でも雨ならヘッドライトON。それだけでも“見られやすさ”が格段に向上する

高速道路でのシーン

 最後は高速道路における走りで気をつけていること。これは視界にも繋がるのだが、車線変更をいつも以上に慎重になっている。例えば3車線の高速で一番右側の追い越しレーンを走行中、追い越しを完了して真ん中の車線に戻りたい場合、真ん中の車線にクルマがいないことを確認するのはもちろんだが、さらにその左側、一番左車線を走るクルマよりも自車が前に出ている状況でしかレーンチェンジしないようにしている。

 これは互いに真ん中の車線にレーンチェンジして接触しないようにするための対処。晴天時にも気を付けているが、雨天時にはさらに一番左のクルマより前に出てから戻るようにしている。「相手の右のミラーが見にくくなっているかもしれない」「運転席の窓が曇っているかもしれない」と臆病になっているわけだ。仮にぶつからないまでも、突然中央レーンで前後になれば、ビックリして相手はスピンする危険性だってある。これはほんの一例だが、周囲とできるだけ距離を取る、これが雨では必要だと思う。

 さらに走り方では轍が作り出す水たまりを避けるように走っている。これはハイドロプレーニングを引き起こさないようにすることへの対策。壁までの距離が近くなったりするが、タイヤ1本分だけズラすだけでも効果はある。ウェットのレースではラインよりも水が少なくグリップする路面を探して走るのが必須。それと同じ原理だ。タイヤが確実に接地できる場所を常に監視しておくことを忘れないようにしてほしい。くれぐれもスピードを控えめにして……。

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車はトヨタ86 RacingとNAロードスター、メルセデス・ベンツ Vクラス。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。