特別企画
【特別企画】初心者マークのPC Watch編集部員がタイヤをミシュランに替えてみた(前編)
路面の硬さを感じる乗り心地から、ソフトで満足できる感触に変化
(2015/6/8 00:00)
Car Watchをご愛読のみなさんはじめまして。PC Watchで執筆中の劉と申します。今回は珍しくPC Watchから出張して、自分が所有するマツダ「RX-8」のタイヤ交換記をお届けします。
筆者はPC Watchの人間なので、残念ながらクルマに関する知識は大して持っておらず、専門用語はさっぱり分かりません。それどころか、免許も去年(2014年)取得したばかりで、まだ初心者マークすら外れていない状態。そんなわけで、今回の体験記も専門的な視点ではなく、初心者の視点でお届けしたいと思います。
筆者はクルマの知識はまったくの素人なのですが、根っからのクルマ好きであることは認めます。母親が幼稚園のころに買ってくれた6種類の図鑑(乗り物、天文、植物、昆虫、動物、人体)のうち、乗り物の図鑑だけボロボロになるまで読んでいましたので、間違いはないでしょう。まぁ、男の子ならみんな乗り物は好きですよね。
そんなわけで、子どものころからよく遊ぶPCゲームと言えばレーシング系、とくに「Need For Speed」シリーズが大好きであり、レーシングホイールまで購入しました。しかし、免許を取ることに対しては、「お金はかかりそうだし時間もかかりそうだし……」「お金と時間があったらPCに費やすかな~」ということで、長年取得せずにきました。
転機が訪れたのは、結婚して一軒家を購入してからでした。「自宅の駐車場に停めるクルマがないのはもったいないし、クルマがあった方がいろいろなところに旅行に行けて便利でしょう」ということで、免許の取得とクルマの購入を決心したのでありました。クルマ好きにようやくクルマを買う機会が訪れたのです。
目的が趣味やレースではなく旅行なら、やはり燃費がよいハイブリッドカーにすべきでしょう。しかし、筆者はどうしても現行モデルとして販売されているハイブリッドカーのデザインが受け入れられませんでした。筆者は基本的にレーシングゲームによく出てくるセダン、またはクーペのような3ボックスタイプのクルマが一番好きなのですが、ハイブリッドカーはハッチバックやSUVのようなスタイルが多く、購入するのに抵抗がありました。
とくに自動車にとって、真後ろから見たデザインがすごく重要だと筆者は思うのです。なぜかって、対向車は一瞬ですれ違うので、前面のデザインを大して気にしませんが、車両の後方は後続車がずっと眺めているじゃないですか。後ろがカッコいいと「あいつはカッコいいクルマに乗ってるなぁ」と思うわけです。そう、つまりそう思われたいわけです。レーシングゲームでも常にクルマを後ろから見ていますし。そんなわけで、クルマ選びは後ろからの見た目で選ぶことにしています。
そして、今回辿り着いた先がRX-8。流線型のなめらかなシェイプに鋭いデザインのテールランプ。そしてちょっと高めのスカートに両端から出るマフラー。スポーツカーの代表的なフォルムってズバリこれですよ。当時はまだ免許取得前なのに、妙にこのデザインに胸が高まり、中古車屋に足を運んでFacebookに「RX-8欲しいなぁ」と写真付きでつぶやきました。
すると友人から「おう買え買え、レシプロならレンタカーでいくらでも乗れる。でもロータリーエンジンはこいつしかない」という指摘。まあそうでしょうな! そうだよね! ということで、ハイブリッドカー一点推しの妻を説得し、免許取得後すぐに購入に至りました。
これはこれで“スポーティな走り”なのですが……
免許を取得してすぐにRX-8を購入したのは、運転をしていないと忘れそうだったからでした。免許取りたてで運転しない期間があると、特に操作が複雑なMT車ではすぐに忘れそうで怖いです。そんなわけでディーラーにちょっと無理を言って、免許取得から1週間ちょっとで納車してもらえるようお願いしていました。
RX-8は2013年に製造が終了しているので、現在は中古車しかありません。筆者が購入したのは2003年型。つまり前期型のRX-8で、すでに7万9000kmほど走っていました。購入時にはボディーのガラスコーティングと車内清掃、プラグ交換などもお願いして、さらにタイヤがかなりヘタっていたので、その時点でタイヤも新品に交換しました。これで新車顔負けと言える(?)ピッカピカのRX-8を入手したのです。
その納車から約1年。かれこれ4000kmほど走っていますが、不満点が1つだけありました。それは乗り心地があまりよくないところです。RX-8はスポーツカーなので当たり前と言えばそれまでなのですが、筆者はバリバリに峠道を攻めるとか、サーキットを走るなんてことはしないので、もうちょっとソフトな乗り心地が欲しいところです。給油のついでにガソリンスタンドでお願いして、タイヤの空気圧を上げたり下げたりと調節してもらいましたが、どうやっても乗り心地がよくない状況が変化しませんでした。
これはこれで路面の情報が分かりやすいため、「路面の上を走ってるな! 俺スポーツカー乗ってんな!」という雰囲気もあるのですが、タクシーに乗ってクラウンアスリートの居住性を体験したあとには「うちのクルマ、ちょっとチープかも……。貴賓客は乗せにくいな」という気分になってきます。
そして高速走行時のロードノイズも多めでした。せっかくのロータリーエンジンなので、高速道路ではETCゲートを通過したあと、2速ギヤで5000~6000rpmぐらいまで引っ張って“ロータリーサウンド”を楽しみたいところなのですが、エンジンの音よりタイヤから出るノイズの方が大きい印象です。RX-8は運転席よりも助手席の方がロータリーサウンドを楽しめると思いますが、残念ながら運転するのは自分なので、せっかくの楽しさがロードノイズでスポイルされてしまいます。
そんな悩みを1人で抱えていましたが、ある日思い出しました。そうだ、弊社にはCar Watchがあるじゃないですか(おい)。とりあえず相談してみましょう。
ミシュランの「Pilot Sport 3」がいいらしい
Car Watchに相談してすぐに提案されたのがタイヤ交換。あ~、確かに間違いない。乗り心地もロードノイズもきっとタイヤが原因でしょう。PC Watch的に言えば、ファンがうるさくて不快であればファンを交換すればいいのと一緒です。きっと、多分。そう言えば、RX-8を購入するときにタイヤを新品に交換しましたが、タイヤの製品名や具体的な機能はまったく気にしてませんでした。
RX-8に向いていそうなタイヤを調べてみましたが、そのなかからミシュランの「Pilot Sport 3(パイロット スポーツ スリー)」を選ぶことにしました。同社のホームページ(http://www.michelin.co.jp/)を見ると、どうやらタイヤラインアップのなかでもRX-8のようなクルマに向いた製品のようですし、さらにこのPilot Sport 3は、ミシュランが行っている「満足保証プログラム」というサービスに対応していることも大きな理由です。
このサービスは、対象になるタイヤを購入してから60日間までは、実際に使ってみて気に入らなければ返金できる取り組みです。つまり、今回の目的である「乗り心地改善」と「ロードノイズ低減」が達成できなければお金を返してもらえるわけで、これなら安心して交換できます。逆に言えば、ミシュランはこの製品に相当な自信を持っていると言えるでしょう。
また、製品情報を見てみると、「スポーツパワーコンパウンド」という独自配合の成分を採用していたり、グリップ、ハンドリング、ブレーキを重視したという独自のトレッド・ストラクチャー(溝)の採用、さらには今回もっとも重視する、静音化のためのトレッドパターンやブロック数の最適化技術などが謳われていました。これは期待できそうです。
ただ、ミシュランは直営店を持っていないので、ミシュランのWebサイト内にある「乗用車用タイヤ販売店ガイド」(http://www.michelin.co.jp/Home/Buying-Guide/Find-Your-Dealer)を使って近所にあるお店を探すことにしました。
とはいえ、いつでも希望するタイヤの在庫が必ずあるというわけではありません。まずはお店に電話で予約を入れて、日程を決めてから交換するというのが基本的なスタイルのようです。今回は自宅から比較的近い、東京・江東区にある「シノハラタイヤ」さんにお願いすることにいたしました。
なお、タイヤの価格は店舗によって多少上下しますし、サイズなどによっても異なりますのであくまでも参考ですが、今回のRX-8の純正サイズ「225/45 R18 91W」の場合は、直販価格が1本あたり3万6400円。シノハラタイヤさんの店頭価格は約3万円で、4本の交換で12万円程度です。
また、タイヤ本体以外にも、交換作業の工賃と旧タイヤの処分費用、ゴムバルブ交換などが必要で、今回のRX-8の場合はタイヤ1本あたり2300円(税別)かかっています。なお、シノハラタイヤさんではこの記事掲載から2015年7月31日まで、タイヤ4本セットを購入して“Car Watchを見た”とお店の方に伝えた人に、「タイヤ交換工賃」、または「4輪アライメント測定」のどちらか1つを無料サービスしてくれるそうです。
約1時間でサクッと交換
シノハラタイヤさんに伺ったのは、初夏の陽気となった5月上旬。すでに電話で「黄色のRX-8」と先方に伝えていたため、到着するとすぐにスタッフの中村さんが笑顔で出迎えてくれました。シノハラタイヤさんは店の敷地が広く、庭先に緑もあってとても雰囲気がよく、「初心者でも気軽に入っていけるお店」という印象です。
タイヤ交換中はラウンジや庭先でゆっくりくつろぎながら待つことが可能。ただ、今回は交換する過程を見学させてもらいました。余談ですが、ラウンジにソニーから発売されていたモバイルノート「VAIO Type P」(筆者もいちユーザーでした)が置かれていたのがとても印象に残りました。
まずは古いタイヤを取り外します。RX-8を作業用エレベータ(ガレージリフト)に載せ、作業しやすい高さまで車両ごとリフトアップ。そこからさらに内蔵するジャッキでボディーを持ち上げてタイヤを宙に浮かせます。この状態でホイールを固定している5個のナットを外してホイールといっしょにタイヤを取り外します。ここで同時にタイヤの空気も抜いておくようです。さすが専門の道具をプロが扱っているだけあり、ここまでは10分程度で完了します。
取り外した4つのタイヤとホイールは、専用の機械を使い、缶切りのような要領でタイヤをホイールから取り外します。それから逆の手順で新しいミシュランのPilot Sport 3が組み付けられ、いったん指定より高い空気圧を入れてタイヤをホイールに密着させます。そこから空気を抜いて規定値まで空気圧を下げ、タイヤの交換作業は完了です。
また、前回のタイヤ交換時にゴムバルブを交換しているのか不明でしたので、今回はついでに空気を入れるバルブも交換しておきました。自転車と同じく、自動車のバルブも重要なパーツの1つです。
交換されたタイヤは、すぐに回転する際の重さの均一性を計測する機器に取り付けられ、重量の分布を分析します。タイヤとホイールは基本的に重い部分と軽い部分があり、出荷時にマーキングしておいて、その部分を重ねることで重さの均一性を取るそうですが、ミシュランのタイヤは加工精度が高いためか、そのマークがないとのことです。これは知りませんでした。
「タイヤの重さの均一性は、スムーズに回転する上でとても大切な要素なんです」。そう教えてくれたのはテクニカルチーフの大河原さん。「この計測器では、紙を1枚挟んだだけでも重量バランスの違いが検出できるんですよ」という。1.3t超のクルマがそんな繊細な重さの違いにも配慮していることも初めて知りました。重量バランスが偏っている場合、おもり(バランスウエイト)を付けて調節します。今回はホイールに少し傷があってバランスが崩れていたため、少しおもりを付けていただきました。
タイヤ交換後、ホイールといっしょに車体に取り付けて作業完了です。筆者は「自動車のタイヤ交換といっても自転車と大差ないだろうし、自分でもできる程度でしょ」と踏んでいましたが、今回見学して「これは自分では無理だ」と思いました(笑)。すべての作業が完了するまで約1時間かかっています。
走り出して1分で違いが分かる!
ミシュランのPilot Sport 3を装着し、新しく生まれ変わった我がRX-8。その乗り心地はどうでしょう。実は、シノハラタイヤさんから道路に出てすぐに分かった変化が、明らかに乗り心地が変わっていることでした。
それまでは「路面! これが路面なんだよ!!」という感じでステアリングや座席から伝わってきた振動が、新しいタイヤではかなり軽減され、「あっ、ちゃんとゴムのタイヤを履いている(笑)」という印象に。つまりソフトな乗り心地になったわけです。道路の継ぎ目や低い縁石の段差などは、今まで「ガタッ、ガタッ」と通過していましたが、これが「トン、トン」と振動が軽くなり、スポーツカーばりの走りがかなり和らいだ印象。これなら長時間の運転でもいちいち神経を尖らす必要はなさそうです。
一方で、ハンドリング性能やグリップ力などの“スポーツ性”が失われたのかと思えば、決してそうではなく、意識したステアリング操作にはきっちりと応えてくれます。都内の一般道には鋭角な交差点も点在しますが、コーナーリング時にアンダーステアやオーバーステアになるような気配もなく、自分が思ったとおりに曲がっていく印象です。これはちょっと新鮮な感覚ですね。
もっとも、筆者はこのタイヤの特徴について事前情報を得ていたので、ある程度は先入観に影響された感想になっているのかもしれません。ところが、クルマを運転しない母親を乗せたところ、タイヤを履き替えたことがすぐにバレました。感想としては「静かになって柔らかくなりましたね~」と言ってくれました。どうやら筆者の感想にも間違いはないようです。
そんなわけで、Pilot Sport 3のファーストインプレッション、つまり短い距離を街乗りした感想はこんなところ。次回はゴールデンウィークを利用して高速道路で遠出したり、Car Watchでも執筆するプロによる指導を元に、このタイヤを使い倒してみたいと思います。