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【東京オートサロン 2018】ホンダブースで開催された「Modulo Xトークショー」レポート

家族のために走りのよさを追求した「フリード Modulo X」とは

2018年1月13日 開催

 1月12日~14日の3日間、幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催された「東京オートサロン 2018」。ホンダブースで行なわれた「Modulo Xトークショー」は、ホンダアクセスが手がけるModulo Xシリーズについて、造り込みやこだわりなどを開発に携わった技術者が語るというカスタマイズカーの祭典にふさわしいコンテンツだ。

 このトークショーは開期中毎日開催されていたが、Car Watchでは初日のステージと、2017年12月に発売されたばかりの「フリード Modulo X」を題材に取り上げた2日目のステージの模様を2回に分けて紹介する。初日分はすでに誌面掲載しており、本稿では2日目に行なわれたトークショーの模様をお伝えする。

大勢の人が集まったModulo Xトークショー。エンジニアによるトークはカスタマイズカーの祭典にふさわしいと言えるものだ

 Modulo Xトークショーでは、ホンダブースに展示された3台のModulo Xシリーズから1台ずつ取り上げて話を進めるもので、今回お伝えする2日目では、2017年12月に発売されたばかりのフリード Modulo Xが題材。そのため、登壇者もフリード Modulo Xの開発に携わったエンジニアとなっている。それでは登壇者から紹介していこう。

 司会の水村リアさんの紹介により、最初にステージに登場したのはホンダアクセスのModulo 統括 福田正剛氏。続いてエアロパーツ設計担当の塩貝僚氏、フリード Modulo Xのデザイナーである三井岳氏、シャシー、ホイール担当の斉藤孝貴文氏が登場。最後にModulo X開発アドバイザーの土屋圭市氏がステージに上がった。

今回の主役は2017年12月に発売されたばかりの「フリード Modulo X」
株式会社ホンダアクセス Modulo 統括 福田正剛氏
株式会社ホンダアクセス Modulo Xエアロパーツ設計担当の塩貝僚氏
株式会社ホンダアクセス フリード Modulo Xデザイナーの三井岳氏
株式会社ホンダアクセス Modulo Xシャシー、ホイール担当の斉藤孝貴文氏
Modulo X開発アドバイザーの土屋圭市氏
Modulo Xトークショーの司会は水村リアさんが務めた

 以上のようなメンバーだが、土屋氏はともかく、ホンダアクセスのエンジニアは普段は表に出ない人ばかりなので補足すると、福田氏はModulo Xを機種ではなくシリーズとして統括している、つまりボスである。次はModulo X、及び用品のModuloのエアロパーツ設計担当の塩貝氏。写真を見ても分かるように今回のメンバーの中では個性的な風貌のため、ステージ上では土屋氏からイジられる存在でもあった。続いては三井氏。フリードにはオプション品のデザインから携わっていて、2017年の東京オートサロンには三井氏がデザインした「フリード ACTIVE Concept」も展示されていた。今回のフリード Modulo Xでもデザインを担当している。最後に斉藤氏。この方は福田氏と一緒にModulo Xのサスペンションとホイールの実走テストを行なっているという開発におけるキーマンでもある。

 さて、今回のトークショーで取り上げるフリード Modulo Xは、2017年の東京オートサロンでコンセプトモデルが展示されていたが、約1年が経っていよいよ量産車として販売が開始されたクルマだ。

 そこで司会の水村さんは、まず土屋氏にクルマの仕上がりについて尋ねてみた。すると土屋氏は「いいに決まっているでしょ」とひと言。そして「S660やステップワゴンでModulo Xを造るときもそうですが、Modulo Xはスポーティだからこうであるべきという面を組み立てていって、さらに普段使いにおいて不快と感じない乗り味のレベルにしていきます。それに、ステップワゴンやフリードといったファミリーカーでは一緒に乗る家族のことも考えて造っていかなければならない。だからファミリーカーベースのModulo Xは、仕上げていくのがかなり難しいんですよ」と開発の手順に触れた。

 さらに「自動車メーカーのもの作りは期間が決められるのですけど、Modulo Xはそうじゃなくて“責任者の福田さんがOKを出すまでやれ”というのが会社の方針なんです。すごいでしょ。でも、そんな体制だからこそフリード Modulo Xのようなクルマを造れるんですよ」と語った。

トークショーの冒頭で、Modulo X開発アドバイザーの土屋氏からはファミリーカーとしてのModulo Xを造ることが難しいということ、そんな難題に対して期限を切らず、とことん造らせてくれるのがホンダアクセスという会社だと語られた

 ここで塩貝氏が「北海道の旭川にあるホンダの鷹栖テストコースに行くときは、だいたい1週間の出張予定を組むのですが、その期間で予定が消化できないこともありました。どうするかなと思っていたら、自分の知らないうちに福田から直属の上司に連絡が行っていて、上司から電話が来たと思ったら『あと1週間延期な』と軽く言われてしまいました(笑)。でも、ほかの仕事も詰まっているので、あのときはけっこう焦りました」と付け加えて来場者の笑いを誘っていた。

 ちなみにModulo Xの開発時には、福田氏が会社の上層部の人をテストコースへ連れ出してテスト車に乗せることもあるという。土屋氏が「ホンダに入社したころのピュアな気持ちで1度乗ってください」と声を掛けることもある。そして乗り始めると、トイレなどの休憩以外はクルマから降りてこないほど熱中してくれるのだという話も出た。そんな感じで会社全体が熱心になるのがModulo Xの開発のようだ。

 話題が切り替わり、次はアルミホイールについて。ここでS660用のModuloパーツを開発したときの話が出た。S660にはModuloブランドとしてエアロパーツ、サスペンションキットのほかに専用アルミホイールが用意されているが、開発当時にはいくらS660とはいえ「軽自動車でアルミホイールを変えたからといって、走りが変わるか?」という意見もあったという。

 しかし、エンジニアの強いプッシュもあったので開発を始めると、ホイールの剛性がクルマの走りに大きな影響があることが分かった。形状を変え、デザインを変えていくと明らかに走りが変化するので、開発現場のみんながその変わりように引き込まれていったという。それは福田氏曰く「面白くてしょうがない」という状況だったという。それを詰めていったのが「S660 Modulo X Concept」でも履いている「MR-R01」というアルミホイールだが、そのときのノウハウはフリード Modulo Xが履いているアルミホイールも生かされているとのことだった。

 この開発に携わったのが斉藤氏だが「ホイールの剛性に関しては、車両とのマッチングを見ながら最適なものを選びました。考え方としてはサスペンション+αというところで、ホイールでも走りの部分でこだわりを持ったものが装着されています」とのこと。

こちらはS660 Modulo X Conceptに装着されていたホンダアクセス製「Modulo MR-R01」。このホイールの開発ノウハウがフリード Modulo X用のホイールにも使われている
こちらがフリード Modulo Xの専用ホイール。サスペンションに加えてホイールでも走りにこだわっているとのこと

 エアロパーツに関しても面白い話が出た。Modulo Xではまずサスペンションの開発を先行させ、それから空力で作り出す特性を得るためエアロパーツの造形に入るとのこと。このとき、まずは福田氏がテスト車に「ダンボールとガムテープ」を使って、経験上ここだという場所に空力のキーとなる形状の元を作る。そしてその状態でテストコースを走行しながら形状を少しずつ変えていき、ある程度まで目指す方向が見えたところでデザイナーにバトンタッチして本格的なエアロパーツ製作に入るという。

 ここでマイクを取ったのが、フリード Modulo Xのデザイナーである三井氏。三井氏からは「クルマのデザインは本当に難しいものでして、フリード Modulo Xはファミリー層にも乗っていただくクルマと考えています。すると、例えばマンションの駐車場に駐まっているときに目立ちすぎるデザインはNGでしょう。スポーティに見せながら派手になりすぎていなくて、誰が見てもいいねと思ってすんなり生活になじんでくれる、そういったところを狙って作りました」とのこと。この発言のなかの“マンションの駐車場~”の下りの部分では、ステージ前の集まった観客が“なるほど”的に頷くシーンも見られた。

フリード Modulo Xはファミリー層も乗るクルマなので、派手すぎるエクステリアデザインは好まれない。マンションの駐車場に駐めたときにもまわりから浮きすぎないレベルに抑えつつ、空力で必要な性能を突き詰めた逸品

 また、初日のトークショー記事でも触れたが、Modulo Xの開発に携わる人はデザイナーといえどもテスト車のステアリングを握ってテストコースを走るという。これは三井氏も同様で、テストコースに行って運転し、ガレージでは試作品のエアロパーツにダンボールで造形を加えたり、ウレタンを削ったりということを朝から晩までやっているという。「色々なものがデジタルになっている世の中に、そんなふうに地道にやることに意味があるのかと思う方もいるでしょうが、ボクは人の感覚で仕上げなければ人の感覚に訴えるものはできないという信念でやらせていただいています」と三井氏は付け加えた。

トークショー終了後に三井氏にフリード Modulo Xの近くまで来てもらい、記念撮影と合わせてエクステリアデザインについて少し話を伺った

 さて、先ほどからファミリーカーという言葉が何度か出ているが、ファミリーカーと言うならば、運転席だけでなく2列目、3列目のシートの乗り心地も気になるところだろう。その点について、トークショー終了後に三井氏に訪ねてみた。

 三井氏曰く「乗り心地というとサスペンションの味付けも重要ですが、エアロの作りもそれに貢献します。フロアの下を流れる空気をまっすぐ流すことでクルマの安定性が向上します。するとクルマが振られにくくなったり、クルマの姿勢が安定しているとギャップを越えたときもサスペンションの能力をしっかり発揮できるようになります。また、直進安定性が高いクルマだと、高速道路を使って遊びに行くようなときに、ステアリングに軽く手を添える感じでドライブできます。それで運転するお父様、お母様の疲労軽減にもなるのです」と語った。

 さらに、フリード Modulo Xのエクステリアデザインで一番苦労した部分はどこか?という質問には「やはり、クルマのキャラクターを印象づける顔つきですね。ここのデザインというのは非常に難しかったです。しかも、Modulo Xならではのテストをして分かったことですが、空力のポイントになる部分だと1mm削るだけでも方向性に影響が出るので、削っては盛っての作業を繰り返して形状を造っていきました」と三井氏は語ってくれた。

フリード Modulo Xのインテリア。フロントシートだけでなく、2列目や3列目の乗り心地も考えて開発したという
フロントバンパーの両サイドにあるエッジの立った形状は、コーナリング時の挙動に影響がある部位とのこと。空力効果と言うとサーキットなどの高速域でなければ効果を体感できないと思いがちだが、ストリートでも大いに関係ある。この形状を生み出すために、エンジニアとテストドライバーが何度もホンダのテストコースを走り込んだという

 トークショーの終盤には登壇者も場慣れしてきて、トークもどんどん弾んでいったのだが、終了の時間が近づいてきたところで土屋氏がまとめに入る。「今まで色々な自動車メーカー、タイヤメーカーでもの作りのお手伝いをしてきましたが、ホンダアクセスのクルマ造りは飛び抜けてますね。レーシングチームが勝つためのレースカーを造るようなこだわり具合で市販車を造っているわけですから。すごいと思いますけど、こんなに時間とお金を掛けていたんじゃ儲かりませんよね(笑)」と言って福田氏のほうを向いた。

Modulo Xの開発陣と仲間意識を持って一緒に仕事をしている土屋氏。なぜそこまで肩入れするのかが、この発言に込められている

 それに対して福田氏は「一般道とサーキットを比べると、サーキットのほうが過酷というイメージもあるでしょうけど、一般道は甘いものじゃないんです。路面の状況は道ごとに違うので、そういった面も含めて徹底的にテストしてバランスのいいクルマにしていきます。そしてバランスのよさを突き詰めていくと走りに上質さも生まれるんです。さらにそれが安心感にもなるので、ファミリーカーといえど極限の状態で鍛えていくことは、いいクルマを造るうえで大切なことなんです」と語り、フリード Modulo Xを題材とした「Modulo Xトークショー」は終了した。