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【インタビュー】東京オートサロン 2017のホンダブースに展示された「フリード」「ステップワゴン」のModulo Xコンセプトモデルについて聞く
内外装デザインの特徴、そのこだわりを紹介
2017年1月31日 15:57
1月13日~15日に幕張メッセで開催された「東京オートサロン 2017」で、本田技研工業は大規模なブースを展開した。そして、そのブースには新型「フリード」をベースにした2台のコンセプトカーと、先だってラインアップに追加された「ステップワゴン Modulo X」の東京オートサロン向け特別モデル「STEP WGN Modulo X-Special Edition」も展示され、入場者の注目を集めていた。
Car Watchでは、初公開となったこれら2台のコンセプトカーおよび「STEP WGN Modulo X-Special Edition」について、デザインを担当したホンダアクセスの開発者にインタビューをすることができたので、本稿ではその内容をお届けする。
市販を熱望したいコンパクトミニバン「FREED Modulo X Concept」
まずは「FREED Modulo X Concept」について、ホンダアクセス 商品企画部 デザイン担当の戸田保弘氏が説明してくれた。
「Modulo XはホンダのNシリーズ、ステップワゴンと展開してきたコンプリートカーブランドです。Modulo Xの名前が付くクルマはこだわりを持った上質な走りを実現した作りになっているのが特徴で、今回は新型フリードを使ってそれを表現したコンセプトモデルがこのFREED Modulo X Conceptです」とのこと。
そして「Modulo Xの名前が付いたモデルは上質で乗り心地がよく、それでいてスポーティな走りも味わえる乗り味を追求していますが、我々はその特徴をデザインでも表現したいと考えました。例えばフロントエアロバンパーやサイドスカート、フロントグリルなどに赤い色を使っていますが、これは空力的に重要な部分を強調する意味もあり、それによってスポーティさを表現しています」と、デザインのポイントを解説してくれた。
白いボディに赤い色を組み合わせたデザインは、ホンダF1第1期のマシンを連想するものでもあるが、今回、東京オートサロン用に用意された塗色は風の流れからくるイメージを盛り込んだ、動的なデザインでもあるという。
Modulo X コンセプトならではのエアロパーツについては、「ステップワゴン Modulo Xと比較してコンパクトなフリードですが、堂々とした佇まいを持たせることを考えました。フロントエアロバンパーでは造形と塗り分けによって前から見た姿にドッシリとしたイメージを作りました。また、リアアンダースポイラーもModulo X用になっています。これらの専用エアロパーツに加えて、ホンダアクセスからフリード用の用品として発売しているサイドアンダースポイラーとテールゲートスポイラーを組み合わせた仕様で、スタイル面と空力面のバランスを取っています」とのこと。
ちなみに、Modulo X用のエアロパーツ開発ではデザイナーがデザインとして表現したいものと、空力の専門家が求めたい性能という2つの要素について、それぞれの担当者で何度も話し合い「そのカタチでよくするにはどうしたらいいのか?」ということを突き詰めているという。エアロパーツに限らず、もの作りにおいて複数の担当者が絡むことはよくあり、その際、片方の主張を通すためにもう片方が引くことで話をまとめる方法もあることはあるのだが、ホンダアクセスのもの作りは「そういうレベルの話ではないのです」ということだ。
そのこだわりがよく出ている部分について、戸田氏いわく「Modulo Xには先に発売したステップワゴン Modulo Xがあります。このモデルで“Modulo Xの顔”と言えるフロントまわりのデザインができました。そのため、FREED Modulo X Conceptもそれを踏襲することが必須条件でしたが、空力も突き詰めたうえでのフリードに合う“Modulo Xのデザイン”を考え出すという作業は難易度の高いものでした」と振り返る。
そんな妥協のない作り方をしているだけに、Modulo X用のエアロパーツはスタイリッシュなデザインと空力性能を両立できているのだろう。
現在、FREED Modulo X Conceptは乗り心地や走りのよさを追求するためテストを続けているとのこと。ステップワゴン Modulo Xも2016年の東京オートサロンでコンセプトモデルを公開後に市販化となっているので、FREED Modulo X Conceptも市販される可能性は十分にある。使い勝手のよいコンパクトミニバンで走りが上質であり、かつスポーティというクルマは世界的に見てもあまりない存在だけに、ぜひ市販してほしい1台だ。
スニーカーのイメージを取り入れた「FREED ACTIVE Concept」
次に紹介するのは、これも東京オートサロン 2017が初公開の場となった「FREED ACTIVE Concept」。解説をしてくれたのは、このクルマのデザインを担当したホンダアクセス 商品企画部 デザイン担当の三井岳氏だ。
さて、FREED ACTIVE Conceptのデザインコンセプトについて三井氏は「FREED ACTIVE Conceptは、フリード+という荷室空間が広く使い勝手のよいクルマをベースにしています。そして、その使い勝手をよりよくするという狙いがありますが、ただ便利にするだけではなく、フリードというコンパクトミニバンのスタイリングをアクティブに仕立てるということも大きな狙いの1つです」と語るとともに、「アクティブなクルマであることを分かりやすく表現するためにデザインしたのが、フロントとリアのバンパーに取り付けた大型のプロテクターとボディサイドモールディング、ルーフレールです」と解説。
そしてこのクルマのデザインでもっとも特徴的である、内外装にあしらわれる編み込み風のデザインについては「あくまでもスタイリングとしての表現になるのですが、クルマをクルマらしく見せるということより、最近のアウトドアファッションを意識したデザインを狙っています。モチーフにしているのはスニーカーです」とのこと。なるほど、ネット状というか編み込み風のデザインは靴紐にも見えるし、アウトドアシューズそのもののデザインっぽくもある。
さらにこの編み込み風のデザインは、大型の前後プロテクターやボディサイドモールディングから余分な「重さ」のイメージをなくすことにも貢献。三井氏は「軽快にアウトドアレジャーへ出掛けられるという提案の1台です」とコンセプトについて語っている。
外装については使われている色にも特徴があったので、その点について伺ってみると、「ボディカラーはフレッシュなブルー、黄緑はオリジナルの色を使っています。そしてボディカラーにマットを使ったのは、より靴、スニーカーらしさを出すための表現です。それとタイヤですが、フリード標準のものから4シーズン仕様のパターンが大きめのものに変えています。これもアウトドア、スニーカーという世界観を表現するために変更しました」と、その特徴について説明いただいた。
さて、このような造りのエクステリアだが、このデザインはまずスケッチで描かれたという。ただ、今回取り入れた編み込みの部分については、絵では実際のイメージが掴みにくい。そこで三井氏は1/1のサンプルを作り、それに対してヒモを通す順番を試行錯誤しながら決めていったという。
FREED ACTIVE Conceptは、外装だけでなく内装についても作り込まれている。インテリアの作り込みについてうかがったところ、「車内のパーツのうち、変えることで一番イメージの変化が大きいのは面積が大きいシートですので、こちらの部分に手を加えました。変更したのはシート生地と色味ですが、この色味にはとくにこだわっていて、外装にも使ったネットの色をなるべく近い状態で表現できるようにしています。あとはそのネットを使って大型のルーフネットを設け、ユーティリティ性を拡張したものを追加しております」とその特徴について語る。
このネットはほかの箇所にも活用されていて、1つは前席のシートバック。樹脂製ベースにネットを張ることでスマートフォンなどを入れられる小物入れにしていたり、編み込んでマット状にしたものをラゲッジスペースに3段の棚のように配置しているので、積載性はかなりよさそうだ。さらに三井氏からは「一般的なボード状のものとは違いネットですので軽く、取り外した際もロール状にして収納できるので場所を取らないという利点があります」と説明するとともに、「今までこういったユーティリティのアイテムには黒を使うことが多かったのですが、今回は内装も明るく楽しく見せるために黄緑色の明るい色を使うことにしました。アウトドアに出かける道中も楽しくクルマに乗っていただきたいという思いもあるのです」と三井氏は語ってくれた。
フリード+はラゲッジスペースの左右にフックなどを増設できるユーティリティナットを設けているので、その機能を上手く生かした装備といえるだけに、これだけでも用品として発売してもらいたいという印象だった。
「遊びに行く移動中も楽しく過ごしてもらいたい」という想いがよく伝わる、多彩なアイデアが盛り込まれたFREED ACTIVE Concept。ホンダというとタイプRのようなスポーティなクルマを連想する人は多いが、こういった遊び心のあるクルマもホンダらしい一面。用品でそれを表現するアイデアは市販車の魅力をさらに高めてくれることだろう。
東京オートサロン向けの特別モデル「STEP WGN Modulo X-Special Edition」
ホンダブースには以上2台のフリードのほかに、ステップワゴン Modulo Xのカラーリングを変更し、東京オートサロン向けの特別モデルとして「STEP WGN Modulo X-Special Edition」が展示されていた。このクルマについて、ホンダアクセス 開発部の清松氏に紹介していただいた。
「ステップワゴン Modulo Xの開発のキーワードは“上質な走りを実現するエモーショナルツアラー”です。そして今回展示したのは、すでに市販化されているステップワゴン Modulo Xのホワイトオーキッド・パール色をベースに、フロントエアロバンパー、サイドスカート、リアエアロバンパー、ミラー、ホイールに赤い差し色を入れています。加えてルーフ色は黒になっています。この黒いルーフはSTEP WGN Modulo X Conceptで採用していた塗り分けでもあります」とのこと。
Car Watchではこれまでもステップワゴン Modulo Xについて取り上げているが、今回改めてユーザーに伝えたいクルマの特徴と魅力をうかがってみたところ、「ステップワゴン Modulo Xは上質な走りを求めるということをコンセプトとしてやっていますので、ドライバーが運転して“楽しい”と思えるのはもちろんのこと、後ろのシートに乗られる方も快適に長時間乗っていられることを目指しました。一般的に、このような性格のクルマは欧州車などにありますが、我々はどこかのクルマを目指したのではありません。もちろん、開発時には比較として欧州車にも乗りましたが、あくまで参考としてのことです。つまり、我々がやりたかったのは用品メーカーとして長年培ってきたものを部位的な性能向上や使い勝手のよさではなく、車両として仕上げることでした。そして、その結果が(試乗会などで)高く評価されていることは非常にうれしく思っています」ということだった。
Car Watchでは、ツインリンクもてぎを会場に行なわれたステップワゴン Modulo Xの試乗会「Feel Modulo 2016」の模様を掲載しているので、参加者の声などはこちらをご覧になっていただきたい。
ステップワゴン Modulo Xをファミリーで1日体感した「Feel Modulo X 2016」レポート(前編・一般道試乗)
ステップワゴン Modulo Xをツインリンクもてぎで体感した「Feel Modulo X 2016」レポート(後編・クローズドコース)
東京オートサロンで魅せたホンダアクセスの存在感
上記で紹介したFREED Modulo X Concept、FREED ACTIVE Concept、ステップワゴン Modulo Xは、ホンダ車をベースにホンダの純正用品を開発・販売するホンダアクセスが手がけたクルマである。そのクルマを並べた今回のブースには、どのような狙いがあったのか?
その点についてホンダアクセス 商品企画部 兵庫康博氏に話をうかがったところ、「展示のコンセプトとしては、Moduloブランドの新しいイメージを作ろうという狙いがあります。完全なコンセプトモデルのFREED ACTIVE Conceptは別として、STEP WGN Modulo X-Special EditionとFREED Modulo X Conceptに関しては、ボディ色は白、ルーフは黒。そして差し色として赤を使うというカラーリングにすることで、ブランドイメージとしての統一感を出しています」と解説。
そのカラーリングによるModuloの新しいイメージという部分をもう少し詳しく説明してもらうと、「Moduloは走りのよさも求めていますが、向かうところはレーシーではなく“上質なスポーティ”です。そういったことを表現するカラーリングを作ることでModuloのクルマのイメージを持ってもらいやすくするのが狙いです。ただし、上質といっても曖昧な部分もありますので、あまり飛躍しすぎない表現をすることに気を使いました。赤い色にしても派手になり過ぎず、それでいて控え目過ぎずというデザインにしています。FREED Modulo X Conceptの担当者も言ってますが、赤い色の入る場所は空力的に重要な部分でもあるので、ただの塗り分けでなく機能面もちゃんとやってあることを分かっていただきたいという想いも込めてあります。ただ、今どきはベース車に対してあまり違いを出すと“恥ずかしい”とか“やり過ぎではないか”と感じるお客様もいるので、コンセプトモデルを見ていただいたお客様の声を今後の参考にしていきたいと思っています」と語っていただいた。
そして最後に「将来的にはModulo Xの新型が出るという情報に対して、お客様に注目していただけるようなものにしていきたいと思っています」と、今後の抱負について語ってくれた。
協力:株式会社ホンダアクセス