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最速「GT3」マシン決定戦!! ミカ・ハッキネンも復帰の「SUZUKA 10H」見どころ

2019年8月23日~25日 開催

鈴鹿の新たな風物詩「SUZUKA 10H」(写真は2018年の模様)

 元F1世界チャンピオンのミカ・ハッキネン選手が鈴鹿でレースに復帰。そんな話を聞けば、モータースポーツファンなら誰しも興奮を覚えることだろう。当時のF1で“皇帝”ミハエル・シューマッハ選手と激闘を繰り広げたハッキネン選手は、1998年と1999年にF1世界チャンピオンを獲得しているが、鈴鹿はその両方でタイトル争いを決めたコースでもある。

 そんなハッキネン選手が参戦するのが、8月23日~25日に鈴鹿サーキットで開催される「2019 第48回サマーエンデュランス『BHオークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース』」(略称:SUZUKA 10H)だ。今年で2回目の開催となるレースで、2017年まで実に46回の歴史を刻んだ鈴鹿1000kmに代わる新たな鈴鹿の風物詩となる。

「SUZUKA 10H」でレースに復帰するミカ・ハッキネン選手

SUZUKA 10Hはどんなマシンが走るのか?

 それまでの鈴鹿1000kmがSUPER GTの中の1戦だったのと比べると、SUZUKA 10Hというのは参戦車両が複雑で少し分かりにくく感じるかもしれないが、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニ、マクラーレンなどが販売しているレース専用車両「GT3」マシンの世界一決定戦と言えるレースになる。

 SUZUKA 10Hは、スパ24時間などを含む「インターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)」の1戦に位置づけられるため、同シリーズに参戦する世界8メーカーのGT3マシンが参戦する。加えてSUZUKA 10Hでは、日本のSUPER GTに参戦するGT300マシン(JAF-GTマシンやマザーシャシーも含む)や、スーパー耐久でGT3マシンが走るST-Xクラスのマシンも参戦可能とあって、普段は異なるレギュレーションで走っているGT3クラスのマシンの最速が争われる形になるワケだ。

 特に今年はIGTCが規模を拡大し参加メーカーが増えているほか、スーパー耐久のST-Xクラスも“スペシャルラウンド”との位置づけでシリーズポイントに加算されるとあって、昨年よりも参戦車両が増えており、6月27日時点で参戦表明しているマシンは40台に及ぶ。こうして集まった色とりどりのマシン自体が、SUZUKA 10Hの魅力の1つと言えるだろう。

IGTCのマシンもSUPER GTのマシンもスーパー耐久のマシンも走るSUZUKA 10H

 中心になるのはいわゆるFIA-GT3マシンだ。これはFIAが作ったカテゴリーで、市販の2シーター、または2×2シータークーペをベースにFIA-GT3車両規則にのっとって改造されたレースマシンとなる。と言っても、もともとあまりお金をかけないでレースできるように作られたカテゴリーということもあって改造範囲は狭い。つまりチームの懐事情による速さの差が出にくいカテゴリーとなっている。シャシーもエンジンも基本的には市販されているものに準ずるので、世界の自動車メーカーがこのGT3に照準を合わせたモデルを開発・販売しているのはご存じのとおりだろう。当然各メーカー各マシンのキャラクターが表われるが、マシンによってレースにおける有利不利が出ないよう、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)と呼ばれる性能調整が行なわれる。

 実際に参戦する車両に目を向けてみれば、世界の名だたるスーパーカーの名前が目を引く。日本の日産「GT-R NISMO GT3」とホンダ「NSX GT3」が迎え撃つのは、ドイツのアウディ「R8 LMS GT3」、BMW「M6 GT3」、ポルシェ「911 GT3」、メルセデス「AMG GT3」、イタリアのフェラーリ「488GT3」、ランボルギーニ「ウラカン GT3」、イギリスのアストンマーティン「V8 ヴァンテージ GT3」、ベントレー「コンチネンタル GT3」、マクラーレン「720S GT3」、ロータス「エヴォーラ MC」、アメリカのシボレー「コルベットC7 GT3-R」など。残念ながら今のところJAF-GTマシンの参戦はなく、GT3の中唯一孤軍奮闘するのがマザーシャシーのエヴォーラ MCという構図だ。

フェラーリやアウディ、ベントレーなどさまざまなマシンがレースを彩る
SUPER GTのGT300クラスで走るマザーシャシーのエヴォーラ MCも参戦する

ハッキネンだけじゃない! 時代を超えた最速男達の戦い

 色とりどりのマシンも魅力だが、もう1つ、ドライバーという点でも日本のファンにとっては見どころが多い。先に紹介したハッキネン選手だけでなく、なんと、脇阪寿一選手も兄弟そろって参戦を表明。さらにGT300マシンで参戦する道上龍選手、そしてスーパー耐久のB-MAXから本山哲選手も参戦を表明しており、永遠のライバルと言われるこの3選手による熱いバトルを再び見ることができるかもしれない。

脇阪寿一選手(左)は弟の脇阪薫一選手(右)と共にポルシェで参戦
GT300参戦中の道上龍選手はチームメイトの大津弘樹選手と共にNSXで参戦
2018年でSUPER GTから引退した本山哲選手はGT-Rで走る

 他にも、2018年のSUZUKA 10Hでは日本人チームとして最高位になったグッドスマイルレーシングから、谷口信輝選手、片岡龍也選手、小林可夢偉選手が今年も参戦。またKCMCからIGTCに参戦中の松田次生選手、ハッキネン選手とチームを組む石浦宏明選手など、人気、実力ともに高い名だたる選手が顔をそろえる。日頃SUPER GTではクラスが異なる選手同士のバトルに注目してみるのも、SUZUKA 10Hならではの楽しみ方となるだろう。

谷口信輝選手(左)と片岡龍也選手(右)は小林可夢偉選手とグッドスマイルレーシングから今年も参戦

 もちろん海外からもDTMのチャンピオンであるゲイリー・パフェット選手やマーティン・トムチュク選手、2018年のIGTCを制したトリスタン・ヴォーティエ選手、GT3レースの本場ブランパンGTシリーズ/ブランパンGTワールドチャレンジで優勝経験のある選手も多数参戦し、まさにGT3最速を決めるのにふさわしい顔ぶれだ。

 付け加えれば、元F1チャンプと戦えるとなれば、見る側にとってだけでなく、参戦する選手にとってもより特別でエキサイティングなレースになることは間違いないだろう。時代を超えた最速男たちによる歴史的な瞬間が見られるかもしれない。

SUZUKA 10Hならではのレギュレーション

 参加するマシンもドライバーも豪華なら、SUZUKA 10Hは賞金も豪華だ。賞金総額は実に1億円!! 総合優勝には3000万円、2位1000万円、3位には500万円、以下完走総合順位に応じて全車に賞金が提供される。

 異なるレースのマシンが走るとあって、レギュレーションもSUZUKA 10H独特のものとなる。まずタイヤについてはコントロールタイヤとしてピレリ一択になる。これは普段SUPER GTしか走っていないチーム、つまりピレリを使っていないチームにとっては不利な条件だ。というのもレースにおいてタイヤの性能が勝敗に影響する割合は大きい。タイヤそのものがワンメイクでイコールコンディションになるとしても、そのタイヤに合わせたマシンセッティングやタイヤの最適な使い方をするには、経験値による差は大きなハンデとなる。

 実はそういったこともあって、2018年のSUZUKA 10Hでは、ピレリを使いなれている海外勢がトップ4を独占した。しかし2019年は、例えば2018年の日本チーム最高位のグッドスマイルレーシングは、2018年に続いてスパ24時間に参戦してセッティングを詰めてくるはずだし、松田選手が出走するKCMGは今シーズンIGTCに参戦していて、ピレリでの経験値も高い。もちろんタイヤだけですべてが決まるわけではないが、昨年以上の日本人選手の活躍に期待ができるだろう。

2018年優勝のMercedes-AMG Team GruppeM Racing。2019年は999号車として参戦
2018年は海外勢が表彰台を独占した
グッドスマイルレーシングはスパ24時間に参戦して経験値を上げる
松田次生選手が出走するKCMGもIGTC参戦で経験値アップ

 SUZUKA 10Hは予選からして目が離せない。Q1とQ2が用意されるが、Q1についてはドライバー3名全員が15分ずつのセッションで走り、それぞれのベストタイムを合算したタイムで上位がQ2に進む。つまりドライバー1人が速ければよいのではなく、チームの総合力が問われる争いとなる。

 続くQ2ではドライバー1名のアタックとなる。当然各チームエースドライバーを投入してくるので、その争いがヒートアップすることは間違いないだろうし、見る側にとっても普段あまり目にしない海外勢の実力を垣間見る瞬間だろう。

 また、SUZUKA 10Hにはクラス分けも存在する。それはチームのドライバーのランクによるクラス分けだ。FIAが定めた「ドライバーカテゴライゼーション」に準じているが、簡単に言うと、元F1チャンピオンや主要国際レースのチャンピオンなどがプラチナ、国際レースや国内レースで実績のあるプロドライバーがゴールド、ある程度の実績があるアマチュアドライバーがシルバー、大きな実績がないアマチュアドライバーがブロンズといった形だ。そしてSUZUKA 10Hでは、各チーム3名のドライバーランクの組み合わせによって以下の4つのクラスにクラス分けしている。

PRO

ドライバーのカテゴライズの制限なし

PRO-AM

最大でプラチナ/ブロンズ/ブロンズの組み合わせ

SILVER Cup

最大でシルバー/シルバー/シルバーの組み合わせ

AM

3人ともブロンズ

 さらに、もう1つ特徴的なレギュレーションとして、最低ピットストップ時間が決められている。コントロールタワー前の白線からピットレーン出口までを83秒以上で通過しなければならないのだ。そのため、なにかトラブルがない限りピットストップで大きく順位が入れ替わる可能性は少ない。ただし“泣きの1秒”というものが認められていて、82.0秒から82.9秒でのピットアウトが3回まではOKとされる。もちろんミスをすればペナルティとなるが、この合計3秒の差が勝敗を分けるかもしれない。

ハッキネン選手サイン会付きチケットも!!

 このようにモータースポーツファンなら見逃せないビッグイベント SUZUKA 10Hだが、観戦チケットはすでに発売中だ。

 前売り観戦券(自由席)は、ゆうえんちモートピアパスポート1日券付きで大人5700円、中・高生4000円、小学生3100円、3歳~未就学児2000円。また中・高生以下にはレース観戦のみのチケットも用意されていて、中・高生1700円、小学生800円、3歳~未就学児600円となる。

 また、日曜のみ有効の指定席券は、V2指定席券が3歳以上共通で3300円、V1エリア券が1300円(高校生以下は不要)、B・Qエリア券が1000円(高校生以下は不要)。

 他にもグループチケットやラウンジチケットなどさまざまなチケットが用意されるが、注目はハッキネン選手を応援する「10Hファンテラス」だろう。価格は中学生以上4万円、3歳~小学生が8500円となるが、なんと土曜日にはハッキネン選手によるサイン会が行なわれる。観戦エリアも東コース全体が見渡せるピットビル3階のホスピタリティテラスのほか、V1、B、Qエリアや劇感エリアも含まれていて、10時間という長丁場のレースも飽きずに快適に楽しむことができるだろう。

 そのほかにも、家族やグループで楽しめるR-BOXや食事も楽しめるGRAN VIEWシートなど観戦方法のバリエーションは豊富だ。ぜひそれぞれの楽しみ方に合わせて、売り切れる前に早めにチケットを手に入れていただきたい。

家族やグループで観覧できる新しい観覧席「R-BOX」
「COURSE SIDE PIZZERIA-GRAN VIEW-」のテラス席「GRAN VIEWシート」