トピック
レーシングドライバーの指導を受けて愛車の実力を味わえる「ポルシェ トラック エクスペリエンス」
上位レベルでの認定者はワンメイクレースの出場も
- 提供:
- ポルシェジャパン株式会社
2019年12月3日 13:57
- 2019年11月23日 開催
2018年から国内でプログラムがスタートしたポルシェジャパンのイベント「PTE(ポルシェ トラック エクスペリエンス)」。このように書くと始まったばかりプログラムだと感じるかもしれないが、以前の「PSDS(ポルシェ スポーツ ドライビング スクール)」から含めると20年以上に渡って継続されている。PTEの内容はトラック=サーキットという名称が入っているように、サーキット走行を含めたドライビングスクールになる。
以前のPSDSとPTEの違いはというと、PSDSが国内独自のプログラムだったのに対して、PTEはポルシェAGが考案したプログラムが基本となっていて、現在では全世界19か国で実施されている。500ページにもおよぶPTEのガイドラインには数多くの内容が記載されていて、この項目を遵守しながら開催されている。ただ、各国で開催場所や参加者のレベルが異なってくるので、プログラムマネージャーが開催国に合わせてローカライズすることは許されている。
日本の場合は参加者のレベルがさまざまなので、基礎トレーニングとなるカリキュラムを豊富に用意している。また、開催する場所も限られているために、身につけるドライビングテクニックは変わらないが、走行する場所に合わせたカリキュラムが適用される。欧州のPTEでは「アマチュアでレースに参加している」といった人が受講することが多く、サーキットでコンマ1秒を削るようなハイレベルなプログラムの実施がメインとなっているそうだ。
PTEはカリキュラムによってレベル分けされていて、レベル0の「Warm Up」、レベル1の「Precision」、レベル2の「Performance」、レベル3の「g-Force Precision」、レベル4の「g-Force Performance」、レベル5の「Master」、レベル6の「Fast Track」と7つのプログラムが用意されている。
2020年にはこの7つのプログラムの上位にレベル7~8が導入される予定で、上位レベルでドライビングを認定された受講者には、ワンメイクレースの「ポルシェ スプリント チャレンジ ジャパン」で同時開催される予定の「Sports Cup」でタイムアタックをしてもらうほか、「ケイマン GT4」に乗ってポルシェ スプリント チャレンジ ジャパンに参加してもらうことなどが検討されているという。
PSDSを開講していた当時は、受講者の中から「ポルシェ カレラカップ ジャパン」にステップアップしていったドライバーも多く、PTEのプログラムを確立させることで、モータースポーツやレースへの参戦に直結できるような仕組みを作っている。ポルシェジャパンではモータースポーツアクティビティのピラミッドを段階的に用意していて、最初の入り口となるのがPTEで、その上位にポルシェ スプリント チャレンジ ジャパン、ポルシェ カレラカップ ジャパン、SUPER GTという階段が設けられている。
2019年のPTEは、4月に袖ヶ浦フォレストレースウェイ、6月と10月に富士スピードウェイ、そして今回取材した関西地区で初開催となった南紀白浜の4回が実施された。
2019年最後のPTEとなった今回の会場は南紀白浜空港 旧滑走路で、11月22日~24日の3日間にわたって3つのプログラムが実施された。取材を行なった11月23日にはレベル1となるPrecisionが開講されていて、26台の車両が集まった。参加車は「911」が約3分の2で、「ケイマン」「ボクスター」が3分の1という割合。レベル1のPrecisionまでは「マカン」「カイエン」「パナメーラ」での参加も可能で、この日はパナメーラがエントリーしていた。
PTEのプログラムは基本的に1段階ごとの受講が必要で、サーキットでの走行経験があったとしても最初はWarm Upからのスタートで、次にPrecision、Performanceという順に受講することになる。ただ、今年度まではサーキット走行やドライビングスクールの経験があればPrecisionからの参加が許されていた。
Precisionのカリキュラムは4つに分かれていて、「ウェット路での旋回」「スラローム」「レーンチェンジ」「ニューモデルエクスペリエンス」となる。スタートは8時で、修了式の17時過ぎまで約9時間にわたってみっちりとカリキュラムが組まれている。それぞれの走行時間も1時間となっていて、本気で走行するとそれなりの疲労感とともに充足感が味わえるはずだ。
開講式の後に行なわれたのは初級編の「ドライビング・アカデミー」になる。多くのドライビングスクールでは走行する時間を優先するため、座学の時間が削られる傾向にある。だが、PTEではクルマの動きを学習しながら実践する形式を取っている。知識がない状態で闇雲に走らせてトレーニングを受けるよりも、まず座学で挙動などを覚えることで、より短時間でトレーニングの効果を発揮させられるからだ。また、ポルシェの各モデルはPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)をはじめとして数多くの電子制御が装備されている。上位カリキュラムになるとそれらの機構的な特徴や、どのような場合に作動するのか、スポーツドライビング時のメリットなども学ぶことになるそうだ。
40分間のドライビング・アカデミーが終了すると、参加者が4組に分かれて実践のトレーニングに入る。各組には2名のインストラクターが付き、ドライビングを徹底的に指導。今回は荒聖冶選手、影山正彦選手、高木真一選手、小河諒選手など8名のレーシングドライバーがインストラクターとして受講者の走行に対してアドバイスをしていた。
今回のPTEでチーフインストラクター代理を務めていたレーシングドライバーの荒聖冶選手は、「PTEは参加者にスポーツドライビングを楽しんでもらうのはもちろんですが、ポルシェが持つパフォーマンスを知ってもらうことも重要な要素です。ポルシュは所有するだけでも喜びがあるクルマですが、潜在的なパフォーマンスを引き出してもらうことでより楽しみが増えるはずです。加えて、的確なドライビングを覚えることで安全運転にも繋がります。PTEは参加者のドライビングレベルに合わせてさまざまなカリキュラムがあります。そのため、目的に合わせて学ぶことができ、習得するテクニックも増えていきます。Precisionではレーンチェンジでの緊急回避性能や、ウェット路での旋回によってタイヤがどのように滑っているのか、そしてどのタイヤがグリップしているのかを体験してもらいます。クルマをコントロールする技術を覚えることによって、やはり楽しみ、安全な運転ということを知ってもらいたいです」と語り、PTEが独自のプログラムだと解説した。
参加者は4つのカリキュラムを1時間ごとに受講していく。「ウェット路での旋回」「スラローム」「レーンチェンジ」は参加者自身のクルマを使い、それぞれの目的に合わせて走行を実施。ウェット路の旋回では車両のアンダーステアやオーバーステアといった挙動の変化を中心に学べ、スラロームとレーンチェンジでは車両の荷重移動や緊急回避などを目的としている。
どのカリキュラムでもPSMは「スポーツモード」に設定。タイヤのグリップが失われそうな時に車両制御がどのように働くかを体感する。PSMはオーバーステア状態でもアクセルやブレーキを積極的に調整することはあえて行なわない。最終的に車両が危険な状態になった場合に制御が入り、事故やアクシデントを防止する。つまり、ドライバーが操作できる領域が多く、そんなPSMの特徴や思想を知ることでクルマのパフォーマンスを引き出すことになる。
また、今回カリキュラムの1つとして用意されていたのが「ニューモデルエクスペリエンス」。ポルシェジャパンが用意する最新モデルに専用コースで試乗できる内容で、加速、減速、旋回というコースをそれぞれのモデルで走行し、各モデルのパフォーマンスなどを体感。参加者自身のクルマと比較することが可能となっている。
そしてカリキュラムの最後には、全員が参加する「フルスロットルチャレンジ」を実施。開催場所が1200mの元滑走路ということで、0-400mの全開加速を行なう。タイム計測もあり、参加者本人だけに結果が伝えられていた。公道ではポルシェモデルのアクセルを全開にする機会は少ないはずで、ましてやローンチコントロールを使うこともないだろう。このフルスロットッルチャレンジでは、自分のクルマが持つ加速性能を存分に体感することができるのだ。
このように、PTEはポルシェモデルのパフォーマンスを安全な環境で最大限に体感できることが特徴で、クルマを自在にコントロールするスキルを身につけた先には安全運転も付随してくる。今回は初級編となるWarm UpやPrecision、レベル3のg-Force Precisionの開催だったが、開催場所がサーキットの場合はMasterやFast Trackも開講される。
これらのプログラムは予約開始から1時間程度で参加枠が埋まってしまうほどの人気を博しているという。実際に取材すると、豊富な走行時間や充実したカリキュラム、丁寧なインストラクターからの指導、ポルシェならではのホスピタリティなどが用意され、PTEは参加者のリピート率が高いという説明も納得の内容となっていた。PTEはポルシェモデルが持つ魅力を引き出せるプログラムなので、ポルシェオーナーには1度体感してみることをお薦めしたい。