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2021年の完全新作「2X7RA」登場! レイズが「HOMURA」ブランドで追及するメッシュデザインへのこだわりを聞いた
定番人気商品の進化版「2X9plus」をはじめ、HOMURAシリーズ最新モデルを一気に紹介
- 提供:
- 株式会社レイズ
2021年3月29日 00:00
「The concept is racing.」=もの作りを行なう力
アルミホイールを製造する会社は世界中にあるが、その中でも「高品位」であり同時に「安全で安心できる」ホイールのみを作っているのが日本のレイズ(RAYS)というメーカーだ。
Car Watchではレイズ製品を何度か取材しているが、現場で対応してくれるのは製造責任者やデザイナーなどホイール作りの中心にいるスタッフなので、単なる製品紹介ではなく「もの作り」に関する内容をたくさん届けてきた。それだけに記事も「もの作りの話」が中心となっているが、Car Watch読者は技術への好奇心が旺盛だと思うので、レイズ関連の記事は楽しんでいただけているのではないだろうか。
さて、そのレイズでは企業理念を表す言葉として「The concept is racing.」を掲げている。イメージとしては「レースを重視してます」とか「レースで活躍できるホイールを作ります」というように、レースに関わっていることをアピールする言葉のようにも取れるが実はそうではない。
ここで使っているRACINGとは「もの作り」を行なう力のこと。レイズはWEC(FIA世界耐久選手権)やSUPER GTというトップカテゴリーのレースで使用されるホイールを作ることができる技術や設計力、そして人材を有している企業だが、そのレース用ホイールを作りあげる力と、もの作りへのこだわりと人材は、一般公道で安心して使うことができる安全な高品位ホイールの製造にそのまま使われている。そうしたことから生まれたのが「The concept is racing.」という言葉なのだ。
もう1つ、レイズは「デザイン」「設計」「製造」「塗装」というホイール作りのすべてを日本国内のグループ企業内で行なう「純日本製」に強くこだわる企業であるが、前出の「The concept is racing.」のもの作りを遂行するのは「純日本製であることが必要」とレイズは言う。この点についてはこれから紹介する「HOMURA」ブランドのホイール解説でも触れるので割愛するが、とにかくレイズ製品は鍛造スポーツホイールはもちろんのこと、ドレスアップ系の鋳造ホイールであっても「The concept is racing.」の理念でもの作りに取り組んでいる。
メッシュデザインを追求するブランド「HOMURA」
そんなレイズ製品の中で今回取り上げるのはプレミアムカーの部類に分けられるミニバンやSUV、そしてセダンに向けて展開している「HOMURA(ホムラ)」というブランドのホイール。11年程前に立ち上がったブランドだが、最初の製品が作られた当時から一貫して採用しているのがメッシュデザインだ。
アルミホイールにおいてメッシュデザインは普遍的なものだが、HOMURAはこの状況を「多くの人に愛される優れたデザインである」と捉えている。しかし半面、新しさや個性を表現しにくい面もあったりするが、HOMURAはメッシュ交点の数や、交点の角度を少し変えるなど、常に新しさを取り入れることでメッシュデザインを進化させてきた。
また、レイズが特許を取得している切削技術「アドバンス・マシニング・テクノロジー(A.M.T.)」を使用して、ホイールのデザイン面にHOMURAのロゴを上品に配置することで、普遍性の中に最先端の証を刻んだ。さらに「The concept is racing.」という言葉がぴったりくる試みとしては「レイズの鋳造技術」が挙げられる。レイズの鍛造技術は注目を浴びることが多いが、実は鋳造ホイールの製造に関しても同様のこだわりが込められているのだ。
2×9のメッシュデザインをさらに進化させたHOMURA 2X9plus
「HOMURA 2X9plus」(以下2X9plus)はHOMURAブランドでは3番目に登場した「2×9」のマイナーチェンジバージョン。ベースとなっている2×9はもともと流麗なラインのスポークやプレミアム感のある造形などを盛りこんだモデルで、HOMURAブランドの中でも最も人気が高いホイール。それだけに2X9plusではデザイン自体の変更はせず、レイズの最新の技術を盛りこむことと造形をよりきれいに見せるための要素を追加した。
特徴はまずホイールのセンター、デザイン部に入れられた「HOMURA」のロゴだ。これはレイズの切削技術「A.M.T.」を使用したもので、文字内のアルミ素地感が高級さを追加している。
こうした2X9plusに追加された作りについて、レイズ側は「いま風の要素を取り入れました」と表現したが、デザインをイジっての「いま風」ではなく、ホイール作りにおける最新技術をさりげなく使うことを「いま風」と言う部分は技術集団であるレイズらしい一面だった。
HOMURAの製造に使われる鋳造技術
レイズが取り入れている鋳造製法は、デザイン面を彫り込んだ金型にアルミ素材を溶かした「溶湯」を流し込んで成型していくというものだが、金型形状(ホイールのデザイン)によっては溶湯が流れやすいところと流れにくいところが出きてしまうことがある。鋳造アルミホイールの製法では単に型に沿って溶湯が入ればいいというものではなくて、溶湯を適切な温度で金型の隅々まで均等に流すことが重要となる。
ところが金型内で流れにくいところがあると、高温の溶湯が滞留してしまう。すると金型、および溶湯の温度がその部分だけ上がってしまい、この状態ではアルミ組織が設計時に想定したものにならないので、冷却後に高温になった部分だけ強度が落ちてしまうことがあるという。
レイズは業界基準より厳しい自社設定の安全基準であるJWL+Rを設定するほど安全なホイールを作ることに注力しているので、こうした問題はあってはならない。とはいえ、HOMURAは高いデザイン性を追求するブランドなので、スポークが細いところや形状が複雑な部分があることは避けては通れない。
そこでHOMURAの製作は、開発当初からデザイナーと鋳造現場の技術者とが綿密に打ち合わせを行ないデザインの実現性を検討しているという。ただし「これは難しいからやめておこう」という引き算的な話ではなく、多くの場合どうすれば目指す造形が実現できるかという前向きな検討が行なわれる。そして表現的にも工学的にもバランスが取れたデザインが決まり、それをもとにレイズは社内で金型を製造する。
金型ができるといよいよ鋳造工程となる。レイズといえばホイールの設計や強度解析に最新の機材を使用するメーカーなので、鋳造時の溶湯の温度や流れも事前にシミュレーションしているのではと思うところだが、現段階ではレイズに限らず鋳造のこうした部分を正確に管理する技術は存在しないという。
そこで重要になってくるのが鋳造作業を行なう技術者の技能と経験値だが「The concept is racing.」を謳うレイズには鋳造の分野にも優れた技術者がいて、溶湯の流し込み方や金型の温度管理(部位ごとの部分冷却を含む)などを経験からはじき出した最適な方法で行なっているという。
ちなみにHOMURAは漢字の「焔」からきているものだが、これは鋳造時に立ち上る炎の中からホイールが生まれてくる光景から浮かんだネーミングとのこと。また、日本では古来から民生品はもちろん、位の高い人物に献上するような焼き物、刀などの武具の製造に「炎」が使われている。そして、それらはすべて時代ごとに優れた技術を身に付けた職人によって行なわれていたことだけに、鋳造製法で高品位を謳うこのホイールに「ものを作るための炎」をイメージしたHOMURAというネーミングはこれ以上ないほど「らしいもの」ではないだろうか。
リムに見せる要素を盛りこんだHOMURA 2X7RA
さてホイールの紹介に戻ろう。キープコンセプトで収めた2X9plusに対して、まったく新しい2×7デザインを造り出そうということで作られたものが「HOMURA 2X7RA」だ。
アルミホイールにおいてディスク面のデザインは数多くあるが、リム部分の処理はスポークをリムまで伸ばすものとリムをしっかり残すモノの2通りしかない。そしてHOMURAではこれまでリムまで伸ばすデザインを主として使っていた。
スポークを伸ばす理由はホイールを大きく見せるなどを狙った王道的なものであるが、メッシュデザインにこだわるHOMURAとしてはリムありのデザインにもチャレンジしていく必要があった。そんなことから2X7RAはHOMURAに「リムあり」のデザインパターンを取り入れるために作られたのだ。
メッシュ部のデザインはスポークが交わるポイントを7個設けた7交点を採用。この形状はメッシュデザインの王道と言えるものだけに、2×9より個性を出すのが難しい面もある。その状況に対して2X7RAはリムに「レイズ アラウンド リップ コンセプト(RALC)」と呼ぶ造作を盛りこんでいた。このRACLとは単に切削によるリム深度ではなくフランジ面との高低差を付けることで新しいリムの見せ方を作りだしているもので、レイズはこの造形を意匠登録として申請している。
そしてRALCに加えてA.M.T.の技術を用いて掘られたRAYSとHOMURAのロゴにより、これまで見たことないデザインのリムを実現した。
先の時代のメッシュデザインを具体化したHOMURA 2X10BD
通常ディスク面のデザインは横から見たときに1本の連続した断面であるが、「HOMURA2X10BD」(以下2X10BD)はディスク面に一段落とし込んだ形状を組み込むことで他のホイールにはない立体的なデザインとしている。
また、スポーク交点に貫通したデザインホールを設けているのも大きな特徴だが、この作りこそ前で紹介した「鋳造工程での溶湯の流れや金型の部分冷却が難しい」というところそのもので、加えて細くデザインされたスポークや段差を付けた造形も技術的にとても難易度が高い。そうしたことから2X10BDは高技能を有する製造現場においてもひと際高い緊張感を与える存在で、当初は「このデザインを鋳造するのは無理だ」という意見もあった。
しかし、レイズの鋳造技術者はトライ&エラーを繰り返すことで2X10BDのデザインを実現するための溶湯の流し方や金型の冷却法をあみ出したのだが、これこそレイズが純日本製にこだわるところだ。難しいからとか手間が増えるからと方針を変えるのではなく、やり遂げることを目指して実現していくことは海外の生産拠点では無理だろう。
こうして仕上がった造形は見事のひと言。ワンピース構造なのにいくつかのデザインが組み合わさっているようにも見える。また濃いトーンのシルバーを塗ったあとに天面をダイヤカットしたダイヤモンドミラーカット/サイドグレイスシルバーのカラーは、立体化したメッシュデザインをさらに複雑な造形に見せる効果を出している。そしてホイール表面の輝きに合わせてセンターキャップも表面に厚いクリア層を持つレンズタイプへ変更し、さらに最新の射出成型技術を用いて入れたRAYSのロゴが浮かび上がるような仕上がりとした。
なお、名称にあるBDとは「ビヨンドデザイン」の略で、レイズがこのネーミングにこめる意味としては「さらに先の時代のメッシュデザインを具体化する」というもの。それだけにホイールに高いドレスアップ性を求めるユーザーにとって他の装着候補のホイールが思い浮かばないくらいこの2X10BDはインパクトの強いものではないだろうか。
HOMURAであってHOMURAとは違う「HYUGA」というホイール
プレミアムカーに向けたコンフォートブランドであるHOMURAだが、プレミアムカーに乗るユーザーの中には「HOMURAのコンセプトは好きだがコンフォートではなくスポーティなホイールがいい」という人もいる。そこでそういったニーズに応えるために作られたのがHOMURAの新しい流れである「HYUGA(ヒュウガ)」だ。
HYUGAがターゲットとするのはレクサスのFスポーツやBMWのスポーティグレードなどで、高品位なホイールの装着はマストだがクルマのイメージ的にドレスアップ傾向が強いホイールよりスポーティなホイールが似合う。だけど車格的にサーキットイメージが強いホイールではない。結果的にカッコよくなったとしてもニュアンスが違うのだ。
そこでHYUGAはシンプルなスポークを採用しているのがデザインの特徴で、バリエーションとしては7本スポークの「HYUGA HP07」と10本スポークの「HYUGA HP10」の2タイプがあり、2021年モデルとしてゴールドカラーが追加されている。
HYUGAのHP07とHP10は、どちらのホイールもスポークは正面から見ると力強さを感じる造形としながら側面はえぐったような形状のすることでスポーティホイールらしさを見せている。また、スポークの幅は応力が集中する部分を解析技術ではじき出し、補強が必要な箇所は幅広形状とするなどの作り込みがされているのも造形面の特徴である。
そしてもう1つHYUGAの構造には大きな特徴がある。それがリムの成型法である。HYUGAでは鋳造の金型から抜いたあと、リムになる部分をローラーで引き伸ばしていくRCF(スピニング)製法を採用している。これは鋳造アルミホイールの製法としては一般的だが、他のホイールでは主に1つの型から多くの太さのホイールを作るため(量産性を上げるため)この製法を用いているという。
それに対してHYUGAは引き伸ばすことでの素材密度を凝縮させることでリムを強化。そして強いがゆえに板厚を薄くできるという2点のメリットを得ることを目的にスピニング製法を使っているのだ。また、HYUGAではレイズでも初の試みとしてスピニング製法でリバースリムを作っている。
一般的なホイールではタイヤを組み付ける際、タイヤのビード部分がはまる溝をディスク側へ設定しているが、ディスクの後ろに構造的に重要な溝があるとディスクを奥へセットできないので、必然的にホイールのデザインはリムが浅めになってしまいがち。そこでディスク面を奥へセットできる深いリムにするため、ビードがはまる溝をディスク面とは反対側の内側のリムに設定しているのがリバースリムだ。でも、HYUGAのホイールを見るとHP07もHP10も深いリムではない。なぜわざわざリバースリムにしたかというと、ずばり内側のリムの強度を上げるためである。
ホイールは基本的に「筒」形状なので応力が加わると変形が起こりやすい。しかし、ディスク面はディスク自体が筒の内径を支えるので変形は起こりにくいが、ディスクのない内側のリムは支えるものがない。でも、ビードがはまる溝を内側に設けるとこれがリムに対して補強的効果を出してくれることになるのだ。HYUGAがリバースリムを採用した理由はまさにこれ。スピニング製法に加えてスポーツホイールとしての剛性を高めるための手段だったのだ。
アフターのアルミホイールではなんとなく鍛造と鋳造に「格の差」のようなものを感じている人も多いがそれは間違い。製法はあくまでも手段であってそれよりも大事なのが製造に関わる技術やこだわり、こういった面を突き詰めているホイールこそ「格のあるホイール」と呼べるのだ。
そしてここで紹介した「HOMURA」と「HYUGA」はともにトップレベルのレーシングの世界で通用する技術ともの作りへの強い想いを持った、メイドインジャパンにこだわるレイズの技術者の手によって作り出されたもの。それだけにこれらのホイールは格があるのはもちろんのこと、安心して使える品質をもち、さらに愛車を引き立ててくれる力もある。カーショップなどでHOMURAやHYUGAの展示品を見かけたときは、ホイールの内面に隠れた「こだわり」をその目で確認してほしい。