トピック
高性能+安全性というレイズの最新 VOLK RACING ホイールの今を知る(後編)
鍛造スポーツホイールの開発製造現場の最先端を聞いた
- 提供:
- 株式会社レイズ/株式会社レイズエンジニアリング
2021年1月16日 00:00
メイド イン ジャパンのホイールメーカー「レイズ」
「クルマが趣味」というのは、何も“走り”を楽しむことだけではない。“クルマそのもの”や“パーツ”などの機械的な魅力に惹かれるのもまたクルマの趣味の1つ。「作り手のこだわり」や「作るための技術」を知って感心・共感することも、とても楽しいことだ。
だからクルマ好きの人はクルマの性能や機能にこだわるし、クルマにいい変化を与えることができるアクセサリーやカスタマイズパーツにはおおいに興味を示す。Car Watch読者にもカスタマイズ好きが多いのではないだろうか。
そこで日本のホイールメーカー「レイズ」の協力を得て、製品開発に関する取材ができることになった。レイズはF1やWEC、SUPER GTのホイールから市販ホイールまで、すべての設計から製造までを自社グループ内で完結できるところだけに、とても興味深い内容が聞けたので、ぜひご一読いただきたい。
レイズのVOLK RACING 2021年春モデルに注目! 高性能な新世代鍛造ホイールの今を知る(前編)
https://car.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1298340.html
ホイールの強度と剛性について
まずはホイールの記事に必ず出てくる「剛性」という用語の説明をしておきたい。似た言葉として「強度」があり剛性とイコールと思われがちだがこれはまるで違うものだ。
では、剛性とは何を示すのかというと「曲げ」や「ねじれ」に耐える力のことでモノの固さを表すもの。ホイールでは剛性が高いほどたわみや衝撃に対して強くなる。
対して強度は重さに対して耐える(壊れない)値で、例えばミニバンなどにも付いているシートバックの簡易テーブルに「耐荷重5kg」と書いてあればそれが強度。5kgの重さまでのモノであれば載せても「壊れない」ことを示している。強度という名前から固さと混同しがちだが、これらはまったく違うものなのだ。
そしてもう1つ必ず出てくる「鍛造(たんぞう)」と「鋳造(ちゅうぞう)」という言葉。これは製造方法を示しているが、同じアルミ素材でも性質的に剛性が高いのは鍛造。そのためJWLのように試験内容を揃えた安全基準でホイールを作ると、鍛造ホイールのほうが肉厚を抑えたり、スポークをスリムにすることが可能だ。そういった理由からスポーツホイールでは鍛造製法が多く使われている。
最新のシミュレーション解析を駆使して作るVOLK RACINGホイール
さて、ここからがホイール作りの本題。レイズはホイール製造をグループ内で完結できる組織になっているが、その中で研究開発を受け持つのがレイズエンジニアリングのレイズR&Dという部門だ。
レイズが新しいホイールを企画したり既存ホイールのサイズ展開を広げる場合は、レイズR&Dに対象車種、コンセプトやデザイン、そしてサイズ展開などの情報を伝える。するとレイズR&Dは要件をもとに3Dデータを作成するのだが、3Dデータを作るソフトはデザインを立体的に見るだけでなく、ホイールが回転している状態で負荷(衝撃など)をさまざまな角度からデータ上のホイールに加えることが可能という。負荷がホイールにどう影響を与えるのか? どこが構造的に弱い部分になるのか? といった詳細な解析を行なえるということだ。ちなみにこの3Dソフトはレイズ独自のモノだという。
取材現場では解析データを見せてもらったが、これがとても興味深い。データ上で力が集中する部分が色分けして表示されているのだけれど、スポークの付け根など負担を受けやすそうな箇所が弱い部分になるのかと思いきやそうではなかった。
形状的にとくに細くない箇所が弱いと表示されたり、加わった力の向きとも関連性がなさそうな部分に強い負荷が掛かっているケースもあった。
また、応力が掛かるとホイールがどのように変形するかを、視覚的に分かるようにアニメーション表示もできるので、これらの機能を使うことで、剛性を高めるにはどこをどう改良すればいいのかハッキリ見えてくるのだ。そして問題があった点の手直しをしたあと改めて解析を行なうという行程を繰り返していくという。
このような過程を経て承認された3Dデータができ上がると、次の行程が金型の製作になるのだが、この金型もレイズR&Dが設計、製作しているから驚きだ。
VOLK RACINGは、サイズや設定車種ごとに同一ホイールであってもディスク面の形状を変えている。理由はクルマに装着した際のスタイリングをよりカッコよく見えるようにするためだが、こうしたルックスを実現する凝ったデザインにするには、鍛造工程で一方向から押すだけでは実現できない。しかし、VOLK RACINGホイールでは形状が複雑であってもパートごとに分けた金型を設計して対応しているという。
また、鍛造成型後に機械加工で削りや穴開けを行なうホイールもあるが「TE037」や「G025」のように正面から切削刃が入れられないデザインの場合は専用の工作機械までレイズR&Dが作っているという。鍛造の金型や機材まで自社製となればVOLK RACING製品と似たデザインの鍛造ホイールは他社では絶対に作れないということでもある。
次の時代に向けた鍛造スポーツホイールを作る
レイズR&Dで設計現場を見せてもらったあとはレイズのVOLK RACING企画開発部長の山口氏からあるホイールの紹介を受けた。それが2021年1月に発売された「TE37 SAGA S-plus」というモデルだ。
VOLK RACINGの代表的な銘柄は1996年に登場したTE37である。この時代はスカイラインGT-R、スープラ、シビック、ランサーエボリューション、インプレッサWRXなどスポーツ走行向けのクルマが数多く登場した頃で、チューニングやサーキットスポーツ走行ともに盛り上がっていた。そしてTE37はそういったクルマに乗るオーナーに支持され、TE37の名前はスポーツ走行用ホイールの代名詞となった。
しかしクルマとチューニングは年々進化をしていくため、TE37にもクルマなどと同様に進化が求められるようになってきた。そこで2016年に新規の設計、新規の金型を用いて「TE37 SAGA」をスポーツ走行シーンへ投入。サーキットを走るユーザーの期待に応えたのだ。
現在もSAGAはサーキットにおける一線級のホイールなのだが、クルマの進化は止まることなく進んでいるし、今後はエンジンに加えてモーターや、トランスアクスルとモーターとインバーターなどが1つになった駆動モジュールなど、次世代のパワーユニットを積むクルマも出てくる。そういった流れから2016年と同じく「次のSAGA」が必要になってくるのだという。
そこでレイズはTE37 SAGAに改良を加え、持久耐力を17%、剛性数値を7%という性能向上を行なったマイナーチェンジモデル「TE37 SAGA S-Plus」を作りだしたのだ。
そのTE37SAGA S-Plusに施されたアップデートについてレイズの山口氏は「方法としてはSUPER GTマシン用のホイールを開発しているのとまったく一緒ですし、性能面も安全性という面でも飛び抜けています。だからTE37 SAGA S-Plusはスポーツホイールながらレーシングホイールに近い存在といえるものです」と語った。
先の時代を読む新作アルミホイールという点もこれまで聞いたことないものだし、アルミホイールの新製品において「剛性が何%向上した」とハッキリ語るモデルは多くないだろう。しかし、前出のレイズR&Dでのシミュレーション解析という技術とホイール作りのこだわりを知ったあとなら、レイズが「正確な数値を提示する」ことはとても納得できる。
このような過程を経て製造されているVOLK RACINGのホイール。剛性の高さや軽さについてなど、スポーツ走行の必要な性能を出すために並々ならぬこだわりを持って追求していることが伝わってきたかと思う。もし、近々愛車用のアルミホイール交換を予定しているなら、その候補にVOLK RACINGのホイールも入れてみてはどうだろうか。