トピック
レイズのVOLK RACING 2021年春モデルに注目! 高性能な新世代鍛造ホイールの今を知る(前編)
“Gシリーズ”のG025に18インチ、GT090に20インチが新設定
- 提供:
- 株式会社レイズ/株式会社レイズエンジニアリング
2021年1月15日 00:00
VOLK RACING “Gシリーズ”のサイズ拡充が2021年春の大きな目玉の1つ
新型「レヴォーグ STIスポーツ」が履いているホイールは、日本のアルミホイールメーカー「レイズ」が展開する鍛造スポーツホイールブランド“VOLK RACING(ボルクレーシング)”の「G025」というモデル。G025は2019年に発表、発売された「Gシリーズ」と呼ばれる新世代のVOLK RACINGホイールのうちの1つ。ターゲットはレヴォーグ STIスポーツのような車格の高いハイパフォーマンスカーだが、サーキットをガンガン走るのではなく、速さを「余裕」として扱える大人のドライバーを想定したホイールである。
そのためデザインもレーシーで力強いものではなく、ディスクを正面から見たときの厚みが5.5mmという極薄の10本のスポークと、ボルトホール及びスポーク付け根に大胆な肉抜き加工を施すといったVOLK RACINGらしい設計、製造技術の高さからくる「造形美」を前面に出したものとなっている。
こうしたクオリティの高い造形を行なうために、レイズでは設計から製造、そして塗装までのすべての製造工程を自社内に敷いているが、今回はレイズの設計部門での取材も行なっているので、VOLK RACINGについての設計や構造など技術的な内容は、後日公開する後編の記事にて紹介する。
そこで本稿では技術的な話は割愛するが、ともかくVOLK RACINGのホイールはデザイナーが描く造形の限界を超えるようなデザイン画を、設計担当者が頭脳と技術を駆使してカタチとして成立させ、さらにそのカタチを実現するための金型や工作機械まで作ることで完成する「こだわりの塊」であるということだけはここでも触れておこう。
VOLK RACINGは「安全」であることを保証するブランド
レイズというホイールメーカーが展開する「VOLK RACING」は、走り系のユーザーに強く支持されて成長してきたブランドだ。そんなことからVOLK RACINGについての話題は軽量化や高剛性に集中する傾向だが、実はレイズがVOLK RACINGホイールを作るときに重視しているのは、軽さや剛性ということ以上に「安全性」を高めることだったという。そこで今回は、VOLK RACINGブランドのホイールが目指す「安全性」という面にスポットをあてて解説をしていこう。
絶対に破綻しないホイールの証「JWL+R SPEC2」
日本で販売されるアルミホイールには、JAWA(ジャパンライトアロイホイールアソシエイション)という業界団体による「JWL」という品質基準があるが、レイズは1990年代から「スポーツ走行ユーザーのためのホイールを作るメーカー」として世間に認知されていた立場だったため、当時からJAWAのJWLよりはるかにシビアな試験を施す「JWL+R SPEC1」と「JWL+R SPEC2」という独自の基準を設けている。
このJWL+R SPEC1とは、レイズが自社生産の“鋳造”ホイール用に設定した安全基準のことで、JWL+R SPEC2は同じくレイズが自社製“鍛造”スポーツホイール用に設定した基準となる。それぞれの名称に追加された「+R」のRはRAYSから取ったものである。
これらは一般的なホイールの品質認定の「JWL基準」よりも試験の内容をハードに設定しているのが特徴となり、例えば横Gが掛かった状態を想定した回転曲げ疲労試験では、JWLが10万回転で行なうところをJWL+R SPEC2では倍となる20万回転に設定している。
また、ホイールを傾けた状態で固定したあと、数百kgの重りを落下させる衝撃試験もあるが、ここもJWLが230mm(9インチ)の落差なのに対してJWL+R SPEC2では305mm(12インチ)まで上げているので、ここもよりハードな試験内容になっているし、実際の走行状態を想定しつつ、高い荷重がホイールに掛かった状態を再現して行なう半径方向負荷耐久試験では、JWLが50万回転のところをJWL+R SPEC2は100万回転としているのだ。
上記の試験だけでも品質の高さを証明するに十分だが、レイズはさらにJWLの試験項目にはないJWL+R SPEC2独自の試験も設定している。その内容は、高さ140mmの位置から1tのウエイトを落とす衝撃試験のほか、インナーリムを変形させて荷重がインナーリムに不均等に掛かる状態にしたあと、前記した半径方向負荷耐久試験を80万回転の設定で行なうなど、耐久性を見ると言うより「壊す気」でやっているような項目が並ぶ。そのほかJWL+R SPEC2独自試験では、設計データ上での強度解析結果と現実のホイールの性能の合わせこみや、塗装の性能試験まで行なっている。
なお、アルミホイールの安全基準マークには「VIA」というものもある。JWLはホイールメーカーが自社で行なう試験なのに対して、VIAはその結果が正しいものかを第三者機関で試験、証明したものに付くマークだ。VOLK RACINGはJWLよりハイレベルなJWL+R SPEC2をクリアしているので当然JWLの基準もクリア。そしてVIAの認定も受けている。
JWLの刻印があるホイールは「安全」に使用できる証となるが、現代のハイパフォーマンスカーにハイグリップタイヤとセットで使用し、サーキットで縁石に乗るなどの激しい走りをした際には“ひょっとすると”ホイールに異常が出るかもしれない。
ところがJWL+R SPEC2基準のホイールは(鋳造のJWL+R SPEC1も)、JWL基準の遥か上の強さを持っているので「絶対に破綻しないホイール」として使用できる。つまりJWL+R SPEC2の安全性についてはストリートはもちろんのこと、サーキットを安全に走るための性能でもあるということだ。
最新のクルマは事故を起こさないための機能や、事故に遭ったときに乗員を守る機能が充実しているだけに、そういったクルマに履かせるアルミホイールは、軽量で高剛性ということに加えて、作りのよさからくる絶対的な安全性があるものを選ぶことが本当の意味での「似合う」というものになるだろう。そして新型レヴォーグが履くG025もJWL+R SPEC2をクリアしているので、まさにこれは「似合うホイール」である。
レーシングカーのテクノロジー“そのもの”が体感できるホイール
GRスープラが履くのは「GT090」というハイパースポーツカー向けホイール。レイズは市販車用ホイールのほかにも、レースカー専用のホイールも作っているが、その中にはニスモのGT3マシン用のホイールもあり、GT090はそのホイールにも取り入れているデザインをベースにしたモデル。さらに限りなく細められたスポーク部には「TE037」で採用したスポーク側面の“ウェイトレスホール”という貫通孔を、スポーク1本に付き3箇所設けている。
ウェイトレスホールは鍛造ホイールの製法を知る人ほど「どうやって作っているんだ?」と話題になったくらい革新的な造形。もちろん強度解析は徹底的に行なった末に作った形状なので、ホイールの安全性はしっかりJWL+R SPEC2基準をクリアしていて、スポーツホイールとしての軽さと剛性の高さも持つ仕上がりになっている。
大径サイズゆえに、もともと細いスポークはさらに細くスタイリッシュに見えるが、ホイールと視線の角度がちょっと付くと側面の削り込みとウェイトレスホールの組み合わせによってグッとスパルタンなイメージになる。
さらに、リムにはレイズが特許を持つ「A.M.T.」という彫刻加工で「VOLK RACING」「RAYS ENG.」「MADE IN JAPAN」の文字、そしてナットホール外周にはGT090と名前が彫られているという凝りようだ。そして仕上げの塗装に関しても自社内で、塗装方法の確立だけでなく、塗料を作るところから行なうことで、デザイナーと設計者が意図したとおりのフィニッシュを実現している。
もうひとつ、2021年1月に発表されたモデルに「TE37 SAGA S-plus」があるが、これは鍛造スポーツホイールの象徴ともいえるTE37シリーズの最新版で、レイズが持つ設計、解析技術をフル動員して現代のハイパフォーマンスカーによる極限のスポーツ走行にも耐える強度と剛性を持たせたモデル。
レイズは自社のホイールを進化させるため研究開発の分野に多くのリソースをあてているが、今回は研究開発の分野に対する取材も行なっているので、そこは後日公開する後編の記事で紹介させていただく。