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横浜ゴムが日本導入を決めた北米向けスポーツタイヤ「ADVAN APEX V601」初乗り! 秘めたる魅力とは?

市街地、高速道路、ワインディングを橋本洋平が「ゴルフR」でチェック

北米のJDMスタイル(=日本車のカスタム)層に人気を博しているスポーツタイヤ「アドバン」ブランドの「ADVAN APEX V601」が日本にも導入されたので試してみた

北米市場で展開されていたスポーツタイヤが満を持して日本上陸

 横浜ゴムのスポーツブランドであるアドバンから「ADVAN APEX V601(アドバン・エイペックス・ブイロクマルイチ)」という新たな商品が発売された。このタイヤは、そもそもアメリカで企画開発が行なわれた商品であり、すでに2019年より北米市場に展開されていた製品だ。映画やドリフト大会などの影響で日本車のカスタムに活気があり、そこにマッチさせる“ルックスも重視したタイヤを出したい”というのが企画開発の出発点だったそうだ。

 結果としてADVAN APEX V601のトレッドパターンは、新規の非対称トレッドパターンを採用。INサイドは3本の深いストレートグルーブを採用することで排水性を高めている。一方で、OUTサイドは浅めの1本のストレートグルーブとすることで、接地面積を大きくし、ドライ性能を重視した設計となっている。

横浜ゴムのグローバルフラグシップブランド「アドバン」シリーズの「ADVAN APEX V601」

 一見するとADVANブランドの兄貴分となるプレミアムな「ADVAN Sport V107」のようでもあり、OUTサイドのデザインを見るとサーキットを見据えたホビータイヤに位置する「ADVAN A052」のようでもある。ただし、グリップレベルはホビータイヤの「ADVAN NEOVA」ほどは高めていないようだ。

ADVANブランドの商品相関図。赤枠付きが今回試乗したADVAN APEX V601
ADVAN APEX V601の性能グラフ。ドライ・ウェット性能、操安性、高速安定性、乗り心地、静粛性などがたけている

 あくまでもストリートを気持ちよく走るというのがコンセプト。同じようなところを狙った「ADVAN FLEVA(フレバ)」も存在するが、スピードレンジはADVAN FLEVAはV(240km/h)かW(270km/h)だが、ADVAN APEX V601は1サイズを除いてY(最高速度300km/h・235/40R18のみW)であり、スポーツ性はADVAN APEX V601のほうが上という位置付け。

3+1の4本のストレートグルーブが排水性を高め、外側の幅広リブが高いドライ性能を発揮する新非対称トレッドパターンを採用。中央に配置された「非貫通センターストレートリブ」が高い高速安定性、ハンドリング性能を発揮する。IN側(左側)には、溝面積を増やしつつリブの剛性を維持できる「ライトニングエッジグルーブ」を配置することでウェット性能とハンドリング性能を両立。また、非貫通の横溝、サイプ(細溝)を配置することで、ウェット性能を向上させている

 特徴となるのはステアリングレスポンスだ。センターリブは非貫通となり、そこで高い高速安定性やステアリング切り始めの剛性感を確保。OUT側にある2つのリブも高い剛性を確保できていることは見た目にも伝わってくる。これらのリブは角が面取りされており、接地した際にゴムがたわむと均等に面圧がかかるように設計されている。

 結果としてリブの角に面圧がかかりすぎず、均等な減りが見込める。また、ケースの剛性についてもこだわりがあり、カーカスハイターンナップ構造を採用することでサイドウォールの剛性を確保。ハイビードフィラーも備えることでコーナリング時の高荷重にも対応させている。

リブ剛性を維持しながら水膜を切るエッジ効果も発揮するOUT側(手前側)の幅広リブと非貫通グルーブにより高剛性を実現。高いドライグリップとコーナリング性能を発揮するという
トレッド面とショルダー部分には、さりげなくブランドを主張する小さな「ADVAN」のロゴを刻印。北米で発売した翌2020年には、国際的なデザイン賞「iFデザインアワード」のプロダクト部門を受賞している折り紙付きのデザインだ
5つのリブは、それぞれわずかに丸いプロファイルすることで接地圧を均一化。ドライグリップ向上と偏摩耗抑制を向上させている

 タイヤサイズは17インチ~20インチまでの29サイズを展開。ターゲットとするのはセダンやクーペ、そしてスポーツカーである。低燃費タイヤのラベリングは転がり抵抗性能「B」、ウェットグリップ性能は「C」を記録。数値的に見るとやや物足りないかもしれないが、そう考える人は転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「a」の「ADVAN FLEVA」のほうがマッチするだろう。

 このADVAN APEX V601は、ブロックの1つひとつが大きく、そこで抵抗となり転がりはわるくなる傾向。さらに応答性を狙った結果、やや浅溝としていることで、ウェットの値が低い傾向にあるのだろう。いずれにしても試験モードにおける話ではあるのだが、どこを狙うかによって話が異なってくることは明らか。ユーザーニーズを考えて細かく対応してくるところがADVANの面白さといっていい。

市街地、高速道路、ワインディングで実力をチェック!

 今回はそんなADVAN APEX V601の235/35R19サイズを、フォルクスワーゲン「ゴルフR」に装着して試してみることにした。

 直列4気筒2.0リッターターボで、最高出力245kW(333PS)、最大トルク420Nmを発揮するというこのクルマ。ADVAN APEX V601はいったいどう受け止めてくれるのだろうか?

まずはコンフォートモードで市街地を走行

 アダプティブシャシーコントロールを、まずはコンフォートモードにセットして走り出すと、その時点からかなり引き締まった硬質な感覚を伝えてきた。とはいえダンピングがわるくなるほどではなく、即座に入力を収めてフラットに駆け抜けてくれるところはさすがだ。

 ハンドリングはなかなかシャープだ。街乗りの時点からステアリングをわずかに切り込んだだけで即座に応答。リアの追従性もかなり高そうだ。キビキビとした身のこなしは、この手のクルマに乗るユーザーにとってはかなり心地がいいだろう。

接地面のアウトラインをスムーズにすることで偏摩耗を抑制しつつ、フラットな接地形状によりドライ性能と高速走行時の操安性の両立が図られている

 高速道路を走れば豊かな直進安定性が得られている。足を引き締めてみれば、ハイスピード域において足まわりの剛性感とタイヤ剛性の高さが見事にマッチした感覚があり、バネ下とバネ上の一体感がなかなかだ。ワンダリングを受けず、素早くレーンチェンジしても腰砕けにならない絶妙なサジ加減がうれしい。

 静粛性については、街乗りからワインディングまで対応できるグリップ力を持っているので、静粛性に特化したタイヤ「ADVAN dB(デシベル)」と同等とまではいかないが、結果としてゴルフRが発する派手なエキゾーストの中では、気になるほどではなかった。

多量のシリカと異なる特性を持つ3種類のポリマーを混合したことで、優れたドライ&ウェットグリップ性能を両立したという

 ワインディングへ行きスポーツモードにして走行ペースを高めてみると、やはりあらゆるタイヤ部位の剛性が高いだけあって、連続するコーナーでとても扱いやすく感じられる。S字のような切り返しであっても、手前の動きが残らずに次のコーナーへとアプローチできるのだ。

 グリップレベルについては十分すぎるもので、一般公道で物足りないようなことはない。ゴルフRのようなハイパワーモデルであっても受け止められるのだから、どんなクルマでも十分に対応するだろう。

4ピッチバリエーションと横溝角度の最適化により高い静粛性を実現している

 ADVAN APEX V601は、このようにストリートにおける気持ちいい走りに特化したタイヤだと感じられた。サーキットに行くようなことはしないけれど、普段からスポーティに走りたいという人に、ぜひおすすめしたい1本だ。

ADVAN APEX V601は、ワインディングを気持ちよ~く走るのに、実にちょうどいいタイヤであった

タイヤ選びと交換作業なら信頼と実績の「タイヤガーデン」をチョイス

 タイヤガーデンは、横浜ゴムのタイヤを扱っている街のタイヤショップ。今回はタイヤだけでなくホイールやバッテリなど幅広い商品を取り扱っている横浜ゴムの直営プロショップで、専門知識と確かな技術・サービスを提供するタイヤガーデン代沢にタイヤの交換作業を依頼した。

今回のタイヤ交換を行なったタイヤガーデン代沢(だいざわ)
ていねいで確かな作業とサービスを提供

「タイヤガーデン代沢」店舗データ

住所:東京都世田谷区代沢4-31-12
電話:03-3412-2800
FAX:03-3411-6970
営業時間:10時~18時
定休日:毎週火曜日
決済:現金、クレジットカード

ADVAN APEX V601 サイズラインアップ

Photo:堤晋一