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ドルビーアトモス対応の最新DA「DMH-SF1000」登場 なぜフツーの4ch車載スピーカーで空間オーディオを実現できたのか、開発秘話を聞く
- 提供:
- パイオニア株式会社
2026年6月5日 00:00
カーナビ、ディスプレイオーディオ、スピーカーをはじめとするカーアクセサリーでおなじみのパイオニア「カロッツェリア」ブランド。同社のサウンドへの飽くなき探求は止まるところを知らないようだ。
これまで40年という長きにわたりハイファイ、ハイレゾといった高音質技術に取り組んできたが、2026年5月にリリースした新型DA(ディスプレイオーディオ)「DMH-SF1000」(以降、SF1000)では、ついに「空間オーディオ」に対応した。
本来なら5.1.4chや7.1.4chといった多チャンネルスピーカー構成にしなければ効果が得られないとされる空間オーディオ。しかし、SF1000では一般的な車載スピーカーの構成である4ch以上で本格的な立体音響を実現できるという。
車内の狭い空間、かつ限られたスピーカー数で立体的なサウンドをどのようにして可能にしたのか。企画・開発に携わったパイオニアの担当者に開発秘話を伺いつつ、SF1000を搭載した実車で「聞き心地」を確かめてみた。
新しい音楽体験になりうる空間オーディオをクルマに
ドライブ中に音楽を楽しむ方法は時代とともに変化している。ラジオやカセットデッキに始まり、CDやMD、DVD、Blu-rayのようなディスクメディアを経て、近年はスマホと組み合わせたBluetoothによるワイヤレスオーディオが中心的な存在となっている。
そうした流れのなかで、常に「新しい音楽体験とは何か? われわれとして何が提供できるのか?」を模索しながら製品を進化させてきたと話す同社マーケティング担当の堤氏。原音忠実再生のコンセプトを守りつつ、時代に合った音楽の楽しみ方を追求し続けるなかで、今回注目したのがDolby Atmos(ドルビーアトモス)による空間オーディオだった。
オーディオのDolby Atmosは、2021年にApple Musicが本格採用。イヤフォンのApple AirPodsも対応し、iPhoneで気軽に立体音響を体験できるようになったことで一般ユーザーにも広がった。従来のサラウンドは主に前後左右の平面的な立体感を表現するものだったが、Dolby Atmosでは「高さ」方向の奥行きも表現できるのが特徴だ。
「音楽の聞き方は、クルマ以外だとスピーカー、ヘッドフォン、イヤフォンなどいろいろな選択肢や方向性がありますが、クルマの中での音楽体験は長い間あまり変わっていません」と製品の企画を担当した加藤氏。
しかし、そこに空間オーディオ、Dolby Atmosが登場した。音楽の新しい楽しみ方になりうる技術が一般化してきたことで、さっそく「パイオニアとしてそれをどう実現できるのか、という検討を始めることになった」と明かす。
数か月で実証機を作り上げ、米国でデモを敢行
スピーカー再生時にDolby Atmosに対応できるようにするには、通常は少なくとも5.1.4ch以上の多数のスピーカーを用いたマルチチャンネル構成にしなければならない。
それを車内のカーオーディオで、となると技術的なハードルは間違いなく上がる。一般的なクルマには4~6つのスピーカーしかなく、車室空間もかなり狭い。そのうえ「車種によって種類も配置も異なるスピーカーが搭載され、ユーザーがどのようなポジションで聞くことになるのか分からない」こともあり、実現は未知数だ。
それでも、パイオニアには可能にする目算があった。なぜなら、同社がおよそ30年前に開発し、歴代のカーナビやディスプレイオーディオに搭載してきた「オートタイムアライメント&オートイコライザー」という技術があったからだ。
オートタイムアライメント&オートイコライザーとは、車室内の音場や音響特性に合わせて音の届き方を精細に補正することで、音像定位を正確にコントロールする技術。これを応用することで、Dolby Atmosに求められる音の広がりや高さを再現できるのではないか、と考えたわけだ。
そこで、まずは実証のためのテスト機を開発した。2024年夏にスタートしてからわずか2~3か月後の秋には車両に載せ、AppleとDolbyのスタッフ前でデモンストレーションを実施。すると、予想を超える高い評価が得られたという。
2025年の年明けすぐには、ラスベガスで開催される国際展示会CESに出展し、翌2026年のCESでは量産品を展示して今回の製品化にこぎ着けた。プロジェクト開始から約2年、これは同社における新技術に関わる通常の製品開発サイクルでは考えられないほどのスピード感だという。
4chスピーカーでDolby Atmos、ステレオ音源も立体に
そうして誕生したのが、堤氏いわく「国内の市販カーエレクトロニクス業界において、Dolby Atmosによる空間オーディオ対応は初」というディスプレイオーディオの新モデル「DMH-SF1000」だ。
同製品の特徴となるポイントは大きく分けて2つある。1つは、多くのクルマが使用している既存の4chスピーカーそのままで空間オーディオを実現していること。
輸入車では空間オーディオに対応している車種も一部にあるが、それらは車種専用設計であり、スピーカーも10個、20個と大量に搭載していたりする。しかし、SF1000は車種を選ばない。スピーカーも最低限の前席2個、後席2個の4ch以上の構成であればよい。
スピーカーをより高音質なものに置き換えることで、音自体のクオリティを高めることも可能だが、あくまでもオプションだ。ノーマル装備であっても、すぐにリアルな空間オーディオを体感できる、というのがSF1000の強みとなっている。
もう1つは、Dolby Atmos対応音源だけでなく、通常のステレオ音源でもパイオニア独自の技術によって立体音響を再現していること。
Dolby Atmosによる空間オーディオで聞けるのは、現在のところiPhoneを使ってApple CarPlayでSF1000に接続し、Apple Musicの空間オーディオ対応音源を再生したときに限定されている。「それだけだとせっかくの空間オーディオを楽しめるユーザーがどうしても限られてしまう」(堤氏)として、開発段階から懸念点として上がっていた。
それを解決するべくパイオニアが独自に開発したのが「ステレオスペーシャルサウンド」だ。これは、Apple CarPlayもしくはAndroid Auto経由でのステレオ音源再生時にも立体的なサウンドを再現できるものとなっている。
これにより、サブスクサービスであるApple Musicに登録しなくても、もしくはスマホがAndroidであっても、多くのユーザーが等しくSF1000の立体的なサウンドを楽しめるというわけだ。
クリエイターに賞賛されたサウンドクオリティ、誰でも実感できる?
車種によらず最適な立体音響を聞ける汎用的な仕組みの製品であることから、最適なサウンドで聞けるようにするには最初に多少の設定操作が必要だ。といっても、付属のマイクを運転席のヘッドレストに固定し、SF1000起動後に「オートチューニング」を実行するだけ。
サウンド開発を主導した田上氏によると、「車内の各スピーカーから測定信号を出力して、車室内の音響特性を自動で測定します。各所で音の届くタイミングを最適化しつつ、イコライザーにより音響特性を整える処理を事前に行なうことで、空間オーディオの体験を最大化します」とのこと。
測定は数分で完了し、そこからすぐに空間オーディオを楽しめるようになる。ただし、「周囲が騒がしすぎない場所であること、車内に大きな荷物を置いたり、人が座っていたり、他の音が混じるような状態になっていたりすると正しく測定できない」ことには注意する必要がある。つまり、測定時の数分間だけは荷物を可能な限り降ろして、車内を無人のままにして完了を待つことになる。
「そういう動線をちゃんと作り込む、というところにも力を入れました。ユーザー目線に立って、できるだけ簡単に設定できるようにしています」と加藤氏。「運転席で一度測定してもらえれば、あとはそこから自動計算して助手席に最適な設定、後席も含め全員が最適に聞ける設定なども作られます」とのことで、手間をかけることなく、あらゆる車種と乗車状況に対応できるようにしている。
技術的には高度でもシンプルに使い始められる設計で、UX(ユーザーエクスペリエンス)にこだわるドルビー側も納得の仕上がりになったようだ。そもそも実証実験の段階からドルビーからは高い評価を得てきており、デモカーで視聴してもらった際にも、「この出来ならすぐにでも出したい」という熱い反応があったとのこと。
また、音楽系の展示会では、それこそDolby Atmosの楽曲を制作しているアーティストやサウンドエンジニアらから「自分が意図した通りの音が鳴っていて感動した」「このクルマを自分のスタジオにして曲を作りたい」「有名な楽曲を30年、何千回と聞いてきたが、初めて聞こえる音があった」のような賞賛の声もあったのだとか。
そんなわけで、筆者もSF1000のDolby Atmosサウンドを体験させてもらった。テスト試聴環境は標準的な6スピーカーのミニバン。その車室内はライブ会場にいるかのように音に包まれた。
最初は、パイオニアからおすすめされた「もっとも音の動きが分かりやすい」という「BOOM」(Tiësto & Sevenn)。曲の開始直後から音が空中に現れては消え、ボーカルはまさに眼前にあるかのよう。中盤では、音がらせん状に移動する様もリアルに感じられた。
「Take On Me」(a-ha)や「Beat It」(Michael Jackson)など耳なじみのあるシンセ系の楽曲も、Dolby Atmosだとその曲の中に入り込んだかのような錯覚に陥るほど。今まで「2D」で聞いてきたものにはない新鮮なおどろきがあり、音の解像感と定位が際立っていることでより強い印象が脳に刻みつけられる。
加えて、パイオニア独自のステレオスペーシャルオーディオでステレオ音源の楽曲を聞いてみたところ、高低や音像定位はDolby Atmosほど明瞭ではないものの、通常のステレオでは得られない音の立体感、臨場感が確かに感じられる。この音楽を聞くために、近場であってもわざわざクルマで移動するのもアリかな、と思えるほどだ。
クルマは空間オーディオを現実的に楽しめる場
「特に若い方はイヤフォンやヘッドフォンでしか聞いたことがなかったり、スマホのスピーカーで聞いている、という人も多い」と田上氏が言うように、音楽を純粋にスピーカーで楽しむことは昨今減ってきているように思う。「その分、相対的に車室空間がスピーカーで音楽を聞ける貴重な空間」になりつつある。
標準的にスピーカーが4つ以上装着されていることが多い車内オーディオ環境は、今となってはむしろ「空間を生かした音楽体験を提供しやすい理想的な環境になっている」と同氏。自宅に本格的なオーディオ部屋を作るより、今あるマイカーをオーディオ部屋にした方がよほどリーズナブルで、リスニング環境としても良好なものになるかもしれない。
なお、同社のフラグシップディスプレイオーディオは、今回のSF1000と空間オーディオ以外の機能を網羅した従来機種「SF900」の2本立てとなる。どちらも10.1V型という大画面で、スマホと連携したカーナビ機能やHDMI接続による配信動画の再生が可能。音楽などに合わせて光るルミナスバーも印象的なモデルだ。
SF900でもハイレゾオーディオは楽しめるが、そこから1段も2段も表現の幅が広がった空間オーディオも体験したいならSF1000を、ということになる。「お客さまにワクワクしてもらえる、今までにない体験をしてもらえる製品を作ることがわれわれの存在意義です。SF1000で音楽を流したときに、“うおっ”と声が出てしまうような、そんな体験をしていただければ」と堤氏は語っていた。
Photo:安田 剛

















