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メルセデス・ベンツ、自動走行デモも行なった新型「Eクラス」発表会
「安全性の向上」「移動性の向上」「快適性」が自動運転車の開発を目指す意図
2016年7月27日 21:02
- 2016年7月27日 開催
- 675万円~988万円
メルセデス・ベンツは7月27日、同社のもっとも新しい先進運転支援システムを搭載したアッパー・ミドルセダンの新型「Eクラス」7モデルを迎賓館赤坂離宮で発表し、同日より受注を開始した。高速走行から渋滞時まで対応するオートクルーズ機能の「ディスタンスパイロット・ディストロニック」や、車線変更をアシストする「アクティブレーンチェンジングアシスト」、標識を読み取って制限速度超過時に警告する「トラフィックサインアシスト」などを搭載し、歩行者などの飛び出し検知機能も備える。価格は675万円~988万円。
モデル | エンジン | 変速機 | ステアリング位置 | 価格 |
---|---|---|---|---|
E 200 アバンギャルド | 直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ | 9速AT | 右 | 6,750,000円 |
E 200 4MATIC アバンギャルド | 6,980,000円 | |||
E 220 d アバンギャルド | 直列4気筒 2.0リッター直噴ディーゼルターボ | 6,980,000円 | ||
E 200 アバンギャルド スポーツ | 直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ | 7,270,000円 | ||
E 220 d アバンギャルド スポーツ | 直列4気筒 2.0リッター直噴ディーゼルターボ | 7,500,000円 | ||
E 250 アバンギャルド スポーツ | 直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ | 7,560,000円 | ||
E 400 4MATIC エクスクルーシブ | V型6気筒 3.5リッター直噴ターボ | 9,880,000円 |
9つの先進運転支援システムに、12.3インチ×2のワイド画面も
新型Eクラスに搭載した先進運転支援システムは、主に以下の9つ。
・「ディスタンスパイロット・ディストロニック」:高速走行時や渋滞路走行時に最適な車間距離を維持
・「ステアリングパイロット」:車線やガードレール、前走車を認識して車間を維持しながらステアリングをアシスト
・「アクティブレーンチェンジングアシスト」:ステアリングパイロット使用時にウィンカー操作によって車線変更のステアリング操作をアシスト
・「アクティブレーンキーピングアシスト」:車線逸脱時にステアリングの微振動で警告し、自動補正ブレーキによって車線復帰をアシスト
・「トラフィックサインアシスト」:制限速度の標識をカメラが読み取ってディスプレイに内容を表示し、速度超過時に警告音で注意を促す
・「アクティブブラインドスポットアシスト」:車両斜め後方の死角にいる車両や自転車などを検知して、警告や自動ブレーキで危険回避を支援する
・「アクティブブレーキアシスト」:前方の前走車、合流車、歩行者、障害物を検知してディスプレイや音で警告し、危険な場合は必要に応じて制動力を高める
・「渋滞時緊急ブレーキ機能」:渋滞最後尾の車両への衝突が予測され、左右に回避スペースがない時に自動ブレーキによって衝突を回避、または衝突被害を軽減
・「緊急回避補助システム」:車道を横断している歩行者などとの衝突が予測される場合に的確に回避するためのステアリング操作をサポート
これ以外にも乗員を保護する新機能として、側面衝突の回避が不可能と判断された際に前席のサイドサポート部に内蔵されたエアチャンバーを膨張させ衝撃を和らげる「PRE-SAFEインパルスサイド」、生成したノイズによって衝突時の音が内耳に届きにくくする「PRE-SAFEサウンド」も搭載する。
また、前方の交通状況を元に84個あるヘッドライトのLEDを個別制御し、他車の眩惑を防ぎながら広範囲を明るく照らす「マルチビームLEDヘッドライト」、長時間走行時にドライバーの疲労や注意力低下を検知して休憩を促す「アテンションアシスト」、車両の周囲を真上からの視点でリアルタイムに確認できる「360度カメラシステム」、縦列・並列駐車を自動で行なう「パーキングパイロット」といった技術も利用可能。パーキングパイロットについては、ドライバーが降車後、スマートフォンの専用アプリを操作することで自動的に駐車する仕組みも用意する。
コクピットには、12.3インチ(1920×720)の横長ディスプレイ2つを左右に並べて埋め込み、スピード・タコメーター、ナビゲーション、燃費情報等を詳細かつ精細に表示する。ステアリングの左右に用意されたボタンを押したりなぞったりすることで画面操作を行なえ、ステアリングから手を離さなくても多彩な機能を使えるようにした。
そのほか、車室内を64色から選んで彩ることができる「アンビエントライト」を全車に搭載。最上位モデルのE 400はエンジン、トランスミッション、サスペンション、ステアリングアシストにかかわるセッティングを自在に変えられる「ダイナミックセレクト」を装備する。
いずれのモデルも新開発の電子制御式9速AT「9G-TRONIC」を採用し、エンジンの最高出力と最大トルクはE 200シリーズが184PS/5500rpm、30.6kgm/1200-4000rpm、E 220 dシリーズが194PS/4800rpm、40.8kgm/1600-2800rpm、E 250が211PS/5500rpm、35.7kgm/1200-4000rpm、E 400が333PS/5250-6000rpm、48.9kgm/1200-4000rpmをそれぞれ発生する。
日独両国の関係強化により、自動運転車にかかわる国際標準制定へ期待
発表会では、会場が迎賓館赤坂離宮ということもあり、メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長兼CEOの上野金太郎氏に加え、駐日ドイツ連邦共和国大使のハンス・カール・フォン・ヴェアテルン閣下、駐日欧州連合代表部 参事官のメルヴィ・カーロス氏、経済産業省 製造産業局長の糟谷敏秀氏、国土交通省 自動車局次長の島雅之氏といった政府高官らが登壇し挨拶した。
上野氏は、「民間企業としては迎賓館で初めて会を開くことができました。本日を機に、今後自動車の安全技術の領域でドイツを含むEUと日本の産業連携、国際基準調和がさらに促進することを祈っています」と述べるとともに、先進運転技術につながる同社のこれまでの取り組みを紹介。「本社があるドイツ・シュトゥットガルトの周辺半径100km圏内で起こった重大事故に対して、警察と協力して事故原因を調査している。クルマの破損や乗員の負傷状態について、今までに4000件以上の事故を科学的に調査し、その結果を新しい車両開発に役立てている」とし、それによって「さまざまな革新的技術を生み出している」と語った。
一方、新型Eクラスに搭載の先進運転技術について紹介したダイムラー ドライバー支援開発シニアマネージャーのヨアヒム・ミセル氏は、死亡事故をより低減するための「安全性向上」、障害者、高齢者、子供や運転できない状況の人々に対する「モビリティ(移動性)の向上」、自宅、オフィスに続く“第3の居場所”とも言えるクルマの「快適性」が大切であるとし、それが先進運転技術や自動運転車の開発を目指す意図であると語った。
ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン閣下は、「日本市場の輸入車は6割以上がドイツから来ているが、残念ながら日本における輸入車のシェアは全体の4%くらいしかないため、このシェアが上がることを期待している。日本とドイツの産業はライバルであり、よき友でもある。パワートレーン、自動走行、コネクテッドカーなどの分野で協力できるだろう」と挨拶。
メルヴィ・カーロス氏は「EUは日本との協力を非常に重視し、車両に関する規格などについて国際的な調和を図っている。日本の自動車メーカーや消費者にとっても、より緊密な技術提供によって得る利益は非常に高いと思っており、EUと日本の自動車産業、および貿易のさらなる進化について期待している」と述べ、日独の協力関係強化の重要さを訴えた。
糟谷氏も、「(自動運転車の)社会実装のためには、ルールやインフラを国際的な協調のもとで整備していくことが必要不可欠。日独両国間でさまざまな協力の余地があると思っている」とコメントするとともに、島氏も長野県軽井沢で9月開催予定のG7を念頭に、最先端技術の国際標準の重要さについて言及した。