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「MX-5 RF」に乗り込みルーフ開閉を試せる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」のマツダブース

10月14日~23日開催、「ルーチェ ロータリークーペ」も展示

2016年10月14日~23日 開催

 マツダは、10月14日~23日に東京都港区の東京ミッドタウンで開催される「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2016」に出展しており、プラザ1階 キャノピー・スクエアにブースを展開。日本国内で年内の発売開始を予定する「ロードスター RF」の北米仕様モデル「MX-5 RF」と、マツダ車として初めて前輪駆動のFFレイアウトを採用した「ルーチェ ロータリークーペ」を展示している。

発売を控えた最新モデルの「MX-5 RF」(手前)と、1969年式の「ルーチェ ロータリークーペ」(奥)の2台を車両展示

 展示された2台のうち、ルーチェ ロータリークーペは展示のみとなっているが、MX-5 RFはドアを開けて車内に乗り込んだり、ボンネットを開けてエンジンルームを見ることも可能。電装品も動く状態で、RFの車名の由来ともなっている電動ハードトップ「リトラクタブル・ファストバック」を開閉させることもできるようになっており、この状態での一般公開は国内で初めてとなる。

北米仕様で左ハンドルのMX-5 RF(日本名:ロードスターRF)
ボディカラーは「マシーングレープレミアムメタリック」
205/45 R17 84Wサイズのブリヂストン「POTENZE S001」を4輪に装着

 イベント開催初日には、4代目の現行型ロードスターのデザインを担当し、7月からロードスターの開発主査を務めているマツダ 商品本部 主査 兼 デザイン本部チーフデザイナーの中山雅氏が会場に姿を見せ、取材に集まった報道関係者に対して展示されたMX-5 RFについて解説を実施した。

マツダ株式会社 商品本部 主査 兼 デザイン本部チーフデザイナー 中山雅氏。デザイナーとして活躍してきた中山氏だけに、その場でスケッチボードにイラストを描きながらファストバックスタイルを得た新しいロードスターについて説明を行なった
オープンカーはルーフが前後に移動することから、走行性能に一貫性を持たせるバランス取りで非常に苦労するとのことで、当然ながらルーフが重くなるほど統一感のある走りの実現は難しくなる。3分割となるMX-5 RFのルーフでは、車両前方側からアルミ、スチール、樹脂と用途に応じて材料を使い分けている。現在の技術では高張力鋼板が使えるスチールが最も重量を抑えられるものの、比例して強度を保ちにくくなるため、面積の広い前方側はアルミを使っている。後方側は非常に複雑な面構成となっているので、これは樹脂でなければ不可能であると中山氏は語る
可動式のファストバック部分とトランクリッドは直線基調の台形フォルムとしているが、これは中山氏がこだわった部分とのこと。流麗なファストバックの形状とトランク開口部の広さを両立させる目的に加え、昔のSF作品で登場した電動ドアが単純な直線の分割線ではなく、凹凸をかみ合わせたような形状となっていたイメージを表現している
左ハンドルのMX-5 RFは、シフトセレクター前方の左側に電動トップの操作スイッチをレイアウト
エンジンは2.0リッターガソリンの「SKYACTIV-G 2.0」を搭載。日本仕様のロードスターRFでもSKYACTIV-G 2.0がラインアップされるという
MX-5 RFの電動ルーフ開閉シーン(34秒)
ルーチェ ロータリークーペ
スチール製のバンパーやフェンダーミラーが半世紀近く昔のクルマであることを感じさせる
ルーフや後方のピラーの表面を革張りとしたレザートップ仕様
リアフェンダーのエンブレム

 このほかにマツダブースでは、「視覚だけでなく、感性に訴えかけるブランド体験を提供する」ことを目的に、マツダのデザインテーマ“魂動”の世界観を香りで表現するために資生堂と共同開発したフレグランス「SOUL of MOTION」も用意され、ステンレスキャップを持つ専用ボトルを展示するほか、フレグランスを染みこませたムエット(試香紙)の配布も実施されている。

資生堂とマツダが共同開発したフレグランス「SOUL of MOTION」。香りを体感できるムエット(試香紙)も用意されていた
東京ミッドタウン プラザ1階 キャノピー・スクエアにあるマツダブース

「エンジニアとデザイナーがいっしょにいいものを作ろうという姿勢がマツダらしさ」

マツダ株式会社 デザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹 田中秀昭氏(左)とマツダ株式会社 デザイン本部 デザインモデリングスタジオ部長 呉羽博史氏(右)の2人から説明が行なわれた

 開催初日の10月14日には、ブースと隣接するレストランを会場に、マツダのデザイン担当者によって報道関係者に向けた「マツダデザインの歴史」と題する説明会も実施された。

 マツダでは2020年に迎える創業100周年に向けてブランド価値を向上させる取り組みを進めており、この一環として「自分たちは何者であるのか」をしっかりと見直すため自社の歴史を再確認する作業を行なっているという。デザインの歴史についても同様で、それぞれの時代ごとにテーマがあることが見いだされたが、これが現在のデザインテーマ「魂動-Soul of Motion」につながっていると解説された。

マツダ株式会社 デザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹 田中秀昭氏。かつては「M2」で「ユーノス ロードスター」をベースとした「1001」「1028」のデザインも手がけている

 マツダの創業以来のデザインについて説明したマツダ デザイン本部 ブランドスタイル統括部 主幹の田中秀昭氏は、マツダの原点は原爆投下によって破壊された広島の復興をモチベーションに、「人々を幸せにするための道具を作りたい」という思いから始まったと紹介。当時の社内誌の表紙に登場する3輪トラックの赤いボディを、現代の「ソウルレッド」の始まりではないかとしつつ、3輪トラックのような商用車でもインダストリアルデザインを採り入れていることをマツダらしさとした。

 1960年代にモータリゼーションの時代が到来したことでマツダも軽自動車、小型車などの開発に乗り出すことになるが、これにあたって社内にデザイン部門が必要であると考えられ、1959年12月に「機構造型課」の内部にデザインを担当する「造型係」が発足。これについて田中氏は、「設計課のなかにデザイン部門ができているだけに、エンジニアとデザイナーがいっしょになっていいものを作ろうという姿勢があり、今のマツダデザイン、魂動デザインでも同じような考えがあります」と語った。

3輪トラックで広島の復興に貢献したいという思いが初期のマツダのモチベーション
モータリゼーションは台数の多い軽自動車から、車格が上がっていくピラミッド構造になるとの考えから、マツダもまず軽自動車の開発に取り組み、大きなクルマの開発を手がけていった
1959年12月に「機構造型課 造型係」が発足。翌1960年にマツダ初の4輪乗用車である「R360 クーペが登場した

 1960年代には「流麗でシンプルなデザイン」が重視されていたが、1970年代になると国内需要がひとまわりしたこと、米国で排出ガスを厳しく規制する「マスキー法」が施行され、他社が尻込みするなかマツダが持つ「ロータリーエンジン」はサーマルリアクターを活用することで規制をクリアできると見込まれたことなどから北米輸出の台数が増え、デザインについても従来のエレガントな水平基調から、グラマラスな面構成、力強さを表現する「プラウドフェイス」と呼ばれるフロントマスクが採用されるようになった。

ベルトーネが手がけた「ルーチェ」のセダンモデルをベースに、マツダ社内のデザイナーがルーチェ ロータリークーペを開発。短いフロントオーバーハングを実現するため、新開発の「13A」型ロータリーエンジンが生み出された
「プラウドフェイス」と呼ばれるフロントマスクが与えられた「サバンナ」は、開発当時は社内で「レオネード」という車名で呼ばれ、リアウィンドウの左右にライオンのたてがみを模したモチーフも与えられている

 しかし、「オイルショック」の発生により、すぐに時代は「エコノミーで合理的なもの」を求めるようになり、マツダでも「赤いファミリア」と呼ばれた5代目ファミリアを発売。直線基調のクリーンな面構成は若々しさも表現していた。また、この当時はフォードとの資本関係があり、ファミリアはフォード「レーザー」の兄弟車として開発されていたことから、マツダの社内にもフォードのデザイナーが多数やってきて、お互いに開発内容をやりとりするなかで外国人の感性がマツダに取り込まれたと田中氏は語る。

 バブル経済とコンパクトカーの伸長で会社の業績も好調となったが、のちにデザイン部門のトップとなる人物が米国出向を経験するなかで、ハイウェイを埋めるコンパクトカーの姿から「クルマはもっと心ときめくものでなければだめだ」と考え、1990年代に入るころに「ときめきのデザイン」という方向性を提唱。3代目「RX-7」などの曲面造型を持つモデルが登場することになった。

1980年代には「ファミリア」「コスモ AP」といった直線基調のクリーンなデザインが主流になる
直線基調の実直なテイストから、光と影でボディラインを表現する「ときめきのデザイン」にシフト

 バブル経済の崩壊後にはフォードの持ち株比率が増え、また、フォード傘下の「PAG」と呼ばれる世界の自動車メーカーのなかで「マツダらしさ」のアピールが求められたことから、現代につながる「Zoom-Zoom」というブランドメッセージがブランドのDNAとして定義されることになったという。また、デザインでも初代「アテンザ」で新しい「アスレチックデザイン」が生み出され、これが魂動デザインのベースになったと解説された。

「PAG」内での立ち位置を明確にするため、「Zoom-Zoom」という新しいブランドメッセージが生み出された
Zoom-Zoomをデザインでも表現するため、躍動感のある「アスレチックデザイン」を導入

 こういった時代の変遷の上に成り立っている魂動デザインは、初の4輪乗用車として登場した「R360 クーペ」で骨格としてのボディラインで表現された水平基調の「エレガンス」、米国進出で個性を強調した「プラウドフェイス」、ときめきのデザインを表現した「光と影」といった要素が融合され、現代の「新世代商品群」に生かされていると総括された。

魂動デザインのイメージは、地上で最も速く走る動物である「チーター」
チーターをそのままクルマに置き換えるのではなく、クルマの構成要素をそれぞれあてはめてデザインしている
躍動感のなかに、1本の線に沿って動く水平のラインも重要なテーマ
魂動のロゴ
魂動デザインは「骨格」「リズム」「光の質」の3つの要素で形作られる
マツダ車が歩んできたデザインの変遷から、「エレガンス」「プラウドフェイス」「光と影」といった要素が現代の「新世代商品群」に受け継がれ、この最も新しいモデルがロードスターRFであると説明された