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「ノート e-POWER」「セレナ」の好調で日産の国内生産は2年ぶりに100万台回復の見込み
9カ月累計のグローバル販売は399万3000台。日産自動車 2016年度3月期 第3四半期決算報告より
2017年2月10日 00:34
- 2017年2月9日 開催
日産自動車は2月9日、2016年度第3四半期の決算内容を発表した。日産における2016年4月~12月の9カ月での売上高は前年同期比7.6%減の8兆2648億円、営業利益は同14.3%減の5032億円、売上高営業利益率は6.1%、経常利益は同6.5%減の5902億円、当期純利益は同8.5%減の4142億円となっている。なお、2016年度通期の業績見通しはこれまでの発表内容から変更なしとしている。
決算説明を行なうため登壇した日産自動車 常務執行役員の田川丈二氏は、この数字について「当社の業績は堅調に推移しており、自動車事業のフリーキャッシュフローは潤沢で、年度の台数見通し、および財務実績見通しに対して順調に進んでおります。前年に対して為替変動が逆風になったものの、しっかりとした業績を確保することができました」とコメント。財務実績が減収、減益となっていることについては「その要因は大幅な為替変動によるもので、コスト削減によるビジネスの改善をもってしても影響を完全に相殺することはできませんでした」と語っている。
さらに田川氏は、グローバルと市場ごとの販売実績の説明に先立ち、日産の基礎体力が改善していることを理解してもらうため、前年同様の為替水準だった場合を想定したグラフを紹介。この場合、2016年4月~12月の9カ月の売上高は9兆4261億円、営業利益は7646億円とそれぞれ前年同期を上まわると解説している。
2016年度第3四半期までの9カ月累計の販売実績は、グローバルでの全体需要は4.5%増えた6716万台となり、日産のグローバル販売台数は前年同期から2.6%増の399万3000台となっている。第3四半期3カ月では前年同期から8.3%増の138万台をグローバルで販売した。
市場別では、日本市場では前年同期比で10.0%減の34万4000台で市場占有率は9.8%に後退。今年度前半に発生した「デイズ」「デイズ ルークス」の販売停止による軽自動車販売減少が大きな要因。しかし、それぞれすでに販売を再開しており、新型の「セレナ」「ノート」については計画どおりに販売を開始。これを受け、第3四半期となる10月~12月の3カ月では全体需要の4.9%を上まわる13.1%増になったことをアピールしている。
中国市場では2016年1月~12月の数字を紹介し、前年同期比8.4%増の135万5000台となったが、13.2%増の268万8000台となった全体需要には届かないもので、この要因として小型商用車市場の縮小を挙げた。
北米市場(米国、カナダ、メキシコ)では「ローグ」「アルティマ」などの好調を背景に、全体需要の伸びが1.0%増であるのに対し、日産は6.2%増で過去最高となる158万2000台を販売した。
ロシアを含む欧州市場ではルーブル安、景気の不透明感などを受けたロシア市場の全体需要減少の影響を受け、日産の販売台数も25.0%減少。全体では0.4%増の54万2000台に止まったが、これは当初見込みに沿った数字であるとしている。その他市場も全体需要の低迷が販売を押し下げて日産の販売台数は3.9%減の59万6000台となっている。
営業利益の増減要因では、「台数/車種構成」が1266億円、購買コスト削減などによる「コスト項目」が2143億円、「研究開発費」が228億円の増益要因となり、一方で「マーケティング・販売費用」の増加で1638億円、「生産費用」で97億円、「その他」で131億円の減益要因としたほか、「為替変動」の2614億円が大きく響いて最終的な営業利益は5032億円となっている。
このほかに田川氏は、1月に格付け会社のムーディーズが日産の長期、短期の格付けを1ノッチ高めたことを取り上げ、日産の経営は順調で今後も持続的に事業を拡大し、収益と自動車事業のキャッシュフローの確保、魅力ある株主還元を実施していくと締めくくった。
「ノート e-POWER」「セレナ」の好調で国内生産100万台を回復する見込み
決算報告後に実施された質疑応答では、2月6日に実施されたトヨタ自動車の2017年3月期第3四半期決算説明会と同様に、1月に発足した米国 トランプ政権に関連する質問が多数投げかけられたが、田川氏は基本的に同社の社長兼CEOであるカルロス・ゴーン氏がこれまでに表明しているように、「日産自動車では各国の規制、基準に沿った形でビジネスを行なう。規制が変わった場合には、その規制に対応していく」との姿勢を再確認。また、まもなく行なわれる安倍総理大臣とトランプ大統領の首脳会談については、「日産は日本の自動車会社で、米国で多くの雇用とプレゼンスを持っている会社なので、両国のトップ同士が話すことについては注視していきたい」と述べた。
また、車両の生産について、以前から日本国内での生産台数で100万台を維持することを目標に掲げている点について、輸出などとの兼ね合いのなかで質問が出たことに対し、田川氏は「日本の生産は、ここ2年ほど80万台の後半で推移してきましたが、この第3四半期には日本での『ノート e-POWER』や『セレナ』の好調で生産が伸びてきており、日本での生産は9カ月で16%ほど増えております。確か73万台ぐらいだったと思いますが、この3月で終わる2016年度については100万台を達成できるんじゃないかと、今、計画をしております。これはとくに、日本でのモデルの成功が大きく貢献していると考えております」と語り、1月に乗用車車名別販売台数で1位、2位に輝いた「ノート」「セレナ」の販売牽引によって2年ぶりに国内生産台数100万台を回復する見込みであるとした。
このほか、2月7日に発表された本田技研工業と日立オートモティブシステムズによる電動車両用モーターの開発、製造、販売を行なう合弁会社の設立について質問され、「電気自動車にお客さまの関心が増え、自動車会社も電気自動車に力を入れはじめるということは、我々にとってもいいことじゃないかと思います。確かに競争は激しくなると思いますが、それによっていろいろなコストが下がってサプライヤーさんもいろいろな投資をする。あるいは、充電インフラが増えるといった、昨日もフォルクスワーゲンから発表がありました。これに加えて、電気自動車は1回乗ればそのよさが分かるのですが、買うまでのハードルが高く、実際に電気自動車を買った人が増える、あるいは日産だけでなく、テスラさんなどのようにほかの会社が入ってくることで、お客さまは電気自動車のよさが分かる。また、ノートのe-POWERがご好評いただいているのも『電気自動車と同じ走りだけど、もう少し航続距離が長い』といったプラスの面があると思っていますので、非常にいいことだと思っています」と田川氏は回答。
さらに「ホンダさんの発表についてはコメントするところではないですが、モーター、バッテリー、インバーターなど、電気自動車に関わるサプライヤーさんが増えて競争力が高まり、コストが下がるというのは、電気自動車、ゼロエミッションでナンバー1を狙う日産にとっていいことなんじゃないかと考えています」とコメントしている。