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日産、為替の影響から2016年度第1四半期は売上高8.4%減、営業利益9.2%減など前年同期比割れ

2016年7月27日 発表

前年同期の為替レートでは733億円増となるが、為替変動による912億円のマイナスで営業利益が落ち込む結果となった
日産自動車株式会社 常務執行役員 田川丈二氏

 日産自動車は7月27日、2016年度第1四半期(2016年4月~6月)の決算を発表した。3カ月での売上高は前年同期比8.4%減の2兆6545億円、営業利益は前年同期比9.2%減の1758億円、経常利益は前年同期比8.2%減の1982億円、当期純利益は前年同期比10.7%減の1364億円となっている。なお、売上高の前年同期比減は7年ぶり、営業利益の前年同期比減は3年ぶりのことになる。

 2016年度第1四半期の販売実績は、グローバルでの全体需要が3.5%増えるなか、日産は前年同期の129万4000台から0.6%減の128万7000台となった。北米市場で8.9%増の52万9000台、中国市場で0.8%増の29万9000台を販売したものの、日本市場での販売が12万台から9万台と25.4%減少。決算発表で登壇した日産自動車 常務執行役員の田川丈二氏は、4月20日から軽自動車「デイズ」「デイズルークス」の販売が停止していたことや、新型車の投入から時間が経過していること、消費者心理の冷え込みなどを原因としている。しかし、今後は5代目となる新型ミニバン「セレナ」など、複数の主力モデルの市場投入など好材料が控えていることも合わせて説明した。

2016年度第1四半期の主要財務指標では、フリーキャッシュフローを除く4項目が前年同期を下まわった
今回の決算では急速な円高による変動が大きく影響。為替が変動しなかった場合の試算も紹介された
日本市場での25.4%減という数字が影響し、グローバル販売台数が0.6%減となった
販売台数の減少を受け、日本市場での市場占有率も11.0%から8.3%に後退した
中国市場では「エクストレイル」「シルフィ」「キャシュカイ」などが堅調に推移し、販売台数は0.8%増の29万9000台となった
北米市場は市場での全体需要も好調だが、日産はそれ以上の販売増加を達成。52万9000台(8.9%増)で販売記録を更新している
欧州市場ではアジア系ブランドのトップグループに位置し、今年度中には新型「マイクラ(日本名:マーチ)」の発売を控えるなど好調を維持するものの、ロシアのルーブル安といった景気後退の影響から、全体ではマイナスとなった
不安定な市場動向と為替などの逆風から、その他地域では販売台数が前年同期比8.6%減となった
ネットキャッシュは、為替変動に伴う外貨の換算影響、配当支払、自社株買いなどの影響で1兆3650億円に減少

 また、田川氏は「為替の大きな逆風により、実態としての業績改善が見えにくくなっている」と語り、試算として中国合弁会社の比例連結ベースの数字から為替変動の影響を差し引いた場合、連結売上高は4.3%増の3兆2600億円、営業利益は38.4%増の3041億円になると解説している。2016年度の通期見通しは5月に発表した予想内容から変更せず、通期配当に関しても当初計画どおり対前年14.3%増の1株あたり48円を見込むとしている。

 決算発表の最後に田川氏は「2016年度第1四半期は確かな財務実績を確保しました。この3カ月間で当社の基礎体力は飛躍的に上がり、販売好調な北米の主力車種と回復を続ける西ヨーロッパ、そして継続的なコスト改善が業績を牽引しています。これにより、最近の不利な為替変動と新興市場における厳しい状況の影響を打ち消すことができました。日産自動車は2016年度をいいモメンタムでスタートしました。市場の先行きは不透明で為替変動の逆風にも直面していますが、引き続き確かな収益とキャッシュフローを実現してまいります」と締めくくった。

財務実績はマイナスの数値ばかりだが、これは為替変動の逆風の影響が影響したものであると田川氏は説明。前年同期の為替ベースでは営業利益が増え、業務内容としては改善していると語った
中国合弁会社の比例連結ベースによる主要財務指標と財務実績

新型「セレナ」は8月24日、「e-POWER」システム搭載のコンパクトカーは秋口に発売

日産自動車株式会社 専務執行役員 星野朝子氏

 決算発表後に行われた質疑応答では、三菱自動車工業による燃費試験データに関する不正の影響から停止していた軽自動車の販売が7月から再開され、これまでの影響と今後についての質問が出た。

 この質問には国内販売を担当する日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏が回答。星野氏はまず各方面に迷惑をかけてしまったことに対するお詫びを口にしたあと、「(販売再開を)待っていてくださった方もたくさんいて、今はとても堅調にオーダーをいただいております。ただ、この待っていた方のオーダーが止まったあとにどうなるかは分からないので、予測を精査し直している段階ではないと判断しています。ただ、7月の受注は堅調です」「FY16の58万台という販売予測は、消費税の増税による駆け込み需要が想定されたままの全需をベースとした数値なので、この駆け込み需要がなくなった分で少し弱含みになるのではないかと。あと、デイズなどのマイナスは6月までの販売停止分だけが入っているので、これ以降にどのような影響があるかは見守りたいところで、現在の目標としてはもう少し弱含みというところに置いています」とコメント。

 これを受け、販売台数が弱含みになることに対する挽回策があるか再び問いかけられた星野氏は「今年は『セレナ』にProPILOT(プロパイロット)という名前の自動運転技術を搭載したモデルを8月24日に発売します。セレナは非常に人気の車種で、もう予約受注が相当数貯まっております。こちらがロケットスタートすることを期待したいなと思っており、現在、セールス活動の準備を販社の方々と万端に整えているところが1つ。また、『e-POWER』という日産ならではの、日産が『リーフ』を持っているからこそできる新しいパワートレーンを搭載したコンパクトカーを秋口に出します。この新しいパワートレーンで未知の体験ができるようなクルマに仕上がっていますので、こちらも多くの販売で挽回につながると期待しています」「このほかにもう1つ、『デイズルークス』のマイナーチェンジも予定しているのですが、『デイズ』がどれぐらい戻ってくるのかまだ見えないので、(マイナーチェンジが)いつになるかは決めておりません。ただ、これも予定としては考えているところです」と語り、今後の商品展開について明らかにした。